「はぁ………はぁ……」
まだ清籟は来ていないが、不知1人1人がかなりの実力を持っている。
私ひとりじゃ、倒す人数も限られてきた。
しかし、奏は次々と不知を倒していく。
目にも留まらぬ速さで剣の軌道だけが見える。
「せぁぁぁ!」
高い声で奏が叫ぶ。
「奏くん!右に16人!左に17人!どうする?」
「迷わず左だ!」
奏と千里は阿吽の呼吸というやつだ。
本当に相性のいいコンビだ。
私もそれに負けず、弾幕を打ち続ける。
「スペルカード! 「サブタレイニアンローズ」!」
「スペルカード!想起「光り輝く水底のトラウマ」!」
「スペルカード!「サブタレイニアンサン」!」
「スペルカード!妖怪「火焔の車輪」!」
地霊殿組全員が声を合わせて言う。
そして全員、自分の中の最大と言っても過言ではない大技を叩き込んだ。
大半を倒した奏は私たち4人の弾幕に見とれていた。
「スゲェ………」
私も四人で同時に弾幕を打つとは思わなかった。
それにより、不知の半分が吹っ飛んだ。
こっちがかなり有利になったが………
少し引っかかる。
「奏!何かおかしくない?」
私が奏に近寄り、疑問を言う。
「いつまで経っても霊夢たちが来ない!不知は全員ここにいるのに………」
「あ、言われてみれば…………まさかとは思うけど……不知はもっといる……………なんて考えたくないな……」
「そう考えるのが妥当ね。奏くん、こいし。移動するわよ。1人だけ妖力が並外れなやつがこっちに向かってきてる」
私はそれを一瞬で理解出来た。
「清籟か?」
「恐らくね」
「よし、こいしお姉ちゃん、千里。人里を出て、妖怪のに行くぞ」
「うん」
そう言って私達はお姉ちゃん達と離れ、妖怪の山の広場まで飛んだ。
多分、清籟はこちらに来てくれると思うから、ここで決着が着くと考えていいだろう。
すると青い空から一つ人影が見えた。
「…………来たか……」
「あらあら、ここには古明地の妹と、よく分からないガキだけしかいないのかしら?」
凄い大人びた声だ。
露出の激しい衣装に青髪のロングストレート。
背中にはピンク色の翼が生えている。
敵ながら美しい人物だ。
「が、ガキ…………」
奏は余程ショックだったのか、ガキ発言に対して少し落ち込んでいた。
「俺はガキじゃない。「咲名千里」の所持者。愛原 奏だ」
すると、清籟は少し驚いた顔をして……
「あら、そんな有名人と渡り合えるなんて光栄だわ」
「………久しぶりね………清籟…」
フワッと刀から千里が出てきた。
「あら千里ちゃん。久しぶりね…」
「お、おい千里!お前清籟知らないんじゃないのか?」
「ごめんなさい。清籟は……私の友人よ…」
「そ、そんな………」
私と奏は同時に驚く。
まさか………千里と清籟が友人関係だったとは………
「でも安心して……私はもうあいつは嫌いだから」
「ひどいじゃない千里ちゃん……私はずーっとあなたの事が大好きよ?」
「何よ白々しい。私のこと見捨てたくせに今更何を言ってるのよ」
千里の態度がかなり酷くなっている。
普段、奏にも見せたことのない………千里の目は…殺意に満ちていた。
「私は見捨てた覚えは何のだけどね〜♪」
「…………………………奏くん。全力で行こう」
「おっとその前に、君、奏くん………と言ったわね?」
「あ?だからなんだよ………」
「少し昔の話をしてもいいかしら?」
奏は少し答えに迷った後、
「千里」
「いいわよ、情報は掴んでおきましょう」
「まず不知はね、元々………誰の臣下だったか分かる?」
奏はそこで気づいた。
私はその奏の顔を見て、察することが出来た。
そうか…………千里の友人だったということは……
「……倉見………か?」
「ビンゴ♪千里ちゃんの本名。片波と私達不知は家族のようなものなの」
「不知と片波は仲が良かったのか?」
「そう。それであなた達、愛原と倉見の戦いの最中。不知と片波は戦場に何度も呼ばれたわ………16歳ながらも戦闘は頭3つほど抜けていた片波咲は特に………ね」
片波咲………というのは千里の事だろうか?
