ええ、お久しぶりですね。
ちょっとこの場で頭下げます地面とキスします。
すいませんでした。
東方想幻華、再スタートします
「…………風が強いな……」
正面から入ろうとすると強風で体が跳ね返される。俺と文さんは博麗神社から見えた「光っている場所」へとたどり
着こうとするその手前で強風に跳ね返される。
「これは……正面突破は無理では?」
「ちょっと離れててください、文さん」
「?」
疑問符を浮かべる文さんは首をかしげつつも俺から数メートル離れた。俺は左手に持っていた「
「…………っ!」
力を入れて抜刀し、地面と平行に振り抜いた。空を切り、一瞬の静寂をもたらした後、ガラスが割るような音がして、風が次第に消えた。
「……やっぱり」
「な、何を?」
「幻惑の結界ですね。以前にアリスから教えてもらいました。俺達は「風が強いと勘違いをさせられた」だけです」
「ほ、ほぇぇ……」
感嘆の声を漏らす文さん。俺はその呆けた顔を横目に光る場所へと入っていった。すると、俺の背後でバチッという嫌な音が聞こえる。
「あ、あれ?」
「どうしました?」
「通れない」
「え?」
文さんが通ろうとしてもまた別の結界が張ってあった。俺はもう一度桜成で切り裂こうとしたが、それは空を切っただけだった。
「…………」
「あ、あ〜、依澄さん?」
「……はい……」
文さんは結界越しに親指を立てて、俺を励ました。
「後は頑張れ!」
「一人かよぉぉ!」
「……! ……どうやら、一人では無いですよ、依澄さん」
「え?」
「あ、霊夢!」
「ん?」
博麗神社に行く途中の道のりで霊夢と出会った。依澄を探すには博麗神社から妖力を確認するのが一番手っ取り早かった。
「依澄見なかった?」
「ああ、なんか、博麗神社から北の方にある光った場所に向かったわ。多分、博麗神社からなら見えると思う」
「……霊夢は行かなかったの?」
「文が付いてたわ、それにこの事には人間は首を突っ込んではいけない」
いつもよりも険しい顔の霊夢。これは思った以上の大事なのかもしれない。私はつばを飲み込みながらそう思案した。
「分かった。ありがとう霊夢」
「気をつけなさいよ。死ぬ可能性も捨てられないわ」
最後の忠告を聞き、私は霊夢に背を向けながらも右手を上げた。博麗神社の鳥居の前で飛び、霊夢の言っていた場所を探す。
「あれ……かな……」
目を細めてみると、人が二人そこにいるのが分かった。私はそこを目指して飛ぶ。
目を細めると、依澄と文が何やら話し合っていた。
「あんた達! 何してるのよ!」
「あ、アリス!」
依澄は驚いたように私に近寄ってくる。朝のこともあったので、近寄ってくる依澄にドキッとして、一瞬止まるが、今はそんなこと考えている暇はない。
「アリスさん、私この結界に入れないみたいです」
「はぁ? じゃあ、依澄だけ?」
「アリス、入ってみてくれ」
恐る恐る、その結界に入る。しかし意外にも、スっと入ることが出来て、私は小首を傾げた。
「?」
「……まぁ、俺一人だけじゃなくて助かったよ」
安堵したように肩を落とす依澄。結界の外側では、文が申し訳なさそうに頭を下げた。
「すみません。私はここまでのようです。出来るだけ外側からサポートしますので……」
「ありがとうございます、文さん」
「文、ありがとう、依澄の手助けをしてくれたんでしょう?」
率直な思いだ。依澄の事情に関係の無い天狗の文が手伝ってくれたことには感謝がある。
「いいえ、依澄さんの力になりたい気持ちはありますから。それに……」
チラリ。と文が依澄に目を向ける。するとその瞬間、文の顔が赤くなりだした。
「依澄さん……に会いたかったから……」
「…………」
「……この騒動が終わったら、またどこかでお茶しましょう! 文さん!」
途端にぱあっと文の顔が明るくなる。そして、首が取れるんじゃないかと思うくらいブンブンと頭を縦に振っていた。
「はい!」
「じゃあ、行ってきます」
「…………文……」
「はい?」
恋敵として、これだけは言っておかなければならない。私は依澄が聞こえない程度の小声で、結界越しに文を見すえる。
「依澄は渡さないわよ」
「…………アリスさんがライバルですか。望むところです!」
ニヤリとお互いに笑う。これからは良きライバルとして、彼女と付き合っていくことになるのだろう。
ただその言葉だけを交わし、私はくるりと反転して依澄を追いかける。
依澄に追いついた私は依澄に状況を聞く。
「それで、この結界は何なの?」
「分からない。ただ気がついたらここに吸い寄せられてた」
「は、はぁ?」
依澄がそんな抽象的な事を言うとは思わなかったので返答に困る。
「舞雪はここにいる。そう感じた」
依澄の顔を伺うと、どうにも冗談を言っているようには見えなかった。真剣そのものの顔、握り拳も強く震えていた。
「……私は、あなたについて行くわよ。依澄」
「………………ああ、ありがとう。アリス」
「なっ!?」
依澄は私にそう言われたのが驚きだったのか、一瞬目を見開くがふっと微笑み、右手が私の頭の上に乗る。その途端、私は顔面が燃えるように熱くなった。
