「何よ………これ……」
私はその手紙の内容を読んで体が震えだした。
古明地の者へ。
私達は貴様ら2人を永久に恨み続けている。
心を読み、私達の精神を崩した。
今更その目を潰しても無駄だ。
もう1度言う。私達は古明地姉妹を恨み、憎み続ける。
「な、なんだこれ……」
隣で読んでいた奏が驚きの声をあげる。
「……不知……聞いたことないな………」
私はそのまま奏の方に歩み寄り、体重を奏に預けた。
「怖い…………怖いよ………」
私が奏の側で震える。
本当にこの時は恐怖心がほぼ10割だった。
そんな私を落ち着かせてくれるように奏は背中に腕を回し、私を優しく抱きしめてくれた。
「大丈夫…………俺達が守るよ………こいしちゃん…」
その優しく包み込むような声音に私は少し安心してしまう。
奏を強く抱き締めて私はすすり泣く。
それを奏はいつまでも抱きしめていた。
それから10分後。
「大丈夫……?こいしちゃん?」
「うん………大丈夫………それよりもごめん。奏の服が………」
私が奏に密着させたまま泣いていたので私の涙で奏の服が濡れてしまった。
「あぁ、全然大丈夫だよ。洗えばいいしね…」
奏は私に優しく微笑んだ。
私も微笑み返し、気持ちを切り替える。
「奏、こいし、話の途中悪いけど、今はこの不知について考えましょう」
と千里が口を挟む。
永琳も帰り、この場にはお空とお燐、私と奏、千里。そして、今も尚昏睡状態のお姉ちゃん。
この中で手紙の内容を紐解いていく。
「多分……不知って言うのは………………あっ」
千里が話している途中に何かを思い出した。
「な、なんか分かったのか?」
「不知………不確かではあるんだけど「不知」って言うのは地上の人里を支配しようとした偽善の妖怪のことだと思う。その時ちょうど居合わせた妖怪によって全員が情緒不安定になり、その後の攻撃によって滅びたらしいんだけど…………」
千里が一つ一つわかりやすく説明する。
「……もしさっきのやつがその不知だったら辻褄が合うな」
「確かに……でもどうして今頃?攻め時ならいくらでもあったよ………?それに……お姉ちゃんを殺すこともあの時いくらでも出来たはず………」
と、真面目に私も考えていると
お空や、お燐、奏、千里など全員が何故か私の方を見て驚いていた。
「戦闘の時も思っていたんですけど………こいし様って結構機転の効く方なんですね」
「確かにな、俺もさっきこいしちゃんの判断で助けられたし………」
「今の解説も説得力が違うしね………」
と、今までに無いくらいべた褒めされる。
嫌な気分ではないが少し照れる。
「そ、そう?それはうれしいな……」
話が逸れたので私自らが軌道修正する。
「んで、話戻すけど……不知はどうしてお姉ちゃんを殺さなかったんだろ………」
「……今回の襲撃はさとりを殺すことが目的じゃなかったんじゃないのか?」
「そう考えるのが無難ね………」
「そもそも………こいしちゃん、不知って知ってる?」
奏が私に問う。
「不知………聞いたことはあるけど………そういうのはお姉ちゃんの方が詳しいかな………」
「そっか……………まぁ、とりあえず手がかりがないんじゃ進まない。さとり様が起きるまで待とうよ」
お燐が進言する。
「そうだね………今は落ち着こうか……」
そう言って全員が解散する。
私は何故かお姉ちゃんのそばを離れたくなかった。
誰もいなくなり、私と寝ているお姉ちゃんの二人になった。
「………お姉ちゃん………今は奏達がいるからね………」
もちろん、返事はない。
こうして見ると、お姉ちゃんは本当に生きているのかも不安になる。
これから………不知が私達古明地姉妹を殺しにくる。
そう考えると、ますますお姉ちゃんのそばを離れたくなくなった。
「……やっぱり……怖いな……」
少し涙を流す。
すると部屋のドアが静かに開いた。
ドアの方を見ると奏がパーカーを脱いだ状態で入ってきた。
奏は少し戸惑った顔で
「やっぱり…………怖い?」
「……うん……」
私は本音を伝える。
「………そうだよね………妖怪とはいえ、まだこいしちゃんやさとりは子供。まぁ、俺もまだ子供だけど…………」
「……奏は…………こういう時どうしたらいい?お姉ちゃんも倒れて……やっぱり私ひとりで立ち向かわなきゃいけないの?」
少し力を入れて言葉にする。
奏はベッドに腰掛け、話し始める。
「…………過去って言うのはそういうものだよ…………時には1人で立ち向かわなきゃいけない……………俺にはそんなにひどい過去があった訳じゃないから分からないけど………」
と、言葉を続ける。
「過去は………1人で立ち向かわなきゃいけない。でも、
まるで私とお姉ちゃんを同時に包むような声音で言う。
「奏………」
「それに………その過去も……こいしちゃんとさとりの2人の問題だ…………2人でゆっくり克服していけばいい…………過去も必ずしも1人とは限らないからね………」
奏の言葉にはいつも助けられる。
これが優しさって言うものなのかな…………
私は改めて奏の凄さに驚く。
「うん………ありがとう奏………少し元気出たよ……」
「なら良かった。あ、お燐が晩御飯できたってさ!」
奏の顔が明るくなる。
「………もう私お腹ぺこぺこだよー!」
「今日はなかなか豪華だったよ!」
「え、ほんと?!楽しみー!」
そういう会話をしながら私達は部屋を後にする。
もう、2人はいなくなっただろうか………
目が覚め、起きようとしたらこいしが泣きそうな顔で私を見ていたので起きづらく、そのまま狸寝入りしてしまった。
すると奏が部屋に入ってきて、こいしに優しい言葉を投げかける。こいしだけでなく、私にも………
こいしの本音を聞けたのと、奏の言葉により、私は2人が去った後、少し涙を流してしまった。
「……………」
晩御飯も食べ終わり、私は再び奏とお話しをした。
「そうそう!それでね______」
「あはははは!」
奏とはもうすっかり打ち解けた。
まだ出会って3ヶ月程度。
もう奏はお兄ちゃんみたいな存在だ。
こんなに人と会話するのが楽しいとは思わなかったくらい。
「あ、もうこんな時間。私そろそろ寝ないとな………」
時刻は11時。
寝ないとお姉ちゃんに怒られる時間だ。
「ねぇねぇ奏?今日はお姉ちゃんいないし、まだ話してていい?」
少しニヤニヤして悪者感を出す。
「ダーメ、明日に響いたらダメでしょ」
「むぅー」
こういう所だけやけに丁寧なんだから…………
まぁ、いっか。
「じゃあまた明日もいっぱい話そうね!」
「あぁ、おやすみ」
私は手をヒラヒラをと振り、奏の部屋を出る。
そのまま廊下を歩くが頭の中は奏の事でいっぱいだった。
また奏と話したい。もっと笑いあって遊んでいたい。
私はこの感情がなんなのか分からなかった。
「おやすみ……………………お兄ちゃん………」
そう呟いて、私は自分の自室へ戻るのだった。