東方想幻華 (一時連載休止)   作:かくてる

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8話 過去に立ち向かう

奏のことを意識し始めてから、私は心の整理がつかなくなったり、目の前で慌てちゃったりしてしまう。

 

「………私………弟相手に何してるんだろ……」

 

そう、好きな人で義理とは言え奏は「弟」なのだ。

そう考えると少し自分が馬鹿らしくなる。

弟に恋するなんておかしいでしょ?

こんなことなら姉弟になろうなんて言わなきゃ良かった……………

と、今更後悔しても仕方ない、気持ちを切り替えて私は日常を過ごす。

 

 

 

 

 

 

不知からの例の手紙が来てから5日後。

ついに明日、私とお姉ちゃんの過去に決着をつけることも出来る。

 

「はぁ………」

 

「どうしたの?こいしお姉ちゃん」

 

今は午後の11時。

私と奏が壁に寄りかかっていつものようにお話をしている時間。

だが、今日だけは雰囲気が違った。

 

「明日戦わなきゃいけないのかなーって思っただけだよ………」

 

「そうなんだよね…………明日はとうとう決戦。という訳か………」

 

結局奏の体も戻らず、相変わらず子供のままだ。

彼曰く「子供だと体が軽いし動きやすいからいい」と言っている。

 

「………私たちの過去に幻想郷や奏を巻き込んじゃったね………」

 

「まぁ………こればっかりは仕方ないね……………俺ももうこいしお姉ちゃんの家族だし、今じゃ関係ないなんて思ってないよ………」

 

優しく、奏は話す。

それでも私は下を向き、顔を暗くする。

 

「…………元気だそうよこいしお姉ちゃん。いくら落ち込んだって戦いは避けられない…」

 

「分かってるよ……………でも……前みたいにお姉ちゃんや他のみんなの苦しむ顔を見たくない………」

 

どうやら私は、前にお姉ちゃんが不知の1人に大怪我を負わされた事がある意味トラウマになってしまっているらしい。

 

「…………」

 

「この戦いがもう避けられないのは分かる……………でもそれ以上にお姉ちゃん達の存在が大切なの…………」

 

ポロポロと何かが私のスカートを濡らす。

あれ…………どうして泣いてるんだろ………

もういいや……………感情に任せよう……

 

「何で…………私達は戦いを避けたくて地底に来たのに……………これじゃ意味がないよ………」

 

「こいしお姉ちゃん…………」

 

私はそのまま本音を奏にぶつける。

 

「何で私は「覚り妖怪」なんかに生まれちゃったの!普通の………奏みたいな普通の妖怪に生まれたかった!地上の人たちとも…………仲良くしたかったのに………」

 

しゃくりあげながら泣く。

すると私の右手に微かな温もりを感じる。

フワッとした…落ち着くような温かさ………

 

「こいしお姉ちゃん……………俺にはお姉ちゃん達がどれだけ苦しい思いをしたのかは分からない………………でも、これだけは言える………」

 

一呼吸おいて、私の目を奏の碧色の目が捉える。

 

「…………過去を見るより、未来を見た方がいいと思うんだ…………」

 

「………え?」

 

「古明地姉妹がどれだけ頑張っても………人々の評価ってあまり変わらないと思う。じゃあ、もうそれは切り捨てるしかないんじゃないかな………」

 

抱擁するように………

 

「だから……………これも一つの壁だよ。これからも地霊殿のみんなと楽しく過ごすための…………ね?」

 

いつもそうだ。奏の言葉には何かを奮い立たせる魔法でもかけられているみたいだ。

説得力もあり、反論することも出来ず、ただ奏の言葉が頭の中でリピートされる。

 

「…………勝とうよ、こいしお姉ちゃん……」

 

「うん…………ありがとう。奏………」

 

奏のこんな所に惚れたんだろうな………………

 

「元気になってくれたんならよかったよ………」

 

奏は微笑み、廊下にある時計を見上げる。

 

「じゃ明日もあるし、俺はもう寝るね……」

 

「うん、おやすみ!」

 

手を振りながら奏は歩いて自室に戻る。

私は「あっ」という声を出して一つ奏にしたいことを思い出した。

 

「奏、奏!」

 

奏を呼んで、手で招く。

 

