「し、執事………ですか……」
「そうよ、本当は衣玖がこのポジションなんだけど最近忙しくてね、代理みたいなものよ」
当然、今は天子様の部下なので逆らうことなんて御法度だ。
「分かりました。
経験はないので…多少のご無礼はお許しください…」
「ええ、よろしくね、奏」
その夜。
「奏ーお菓子作ってぇー」
と天子様がダラーっと机に伏せている。
すげぇな……
昼と夜のON/OFFが激しい。
あのカリスマ性はどこへ………?
「分かりました。
少々お待ちください」
俺は台所へ向かい、クッキーを焼いた。
昔から俺はかなりの甘党でお菓子作りが趣味なのだ。
「お待たせいたしました。クッキーでございます」
「ん、ありがと」
天子様はこちらを見ずに心にもない礼をいう。
しかし、その真顔はクッキーを口に運んだところで崩れる。
余程美味かったのか、目がキラキラして俺の方を見る。
「美味し…………」
「そうですか…ありがとうございます」
と、笑ってみせる。
「ええ、これは美味しいわ!明日から毎日作ってちょうだい!」
「…………流石に毎日は飽きませんか?」
「大丈夫よ!この味は絶対に飽きないから!」
「…………材料があるのならばいくらでもお作りしますよ」
そうして俺は毎日天子様にクッキーを作るようになった。
すると唐突に…………
「奏くん!少し嫌な予感がする………」
千里がふよふよと浮いて俺に近づいてきた。
いつも余裕な表情の千里が少し動揺している。
「い、嫌な予感?どういう事だ?」
「奏くんと同じような力を持っている奴がこの近くにいる。敵対心丸出しだ………」
俺と同じような力?
疑問に思いつつも俺は咲名千里を持って天子様と外に飛び出した。
「な、何もいないじゃない!脅かさないでよ!」
天子様が千里に向かって言う。
「あ、あれ?おかしいな?」
千里も遊びで俺らを呼んだ訳では無いようだ。
でも……本当にそこにはいつも通りの天界の景色が広がっていた。
「はぁ………今のだけでどっと疲れが来たわ………
早く戻りましょ?」
天子様が呆れた顔で玄関に向かった。
俺はそこで少し引っかかった。
玄関のドアってあんなに青かったか?
俺はそこを凝視していた。
天子様がドアに手をかけようとした瞬間。
俺はそれがどう行ったものか理解出来た。
「危ない!!!」
「え、何よ……」
俺は天子様を後ろに引いた。
すると、さっきまで天子様がいた所にひとつのぼやけた人型のシルエットが浮かんでいて、握っていた剣を振り下ろしていた。
……あれは………亡霊?
避けることは不可能と感じたため、咲名千里でそれを止める。
「!!」
な、何て力だよ……!
身長も力も俺とは桁違いだ。
「………愛……………原…………取り…………戻す………」
と、亡霊が何かを呟いている。
俺は聞き耳を立ててそれを聞こうとしたが
間髪入れずに亡霊が剣を横に振った。
俺はそれをバックステップで躱し、間合いをとる。
能力………使ってみるか。
俺は剣先に集中して、能力を発動した。
すると咲名千里の刀身は紫色に光る。
これは心霊現象の霊を払う技だ。
あいつがもし亡霊の一種ならばこの技は効くと思う。
「奏くん!あいつは剣と盾を持ってる!
最初は直接亡霊の体を狙うのではなくてその周りの装備をひとつずつ壊していきましょう!」
と、千里が助言をする。
「あぁ、わかった!」
「私も協力するわ!奏!」
非想の剣を手に持った天子様が加勢してくれる。
「はい、行きましょう!」
「非想「非想非非想の剣」!」
天子様は亡霊の懐に入り込み鮮やかな弧を描き、切り傷が亡霊に入る……………はずだったが……
「なっ?!」
当然、亡霊は実体化している訳では無いのでものなどは透ける。
「……ッ!天子様は下がって衣玖さんを呼んできてください!」
「……!……分かったわ!」
天子様は戦闘になると融通が効く。
この亡霊は確かに攻撃が通らない。
そこで重要なのは霊を払うこの技だ。
俺も亡霊の立ち回りに注意しながらジリジリと近寄る。
「ふっ!」
咲名千里を上下左右から10連撃程叩き込む。
最初の5発は亡霊の大きな盾がそれを防ぐ。
しかし、さすが妖刀と言うべきか、盾も段々と傷がつき、終いにはバラバラに砕けた。
………チャンス!
盾が壊れたことにより大きな隙ができた。
俺はそこを見逃さず、心霊現象の刀身で亡霊の脇腹を斬った。
「………奏くん。普通の亡霊なら、ここで成仏するけど…………こいつ……ここへの執着がスゴイ……強い怨念があるからそれ相応の霊力をこっちも使わないと……」
「ど、どうすればいいんだよ?!」
「私が咲名千里に入って霊力を強化する!
亡霊に連撃を叩き込んで!」
「お、おお!わかった!」
すると千里はその場で刀身に入り込んだ。
すると、さっきよりも刀身が濃い紫色に光った。
俺は亡霊を見据えて、隙を見る。
「………ここだ!」
俺は一瞬の隙を見逃さなかった。
近くまで詰め寄り、上下左右、全方位から咲名千里で亡霊を切りつけた。
さっきよりも手応えがあり、まるであの時みたいに………
そう、人を斬ったあの時と同じように………
斬っている時の俺の顔は………
薄汚れた………残酷な笑みを浮かべていた。
短めですいません
読んでくれてありがとうございました!