期せずして、彼は彼女とデートする。
「お兄ちゃんお兄ちゃん!ヤバイよお兄ちゃん!」
金曜日の夜。明日からの休みを堪能しようとリビングでゆったりしながらゲームをしていると、妹の小町が新聞紙片手にやたらハイテンションで俺の体を揺すって来た。
「どうした小町?お兄ちゃん今ちょっと地球防衛するのに忙しいんだけど」
「それどころじゃないよお兄ちゃん!地球とかどうでもいいからこれ見て!」
いや流石にどうでもいいことはないでしょ。地球にでっかい蟻とか蜘蛛とか攻めて来てるんだよ?ゲームの中だけど。
vitaちゃんをスリープモードにしてから小町が広げた新聞を見る。そこの広告欄に書かれているのは『東京ワンニャンショー』が開催されると言う内容だった。
「おお!良くやったぞ小町!」
東京ワンニャンショーとは、簡単に言ってしまえばペットの即売会だ。
仔犬や仔猫のみならず、小鳥や小魚などなど、様々な動物が出品されている。
千葉で開催するのに東京を名乗らなければならない悲しいサダメを背負ったイベントだ。
我が家の飼い猫、カマクラともここで出会った。その為だけに休みだというのに出動させられた親父が哀れでならない。
俺たち兄妹もアニマルスキーヤーのはしくれ。このイベントには毎回参加している。
「明日開催だってさ!勿論行くよね?」
「当たり前だろ。いや、ちょっと待て小町」
「え、お兄ちゃんもしかして行かないの?」
「いやそうじゃない」
先月、川崎の一件の時に恋心を抱いていることを自覚してしまった相手、雪ノ下雪乃。あいつは確か猫大好きフリスキーだった筈だ。ここは誘ってみるか?いやでも断られたら多分立ち直れない。
どうするべきかと考えていると、小町がポン、と手を打って閃きましたと言わんばかりの顔をしている。
どうしたのかと小町を見ていると、徐に携帯を取り出して何処かへ電話をかけ始めた。
「あ、もしもし小町ですー!いつもお世話になっております!」
お前はサラリーマンかってくらい遜った挨拶だった。女子中学生とは思えない。つまり俺の妹マジアダルティ。
「突然ですけど明日って空いてますか?はい、そうです、ワンニャンショーに是非一緒にどうかと思いまして!」
どうやら電話相手に明日のワンニャンショーに一緒に行こうと誘っているみたいだ。となると小町の友達かな?やだ、今年は小町と行けないとかお兄ちゃん泣いちゃうよ?
「そうですか!分かりました。では9時に兄をそちらに寄越しますので!ではでは!」
「ちょっと小町ちゃん?」
電話を切った小町に思わず声をかけてしまう。なんか勝手に明日の予定決められてるんだけど。社畜の皆さんはこうした理不尽のせいで仕事が増えて行くんだろうなぁ、なんて今日も働いてるパパンとママンに想いを馳せる。
「どしたのお兄ちゃん」
「どしたのじゃないでしょ。何勝手に俺に仕事をさせようとしてるの?てか相手誰だよ」
「雪乃さんだよ?」
何当たり前のこと聞いてんのゴミいちゃんと言わんばかりの冷めた目だ。
つかいつの間に雪ノ下と連絡先交換してたんだよ。
「いや、なんで雪ノ下?」
「だってお兄ちゃん、雪乃さんのこと好きなんでしょ?」
な、なぜそれを⁉︎雪ノ下本人には勿論のこと、小町にすら言ってなかったのに!
