「うーん…………」
前で両腕を組み、下を向いて考える。
奏が子供化したのは何が原因だろうか?
不知から受けたダメージも私が回復魔法かけたから完全に癒えているはずだから……………
「何でだろうな……」
「何が?」
ひょこっと顔を出す奏。
いつもより声が高いので一瞬誰か分からなくなる。
「わぁ?!か、奏?どうしたの………?」
「いや、こ、こいしお姉ちゃんが何か考えてるみたいだったから………」
可愛いやつだな…………
まだこいしお姉ちゃんって言うの躊躇ってる………
「いや、奏が子供化したのは何でだろうって…………」
「今千里が調べてくれてるから大丈夫だよ。そのうち分かるさ」
「ならいいんだけど………」
「失礼します。こいし様。さとり様がお呼びです」
「あ、ほんと?ありがとうお燐」
突然お姉ちゃんに呼び出されたので、奏を連れて書斎へと向かった。
「お姉ちゃんー?何か用なのー?」
お姉ちゃんはいつもより真剣な顔で座っていた。
「あぁ、こいし。奏もちょうど良かった」
その場にいたのはお姉ちゃんと千里だった。
「奏くんの子供化の理由を話し合いたいと思って。後、不知から新しい手紙が来たの」
奏が一歩前に出る。
「ま、マジかよ…………今の時期に……」
すると千里が奏に近づき、その手紙を渡す。
古明地とその仲間達へ。
我らは1週間後の6月26日。
全軍を連れて幻想郷を襲撃する。
もちろん、目標は貴様ら「古明地姉妹」だ。
そこで真実も教えるつもりだ。
必ず来い。
不知。
「い、1週間後………?」
私は手紙を読み上げ、その場で硬直する。
「6月26日………私が妖怪を退けた日………」
そう、以前に千里が言ってた。
人里を支配しようとした妖怪をちょうど居合わせた妖怪が撃退、滅ぼしたというお話。
そのちょうど居合わせた妖怪って言うのがお姉ちゃんなのだ。
それにより、不知の大半の精神が崩壊し、人里は支配されずに住んだのだが…………心を読んだことにより、英雄ではなく、嫌われ者。みんなから恐れられるようになったのだ。
「多分………それは狙っているよね………昔の戦いを彷彿とさせたかったのかな………」
「あぁ。俺らの精神から崩すつもりなのか?」
と全員が考察をしてみる。
すると、お姉ちゃんがいつもの顔に戻り、
「あ、そうそう、それで奏が子供化しちゃったやつだけど…………一つ思い当たる節があるの………」
「ま、マジか?!」
奏が書斎の机に乗り出す。
「あくまで思い当たるだけよ、あまり期待しないでね」
「それでもいい、聞かせてくれ」
お姉ちゃんは一つ大きな息をつき、こう言った。
「「妖怪の魔法は掛けた者と背丈がほぼ等しくなる。」って言うのを、パチュリーの図書館から、千里が見つけてきたわ…」
「妖怪の魔法…………?うーん………」
奏は顎に手を置き、考え込む。
一方私は…………
ダラダラと冷や汗をかき、黙り込んでいた。
「…………〜っ!」
まずいってこれ!絶対に原因私じゃん!
