東方想幻華 (一時連載休止)   作:かくてる

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今回で奏さん最後です!



ありがとうございました!


区切りのいい100話目。
咲夜さんの最後のstoryでございます。


afterstory 十六夜の夜

 奏さんのプロポーズを受け、結婚式は紅魔館内で行った。霊夢や魔理沙、お世話になった人には招待状を送り、盛大な結婚式を送ることが出来た。

 

「いやまさか、あなた達が結婚なんて考えてなかったわね」

「だな、咲夜のウエディングドレス結構似合ってるぞ」

 

 主人公二人に褒められ、私は照れながら下を向く。

 

「あれあれ?照れちゃったの咲夜ちゃん?」

「………うるさいわね。早く食べに行かないとご飯無くなるわよ」

 

 そう言うと、霊夢は目にも留まらぬ速さで食事が用意されている机に直行していった。魔理沙も「仕方ねぇなぁ」と言いながら霊夢の後をつけて行った。

 

「はは、あいつらは相変わらずだな」

「ええ、いつも通りでしたね」

 

 後ろから奏さんが声をかける。奏さんもいつもとは大きく違うスーツ姿で立っていた。これは私が提案した服で、奏さん自身もとても喜んでくれていた。

 

「おめでとう、咲夜、奏」

「お、お嬢様」

 

 慌てて姿勢を正す。しかしお嬢様は優しい声音で私も宥めた。

 

「いいのよ咲夜。今日くらいは崩しても」

「は、はい」

「……何だか寂しいわね。ずっと一緒にいた咲夜が別の男の方に行くなんてね」

「お、おいレミィ?俺が悪者みたいになってるぞ?」

「あら、気づかなかったのかしら?あなたはもうとっくに悪者よ?愛する家族を奪われたんだから」

「い、言い過ぎだろお前……」

「ふふっ、冗談よ」

 

 微かに微笑むお嬢様。その目の奥には微かなお祝いの意が示されていた気がした。それを見て、私と奏さんは顔を見合わせてから笑う。

 

「奏くぅん…………」

「さ、咲!?」

「おめでどぉぉぉ……」

 

 咲さんは奏さんに泣きつく、何気に一番祝福してくれたのは咲さんではないかと自分は思う。以前は完全な敵だったけれど、今では私たちの立派な家族だ。

 

「な、泣くなよ咲……」

「うぅ……だっでぇー」

 

 タラタラと鼻水を流しながら次は私に抱きついてくる。

 

「ざぐゃぢゃあん……がなでくんを幸せにじでねぇー」

「な、何言っているか分からないですよ……咲さん…」

 

 こんなに祝福してくれるのもとても嬉しい、結婚式には招待状を出した全員が来てくれて、守矢神社から地霊殿、地獄の人まで来てくれていた。そんな中、奏さんは静かにこう呟く。

 

「いい結婚式………だな…」

「ええ……全くもってその通りです………」

 

 私たちの薬指が白銀色に光った。これはまるで光が私たちを祝福してくれたかのように輝かしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーー結婚式から約一年、長い年月が経った時、もう俺の家族は二人だけでは無くなった。

 そう、子供が生まれたのだ。人間と龍人のハーフ、紫が言うには、妖怪の類に分類されるらしく、長命だそうだ。

 

「ほら、月詠。早く行ってらっしゃい……」

「うう、母さん、博麗の巫女って強いのかな?」

「さぁ?私と同じ世代の博麗の巫女は最強と呼ばれてたわよ?」

「それを聞いて一気に自身なくしたんだけど」

 

 十六夜 月詠(つくよ)。俺と咲夜の愛娘だ。現在の歳は18歳。レミィが起こした二度目の紅霧異変でおそらくもうすぐで博麗の巫女が紅魔館にやってくる。美鈴が倒されたら、次は月詠が相手することとなっている。

 

「月詠、頑張れよ。父さん応援してるからな」

「パパも一緒に戦ってよー!」

「残念、俺は「phantasm boss」だ。この紅魔館の最後で待ってるよ」

「そんな発音よく言ったって……」

 

 言葉を途中で遮り、俺は月詠の方をポンと叩く。博麗の巫女はずっと最強に近いが、月詠の実力はあのレミリアでさえ弾幕ごっこで負けるほどだ。博麗の巫女に見劣りはしないだろう。

