東方想幻華 (一時連載休止)   作:かくてる

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ネタが思い浮かばなくて、文もなんかふにゃふにゃしてて読みにくいかもしれないです。

ごめんなさい!


8話 飲み込まれる二人

「あ……がっ……」

「……い、依澄ッ!」

 

 右手を失い、依澄は意識がもうろうとし始める。恐らく、想像を絶する痛みなのだろう。

 

「あーあ、私の恋人なんだから、腕切られたくらいで慌てないでよね」

 

 舞雪の言葉に反応したのは、もちろん私だ。こいつの言動全てが私を苛立たせるのには十分な材料だった。

 

「ふざけないでッ! どうしてこんなことするのよ! 何が目的で、依澄を攻撃したのよ!」

「……目的……ねぇ………………」

 

 可愛らしく、人差し指を唇にもって、考える仕草をする。その仕草さえも、憎い。

 

「……依澄を私のモノにすること……かな?」

「…………殺すッ」

 

 ビーッと指から糸を引く。すると、数体の人形がまるで意志を持っているかのように舞雪へ向かっていく。私の人形達はどんな団結した集団よりも統率が取れる。

 

「だから、アリスちゃんは依澄とは釣り合わないの」

 

 呆れながら、舞雪は右手を振り上げた。そして、高々とあげた右手からパチンと指を鳴らす音が聞こえた。

 その瞬間、鋭い槍のような雷が降り注ぐ。その雷は一瞬にして私の人形を丸焦げにした。

 

「嘘……」

「アリスちゃん、舐めないでよ。天神族である私に、お人形さんで勝てると思ったの?」

「天神族……って、あの」

「そそ、博麗の前までは幻想郷を支えてた種族。私さ、そこの精鋭部隊のトップやってたんだ」

 

 自慢げに語る舞雪。天神族は誰しもが恐怖する種族、天人よりも貴重で何もかもが優れている。人里では「天人の上位互換」と言われている。そんな天神族のトップとなれば、どれほど恐ろしい存在かが分かる。

 

「と、言うわけなの。だから、アリスちゃんはとっとと消えて欲しいな」

「……嫌よ」

「……」

「依澄とパートナーを組んでいるのは私だもの。幼なじみだか何だか知らないけど、依澄は私のモノよ」

「は?」

 

 可愛らしい顔に似合わず、鋭い目つきが私に突き刺さる。その顔はもう極悪人のそれだ。私は拳を握りしめ、スペルカードを取り出す。

 

「蒼符「博愛のオルレアン人形」」

 

 大きくそう唱えると、新たな人形が弾幕を放出する。その弾幕は壁に跳ね返るように反転しながら増殖していく。

 

「いや、スペルカードなんて生ぬるいもの使わないでよ。遊びじゃないんだよ?」

 

 呆れるように頭をかいていた。そして、先程と同じようにその弾幕を雷で落とす。砂埃が舞い、視界が一気に狭められる。

 

「ど、どこだ!?」

「こーこっ」

 

 スっと背後に現れる。ゾッとする恐怖を拭いながら、舞雪と一定の距離を詰めるが、私の身体能力では、舞雪の素早さには勝てなかった。

 恐怖に支配された私は目を閉じて、攻撃されるのを待つ羽目になってしまっていた。

 

「さぁ! これでアリスちゃんもしゅーりょ……」

 

 私に向かって飛んでくる舞雪。しかし、終ぞ私に舞雪の毒牙が届くことはなかった。恐る恐る目を開けると、舞雪は私の1メートル前で止まっていた。

 

 

 

「……はぁ……まに、あったぁ……」

「あぐっ……い、依澄!」

 

 依澄の刀「桜成」の刀身が舞雪の右目を貫いていた。桜色に光る刀身から、ぽたぽたと真っ赤な血が滴る。

 

「アリス、大丈夫か?」

「いず、み…………良かった……」

 

 上を見上げると、私の顔を覗き込む依澄がいた。しかし、その顔が余裕には見えない。

 

「依澄……腕……」

「……あ、ああ、再生しない。きっと戻らないだろうな」

「そんな……」

 

 依澄の右腕はもう消え去っていた。近くにあった紐で腕を縛り、止血を施していたが、ぽたぽたと垂れている。

 

「最悪、左手があるから問題は無い……けど、アリスを守りながら戦うのは難しいかな」

「…………あんたは私の実力を知らないようね」

「え?」

「舐めないでもらえる? これでも、一応歴戦の魔法使いなのよ?」

「……そうか、そうだったな」

 

 依澄は桜成を舞雪の目から引き抜き、もう一度向ける。

 

「じゃあ、頼んだぞ、アリス」

「ええ、あんたの右腕になってやるわよ」

「はいはい、お喋りは終わったかな? 退屈すぎてつまらなかったよ」

 

 舞雪の目は一瞬で再生をしていた。その再生力は流石天神族と言ったところだろうか。

 