「そそそそそんなわけあるかよ」
「いやいや見てたら分かるよ。小町を誰だと思ってるの?お兄ちゃんの妹だよ?小町に分からないわけないじゃんか」
怖い。兄の恋愛事情を勝手に察してしまう妹怖い。そもそも俺と雪ノ下と小町が一堂に会したのは前のカフェの時だけだった筈。その時はまだ雪ノ下の事好きだって自覚無かったし。何故それでわかるし。
「だーかーらー、小町がお膳立てしてあげたのです!お兄ちゃんはヘタレだからどうせ断られたらどうしようなんて考えて誘いもしなかっただろうからねー。あ、小町はお兄ちゃんと一緒に行かないから。二人で楽しんできてね!」
「え、小町来ないの?」
「お兄ちゃんと雪乃さんを二人きりにしてあげようって言う小町なりの気遣いだよ。あ、今の小町的にポイント高い〜」
なんか小町にありがたさを感じてる自分が憎い。事実として、多分このままだったら雪ノ下を誘うなんてことはしてなかったからいらんお節介だと切って捨てる事も出来ないし。
「それじゃ、明日楽しんできてね〜」
それだけ言い残して小町は自分の部屋へと消えていった。
明日どうすんの俺。どうなるの俺。
「よお」
「......おはよう」
翌朝9時。俺の姿は雪ノ下の住むマンションの下にあった。
雪ノ下は涼しそうな白いサマーセーターを着て、髪の毛はいつものツインテールをアップにして纏めている。
ツインテールがここまで似合う女子も中々いないだろう。精々がアニメの中のキャラだけだ。
「小町さんも来ると思っていたのだけれど、どうやら嵌められたみたいね......」
「なんかすまんな......」
「いえ、別に構わないわ。あの子がそう言う子だと言うのは知っていたし」
流石は雪ノ下。小町の本性をたった一度の邂逅で見破ったのか。
本当もう兄としても結構迷惑してるんですよ。まぁ今回のことはその限りでもないんですがね。
「では行きましょうか」
「そうだな」
まぁいい。今は一人のアニマルスキーヤーとしてワンニャンショーへと赴こうではないか。
なんて、簡単に行けば良かったんですけどね。
いや、別に雪ノ下と二人きりでちょっと心臓がヤバイとかそう言う話ではない。
いや勿論それも多少はあるのだが、問題はそこではない。
猫大好きフリスキーと専ら俺の中で定評のある雪ノ下の先導のもと、会場を歩いていた訳だが、猫エリアに全く辿り着けなかった。
雪ノ下はパンフレットの地図を何度も確認し、周囲を確認し、そして一つ頷きをしてから歩き出すのだが、何故か壁に向かって歩いていったり猫エリアと真逆の方へと向かったり。
お察しいただけた通りこのお嬢様、真性の方向音痴だったのだ。
「いやでも流石に壁に向かって歩き出した時は正気を疑ったぞ......」
「う、煩いわね......」
自分のミスを改めて指摘されて恥ずかしがってるのか、雪ノ下は若干顔を赤くしてそっぽを向く。
そして俺たちは険しい旅路(主に雪ノ下のせい)の末、なんとか猫エリアが目の前というところまで来ていたのだが、そこで足踏みしてしまっている状況だ。
さっきまで元気よく歩いてた雪ノ下も何故かここで踏み止まっている。
体力が切れたのかな?とも思ったが、どうやらそうではないらしく。
「まさかとは思うけど、お前犬嫌いなの?」
返事がない。つまり肯定。
ほほう。ほほーう?あの完璧超人雪ノ下雪乃の新たな弱点発見かな?
