剣統べる魔王の物語   作:征嵐

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 勘違いされてもアレなので予め。

 主は脚派の人間です。


第15話

 唐突なのだが、おっぱいというのは女性の包容力を語る上でとても重要だと、僕は思う。確かに、おっぱいだけで包容力を語るのは無粋というものだが、だが確実に、おっぱい無しには語れないと、そう思う。何が言いたいのかと言うと、だ。

 

 僕の連れている魔剣たちが貧乳ばかりなせいで、一部ギルド職員および魔剣使いから「あいつ貧乳好きなんだってさ。」「ロリコンって聞いたぞ?」「いやいや、既に手を出したらしいからなぁ···ロリコンの風上にも置けぬやつよ。」と言われる──という夢を見た。人を何人となく殺した日の夢がコレというのも可笑しな話だが。

 

 まぁ、そういう訳で。

 

 「新しい魔剣を造ろうと思います。」

 「はい、異議ありよ、マスター。」

 「速くないですかグラムさんや···なに?」

 「私たちをろくに強化しないうちから新しい魔剣を迎えても、もて余すだけじゃないかしら?」

 

 ···え? マリーさんに強化されたんじゃないの?

 

 「えぇ、そうね。レベルは1から2に、熟度も1から2になったわ。でもね、マスター!」

 「誤差ですよねー。」

 「···。」

 

 ぎんいろが無言で頷く。オルタに至っては強化すらされて無かったな、そう言えば···。

 

 「仰る通りで···仕方ない。まずは皆の強化から始めよう。」

 

 超強化の鍵とルビーは、リディが貰ってきたチップの中にあったし···もちもリディに預けてるから、とりあえず酒場に行こうか。

 

 

 ──で、だ。

 

 「ちょっと、マスター。どういうつもりかしら?」

 「私達が強化されてる隙にー、どこから拾ってきたんですかー? もといた所に返してきてくださいねー?」

 「す、捨て猫扱い?」

 「主様、魔剣に対する躾がなっていませんよ?」

 「まぁまぁみんな落ち着いてー。」

 「そ、そうだよ。落ち着いて。」

 

 新参の三人と古参の二人が準戦争状態だった。

 

 「強化されている間に、妙に熟度が上がったと思ったら···何回回したの?」

 「に···回···。」

 「マスターさーん。声が小さいですよー。もっと大きな声でー、自分の愚行を知らしめてくださいよー。」

 「二十回、です···。」

 

 20回分の石をぶちこんでぐーるぐるしたのに三人しか出ないっていうのは可笑しいが、ブキダスさんは、どういう訳か既所持魔剣の熟度を上げてくれる場合もある。鍵が浮いてラッキーと言うべきか、魔剣が造れなくてアンラッキーなのか。ただ、さぁ。"二十回回して" "新規が三人" "SランクかSSランクの熟度が上昇" っていうのは、流石にレアケース過ぎないか?

 

 「それで? そっちの魔剣擬きたちの紹介はしてくれないのかしら?」

 「あ、うん。えっと、赤い髪の子がレヴァンテイン、黒髪の子が雪月花、水色の髪の子がお母さん···じゃ、なかった、カラドボルグ。」

 「良かったですねーマスターさん。胸の大きな子ばかりでー。」

 

 底冷えのする声が聞こえ、首を軋ませながらジャガーノートを見る。満面の笑みを浮かべたジャガーノートと目が合い──

 

 「マスターさん。今日は1日訓練にしましょうか。最近やっていませんでしたし。」

 

 もはや心地よい棒読み──ではなく、心底楽しそうに言われた。当然、そんな異常事態に遭遇した人間の取る行動と言えば。

 

 「じゃ、リディ。三人をできるだけ強化しておいて。僕は──逃げるッッ!!」

 

 ──逃走だ。

 

 「待って待ってお願いします待ってください!!」

 「侍ってください?」

 「どんな耳してるの!? その斧を下ろしてくれって──えぇ?」

 

 ジャガーノートの攻撃が前より鋭い!? 大気を裂いて、ついでに僕の首も切り裂こうとしていた斧を上体を反らして回避──だと、股間を思いっきり蹴られるから、伏せてからジャガーノート側に跳躍して間合いを詰める。さて、問題は。間合いを詰めたは良いが、武器がないことだ。パンチ? キック? 論外だ。打撃なんて──いや、待てよ? そう言えば絞め技は試したことが無かったな。

 

 「どうだ、ジャガーノート! 僕だって──えっ。」

 

 背後から首を絞め、自分の腕で相手の腕を絡めて完全に拘束し、ちょっとドヤ顔を決めた。までは、想定通り。問題は、ジャガーノートが、まるで僕の拘束が存在しないかのように腕を戻したことだ。当然、僕はそのまま腕を引かれ──気付けば地面に転がっていた。

 

 「流石にチートすぎない?」

 「そうです、ねっ!!」

 

 ゾンッッ!! と、顔の横に戦斧の刃が突き立った。

 

 「ヒィッ!?」

 「マスターさん。貴方は、そのチート存在を既に小隊規模で従えているんです。その戦術価値は、貴方を誘拐してでも欲しいもの。だから──私達から、離れないでください。」

 

 ──え?

 

 「勝手に魔剣を造ったことに怒ってたんじゃないの?」

 「はぁ···救えませんねー。救いようもありませんねー。」

 

 そう言って、ジャガーノートはすたすたと去ってしまう。──おい、僕を一人にしないでくれよ。さっき自分で言ってたのに···と、思ったが、僕は一人になった訳ではなかった。背後から袖を引かれ、その相手に検討を付けながら振り向く。

 

 「ぎんいろ。どうしたの?」

 「マスター。···どうして分かったの?」

 

 そりゃまあ、呼び掛ける前に手を引くのはぎんいろくらいだし。

 

 「···そう。···マスター。私達は、貴方の武器。だから、貴方を守るし、貴方の敵は殲滅する。貴方が私達の負担を減らそうとして新しく魔剣を造ったのは分かる···でも、勝手にどこかに行かれるのは、困る。」

 

 淡々と怒られ、萎縮する。今回のことは確かに全面的に僕が悪いのだけれど···そこまで言わなくても良いじゃないか!!

 

 なんて、子供っぽく反論する気も失せるほどに、ぎんいろの表情も、声色も、真剣だった。

 

 「まぁ、本気で危なかったら『剣の領域』を介して僕の所に来られるでしょ?」

 

 これぐらいの反論は許してほしい。

 

 「···。」

 

 ぎんいろは頷くと、そのまま酒場に戻って行った。この流れだとグラムにも怒られるなぁ···と、そんな事を思っていたのだが···甘かった。

 

 「ねぇ、グラム?」

 「···。」

 

 怒ってますねぇ···超絶怒ってますねぇ···。目線も合わせてくれない。『剣の領域』に引きこもらないだけマシなのかな···。

 

 「···。」

 

 振った話題を悉く無視され、口が小文字のオメガになるレベルでしょげていると、間の悪いことに緊急召集がかかった。正確に言えば、モモさんが酒場に駆け込んで来た、のだが、表情の険しさと持っている書類を見れば検討はつく。

 

 「擬きくん。申し訳ないんだけど、お仕事なの。」

 「···大丈夫ですよ。内容を教えてください。」

 

 まだ新参の貴方に回るような任務じゃないんだけど、他の魔剣使いが軒並み任務で──と、前置きをしてから見せられた書類には、こう書いてあった。

 

 『暴走中の魔剣『マビノギオン』を討伐せよ』と。

 

 




 こいつを狩って熟度を上げろ っマビノギオン
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