カワルミライ   作:れーるがん

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カワルミライ更新再開! 渋の方はまだ生徒会選挙編終わってないんですけど、まあそろそろ終わるので早めにね


8
彼女も、その胸になにかを秘めている。


 修学旅行が過ぎると、秋は深まるどころか冬の気配がチラついていた。寝起きの朝は中々布団から出ることが出来ないし、比企谷家のリビングには既にコタツが出ている。

 今日も今日とて寒さに身を震わせてリビングに降りると、キッチンで小町が朝食の準備をしているのが見えた。

 

「あ、おはよーお兄ちゃん」

「おう、おはよう小町」

 

 挨拶を交わしてさっさとこたつへ入る。

 こうして兄妹仲良く朝の挨拶を欠かさない辺り、やはり俺と小町の兄妹仲は超良好と言えるだろう。寧ろ良好過ぎてそろそろ妹ルート開拓しちゃいそうなまである。

 まあ開拓しちゃったら血を見ることになるのは明らかなのでしないけど。勿論俺の血。台所に立ってたらいきなり後ろからナイフでメッタ刺しとかやめて欲しい。いや、流石の俺もあそこまでクズではないけどね。キングオブクズの名を欲しいままにしている俺でもあれは真似出来ない。

 俺が朝っぱらから悲しみの向こうへと意識がフライアウェイしていると、キッチンから出来上がった朝食を持ってきた小町がゴミを見るような目で俺を見ていた。

 

「ちょっとお兄ちゃん、朝ご飯できたからこたつから出て」

「まあ落ち着け小町。時間はまだあるんだから、ほら、お前もこたつでゆっくりしていけよ」

「いいからさっさと出て」

「お、おう......」

 

 謎の剣幕に圧されて渋々こたつから出る。

 ふえぇ......。うちの妹が怖いよぉ......。

 のっそのっそとテーブルの方まで歩いて行き、椅子を引いて腰掛ける。寒い。

 向かいに小町が座ったのを確認して、二人揃って頂きます。

 

「ところでお兄ちゃん」

 

 どこからか取り出したのか、はたまた元から持っていたのか、小町はデジカメをテーブルの上に置き、尚もゴミを見るような目で俺に問いかけてくる。

 

「これ、どう言うつもり?」

「どうもこうも、お前が頼んだお土産だろ。修学旅行の思い出」

 

 そう、そのデジカメは何を隠そう俺が修学旅行に持って行き、死ぬほど雪乃を激写したデジカメだ。因みに写真の現像は既に終え、俺の部屋の奥底で大切に保管されている。

 しかしその解答では満足いかないのか、小町は立ち上がってウガーっと吠え出す。

 

「ちっがうんだよ!! 小町が求めてたのはこう言うのじゃないの! もっとこう、お兄ちゃんと雪乃さんがイチャイチャしてるような写真が欲しかったの!」

「別にいいじゃねぇかよ。ほら、この雪乃とか凄い可愛く撮れてるだろ?」

「どれどれ? おぉホントだ! この雪乃さん可愛い!」

 

 やはり小町は分かってくれるか。嵐山の紅葉を背景に撮影した雪乃は、本当に絵画か何かと見間違う程の美しさだ。しかも笑顔でカメラ目線なのが八幡的にポイント高い。

 

「......じゃなくて! って言うかお兄ちゃん、今なんて言った?」

「可愛く撮れてるだろ?」

「その前!」

「別にいいじゃねぇかよ」

「その後!」

「その間は別に何も言ってないんだけど」

 

 やだわ小町ちゃん受験勉強のストレスで幻聴が聞こえてるのかしら。

 なんて、そんな訳もなく。恐らく小町が言っているのは、俺の雪乃に対する呼び方だろう。

 

「いいいいつの間に雪乃さんの事名前で呼ぶことにしたの⁉︎」

「修学旅行中」

「なんで⁉︎ て言うかお兄ちゃん本当に小町のお兄ちゃん⁉︎ あのヘタレ王の比企谷八幡⁉︎」

「おい」

 