「別に嫌いというわけではないわ。ただ、そう。少し苦手というだけで」
「世間一般ではそれを嫌いだというんだ」
「あら、世間一般から遠く離れた比企谷くんがそんな事を言うのね」
「お前も大概世間一般から乖離してると思うけどな。て言うか、ここ仔犬しかいないぞ」
「その、仔犬の方が......」
随分と萎縮しちまってまぁ。こんな弱々しい雪ノ下初めてみたぞ。体力切れた時でももうちょいキリッとしてる。
「と、兎に角、あなたが先に進みなさい。私はその後ろについていくわ」
つまり俺に盾になれと。いや別に構わんのですけどね。好きな子を身を呈して守る。男としては憧れるシチュエーションではあるだろう。
ただこの場合、相手が犬と言うのが些か不満に感じたりするが。
雪ノ下は俺の後ろに隠れ、服の裾を掴んでから俺の後をテクテクとついて来る。
時折犬の鳴き声が聞こえて来るたびに「ひっ!」と言う可愛らしい悲鳴と共に肩がビクッと震えるのが可愛い。
「ほら、猫エリアについたぞ」
「ええ、ありがとう......」
距離にして10メートルも無かったはずだが、雪ノ下は疲弊しきっていた。
しかしそれも猫エリアに着いてすぐの話で、そこかしこにいる仔猫を見た途端に復活。目をキラキラさせながらフラフラと歩いていく。
「......猫、可愛い」
「お前方向音痴なんだから勝手にフラフラするなよ」
「......にゃー」
「......」
マジか。雪ノ下さんマジか。今まで彼女の猫大好きフリスキー振りはメールでのやり取りでしか察することが出来なかった。逆説的に言うと、メールでのやり取りですら十分過ぎる程に猫に対する愛情が伝わってきたわけなのだが、どうも俺の予想以上に雪ノ下は猫が好きらしい。寧ろ愛してると言っても過言ではない。
見てる限り、彼女の猫の可愛がり方はやばい。そんじょそこらの女子の言う「可愛いー!」なんてレベルを超越してる。最早職人芸の域だ。猫の鳴き真似とかしてる時点でお察しである。
つかにゃーってなんだよ可愛過ぎるだろおい。
雪ノ下がモフッている猫はスフィンクスと言う全くの無毛の猫。これモフッてるとはいわねぇな。大きな耳と、毛が全くない事でそれなりに有名である。
そして雪ノ下さん超笑顔。いつも一色とか由比ヶ浜に向けられるものの数百倍笑顔。その顔はいつもの大人びたものではなく、年相応の少女の笑顔だ。
「......雪ノ下」
「にゃ......なにかしら比企谷くん?」
猫との至福の時間を邪魔されたからか、若干不機嫌そうな顔。どうでもいいけど雪ノ下も猫っぽいところあるよね。
「あのな、幾ら俺が近くにいるからって、そうも無防備な姿を晒されると困るんだが」
「あ......。ごめんなさい、私ばかり夢中になってしまって」
「いや、夢中になる事自体は別に構わんのだがな。もう少し周りの目線とか気にしろって事だよ」
美少女が猫語で猫と戯れてると言う構図だけで周囲の目線を引くのだ。特に男の。
更に問題はそれだけではない。
例えば
「あれ?雪ノ下先輩?」
そう、例えば知り合いにこの場面を目撃されてしまったり。
雪ノ下の名前を呼んで亜麻色の髪を揺らしながらこちらにトテトテとあざとい走り方で近づいて来る女子。奉仕部の部員、では無いか。仮部員って事にしておこう。その仮部員である一色いろはがそこにいた。
「おはようございます雪ノ下先輩。あとついでに先輩も」
「おはよう一色さん」
「俺はついでかよ......」
この子俺のこと舐めすぎじゃない?
ジトッとした目で一色を睨むが、そんな俺の視線などどこ吹く風。一色いろははニヤニヤとした笑顔で雪ノ下に詰め寄る。
「さっきから聞いたことのある声でにゃーにゃー聞こえるなーって思ったら雪ノ下先輩だったんですねー」
「なんのことかしら?」
シラを切りよった。一色は声どころか確実に雪ノ下が猫を愛でている姿も目撃しているだろう。じゃないとこんな悪い笑顔をして寄ってこない。
「えー?雪ノ下先輩が猫の声真似を」
「一色さん」
「ひゃい⁉︎」
ニッコリと笑顔。いつも部室で浮かべる穏やかな微笑みだ。ただし目は笑っていない。
だから、その笑い方怖いんだって。
一色は瞬間的に周囲に漂ってきた冷気に身を震わせて俺の後ろに隠れる。おい、俺を盾にするな。俺だって怖いんだぞ。
「あなたは何も見ていない。ちがうかしら?」
「違わないです!」
「よろしい」
最早脅迫である。いろはすガクブルだし。かく言う俺もちょっと震えそうになった。
別にそんな隠すような事でもないと思うけどな。一色は誰かに言いふらしたりする奴じゃ......奴じゃないと思いたいし。
それに大変可愛げがあって宜しいと思いますよ?ほら、雪ノ下みたいな完璧超人のこんな一面ってのは、随分と人間味があっていい事だと思うし。
「そ、それじゃあ私そろそろ行きますね!」
「あ、おいこら一色逃げるな!」
「ではでは!」
ゆきのんが怖いからって逃走しようとしやがったなこいつ!