 

「じゃあ、私も準備に入るわ。頑張って、月詠」

「え、あ………うん!」

 

 月詠は咲夜と同じナイフを取り出して、戦闘準備に入った。その時、扉が開き、博麗の巫女が姿を現した。俺と咲夜は敢えてそれを見ず、月詠が勝つことを祈っていた。

 

 ーーーーーー月詠が勝った。いつまでも博麗の巫女が来ないので、大ホールに行くと、仰向けで倒れていた月詠とボロボロの博麗の巫女がいた。

 

「つ、月詠!すげぇぞお前!」

「え、えへへ……」

「あなた、強いわね……」

 

 この日、紅霧は晴れたが、それ以上に月詠の勝利を俺達がたくさん祝ってあげた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから数十年。私、十六夜 咲夜は段々と歳をとっていった。奏さんはいつまでも全盛期の姿のまま、月詠は大分大人に近づいてきていた。

 ーーーーそしてある日、"それ"は起きた。屋上でお嬢様とティータイムを過ごしていた時、私の心臓が大きく跳ね、苦しみながら気を失った。最後に聞いたのはお嬢様の必死な叫び声だった。

 

『母さんは………どうなるの……?』

『分からない……咲夜…』

 

 二人の愛おしい声が聞こえる。私はそれに返事をするようにゆっくりと瞼を開ける。パァと明るくなった二人の周りにはお嬢様や妹様、パチュリー様や小悪魔に美鈴、そして咲さんがそこに居た。そしてその奥には月の頭脳こと八意永琳がいた。永琳の顔は今にも泣き出しそうに歪んだ顔だった。

 

「あなたも薄々気づいているんじゃない?」

「……………ええ、分かっています。寿命ですよね……」

 

 目が覚めて早々、永琳にそう言われたが、大体の検討はつく。私はもう長くない、そう実感することが出来た。体は老け、手足も自由に動かせない状態である。

 

「なぁ、咲夜!大丈夫なのかよ!?」

 

 奏さんが私の手を握り、強く質問する。私はそれに対してゆっくりと首を横に振った。

 

「ッ!!」

「奏さん、月詠、私はもう長くありません……」

「な、なんで………なんでよ!?」

 

 苦しそうにそう声を出す月詠。それに対し、私は奏さんから手を離し、月詠の手を力強く握る。

 

「あなた達は妖怪です。決して、人間と私とは無くならない強固な壁で出来ています………それを無くすことは出来ない……」

「あなた、吸血鬼にはならないのかしら?」

「お嬢様…………お気持ちは嬉しいですが…………私はこのまま時に流されたいんです………」

 

 私はお嬢様のその案にも反論した。これ以上、妖怪としてここにいる訳には行かない。人間のまま、愛する二人と家族に別れを告げたい。それが私の切実な願いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうして、今更こんなに苦しいんだよっ!

 俺は目の前で寝ている咲夜を見て、胸が苦しくなっていく。月詠は俺の手を握り、涙目で咲夜を眺めていた。

 

「咲夜は………もう……」

 

 永琳が呟いたその言葉に俺の心臓は大きく跳ね、同時に涙腺が壊れそうになる。しかし、俺は咲夜が生きている間は絶対に涙を見せないと決めたのだ。

 咲夜がどれだけ老けていようとも、俺は咲夜を愛し続ける。

 

「お嬢様………」

「何……?」

「私を拾ってくれてありがとうございました。あなたが拾ってくれなければ、私は随分前に野垂れ死にしていました。拾ってからもたくさんの愛を注いでくれ、たくさんの人と触れ合えた。それはあなたのお陰です……」

 

 咲夜の言葉にレミリアはボロボロと涙を流し、声にならない叫び声が部屋の中で反響する。

 

「私だって!咲夜に色んなことを教えてもらった!あなたが従者で本当に良かった!ありがとう……」

 

 普段は礼を言わないレミリアも今回は泣きながら頭を下げる。咲夜は微笑んで、一人一人にメッセージを告げた。その一つ一つの言葉には重みがあり、美鈴やパチュリー、小悪魔にも優しく告げていっていた。

 

「咲さん……あなたは奏さんとずっと仲良くしてください……奏さんよりも付き合いが長い女という目線ではちょっと嫉妬しますけど……それでもあなたは私の希望です……………ありがとうございました……」