 なんだヘタレ王って。そんなんになった覚えないぞ。と言うか最近の俺はそこまでヘタレなわけではない。多分。

 

「まあ色々あったんだよ」

「色々ってなにさ!」

「気が向いたら話してやる。ほれ、はよ朝飯食え」

 

 適当に話を流して朝食に手をつける。うむ、今日も小町のご飯は美味しい。

 つーか、あんな恥ずかしいこと例え小町にでも話せるわけないんだよなぁ......。なんだよ、もう少し先に進みましょうって。そんなん言われたら色々と勘違いしちゃうに決まってるでしょうが。男子高校生舐めんな。

 

 

 

************

 

 

 

 

 今日も今日とて平常運転な奉仕部。

 由比ヶ浜がなんでもない話題を振り、雪乃が微笑みながらそれに答え、時として俺もそこに参戦する。強いて言うなら、ここにあざとい後輩がいないことくらいがいつもと違う点か。京都のお土産を持って来てやったので渡そうと思っていたのだが、一色は選挙のあれやこれやで忙しいと見た。

 紅茶の香りで満ちたこの部室は、しかし一度目のような空虚な空間とは全く違うものとなっていた。

 どうしても一度目と今回とを比べてしまうのは仕方のないことだろう。

 

「いろはちゃん、大丈夫かなぁ」

 

 そんな折に、由比ヶ浜がポツリと呟きを漏らした。ムムッと眉根を寄せ、この場にいない後輩の事を案じている。

 

「別に心配すること無いんじゃねぇの? あいつはあれで結構計算高いって言うか、やることはしっかり出来るやつだし」

「んー、でもさぁ......」

「なにか気掛かりな事でもあるのかしら?」

 

 確か、バレンタインイベントの時だったか。その時は生徒会が企画の立ち上げやらなんやらを全部やって、俺たちは当日の手伝いだけとなっていた。その時に俺と雪乃の二人と違い、由比ヶ浜は一色の事を心配してはいたものの、あいつを信頼して任せていた筈だ。

 その彼女がここまで憂慮するとは、何かがあったに違いない。

 

「いろはちゃん、推薦人がまだ集まってないって言ってたじゃん? 掲示板に貼られた候補者にいろはちゃんの名前が無かったからさ」

「まだ30人の推薦人が集まっていない、と?」

「かもしんない......」

 

 掲示板とか全く見てなかったから知らなかったが、そこに名前が挙がっていないのなら、正式に立候補出来ていないと言うことだろう。

 しかし、そうなるとおかしな事もある。一色いろはは間違いなく、この学校の殆どの生徒がその名前を覚えている筈だ。文化祭実行委員副委員長、体育祭運営委員委員長と、全生徒の代表とも呼べる仕事を二度もこなしている。更にあのルックスと養殖物の可愛らしさ。推薦人を集めるなんて、本来なら造作もないことだろう。

 

「大丈夫よ由比ヶ浜さん。そこの男の顔を見てみなさい。心配なんて微塵もしていないような顔をしているでしょう?」

「うわっ、ホントだ。ヒッキー流石にそれはないよ」

「心配してないなんて一言も言ってないだろうが......」

 

 なーんでこっちに飛び火して来ますかねぇ。流石の俺もそこまで白状じゃねぇっての。

 

「でも、本人に話を聞かない限りはなんとも言えんだろ。もしかしたら選挙管理委員の手違いって可能性もあるんだし」

「それもそうだけど......」

 

 俺の言葉ではまだ納得いかないのか、更に眉根を寄せる由比ヶ浜。

 多分、彼女なりになにかを察知しているのだろう。俺や雪ノ下のような輪の外にいる人間には分からない、トップカーストに所属しているからこそのなにかを。

 

「まあ、本当にヤバいんだったらここに来るだろうし、あんま心配し過ぎるのも考えものだと思うぞ」

「それもそうね。それに、気になるようであれば彼の言ったように本人に尋ねてみればどうかしら?」

「......うん。いろはちゃんにちょっとメールしてみるよ」

 