一色はその場で回れ右。スタコラサッサと去っていこうとしたのだが、残念ながらそれは叶わなかった。
「わん!」
「ひっ!」
猫エリアなのに何故か犬の鳴き声。そして悲鳴を上げる雪ノ下。その悲鳴を聞いた一色は逃げるタイミングを逃した。と言うか、雪ノ下をまた面白いものを発見したみたいな顔で見てる。
「ひ、比企谷くん......!犬が......」
こちらに走って来るミニチュアダックスが一匹。俺を盾にしようとした雪ノ下は腕に抱きついて来る。ちょっとちょっと近いしいい匂いするしなんか腕に柔らかな感触が当たってるんですけど!
走って来た犬は俺目掛けてピョンと飛んだ。避けるわけにもいかず両手でキャッチ。よく見ればリードが壊れているじゃないか。
「ほれ、飼い主はどうした?」
ワチャワチャと頭を撫でてやると手先をペロペロ舐められる。くすぐったい。
「先輩、人間には好かれないくせに犬には好かれるんですね」
「ほっとけ。ってうお!」
「あ、ばか!手を離したら」
一色の言葉に軽く返すと、顔まで舐められてしまい思わず手を離してしまう。
地面に華麗に着地した犬が再び襲って来ると思ったのか、雪ノ下は俺を非難しながら更に体を密着させて来る。ちょっとゆきのん真っ平らだと思ってたのに意外とあるじゃないですか!
「なんか、随分と先輩に懐いてますね」
一色の言う通り、着地した犬はあろうことかそのまま寝転んでこちらに腹を見せて来た。
やはり俺は動物に好かれてしまうのか......。じゃあなんでうちの猫は俺にだけあんな素っ気ないのだろう......。
なんて感傷に浸っている場合ではない。早くこの犬の飼い主を見つけて俺の右腕に抱きついて来ているこのお嬢様をどかさないと。じゃないと八幡のフジヤマがヴォルケイノしちゃうよ。
「すいませーん!うちのサブレがご迷惑をー!」
タッタッタッと元気な声と共に足音が聞こえて来る。聞いたことのある声だなーなんて思ってたら、見覚えのある顔が。
「由比ヶ浜さん?」
「あれ?ゆきのん?ヒッキーにいろはちゃんも。三人ともどうしたの?」
犬の飼い主は由比ヶ浜だった。
と言うことはこの犬まさか......。
「比企谷くんとワンニャンショーに来ていたらたまたま一色さんとも会ったのよ」
「え?ゆきのん、一昨日のメールってワンニャンショーの事だったの⁉︎」
「それはこちらのセリフよ。用事があると言っていたから無理に誘わなかったのだけれど......。いえ、そう言えば前はここで......。ごめんなさい由比ヶ浜さん。どうやら私の過失のようね」
「ん?よく分からないけどゆきのんが謝る事じゃないよ!」
「雪ノ下先輩!わたし!わたし誘われてないです!」
「ご、ごめんなさい一色さん。別に忘れていた訳では無いのよ?その、一色さんに声をかける前に小町さんから連絡があったものだから......」
「ダメだよゆきのん!ちゃんといろはちゃんも仲間に入れてあげなきゃ!同じ奉仕部の後輩なんだから!」
「そ、その二人とも?少し近いのだけれど......」
女三人寄れば姦しい、と言うか百合百合しい。
すっかり忘れられている俺はサブレの腹を撫で回していた。
「へー、それって凄くないですか?事故の関係者が三人とも集まるなんて」
「まぁ、普通に考えてどんな確率だよってなるよな」
大体10分くらい百合百合してた三人だったが、途中で由比ヶ浜がサブレと俺の存在を思い出し、一色の「何でこの犬先輩にこんなに懐いてるんですかねー」と言う何でもない一言によって、入学式の事故のことを説明していた。別に隠すような事でもなければ、一色も奉仕部の仮部員。こいつにだけ話さないと言うのも些かおかしいだろう。