「じゃあ、いくぞ!」

 

 依澄の桜成が一閃、横薙ぎに振られる。左手の刀はやはり遅い。舞雪の身体能力の前で、このスピードはただの玩具に過ぎない。

 

「ちょ、依澄? 真面目にやってよー、アリスちゃん以下だよ?」

「……そうか? 少なくとも、お前よりは速い気がするがな」

「…………戯言を……」

 

 そうして、振り終えた刀にもう一度力を込め、舞雪の顎をめがけて振り上げる。その刃は確かに感触を感じた。そして、それは舞雪の顔を真っ二つにした。

 しかし、再生の速度はそれを上回る。もう一度攻撃を仕掛ける前に傷は完治していた。

 

「ちょ、依澄? あんた抜刀術専門でしょ!? 二連撃なんか使ったら破門だよ?」

「うっせ、お前を倒すために抜刀術なんか意識してられっかよ」

「……ますます私のモノにしたくなったよ、依澄ィ!」

 

 半狂気的な笑い声と共に、舞雪は右手に直剣を出現させ、依澄に降りかかる。依澄はそれを桜成で受け止める。刃どうしのぶつかり合いに、火花が散る。

 

「ぐっ……」

「ほらほら、片手でなんか勝てるわけないでしょお?」

「…………アリスッ!」

 

 依澄が精一杯叫ぶ、私はそれに答えるように、スペルカードを唱える。これが効かなくても、攻撃し続ければいつかは隙が生まれると信じて。

 

「闇符「霧の倫敦人形」!」

 

 アリスの手から出現した人形達が、渦巻くように無数の弾幕を放ち、舞雪を囲んだ。依澄はそれを確認すると、ギャリギャリと音を立てながら、舞雪の直剣を受け流す。

 そして、依澄はそのまま後ろに飛び、私の隣に着いた。

 

「……なっ!」

 

 流石のコンビネーションに、舞雪も驚きを隠せていなかった。このスペルカードは私の中では一番の破壊力を持っている。その上、魔力を多く込めたので、殺傷力も生まれているはずだ。

 大きな音を立てて爆破し、先程まで舞雪と依澄がいたところは大きなクレーターが生まれていた。

 

「……どう?」

「いや、生きてるだろうな。油断するなよ、アリス」

「ええ……」

 

 モクモクと煙が立ち込めていく。私と依澄は背中合わせになって周囲を見渡す。

 

「おぉ、警戒心はやっぱり強いねぇ……」

「っ!? どこだ!」

 

 姿は見えないが、声だけは確かに聞こえる。その不気味さに、私も依澄も背筋が凍っていく。

 

「……あなたのディフェンスが硬すぎて依澄に近づけないの。だから、少し卑怯かもしれないけど、許してね。アリスちゃん」

「アリス、いつでも動ける準備はしておけよ」

「分かってる……」

 

 悪びれもなく謝る舞雪の声。それに対し私達は警戒を解く事無く、辺りを見渡していた。

 そして、異変に先に気づいたのは、依澄だった。

 

「っ! アリス! 避けろ!」

「へっ……?」

 

 瞬間、私のいた地面が暗黒に染まる。依澄の警告も虚しく、私はその暗黒から避ける事は出来なかった。そして、それはブラックホールのように私を吸い込んで行った。

 

「あっ、きゃぁぁぁぁ!!?」

「アリスッ!」

 

 依澄が手を伸ばす、しかし、その手はもう数メートルも離れている。そのまま私は落下していった。

 このまま私はこの中で消えていくのだろうか。このまま落下死か、それともなにか別の死に方をするのだろうか。このまま死に身を任せるのも悪くない。

 

「アリスッ! おい!」

「ぇ……」

 

 諦めかけていた私の手を依澄が引いた。そして、私は依澄の胸の中に収められる。

 

「ちょ、なんであんたまで……ッ!」

「仕方ないだろ! お前なしじゃ戦えないんだからッ!」

 

 依澄は私を助けるために、暗黒の中に自ら入っていってしまったのだ。こうなれば、誰が舞雪を止めるのだろう。

 そう考えるのも虚しく、私と依澄は視界が暗転し、気絶していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ス…………リス…………おい!」

「ん……ん?」

「アリス! 大丈夫か?」

 

 私の顔を覗き込む依澄。どうやら、私は仰向けで倒れているようだ。

 

「……ここ、は……」

「分からない。舞雪のブラックホールの中なのは確実だが、出口はない。そんなことより、怪我してるだろ」

「いいえ、してないわ」

「嘘つけ、スカートめくれ」

「は、はぁ!? 何言ってるのよ変態!」

「ばっ、違う! 膝を出せ膝を!」

 

 理解した私は大人しくスカートの裾を少しあげて膝を見せる。すると、割とシャレにならないくらいえぐれていて、肉も見えていた。未だにどくどくと血が流れている。

 

「よくこんな足になるまで動けたな。さすが魔法使い。とでも言った方がいいか」

「余計なお世話。すぐ治るから大丈夫よ」

 

