いや、そんなことないかな?
では、行きましょう!
10月31日 午後8時
戦争も落ち着き、月についた私たちは近くの森でご飯を食べていた。
「………なんだこれは?」
依姫様が訝しげに翔が作ったチャーハン?とやらを見ている。
「まぁまぁ……騙されたと思った食べてみな?」
「……………いただきます…」
依姫様は思い切ってチャーハンを口に入れた。
「…………っ!」
依姫様の目がキラキラ光り始めた。
「お、美味しい…………」
そう言ってチャーハンを口いっぱいに頬張っていた。
………可愛いな……
いつも、依姫様の顔は怖かったけど……
こんな顔もできるんだな……
「ハハハハハハ、依姫可愛い顔してるな」
依姫様は翔にそう言われて、顔を赤くして下を向いた。
「う、うるさい、あなた達も早く食べなさい……」
ご飯を食べ、私たちは眠りにつこうとしていた。
「あ、そういえば翔」
「ん?なんだ鈴仙?」
「私のスペルカード………使ったわよね……
あれはどういうこと?」
「戦いの途中……お前のスカートのポケットから落ちてきた…
俺も体力消耗してたから幻永蛇眼が使える状況じゃなかったし……使わせてもらった…」
「そ、そう……」
ちょっと嬉しかった。
私のスペルカードを使って勝ってくれたことが。
私たちはテントを用意して…
「さて、明日には月の都に行くからな…鈴仙も依姫も、しっかり寝とけよ……」
そう言って翔が3秒で爆睡した。
「はや…………」
私が呆れると…
「ふふっ、可愛い寝顔ですね……」
翔の寝顔を見て依姫様が笑う……
「はは、そうですね……」
私と依姫様は外の空気を吸いにテントから出た。
「ねぇ、鈴仙……」
「はい?」
「お師匠様や、あなたがいない期間、月は酷いものだったわ…………
エリナ様がいなくなってから、賢者様が政治を行っているのだけど………働かないものには罰を…………酷いものは死刑にまで追いやるほど廃れているの………」
私は目を見張った。
「そ、そんなに酷かったんですか………?」
「ええ……………早く……みんなが楽しく、平和に過ごせる月に戻ってほしい……
だからお願い、この戦いで全てを………賢者様を倒して元の月に戻して欲しい………!」
「………私はもう月の兎では無いのですが………私の故郷です…それに、依姫様や豊姫様、今でも月には大切な人がいる、放って置くわけには行きませんね…」
私はまた依姫様に頭を下げる。
「ありがとう……鈴仙
私はね、正直翔を月に行かせたくはないの……
もちろん、賢者様がいるから危険という理由でもあるんだけど……この子にとって知ってはいけない事実を突きつけられると思うの……」
「な、何ですかそれ……?」
依姫様は覚悟を決めたかのように私に教える。
「___________________」
「……………………え………………」
私はまた、驚いた。
「そんな………そんなことが………」
私の静かな声は夜の冷たい風に乗って消えていった。
11月1日 午前8時。
「ん、んんーっ…よく寝たぁ〜」
翔が私と依姫様の後にようやく起きた。
「あなた……けっこー起きるの遅いのね…」
「んあ?なんか言ったかー?」
「いえ、何も言ってないわ、鈴仙と私は準備出来てるから早く顔を洗うなり何なりしてきなさい…」
「はぁーい」
そう言って翔は湖の方に消えていった。
「さて、私達もテントを片付けて、行く準備しますか!」
「……そうね、行きましょうか」
テントも片付け、私と翔と依姫様で作戦を組んでいた。
「まず、依姫は普通に都へ帰り、賢者様に椎名翔を連れてきた、と言って、紐で縛った俺を連れていってくれ。」
「分かったわ……」
「んで、鈴仙は……依姫が刀を構えて、戦闘準備に入ったら、俺の前に落ちてこい、んで、そこからは賢者様との戦いってこと………まぁ、いわゆる奇襲ってやつだな…」
「まぁ、ありがちかもしれないけど…それしかないわね…」
私も色々考えては見たが、確かに翔の作戦が一番最前かもしれない。
「さぁ、行くぞ…」