「もしかして雪ノ下先輩が犬苦手なのってそれが原因?」
「え、ゆきのん犬苦手なの⁉︎」
「ちょっとだけ、ほんのちょっとだけよ。別に嫌いという訳ではないのよ」
いやいやいや、どの口が言いやがりますかね。さっきもサブレから逃げようと俺を盾にしてくれてたじゃないですか。
「それに、その事故が原因という訳ではないわ。小さい頃から仔犬がほんのちょっとだけ苦手なのよ」
雪ノ下のその言葉を聞いて、由比ヶ浜がホッと胸をなでおろす。優しい由比ヶ浜の事だ。事故が原因で犬が嫌いになったなんて聞いたら逆に負い目を感じてしまうだろう。
「て言うか、由比ヶ浜は何しに来てたんだよ」
「あ、そうだった!今日サブレの散髪に来てたんだった!」
確かトリミング、と言うやつだったろうか。猫エリアに来る途中に犬のトリミングをしている場所があったはずだ。それが目的で来ていたはずなのに雪ノ下と一色と会った瞬間に頭から吹っ飛ぶとか、流石アホの子。サブレもこんなのが飼い主で大変だろう。
「じゃね三人とも!また学校で!」
「おう」
「ええ、また学校で」
「さよならです〜」
サブレを抱えて由比ヶ浜は犬エリアの方へとダッシュで引き返していった。こうして見てると由比ヶ浜は犬っぽいな。
雪ノ下には猫耳、由比ヶ浜には犬耳......。
ありだな。
「さて、二人とも、この後時間はあるかしら?」
由比ヶ浜を見送った雪ノ下が唐突に口を開いた。突然どうしたのだろうかと一色と目を見合わせる。
「俺は別に大丈夫だけど」
ここで帰ったら小町になんて言われるかわからんし。
一色は手帳を開いてこの後の予定を確認してるようだ。いや、今日の予定とか頭の中に叩き込んどけよ。
「6月18日、何の日か知ってる?」
「なんかあんのか?」
「誰かの誕生日とかですか?あ、結衣先輩とか?」
「当たりよ一色さん。6月18日、つまりは週明けの月曜日なのだけれど、由比ヶ浜さんの誕生日なの。だからこれからプレゼントを買いに行こうと思うのだけれど、どうかしら?」
「明日じゃダメですかね?わたし夕方から予定があるので昼過ぎには家に帰らないとなんですよ」
「明日はダメね」
「またなんで」
「ダメなものはダメよ」
随分と頑なだな。
しかし一色が来ないとなると困ることがある。果たして俺と雪ノ下にまともなプレゼントを選べるかどうか。
自分で言うのもなんだが、俺は一般的な高校生とだいぶ感覚がズレている。更に小町以外の誕生日を祝ったことなんて無い。それは雪ノ下も同様だろう。悲しいけど俺、ぼっちなのよね。
「わたしは明日いい感じのを見繕っておきますので、お二人で行って来てください」
「一色が来れないとなると、小町でも呼ぶか?」
「いやいや先輩、それはちょっと無いですよ」
「なんでだよ俺たち二人でプレゼント選んだらまともなもんやれないぞ」
「まぁ、先輩に分かれってほうが無理な話ですか......」
やれやれと言った風に小馬鹿にして来る。何様だよ。
「それじゃ、わたしはそろそろ帰るので、お二人で楽しんで来てくださいね!」
最後にそう言い残し、一色は呼び止める暇も与えずにこの場を去っていった。てか早い。走るの早いよいろはす。周りの人にぶつかっちゃったら危ないでしょうが。
「はぁ、んじゃ行くか?」
「ええ。ついでだし何処かでお昼も食べましょうか」
「そうだな」
ん?んん?これって良く考えなくてももしかしてデート?ワンニャンショーに一緒に行って、一緒にお昼食べて、一緒にお買い物ってこれどう考えてもデートじゃね?
「どうしたの比企谷くん?早く行くわよ」
「お、おう......」
比企谷八幡16歳、人生初の好きな女の子とのデートです。
マジでどうなる俺。