 そうは言っても、痛みはもちろんある。しかし、再生すれば痛みも同時に消えていくので、少しの辛抱だ。

 

「ダメだ。止血はしないと」

「でも、血も止まるから…………って、何してるの?」

 

 依澄はジャケットのジッパーを開けて中に着ていたシャツを破る。そして、包帯状にしたそれを私の膝に巻いてくれた。

 

「悪ぃ、今はこれしか無いから。我慢してな」

「別にいいって言ってるのに…………」

 

 口では文句を言いつつも、実は依澄に手当してもらって嬉しかった自分もいる。こんな状況なのに、呑気なものだ。

 

「……とりあえず、まだ休んでおいた方がいいな。お前の足が完治するまで」

「そうね…………ねぇ、依澄」

「ん?」

 

 モジモジと指と指を合わせながら頬を染める。あまり自分の性格上言うことは無いが、どうしても依澄には伝えておきたかった。

 

「ありがとう」

 

 そう言うと、依澄は少し目を見張った。あまりお礼を言わない私からそう言われて少し戸惑ったのだろう。

 

「……ああ、どういたしまして」

 

 しかし、依澄は直ぐに表情を和らげてニッコリと笑う。その顔は私にとって素敵そのものだった。

 辺りを見渡す。ブラックホールと言えど、完全な真っ黒では無いようだが、1m離れると、もう何も見えないくらい視界が悪い。

 

「とりあえず、死んではいないことは確かだ」

「そう、みたいね……」

 

 その事が分かると、私は安堵のため息を漏らす。

 

「とりあえず、暗いな……アリス、なんか灯りになるもの無いか?」

「そうなのあったら苦労しないわよ。あんたは無いの?」

「一応あるけど……」

「じゃあそれで明るくして」

「へいへい……」

 

 依澄はため息を漏らすと、桜成を鞘から引き抜いた。紫色に光る刀身は妖しさを醸し出していた。しかしその光は思ったよりも強力で、辺りを照らすには十分だった。

 

「……綺麗ね。一気に明るくなったわよ」

「桜成をこんな風に使う時が来るとはなぁ……」

 

 そう言って、桜成を真下に刺す。それは意外と、すんなりと地面に突き刺さった。

 

「……とりあえず、刺せるくらいの壁ってことかしら」

「そうなるけど…………どうする? このままじゃ2人とも餓死して死んじまうぞ」

「食料は安心していいわよ」

「え? そりゃまたなんで」

 

 パチン、と指を鳴らすと、人形が3匹現れる。そして、私は手から人形に魔力を込める。すると、人形達は次々と食料を出現させて、料理を始めた。

 

「べ、便利だなぁ…………その力で、テレポートなんかも出来ないのか?」

「無理よ。空間転移は膨大な魔力を要するの。それも、ほぼ全損。さっきまで戦ってたから、魔力なんか料理するくらいしか残ってないわよ」

 

 そう、私はもう魔力が切れている。いわゆるガス欠だ。

 

「その魔力が回復するのに、どれくらいかかる?」

「……実体験だと……一ヶ月」

「嘘だろおい…………」

「お、桜成で何とか出来ないの?」

「今、俺には右手がない。左手じゃ思うように働かねぇよ。それに、アリスだって非力だしどうせ無理だろ」

「そ、そう……」

 

 これは本格的にまずいことになった。そう思うだけで、冷や汗が止まらなくなる。私は膝を曲げてそのまま足を抱え込む。

 

「このまま、幻想郷はどうなっちゃうのかな……」

「分からない。それに、あいつの目的も不明なままだ。師匠にも会っていないし……」

「師匠?」

「あいつの父親だ」

「そう……」

「それに、舞雪が幻想郷を破壊しない保証もない」

 

 そう、舞雪は何故あんな所で巨大な魔法陣を展開していたのか。

 

「なぁ、アリス、魔法陣の効果ってどんなのがあるんだ?」

「そうね、私の場合だと魔力の補給を経由するための媒体だけど……生贄を捧げて魔力増強も出来るわ」

「舞雪の目的は後者だろうな」

 

 生贄。その言葉がどういうものか、私も依澄も理解している。

 

「まさか、このブラックホールが魔法陣の内部はんてことはないよな」

「それは無いわね。魔法陣の生贄にされているなら、とっくに死んでるわ」

「そ、そうか……」

 

 そうして、静寂が訪れる。木々の揺れも、子鳥のさえずりも、風が吹き抜ける音も、どれもこれもが存在しない。無音の世界。

 

「……このまま過ごすしかないのか……」

 

 握りこぶしを作る依澄。そう、今の私達はただこのブラックホールで過ごすしかないのだ。そう考えると、とても恐ろしいモノに思えてきた。

次のヒロインだーれだ

  • 妖夢
  • さとり
  • 霊夢
  • 諏訪子
  • 萃香
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