機動戦士ガンダムSEED DESTINY(エクステンデッドハッピーエンド)   作:筆先文十郎

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永久の自由な世界へ

 C.E.73年10月2日にアーモリーワンで発生したカオス、アビス、ガイアのセカンドステージシリーズと言われるガンダムが、地球連合軍に所属するファントムペインによって強奪された事件をきっかけに、世界は再び憎しみと怒りの怨嗟によって血で血を洗う大戦へと突入した。

 この戦いは『憎しみで憎しみは消えない。愛によって憎しみは消えるのだ』と真実の愛に目覚め、コーディネーターへの憎しみを超越したロード・ジブリールが率いる地球連合軍に軍配が上がった。

 その後は各地で紛争などはあったものの、各々の戦争を回避による努力によって大規模な戦争へと発展することはなかった。

 そして時は経ちC.E.150年。かつての英雄たちは後進に譲り、またその後進も次の世代に譲った。あの時の大戦を体験した者は一握りとなっていた。

「水の……証を……。ハァ、ハァ……」

 かつて『平和の歌姫』と呼ばれた指導者、ラクス・クラインは全自動の車椅子に乗って空を見ながら歌を歌っていた。

 かつては多くの者を魅了してきたその声も、今では長くは出せないほど喉が弱りきっていた。それでも自分の声でまだ歌が歌えることにラクスは感謝していた。そんな時だった。

「ねえねぇ、おばあちゃん!」

 カガリによく似た、青い色の髪をした曾孫(ひまご)の女の子がラクスに呼びかける。

「あら、どうしたのかしら?」

ラクスは優しく曾孫に尋ねる。「あのね、あのね」と悲しそうな表情で女の子は説明する。

「私ね、昨日おじいちゃんと一緒に遊ぶ約束したの。でも何度呼んでもおじいちゃん起きてくれないの。 おじいちゃん、どうしたんだろう?」

「……!?」

 ラクスは慌てて車椅子のボタンを操作して縁側へ移動する。

「キラ!」

 ラクスは縁側に置かれたベッドで眠るキラに語りかける。誰かの助けなしでは歩くことができなくなるほど足腰が弱くなったキラにとって、天気のいい日に縁側に置かれたベッドで休むのが数少ない楽しみの一つになっていた。

「キラ!」

 ラクスはもう一度呼びかける。

 返事はない。ラクスはそっと愛する夫の鼻の付近にシワだらけの手を近づける。普通ならば感じるはずの呼吸の感触はなかった。

 ラクスは改めてキラの顔を見る。

 笑みを浮かべた穏やかな顔だった。

「キラ」

 ラクスを一筋の涙を浮かべながら言った。

「あなたは十分……生きられましたね。大切なものを守るために……戦って来られましたね」

 愛する夫の頬に優しく触れながら、ラクスは言った。

「……おやすみなさい、キラ」

 

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