そう、私が怪我を負った奏に「古明地こいし」の回復魔法をかけちゃったから……………
あ、そう言えば…………
「この回復魔法はね…………人にはよっぽどの事がない限り使っちゃダメよ。まぁ、自分にかける分にはいいけど………」とお姉ちゃんに昔言われたことがあったことを思い出し、さらに冷や汗をかく。
それにお姉ちゃんは気づいたのか、「あっ」という顔をして、すぐにため息をついた。
「はぁ…………なるほどね………」
あれ、私の心は読めないんじゃ………
しかし、お姉ちゃんはそれでも言葉をつづける。
「顔に出すぎよ、こいし」
「へ?!な、何のことかな〜?」
と下手な演技でとぼける。
「?………何のことだ?……………………………………あ」
しばらく奏が考え込み、それに理解する。
「こいしお姉ちゃんが…………………原因だったんだね………」
と、奏にも気づかれたので諦めて奏に頭を下げる。
「ご、ごめん!私は故意にやったわけじゃなくて…………ただ奏を助けたくて…………」
奏もそれは分かってくれているようで……
「わ、分かってるよこいしお姉ちゃん。別にこいしお姉ちゃんを責めようなんて考えてないから…………」
私は奏の優しさに感激し、大粒の涙を流してしまう。
「奏ぇ〜」
「おわ?!ちょっ、こいしお姉ちゃん?!」
奏に抱きついた。
「もう、大丈夫?」
「うん、ありがと……」
やっぱり、小さくなっても奏は奏だな……………
そう思った私だった。
「じゃあさとりお姉ちゃん。この魔法っていつ切れるの?」
「多分…………時間だと思うのよね」
「やっぱりそうだよね……………まぁ、別に不便じゃないしいっか」
そうして私達はまた不知の話題に戻す。
「不知の戦力ってどれくらいか分かるか?千里」
「うん、さとりちゃんが撃退した人数が約100人。だからそこまできつい戦いにはならなさそう……でも、1人1人の個人能力は高めだったらしい」
「まぁ、人里を支配するくらいだしな…」
「んで、さとりちゃんが唯一精神崩壊出来なかったのがこの……………ねぇ、これなんて読むの?」
「清籟」と書いてある。
すると奏が……
「「せいらい」じゃねぇかな?確証は無いけど……」
「清籟?なんか可愛い名前だね…………」
とお姉ちゃんに言うと
「だって女性だもの………」
「え?!」
そう、この「不知清籟」という人は女性の長なのだ。
私はその事実に目を見開く。
「まさか………女の人だとは………」
「でもやることはとても女の人とは思えない………かなり非人道的なやつだわ……」
お姉ちゃんの拳がぎゅっと握られる。
「……まだ生きているのか…………?」
「あれから約50年ほど………まだ生きてはいるでしょうね………不知も妖怪だし………」
「なるほどな…………じゃあ、その清籟の首を取れば俺らの勝利ってことか………」
「そうなるわね…………まぁ、今日はもう夜遅いし、解散するわ。おやすみ」
「おやすみお姉ちゃん…」
そう言って全員が書斎から出て、自分の部屋へと向かっていった。
途中まで私は奏と同じ、とゆーか隣部屋なので、一緒に帰っている……
「まぁ、とりあえず原因がこいしお姉ちゃんで良かったよ………」
「え?どうして?」
「不知のやつだったら聞き出すの大変でしょ?」
「あぁ、なるほど………」
私は苦笑いをして奏と話す。
「まぁ、私は奏がこのままでも別にいいんだけどね〜♪」
「俺が良くないんだよ……………何で女の子と同じ身長にならなきゃいけないのさ…………」
「いやいや、充分可愛いからいいじゃない☆」
奏の両頬をつまんで引っ張る。
「いたたた!痛いってこいしお姉ちゃん!!」
パッと手を離すとバチンっと奏の頬が元の位置に戻る。
「俺は……可愛いじゃなくてカッコイイって言われたいんだよ………」
赤くなってる頬を擦りながら涙目で言う。
「あはははは!じゃカッコイイ大人にならないとね〜♪」
「努力するよ………」
奏も弟が大分板についてきたのかな?
普通大人が子供の役やるのって恥ずかしいはずなのに………
多分、私を不機嫌にさせたくないんだろうな…………
やっぱり………優しいな………
私は奏が弟になり、少し距離が縮まった気がする。
もっと家族らしくなった………
私はお兄ちゃんの奏も弟の奏もどっちも関わりやすくてつい話し込んでしまう。
それに…………お姉ちゃんや千里達と話す時より、胸が締め付けられる感覚に陥る。
なんだろうか……………私は心を閉ざしてからそこまで親しくない者に何の感情も抱いていなかった。
奏と出会ってまだ3ヶ月程度なのに……………色々な感情…笑い合いたい、喧嘩もしていたい、奏ともっと関わりたいと思う自分がいる。
1度も経験したことのない感情。私には分かる。
これが…………「恋」だ……………
私は初めて、自分の感情を理解出来た。