 雪乃の言葉に頷いて、由比ヶ浜は机に置いてあった携帯を手に取り操作する。言ったように、一色にメールで直接確認するのだろう。

 それを見て俺も文庫本に視線を落とそうとした時、部室の扉が叩かれた。それによって由比ヶ浜の手も止まる。

 どうぞ、と言う雪乃の声に促されて扉が開き入って来たのは、ちょっと意外な人物。

 

「失礼しまーす」

「あれ、さがみん?」

 

 相模南。文化祭やら体育祭やらでなにかと関わりをもったクラスメイト。

 

「やっほー結衣ちゃん。雪ノ下さんは久しぶり」

「こんにちは。取り敢えず掛けて頂戴」

 

 俺には挨拶なしですかそうですか。まあいいんだけども。

 雪乃に視線で椅子を出せと命令されたので、後ろに積み上がっている椅子から一つ引っこ抜いて長机の対面に置いてやる。

 ありがと、と短い礼を言い、相模はそこに腰かけた。

 

「今日はどう言った用件かしら?」

「なんか依頼?」

「うーん、依頼ってわけじゃないし、これうちが言っていいのかどうか悩んだんだけどさ......」

 

 相模はポケットから携帯を取り出し、なにやら操作すると、画面をこちらに見せて来た。

 そこに表示されているのは、『総武高校裏サイト』と題されたサイト。

 雪乃も由比ヶ浜も目を合わせてハテナと首を傾げている。

 俺も似たようなもんだが、そもそも裏サイトなんて言うものがこの学校に存在したこと自体に驚きだ。

 

「お前、こんなん見てんのか......」

「べ、別にいいでしょ。友達に言われてちょっと覗いただけだし。うちはなんも書き込みなんてしてない」

 

 いや、別にお前が書き込みしてるとか疑ってないし。

 

「この裏サイトがどうかしたのかしら?」

「このサイトの、ここのページなんだけどね」

 

 再び一つ二つ操作すると、出て来たそのページに思わず言葉を失った。

 他の二人も同じようで、目を見開いて驚いている。

 そこに書かれていたのは、一色いろはに関する誹謗中傷の嵐。その内容は多岐に渡るため省略するが、そのどれもが根も葉もないものばかりだった。

 

「たまたまゆっこと遥が見つけたらしくてさ。結衣ちゃんはこう言うの見なさそうだし、雪ノ下さんと比企谷はそもそも存在自体知らなさそうだし。一応報告しておこうと思ったんだけど」

 

 そう言う相模の表情は沈んでいる。一色ともそれなりの関係を築いていた彼女からすれば、こう言うものを見ていていい気分にはならないだろう。

 実際、俺も怒りでどうにかなりそうだ。

 

「これは、酷いね......」

「ええ......」

 

 返すべき言葉が見つからないのか、二人は苦虫を噛み潰したような表情でポツリと呟くばかり。

 

「これ、一色本人は知ってんのか?」

「どうだろう......。うちが見つけたのもついさっきだし......。これ、どうにかなんないかな? 一色ちゃん、生徒会長に立候補するんでしょ?」

「これが原因で推薦人が集まらないってことかな......?」

「それもあり得るだろうが......」

 

 いや、推薦人を集めるだけならこのサイトはそこまで問題視されない。現在のめぐり先輩率いる現生徒会、俺たち奉仕部や、葉山グループにサッカー部などなど、30人集めるだけなら簡単に出来る。

 ならどうしてか。考えられるのは二通り。このサイトが俺の予想よりも影響を及ぼしているのか、それとも。

 

「ヒッキー?」

「なにか、思いついたのかしら?」

 

 二人の声によって思考の海から抜け出す。

 その声に首を横に振るだけで答える。まだ考えが纏まったわけでもないし、この場で話すわけにもいかない。それに、出来ればあまり信じたくない可能性ではある。

 

