機動戦士ガンダムSEED DESTINY(エクステンデッドハッピーエンド) 作:筆先文十郎
こんな世界があってもいいじゃないか、という筆先文十郎の妄想です。
楽しんでいただければ幸いです。
俺の名前はスティング・オークレー。粋でクールな元エクステンデッド(強化人間)だ。今日はこの飲み屋で、かつての親友二人と会う約束をしている。
俺たちは昔の戦争で、ザフトのトップであるギルバート・デュランダルの捕縛という大手柄を立てた。
これによりブルーコスモスの新盟主にしてコーディネイター殲滅計画を推進するロード・ジブリールによってコーディネイターの大虐殺が始まるかと思われたが、何を思ったのかジブリールは突然『憎しみで憎しみは消えない。愛によって憎しみは消えるのだ』と言って各プラントの支配とザフト軍の解体をしたもののコーディネイターの虐殺は行わなかった。
こうして長きに渡るナチュラル対コーディネイター、地球連合軍対ザフトはナチュラルと地球連合軍の勝利で終わった。だがそれは俺達“戦うことが存在意義”のエクステンデットの終わりを意味した。
幸いなことに愛に目覚めたジブリールによって俺達は処分されることなく普通の人間に戻れるように治療することが出来た。
時間はかかったものの、2年後には普通の人間として生活できるくらいになっていた。
あの大戦から4年。俺は『好きな人が見つかったから軍辞めるわ』と言ってオーブに行ったネオに代わってファントム・ペインを率いている。ただし今のファントム・ペインはブルーコスモスの私兵集団ではなく、高度な任務を専門とする地球連合軍の特殊部隊的な意味合いになっており、兵士達の中では憧れの存在になっている。
ネオと同じく普通の身体を取り戻したアウルもステラも軍を辞めてしまった。
二人もネオと同じく自分の道を見つけ、一人の人間として人生を楽しんでいる。
『面倒を見てやらないと仕方がない』と思っていた二人が自分の足で自分の人生を歩んでいる。それは嬉しいことなのだが反面、“あいつらの面倒をみてあげられないのか”という寂しさが残る。
それでも俺達の関係は変わらない。俺達が別々の道を歩もうともお前らは俺の親友だと。
コンコン
「スティング・オークレー様。お待ちのアウル・ニーダ様がいらっしゃいました」
「ああ、こっちに呼んでくれ」
「スティング、久しぶりだな!」
「あぁ、アウル。久しぶり」
俺は部屋に入ってきた小柄な男を出迎えた。
普通の人間に戻ったアウルはその後バスケットプレーヤーとして活躍している。その活躍はバスケ好きの部下達が『おい、今日のアウルの活躍見たかよ!』とアウルの活躍に一喜一憂するほどだ。
一説によるとプロのバスケットプレーヤーの平均身長は190.4cmと言われている。170cmを超えるくらいしかないアウルは背の高いプレイヤーと比べると子どもにしか見えない。しかし彼らにはない高い運動能力とテクニックを活かしたスピードプレイでチームに欠かすことの出来ない存在になっている。
甘いマスクと卓越した技術とスピード。とある専門家によると『アウルのおかげでバスケットボール業界に女性ファンが10%増えた』という。
そんな男と同じ時間を過ごせたことに、俺は顔には出さなかったが心の中で笑みをこぼした。
「っていうかアウル。お前有名人だろ?サングラスするなりカツラ被るなりもう少しバレないように配慮しろよ」
「何言ってんだよ。こういうのは堂々としていた方が逆にバレないもんだって」
「そんなもんか」
そんなことを言いながら、俺たちは席に座る。
「そういえばステラは?」
「いや。まだ来ていない。ちょっと子どもがぐずって遅れるとは連絡があったんだが」
そう。普通の人間に戻ったステラは結婚し、今では一児の母になっている。旦那はディオキアでステラを救ったコーディネイターだ。
コンコン
「スティング・オークレー様。お待ちのステラ・アスカ様がいらっしゃいました」
「わかった。通してくれ」
「久しぶり!スティング、アウル!!」
「「よっ、久しぶりだな」」
俺達二人は部屋に入ってきた金髪の少女のような女性に挨拶する。
結婚し、苗字をアスカに変えたステラ。旦那がプラントに住んでるのでステラもプラントに住んでいる。プラントは最低限の自衛の軍事力を除き解散させられ、地球連合軍の支配下に置かれたものの自治権はそのままなので不満はそこまで生じていない。
その姿はあの頃の少女の面影を残しつつも、少し力を加えれば折れてしまいそうなか弱さはなかった。
自分を『守る』と言ってくれたコーディネイターと結婚し、母親になって戦場とは違う苦労をたくさん味わったからか。そんなガラにもないことを思う。
こうして再会した俺たちは自分達が何をしているか、これから何をしていこうかという将来のことを語った。
楽しい時間はあっという間に終わりそろそろ帰ろうかとした時、アウルが俺に尋ねてきた。
「そういえば聞きそびれたんだけど、スティング。お前何で軍に残ったんだ?」
俺は二人から視線を少し逸らしてから、言った。
「バカ。……俺まで普通になったら、誰がお前らを守るんだよ」
まるで好きな女に告白するような恥ずかしさだった。
実際地球連合軍の支配に不満を持つ者や、今まで敵として戦っていたコーディネイター達と共存しようとする今の地球連合軍のやり方に不満を持つ者は大勢いる。その未だに戦いの終わりが見えない状況が、俺に軍を抜けるのを思い留めた。
アウルは「そうなんだ~」とふふっ、と笑い
ステラは「そうなんだ~」と素直に感心したように呟いた。
ものすごい恥ずかしい思いをした俺だったが、不思議と後悔はなかった。
またこいつらの顔が見たい。
そう思えてならなかった。