まぁ、そう考えた方がいいだろう……
「でも、倉見は愛原に苦戦し、ストレート勝ちするのは難しいと判断した倉見は愛原の伝統でもある、「刀術」を消すため、伝説の妖刀。「咲名千里」を人柱を作って倉見がコントロールできるようにしたの……」
なるほど……………
私は奏の隣で考える。
「そこで人柱を選ぶ時にね………咲が真っ先に手を挙げて………」
少しずつ清籟の声に笑みが零れていた。
しかし、千里が清籟の話に被せるように
「違う!」
「あら?何が違うのかしら?」
「私は………無理やり人柱にされたんだ………!やりたくてやった訳じゃない!」
「……………そうだったかしら?まぁ、どっちにしろ……」
清籟は残酷な薄汚れた笑みを浮かべ。
「”無力”で家族を守れない片波のお嬢さまだから人柱に選ばれちゃったのよ?」
「っ!」
千里の顔が苦しくなってきていた。
拳をぎゅっと握り、下を向く。
私はそれに耐えられなくなって
「ちょっと!そういう言い方は無いでしょ?!」
「あら?古明地の妹さん。あなたも同じようなものよ?」
「………」
そのままの笑みで私を見下す。
「「覚り」から逃げて、心を勝手に閉ざした”臆病者”だものね………」
清籟の言葉は直接心に攻撃が加わったみたい………
私は………臆病者なんかじゃない………!
争いがいやだったから………地底に行ったのに………
私はそこで堪忍袋の緒が切れ、弾幕を射出しようとした。
しかし、その前に隣にいた奏がいなくなり、清籟の前で刀をかざしていた。
「取り消せよ………!テメェのつまらない偏見なんか聞きたくもねぇ………」
「あら、偏見じゃないわ、事実じゃない……?」
「じゃあお前らも同じじゃないのか?たった1人の妖怪に全員がやられて…………俺も初めて聞いた時、笑ったよ………」
私は思った。
奏って本気になるとかなりのゲスになるんだな……
「………もう1回言ってみなさい?」
「何度だって言ってやる。100人いたのに情けないって言ってんだよ」
刹那、清籟の右腕が振り上げられ、奏に向かって殴ろうとする。
それを奏は刀でガギィンという音を立てながら受け止める。
力が強かったのか、奏は数m後ろに吹っ飛ぶ。
「あら?ガキのくせになかなか強そうね…」
「だからガキじゃない………愛原の子孫。「愛原 奏」だ。」
「ふぅーん………あ、いいこと思いついた♪」
「なんだ?」
「「賭け」しましょ?」
清籟が一つ私たちに提案してきた。
「私とあと1人部下を連れてくるわ。だから
「私VS奏くん&千里ちゃん」「私の部下VSこいしちゃん」で、あなた達両方勝ったら私達は大人しく退くわ。でも私たちが勝ったらあなた達には死んでもらうわよ……」
「………どっちにしろそのつもりだ」
「ふふっ…………じゃあ部下を呼ぶわね?」
パチン、と清籟がいい音を鳴らした。
それとほぼ同時に清籟の隣に1人の女性が現れた。
「呼んだ?お姉ちゃん?」
「は?お姉ちゃん?」
千里が目を見開き、清籟に聞く。
「そ、私の部下であり、妹。「不知 時雨」」
「よろしくお願いします。時雨と申します」
時雨という人はこちらに向かって一礼した。
「さて、時雨……………」
清籟が時雨に事情を話す。
「分かったわ。ではこいしさん。全力で参ります」
時雨が戦闘態勢に入った。
どうやらダガー使いのようだ。
「じゃあ奏!千里!…………」
「な、なんだ?」
奏と私は背中合わせになり、心の底から願っていることを素直に述べた。
「死なないで……………!」
「……そっちもな、こいしお姉ちゃん」
そう言って私と奏は離れた。
私は時雨の方に走り、魔法陣を展開する。
「行くよ!スペルカード!表象「弾幕パラノイア」!」
空中に浮き、スペルカードを時雨に叩き込んだ。
「ふっ!」
素早い剣さばきで、弾幕パラノイアを避けたり斬ったり………
すごい実力だ。
でも、私も負けてられない!
私は続けて弾幕を時雨にぶつけた。