「それで、相模の依頼はそれをどうにかしてほしいってか?」

「だから、別にうちは依頼に来たわけじゃないんだって。一応三人に報告しておこうと思っただけ。でも、どうにかしたいとは思ってる。体育祭の時だけで恩を返せたとは思ってないし、可愛い後輩がこんなこと言われてるのはムカつくからさ」

 

 そう言った相模は、どうやら本気で怒っているらしかった。一度目の屋上で見たあの表情に似た何かを感じる。

 また相模南と言う人間の知らない一面を知ってしまったが、今はどうでもいいことだ。

 

「取り敢えず、教えてくれて感謝するわ」

「ありがとねさがみん」

「うん。うちもなんか分かったらまた連絡するね」

 

 最後にそう言って相模は部室を出て行った。

 あいつがこのことを教えてくれたのは正直助かった。相模の言う通り、俺たち三人では裏サイトなんてもんに辿り着くまで時間が掛かっただろう。彼女の行った通り、俺と雪乃はその存在を知らないままだったろうし、由比ヶ浜に至っては葉山や三浦がその手のものを完全にシャットアウトしてそうだ。

 

「それで、あなたは何を思いついたのかしら?」

「あ?」

 

 突然声を掛けられてそちらを見遣ると、雪乃は紅茶のお代わりを準備し、由比ヶ浜はウンウンと頷いている。

 

「さっきのヒッキー、またなにか思いついたって顔してたよ?」

「どうせ碌でもないことなのでしょうけれど」

「おい、俺が碌でもないことしか考えないみたいな言い方は止めろ」

「......ふっ」

 

 一笑に付しやがったぞこいつ。まあいい。残念ながら否定出来る要素がないのも事実だし。

 

「それで、どうなのかしら?」

「......はぁ。思いついたって言うか、ちょっと疑問に思う点があるだけだ」

「疑問って?」

「裏サイトで書き込まれてるからって、別に推薦人を集められないわけじゃないだろ」

 

 一色いろはにはサッカー部、延いては葉山隼人と言う大きなバックがいる。そこを利用すれば30人程度集められないわけがない。

 

「と言うことは、何か別の原因があると言うことかしら?」

「分からん。それこそ本人に聞きでもしない限りはな」

「......あっ、いろはちゃんからメール返って来たよ」

 

 どうやら相模が来る前にメールは送り終えていたらしい。相変わらず文字打つの早いことで。メールする時だけトランザムしてるのかな?

 

「別に大丈夫です、だって......」

 

 読み上げた由比ヶ浜の顔は浮かないものだ。彼女もその文面をそのままに捉えたわけではないのだろう。

 大丈夫と言うやつほど大丈夫じゃないやつはいない。ソースはうちの親父。仕事の電話してる時に大丈夫です! なんとか間に合わせます! って言った後に電話切ってから大丈夫なわけねぇだろ! って叫んでるのを稀によく見る。

 それとはまた少し違うとは思うが、一色のその言葉をそのまま受け取るものはこの場に一人としていなかった。

 

「なんとかしなければならないわね」

 

 向かいに座る雪乃は、静かに怒りを燃やしながら言葉を漏らした。

 彼女は知ってるんだ。人の悪意なんて理不尽極まりないものに、誰かの意思がへし折られることを。他の誰よりも知っている。

 そして、雪ノ下雪乃と言う人間はそれを良しとしない。

 

「まずは情報の収集、あの裏サイトの書き込みが一度目の時にも存在していたのかどうかも調べておかないとダメね。後は一色さん本人にも話を聞くとして」

「まあ待て。一旦落ち着けよ」

 

 だが、彼女一人に突っ走らせるわけにもいかない。

 ジロリとこちらを睨め付ける雪乃の視線。正直怖いが、逸らすわけにもいかない。

 

「お前が怒ってるのは分かった。けど、あんまり焦っても仕方ないだろ。お前の言った通り、まずは一色本人から直接話を聞いてからだ。俺たちはそう言う部活だろ」

 