「うん…………うん!私もだよ!……ありがとう!」

 

 咲夜の声はだんだんと苦しそうになっていく、これはもうすぐだということを告げているのだろう。

 

「月詠………パパと仲良くね…………いつまでも笑って…そしてずっと強い月詠でいてね…………でも嫌な時や疲れた時はパパに頼っていい…………この世界は…そうやって支えあって完成するもの………一人で解決するのもいいけど……甘えることも忘れないでね…………ありがとう、月詠、またね……」

「母さんッ!うん、ありがとう!またね!」

 

 

 

 

 

 

「奏さん……」

「ッ!」

 

 唐突に名を呼ばれ、俺は体を強ばらせるが、咲夜は優しく、包み込むようにこう告げていた。

 

「あなたは………私のたった一人の夫です………いつかはこんな感じで別れるのは知っていました。しかしあなたは種族の壁を越え、私を愛してくれました…………後悔もないし、あなたが何よりも大好きだったから………大切な生涯でした」

「俺もだ………咲夜……」

 

 俺の目尻からは熱い液体が溜まっていく。そして咲夜は最後、俺に質問をした。それはどの質問よりも重みがあって、大切で忘れられない、この質問。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんな不甲斐ない私でも………愛してくれますか……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ………俺はいつまでも……君を愛し続けるから……!」

 

 

 

 

 

 咲夜の手が俺の頬に伸びる。その細くシワのついた肌は全盛期のすべすべ感は無かったが、心地よかった。それだけは何故か断言ができた。

 

 

「私は……あなた達と出会えて……本当に幸せ者でした………」

 

 余計な言葉はいらない、未練が残るのは一番いけないこと。幸せ者である咲夜にこの世界で未練を残させてはいけないこ。涙を流してもいい、いくら泣いたって良い、愛の言葉は………言葉でないと伝わらない。俺はそれを知っているから………

 紡げ、最後の言葉を、乗せろ、最愛の感情を………叫べ、身に秘めた想いを。

 

 

 

 

 

「俺は君を愛してる!咲夜!」

 

 

 

 

 

 

 

 そう俺が叫んだ途端のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の頬に触れていた手が重力に従ってポトンと落ちる。その手にはもう生気が感じれなかった。咲夜の顔を見ると、幸せそうに……俺たちと別れをしたみたいだ。

 

「あ、あ………ああああああ!」

 

 咲夜に抱きつき、泣き続ける。月詠も一緒に泣き、咲夜との別れを悲しんだ。

 

 

 それは雲一つない、十六夜の夜だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パパぁー?」

「んー?どうした月詠?」

「今日、一緒にお茶しない?」

「お、久しぶりだな……」

 

 咲夜がいなくなり、男手一つで育ててきた月詠はもうすっかり大人になっていた。俺もまだまだ全盛期と何ら変わりない姿をしていて、同い年にしか見えなくなっている。もちろん、「親子」だ。

 バルコニに出ると、そこは満天の星空が夜空を支配していて、その中心には「満月に近い月」があった。

 

「はい、紅茶……」

「ん、さんきゅ」

 

 ずずずと紅茶を啜る。紅茶の味が咲夜そっくりで嬉しいものだ。

 

「美味いな……」

「でしょでしょ?母さんに教えてもらったんだ」

 

 ドヤ顔する月詠に微笑んだ後、二人同時に夜空を見上げる。

 

「今日は十六夜………か」

 

 十六夜、それは十五夜の次の夜のことを指す。知名度は低いが、俺は満月よりもこちらの方が好きだ。理由は言わずもがなだろう、十六夜 咲夜がいるからだ。

 

「ねぇパパ、母さん、またどこかで見守ってるかな……」

「あぁ、きっと」

 

 

 

 

 

 そう、今日のような十六夜は特に、咲夜が俺のそばにいる気がする。それはきっと、「十六夜」の夜だから………十六夜 咲夜が好きだから……

 

 

 

 

 もしも咲夜が妖怪だったら、なんて考えない日はない程に、俺は咲夜を愛していた。




ここまでお読みいただき、ありがとうございました!


次から、主人公が変更致します!


科宮 依澄 (しなみや いずみ )くん、で「仮」決定しています。

決定はしていません、検討しています。

ヒロインも決めていません、次の話までお楽しみに……!

ではありがとうございました!
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