東方想幻華 (一時連載休止)   作:かくてる

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2ヶ月ぶり!

すいませんっしたぁぁ!




5話 月明かり

「な、なぁ、アリス……」

「……何よ?」

 

 アリスの顔はとてつもなく不機嫌だった。俺が声をかけても一向にこちらを向いてくれない。

 

「悪かったって……俺も別にお前の裸が見たかったわけじゃ……」

「は、はだっ………ばっかじゃないの!?」

 

 前から気づいていたがどうやら、アリスはちょっとした下ネタにも反応するんだなと思っていた。どうやらそれは当たりみたいだ。

 

「わ、悪い……」

 

 俺はアリスから目を離し、自分の桜成を見つめる。それを見かねたアリスは自分から話題を変えた。

 

「で、さっき依澄が言ってたのはどういう事なのよ?」

「あぁ、舞雪の話だ」

 

 さっき送られてきた手紙。その内容を俺はアリスにすべて伝えた。

 

「なるほど……記憶喪失ではない、と」

「あぁ、それに加えて舞雪の父親が関わっているんだ。大分厄介だぞ」

 

 そこでアリスはすっかり考え込んでいた。俺はそれを邪魔しないよう、見ているだけだったが、唐突にアリスが顔を上げて、俺に質問をした。

 

「ねぇ、あなたと舞雪さんを殺した張本人の顔って覚えてる?」

「……いや、悪いけど何一つ覚えていない」

 

 脳内の記憶を搾り取るように探してみるが、何も分からない。思い出そうとすると頭痛がするほどである。

 

「………舞雪さんは何か覚えてるかもしれないわね」

「………………………ッ!それだっ!」

 

 パチン、と指を鳴らしてアリスを見る。俺の勢いに少し仰け反っているアリス。

 

「舞雪の居場所が分かれば、聞き出せるかもしれない…」

「そうかもしれないけど、この手紙、本当に舞雪さんから来たのかしら?」

「た、確かに」

 

 まぁそれでも舞雪と俺の関係を知っているやつから来たイタズラなら、そいつも十分なキーマンだ。俺はこの手紙の送り主が本当に舞雪か確かめるため、手紙のありとあらゆる場所を探す。

 すると裏にこんな事が書いてあった。

 

『私が本物である理由を今からここに書くね、昔、私たちが小さい頃に依澄が私の家に忍び込んで、私のお気に入りの下着を盗んでいたことを知っているから』

 

 ぐしゃっと手紙を潰す。しかし後ろを見るとアリスは俺よりも先に読み終わっていたらしく、引き気味で俺を見ていた。苦しいっ!静寂が苦しいっ!

 

「あ、あ〜、どうやらこいつは本物みたいだなぁ……」

「今から人里の自警団呼んでもいいのよ?」

「いや、ホントに出来心だったんです。許してください」

 

 あれは仕方ない。自分の欲望には正直に行くべきという自分の間違った見解がこういった結果を招いてしまっただけなのだ。

 

「と、とにかく、舞雪のもとに急ごう」

「そうね」

 

 俺は桜成を握り、外に出ようとするとあるものを発見する。

 

「あ、アリス。それどうしたんだ?」

「ああ、これ?さっき考えすぎて包丁で切っちゃって……」

「大丈夫かよ……絆創膏は張っとけよ」

 

 血が流れているわけでは無かったが、見ているこちらが少し痛々しかった。俺は常備している絆創膏をポケットから取り出し、アリスの手を掴む。

 

「あっ、ちょ………依澄……」

「じっとしとけ」

 

 何故か顔を赤くするアリス。そのままそっぽを向いて黙っていた。何をそこまで顔を赤くする必要があるのだろうか?

 

「よし、終わったぞ」

「ん………ありがと……」

「ん?どうした?顔赤いけど……風呂でのぼせたか?」

「えっ!?いや、何でもない……」

 

 顔を俯かせるアリス。俺はその意図が見えず、首を傾げるだけだった。

 

「ね、今日は夜遅いし、明日にしましょう」

「…………ああ、そうだな」

 

 そう言って俺は自分の寝室に戻る。

 さっきから響いている雷がさらに激しさを増した。

 

「うるさいなぁ……」

「ね、ねぇ」

 

 アリスが俺の左袖を掴んでいた。それによって歩むのを阻止された俺は後ろを振り向く。

 アリスが赤面しながら下を俯いていた。

 

「あ?どうした?」

「いや……その……」

 

 瞬間、ピシャァッ!と大音量の雷が響いた。

 

「きゃあっ!」

「……………え?」

 

 アリスがその場でしゃがみこみ、耳を塞いで震えていた。

 

