(数分後) あれ? 今回のイベント面倒じゃね?
(数分後) あ、しかも今ガチャ引いたらクリスマスまでに77個貯まらないじゃん。ぅゎ正月もあるし石足りねぇ。
(数分後) 我慢できねぇ! 記憶結晶だけでも回すぜ!
その眠りは浅く、とても永久の眠りになんて就けそうに無かった。
「あ···ぐうっ!?」
撃ち抜かれた背中から右胸にかけての傷が灼け、その痛みで跳ね起きる。右手を握りしめて痛みに耐え、必死に現状を頭に叩き込む。狙撃され、地面に横臥した僕は、空を見上げて倒れ伏している。今にも役割を放棄しそうな脳と違って、心臓は忙しく働いていた。鼓動がどんどん速く、強くなっていき、心筋だけで肋骨を砕けそうな程の力を持つ。だが、それだけの鼓動を刻んで尚、右胸の傷からは一滴の血も流れていなかった。
「な···んだ···これ···。」
そこからは、赤い血液に代わって、蒼い炎が吹き出していた。煌々と燃え盛るその焔はしかし、全く熱を放っていなかった。いや、熱を持っていないからといって、凍てつくような冷気を放つ訳でもない。適温と言うのが相応しいのか、或いは、現実にはそこには炎なんてないのか。
「ごめんなさい、マスター···。」
「グラム···?」
僕が握りしめていた右手の中にあったのは、グラムの綺麗な左手だった。慌てて握力を弛めようとするが、右胸の痛みがそれを許さない。
「ごめ···痛いよね···?」
弱々しくしか笑えない表情筋が憎い。どうしてこう僕の体は僕に反逆するのか。
「···。」
狙撃者の掃討が済んだのか、こちらに歩いてきたロルリアンレットが立ったまま僕を覗き込む。歪で、現実に沿わない何かを見たように彼女は顔を歪めると、そのまま僕の視界の外に出てしまった。
「マスター···。ごめんなさい···。」
僕の右手を握り返したグラムの力は、とても弱く感じた。
「何が···?」
徐々に引いてきた痛みに安堵し、強張っていた体から力を抜く。胸の炎も、呼応するかのように小さくなっていく。まるで、命の蝋燭の残りが僅かであると告げるように。
「私が···貴方の手を握ってなんていなければ···。」
俯いたまま、グラムは訥々と語りだした。狙撃された時点で、その攻撃には気付いていたこと。迎撃は容易い、単純な攻撃だったこと。ただ、障害として、僕の手を握っていたこと。
超音速の物体を迎撃するなら、こちらも相応のスピードが必要になる。グラム単身ならば簡単だが、僕の手を握ったままなら僕が爆ぜるし、手を振り解いても、肩から先が無くなるのは避けられない。そんな次元の話をされても実感は湧かないし、それに。
「別に、
恐らくは、話の途中で遂に消えてしまった蒼い炎が関係しているのだろうが、僕の傷は初めからなかったかのように消え去っていた。
「え···?」
「おい、魔剣使い擬き。」
驚きの声を上げたグラムに被せるように、ロルリアンレットからお呼びがかかる。
「ん、待って···。」
立ち上がってみても、別に何の後遺症もないように思える。口の中に広がる芳醇な──いや、別に芳醇ではないが──血の味から考えるに、傷は
「はい、お待た···」
「お前はああ言っていたがな、こうして『
まぁそうだよね···。ロルリアンレットの影響力はけっこう馬鹿にできないみたいだし、僕よりも魔剣に詳しそうだし、一緒にいるべきだろう。ふと距離を詰めるように寄り添ってきたグラムの体温にどきどきしながら、上ずりそうな声を抑えて言う。
「そうだね。うん。お世話になります。」
「決まりだな。なら、勇者の本隊が来る前に行くとしよう。『記録投影:シャドウゲイト』」
彼女の持つ赤い魔導書が輝き、空間を裂いた闇の門に引きずり込まれる。初めて経験する転移は、思っていた以上に普通だった。視界を制限されて数歩分の距離を跳躍するのに近い動作。それだけで、視界は全く別のものに変わっていた。
「···うゎぁ。」
小声で漏らした感嘆が聞こえたのか、口角を上げたロルリアンレットが近付いてくる。
「ここが世界図書館。ようこそ、魔剣使い擬き。ロルリアンレット世界図書館へ。」
「···。」
絶句。僕の身長を何十倍したかも分からない書棚に圧倒され、そこに収まる膨大な数の知識に震えた──訳ではない。ただ、「図書館に自分の名前を付けたの?」という言葉を飲み込んだだけだ。
「言葉も出ないか? まぁ、無理もない。」
「···。」
「だが、慣れろ。今日からここがお前の家であり、学舎であり、職場なのだからな。」
「···はい?」
はい? ──いやいや、モノローグでセリフを繰り返してどうする。落ち着いて現状を確認···するまでもなく、単純で明快で、その上常識的なことを、ロルリアンレットは言った。
「ただで寝床や飯を用意して貰えると思ったのか? 働かざる者食うべからず、だ。食費と宿泊費は給金から差し引くぞ? 依存はないな?」
「え、いや、その、えっと。」
やたらと現実的な事を言われたが、依存はない。どころか、かなりの厚待遇なようで期待以上。あのままだったら勇者たちにフルボッコにされていたであろう事を思えば、これ以上ない扱いとも言える。
「大丈夫。ありがとう。」
上司か大家か教師か。それは分からないがとにかく上位なのであろう相手だが、幼い見た目のせいで、どうしてもそれ相応の言葉遣いになってしまう。
その事について謝罪してみれば、彼女は気を悪くした風もなく、きょとんとした顔でこう言った。
「大家と上司は正しいが···魔剣の扱いについて教えるのは私じゃないぞ?」
「え?」
どういうことか。と、問い詰めようとすると、本棚の影から一人の女性が出てきた。
「私が、貴方の教育を務めさせていただきます。」
奥の見えない微笑を浮かべたその女性は、メイドだった。どこをどう見ても、美人で巨乳のメイドさんだった。
(結果) 無事爆死