 奉仕部は一色本人から依頼を受けたわけではない。本当に一色のやつは大丈夫で、実はさっき言ったみたいに選管の手違いかもしれない。

 なにはともあれ、俺たちが現状出来ることなんて限りなく無いに等しいのだ。

 

「......そうね。ごめんなさい、少し気が立っていたみたい」

「じゃあ、明日いろはちゃんに部室に来てもらう?」

「それが良いかもな」

 

 取り敢えず明日、一色から話を聞くことだけを決めて今日の部活はお開きとなった。

 また厄介なことに巻き込まれないことを祈るばかりだが、まあ、そうもいかないんだろうなぁ......。

 

 

 

************

 

 

 

 由比ヶ浜さんと校門前で別れ、彼と並んで帰路につく。

 今日は少し、いえ、かなり腹の立つ出来事があった。教えてくれた相模さんには感謝している。

 彼女が、一色さんが一年の中でも特異な存在であることは分かっていたつもりだ。そして、そう言った存在だからこそ多くの悪意に晒されることも。

 それともう一つ別件で。今の私は非常に腹が立っている。勿論現在進行形で。

 

「ねえ八幡」

「......なんでございましょう」

「あなた、今日一度も私のことを名前で呼ばなかったわよね?」

「んぐっ......」

 

 そう、この男は今日一日、一緒に登校する時から今の今まで、私のことを一度たりとも名前で呼ばなかったのだ。

 おい、とかお前、とか、指示語や二人称を使ってばかり。折角修学旅行で勇気を出したと言うのに、明けて学校の日になるとこの有様。思わず頭が痛くなる。

 

「それとも、頭の悪いあなたは私の名前を忘れてしまったのかしら?」

「......お前だって」

「なにか?」

「お前だって、今日俺の名前呼んだの、今が初めてだろ......」

 

 なにを言っているのか。そんな馬鹿なことがあるはず......、いえ、言われてみればそんな気がしないでもないような......。

 思わず彼から目を逸らしてしまった。

 

「おい」

「違うのよ」

 

 そう、これは違うの。彼の名前を呼ぶ機会、はあったわね。そうではなくて、相模さんがやって来てそれどころでは、いえ、お昼休みもあったし......。

 え、と言うか、私、本当に彼の名前を呼んでいない?

 

「その、なんと言うか、改めて考えるとあなたを呼ぶ時って名前で呼ばないじゃない?」

「それを言うと俺もだろ。雪乃のことを呼ぶ時、大概名前で呼ばないぞ」

 

 それって、恋人同士としてどうなのかしら?

 いえ、今はそこを論ずるべきでは無いわね。と言うか、今更だし。

 

「それよりも、今は一色の件だろ」

 

 むっ、話を逸らしたわね。

 けれど彼の言う通り、今はそれよりも大事なことがある。私達の大切な後輩について。

 

「明日、本人に直接話を聞くって言っても、多分あいつはなにも言わないと思うぞ」

「でしょうね」

 

 それは分かりきったことでもある。そもそも一色さんに話すつもりがあるのなら、由比ヶ浜さんにあんなメールは送らないだろうし、早々に奉仕部へと泣きついて来ていることだろう。

 それに、恐らくではあるが、一色さんの今の現状、つまりは生徒会長への正式な立候補が出来ていないこの状況に、私は一つだけ見当をつけている。

 ともすれば、一色さんに対して非常に失礼な考えかもしれないが。

 

「今回は、あなたの出番は少なそうね」

「は?」

「多分、八幡がなにかしなくても解決する問題よ」

 

 もしも、もしも私の推測が当たっていたのだとしたら。

 あの裏サイトの書き込みは全くの別問題かもしれない。いや、もしかしたらそれも原因の一つであるのかもしれないけれど。でも、根本はもっと別にある。

 

「それはそうと、明日からは学校でもちゃんと呼んでくれるのよね?」

「......まあ、努力はする」

「そう。なら、楽しみにしてるわ」

 

 まさか、一色さん本人が、生徒会長になることを望んでいないだなんて。

 そんなこと、思いたくはない。

 

 

 


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