「ん、何ー?」

 

奏は私に近づいてきた。

 

一呼吸おいて、私は奏の顔に自分の顔を近づけ………………

 

 

 

 

 

 

奏の頬にチュッと口付けをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ?!」

 

私はすぐに離れ、奏の顔を見る。

私がキスしたところを手で触れ、顔を真っ赤にしてこちらを見る。

 

「えっ………あ………その……」

 

どうやらかなり動揺しているようだ…………

 

私はそれを見て、にっと白い歯を奏に見せて、こう言った。

 

「姉弟の証!明日は頑張ろうね!奏!」

 

奏もこれには切り替えができなかったようで………

 

「う、うん…………」

 

弱々しい返事だった。

でも逆にそれが決定打となり、私が恥ずかしくて死にそうだった。

頑張ってその感情を抑え………

 

「じゃあおやすみ!」

 

そう言って私は走って自室へ戻る。

 

「ふぅ………」

 

パタン、とドアを閉めてベットにうつ伏せで倒れる。

 

全身に布団の柔らかさを感じる。

私はここでようやく自分のしたことを振り返り………

 

「〜〜〜っ!////」

 

パタパタと足を振り、真っ赤になる顔を手で覆う。

どうしてこんなに恥ずかしいのよ!弟にキスしただけじゃない!

と自分を落ち着かせるように心の中で言うが、なかなか落ち着かない。

 

数分後。

ようやく落ち着いた私は……

 

「よし、明日頑張るか…………!」

 

自分に喝を入れた。

明日はお姉ちゃんのため、幻想郷のため、そして何より、励ましてくれた奏のために…………戦うんだ…………

人生最大級の戦いに緊張するはずなんだけど…………どうしてだろ………?急に戦いが怖くなくなった………

これも………「家族」がいるから………なんだろうな………

 

私はそのまま眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてきょう。6月26日。

とうとう不知との決戦だ。

 

私はドアを開け、欠伸しながら歩く。

すると、同時に奏がドアを開けた。

やはり昨日のことを少し意識してしまい、顔を背けてしまう。

 

「お、おはよ。こいしお姉ちゃん。今日は頑張ろうね………」

 

躊躇いながらも奏が口を開いてくれた。

 

「うん、奏もね………」

 

そう言ってふたりで食卓に向かった。

 

するともうお姉ちゃんや他のみんなは集まっていた。

 

「さて、全員揃ったわね。今日の配置を言うわ。席に座って」

 

そう言って私と奏を近くの席に座らせた。

 

「………どこに行くかは……奏。分かるわよね?」

 

「うん、不知が来るところは「人里」の可能性が高い。元々不知はそういった集落を支配するのと、古明地姉妹を倒すことが目的だから、不知の方も古明地は人里に来るって予想してると思う」

 

「………そう、だから私達も被害を抑えるために人里で戦うわ」

 

朝食を食べながら私はその話を聞く。

 

「じゃあ人里で不知を迎撃するってこと?」

 

「そう、だからもうそこで全力でぶつかるってこと」

 

「じゃあ、清籟の相手は………こいしと奏と千里にお願いするわ」

 

結局狙いは古明地なのだ。

だからお姉ちゃんとは別行動でなるべく不知を分散させたい………という考えなのだ。

 

それから数分後に解散し、準備に入って私たち全員で地霊殿を出発。

それから5分程で人里に着いた。

奏になるべく人里の住民には避難勧告を出し、今は博麗神社や守矢神社にいるだろう………

 

「さぁ、そろそろ来るわよ………最初にお空。お願いするわよ」

 

「はい、さとり様」

 

お空もいつになく真剣で集中した顔をしていた。

 

「こいしお姉ちゃん…………」

 

奏に呼ばれた。

 

「ん?」

 

「この戦いが終わったら……………その………ちょっと話したいことがある………」

 

「?………分かった……」

 

話とはなんだろうか?

そんなことを考えているうちに上空から何か大軍が来た。

およそ100。奏とお姉ちゃんの考えは的中したようだ。

 

「来るぞ!」

 

全員が戦闘態勢に入った。

 

 

 

 

私たち古明地の過去に終止符を打つ。

私はそう心に決め、不知との戦いに挑んだ。

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