「もしかして……」

「そうよ………依澄のお察しの通りよっ……」

「だって、さっきまでそんなこと無かったじゃねぇかよ……」

「我慢すれば短時間は大丈夫よ、でも……寝るのは……」

 

 まさかな……

 

「一緒の部屋で…………寝たい」

「……マジで言ってる?」

 

 コクリ、とアリスは首肯した。俺は後頭部を掻きながらため息を付いた。

 

「強気なアリス様は雷が怖いのですなぁ」

「なっ!?う、うるさいわよ!」

  「はいはい、お前はベッドで寝ろ」

「え……?依澄は?」

「俺は床で寝るよ。女の子を床で寝さすほど俺は腐ってない」

「へ、へぇ、意外と男らしいじゃない」

「そりゃどーも、じゃおやすみ」

 

 俺が電気を消そうとすると、また雷鳴が響き渡った。

 

「ほんとに凄いな」

「ね、ねぇ…依澄、床はやっぱり硬いでしょ?」

「あ?別にいいけど……」

「だから………その…えと………」

 

 内股で座り、モジモジするアリス。やばいすっごい可愛い。俺は理性をギリギリで保ちながら応対する。

 

「…………………ぃよ…」

「ん?」

「もう!一緒に寝ていいよ!って言ってるの!難聴主人公なんて王道すぎるわよ!」

「前半めっちゃ可愛い事言ったと思ったら後半で全て台無しっすわ…」

「い、良いのほら、寝ましょ?」

 

 俺は呆れながらベッドに入る。するとアリスの顔がもう15センチほどの距離にあって、流石の俺も少し心臓が跳ね上がった。

 

「っ!」

 

 アリスはそれに耐えられなかったのか、反対側を向いてしまった。俺もそのままリビング側を向いた。

 

「ねぇ……舞雪さんってあなたにとってどんな人なの?」

「……なんだ?眠れないのか?」

「気になっただけ、それでどうなのよ?」

 

 アリスには話した方がいいのだろうか。少し迷ったが、居候させてくれているのだから話さなきゃ行けないのだと、そう思った。

 

「俺が使ってる抜刀術。あれは舞雪の父さんの道場で習った技だ」

「………あんなのを道場だけで習ったの?」

「いいや、俺の技は道場から習った技を磨きに磨きすぎたんだ」

「それが……あの……」

「それからかな、舞雪の父さんは突然行方をくらませたんだ」

 

 俺は自分の記憶を辿りながら、少しだけ辛い記憶を話す。

 

「それから、道場の師範は舞雪が代理で務めることになって、俺と舞雪は家族同然な関係にもなっていた」

「…………」

「そんなある日、俺は舞雪に告白されて」

「…………」

「俺が返事をしようとした時、背後から誰かに刺されて………幻想郷に来たんだ」

「……そう……」

 

 するとアリスは体を反転させ、こちらを向いたので、俺も自動的にアリスの方を向いた。

 

「ねぇ依澄。質問の答えになってないわよ」

「え?」

「舞雪さんをあなたは好きだったの?」

 

 ああ、そう言えばそんな質問だったな。つい過去話を話してしまった。

 俺は目を閉じ、舞雪のことを思い出す。

 

「………………好きだったよ。多分、あの日俺はOKを出してたと思う」

「…今は……?」

「………さぁな……」

 

 また俺は体を反転させ、リビング側を向いた。

 俺はずっと昔から舞雪が好きだった。だから、あの時は本当に嬉しかった。でも、あの時殺された舞雪の顔は一生脳裏に焼き付いていて、ただ胸が苦しくなるだけ。

 

「………」

 

 だから、俺は舞雪に会わない方がいいのかもしれない。舞雪に会うとあの時の事を思い出してしまいそうだから。

 

「……っ」

「っ!?あ、アリス!?」

 

 アリスは俺の背中に体を密着させ、腕を俺の体に絡みつけた。

 

「…………もう少しこのままでいさせて」

「お、おう……」

 

 雷が怖いのかな……?と勝手に自己解釈して目を閉じた。

 

「大丈夫だよ………依澄。あなたが苦しいのは分かる」

「アリス……」

「なら、私もその苦しみを背負わせてよ」

「………」

「私だって戦える。背中を任せられる」

 

 アリスは抱きしめる力を強め、さらに体を密着させた。

 

「………ごめん、ありがとな、アリス」

「いいの、私は今、あなたの相棒だから」

 

 俺はこの時、心臓の振動がとんでもない量だったと思う。

 …………今なら分かる。俺はもう舞雪じゃなくて、アリスに想いが寄りつつあることが。

 

 いつの間にか、雷が止み、俺とアリスのベッドには月明かりが差し込まれていた。

次のヒロインだーれだ

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