「き、気安く撫でないでよ……」
「悪い」
ニッと白い歯を見せて笑う。私は不満そうに頬をふくらませ、依澄を睨みつける。というのも、本心では飛び上がるほど嬉しかったのだが、それを表に出せないのは、まだ素直じゃない証拠だ。
「…………いたっ」
私の前を歩いていた依澄が急に止まる。完全に油断してた私は顔面が依澄の背中にあたる。
「いったいわね……何して──」
「しっ!」
依澄が人差し指を立てた。何かを見つけたのだろう。私はすぐに黙って依澄と同様、物陰に隠れた。そして、依澄が見てる方向を覗き込む。
「……なに、あれ……」
「ありゃやばいよな……アリス、あれに見覚えは?」
「あるわけないでしょう……」
私と依澄の先に見えているのは巨大な「魔法陣」。しかも、私達が使う魔法陣とは比べ物にならないくらい巨大だ。直径20メートルはあるだろう。
「……あれが霊夢さんが言ってた天神族とやらの力?」
「……ちょっと待って、天神族って──」
「あら? こんな所で話し合い?」
「っっ!!??」
誰の声だ。私でもない、依澄の声でもない。私たちの背後から届いたその声音は少し幼くも、私達に恐怖を与えるには十分の妖しさがあった。
私達は物陰か、抜け出して、声の主から距離を取る。臨戦態勢に入る私達だが、それは一瞬で緩められた。
「ま、舞雪……?」
「あははっ、依澄、久しぶりだね」
真っ赤な双眸、艶のある黒髪、幼さが残るが、シュッとした輪郭。そして、依澄にとっては聞きなれた声音。
「…………」
「黙るくらいに私との再会が嬉しいの? あの時はごめんね? 私もあんなに早く依澄に会えると思わなかったから別人のフリをしちゃった」
「いつから、そこにいた?」
依澄は旧友相手にも警戒を怠らなかった。しかし、依澄が警戒するのも頷ける。なぜなら、私も依澄も結界に入ってから「気を弛めていない」のに、こうして背後をいとも容易く奪われたのだ。
「んー? アリスちゃんの「き、気安く撫でないでよ……」からかな?」
「……」
似ていない私のモノマネをしながらニヤニヤと笑う舞雪さん。
「…………なぁ、舞雪」
「ん、なぁに?」
「お前は…………敵……なのか……」
「……少なくとも依澄の敵じゃないよ?」
ニタリとその顔に似つかわしくない醜い笑顔を見せる。背筋がゾッとしたのは私だけでは無いはずだ。
「アリスちゃんの敵だよ?」
「…………」
瞬間、一閃が舞雪さんの首を捉えた。
「およ?」
陽気な声を上げて、舞雪さんの首が吹っ飛ぶ。もちろん、そこからは大量の鮮血が噴水のように吹き出していた。
「っ!!」
斬った本人の依澄はきっと辛いはずだ。一番近くにいた大切な存在の首を斬ったのだから。
コロコロと舞雪さんの頭が転がる。舞雪さんの目は瞳孔が広がり、完全に死んだのだと悟らせた。
「…………」
「依澄…………」
「……ごめん。ごめんな…………舞雪……」
どうして、依澄は迷いなく舞雪さんを斬ったのだろうか。
依澄は膝をついて転がる舞雪さんの頭に必死に謝っていた。
「何がごめんなのかな?」
「っ……嘘……」
口を開いたのは舞雪さんだった。その声の主は生首から発せられたものである。
「全く……この程度で死ぬほどヤワじゃ無いのになぁ……私は依澄の師匠だよ?」
「…………」
すると、舞雪さんの体から一本の管が伸びる。そして、それはそのまま、舞雪さんの首に繋がる。
「よっこいしょっと……」
「舞雪……お前……」
そして、その管は舞雪さんの生首を引っ張り、体と首を繋ぎ合わせた。
「…………依澄、お返しっ」
「はっ?」
ビチュン……。
生々しい音が私の横を通り過ぎた。幸い、私の左隣にズレたようだ。そして、その左隣には、依澄がいたはずだ。
そう考えた途端、私の服に大量の血液が飛び散った。
「いず……み……」
「あっ…………ぅあ…………」
依澄の手には桜成が無くなっていた。いや、そもそも「手が無くなっていた」。
依澄の腕は上腕の半分から下が吹き飛んでいたのだ。当の依澄もまだそれを理解できていなかった。
「う、ぁ……あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
自分の腕を抑え、痛みに悶える依澄。
私はその場で凍りついてしまった。この時ほど、私の無力さを恨んだことは無かった。
次のヒロインだーれだ
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妖夢
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さとり
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霊夢
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諏訪子
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萃香