そうして私たちは月の都へ向かった。
ちなみに私たち以外の幻想郷組はどうなったかと言うと、
月面戦争は優勢らしい、だが綿月豊姫様が今幻想郷で師匠と、対峙しているらしい。
平和に終わればいいが…
そうして、私たちは5分ほどで月の都に着いた。
「さて、翔、縛るわよ…」
そう言って、依姫様はよく分からない紐を出した。
そして、翔の両手首をきつく縛る。
「………なんだこの紐は……」
「フェムトファイバーの組紐…………らしいわ、姉様に緊急用で貰ったやつだから詳しくはないんだけど…
「フェムト」というのは
すると、依姫様は豊姫様の口調を真似て……
「須臾というのは時間の最小単位。
時は須臾という小さな時間を認識出来ないから連続に見える
でも、本来はその須臾が組み合わさって初めて時間というものができる。…………らしいわ」
「…………どういう事だ?」
翔が小首をかしげる。
「つまり、このフェムトファイバーは、目に見えないくらいの小さな紐で組まれた組紐。それは限りなく連続した物質に見える。そうすると紐の不純物が一切なくなり、切ることも破壊することも出来ないくらいの強度を誇る。
これをさらに太くしたら縄ができる、それは………そうね、身近なもので言うと
もっとも、フェムトファイバーの組紐はあなたの刀では切れないわね…」
翔が驚く。
「………何で切れない紐で俺を縛るんだ……」
「少しでも信憑性を増すためよ。
それに、祇園様の刀ならこの組紐を切ることが出来るから」
「そ、そうか……ならいいんだが…」
「さて、準備も整ったし、行きましょう」
「翔!私はここの屋根裏に隠れる、だから上手くやんなさいよ!」
そう言って、私は翔のもとを離れ、都の本殿の屋根裏へ向かった。
俺と依姫は本殿の真正面のドアから入った。
「へぇ……こんなに凄いところなのか……」
思わず見惚れるほど綺麗な建物だった。
「さぁ、賢者の間よ……翔」
「あぁ…」
こうして、俺らは賢者の間へと入った。
「失礼致します!」
「お、依姫か………椎名を連れてきたか?!」
う、うわ、おっさん度ぱねぇな賢者様……
俺は少々引いていた。
小太りで眼鏡をかけ、ザラザラしてそうなヒゲを生やしている。いかにも中年男性って感じだ。
こう……賢者ってめっちゃ凛々しい人がやるんじゃないの?
俺の偏見だが……
「ええ、王家吸血鬼、ロミア・カーティスの息子
椎名翔を連れてまいりました」
「おお!でかしたぞ依姫!
あぁ……エリナ様……これで王家吸血鬼時代がまた始まりますぅ………!」
うわ…きもい……
いや、こんな時に言っていいのかもわからないんだけどさ………うん、ふつーのオッサンだわ…
40代くらいの…
「はい、ですので、椎名翔をここで思う存分暴れさせてやりましょう……」
依姫は涼しい顔で言う。
「あぁ、そうだな依姫!そなたには今までにないくらいの報酬をくれてやろうぞ!」
「………何か勘違いしているようですね賢者様……」
そう言って、依姫は祇園様の刀を抜く。
「椎名翔をここで……この本殿で暴れさせてやりましょう… と、言ったのです」
すると、賢者様の真上から鈴仙が降りてきて、銃から10発ほど発砲した。
しかし、賢者様は何かの結界で弾く。
「ほぅ……何のつもりだ……?
依姫……この私に逆らうというのか?」
「ええ、全くもってその通りです。
ですから、王家吸血鬼時代なんて来ない!」
俺の両手首のフェムトファイバーが解け、俺は一直線に賢者にムラサメを突き刺した………はずだった。
スピードもタイミングも完璧だったのに、剣先が賢者を貫いていなかった。
鈴仙の銃弾もそうだ、賢者に触れてすらいない。
「………そりゃ反則だろ……」
「私に逆らうなど100年早い!王家吸血鬼よ!」
すると、結界が解放され、その衝撃で俺と鈴仙は吹っ飛ばされた。
俺は少しだけ吐血し、
「………へぇ……あんた相当やばいな……」
思わず反則級の、技を見せつけられ俺は弱音を吐く。
なんだよ………その能力……
俺はこいつの神力が姉に似ていて不愉快だった。