時雨との戦闘は完全に私が押されていた。
「…………ふっ!」
ビュッと軽やかな風切り音を立てながら私にダガーが飛んでくる。
私はそれを防ごうとするが
「ぐっ!」
時雨の力は男も顔負けの腕力だ。
無意識で姿を消そうとしても的確に攻撃を当ててくる。
どう見たって私の方が下だ。
「スペルカード!抑制「スーパーエゴ」!」
「深淵「グラビティ・クロウ」!」
私の弾幕を本当に軽々と斬り、更にそのまま攻撃を与えられる。
一度、時雨のダガーが私の肩を深く抉った。
「!………………あぁ!」
普段、経験したことのない痛みに私は肩口を抑えながら悲鳴をあげる。
自分は治癒能力が高い訳では無いので、回復には三分くらいはかかってしまう。
まずい…………このままじゃっ………
私はその痛みに耐えながら、後ろに飛ぶ。
一旦時雨と距離を置いてスペルカードを用意する。
「スペルカード!深層「無意識の遺伝子」!」
「もう無駄だ!あなたは勝てない!」
そう言って時雨は弾幕を斬る。
確かに………もう勝てはしない…………
でも……………………約束したんだ………死なないって……
「私は諦めない…………………絶対に……」
通常弾幕を次から次へと全力で発射する。
「……………もう、興ざめです………」
時雨は呆れたように声を出す。
その刹那、時雨の目つきが変わった。
私はその目に少し後ずさり、弾幕を弱めてしまった。
それが仇となり、時雨が猛突進してきた。
「くっ、スペルカード!表象「弾幕パラノイア」!」
「終わりだ「魔神剣」!」
私の腹を突き刺した。
当然、痛みはあったがそれ以上に意識が朦朧としてしまっていた。
「がはっ…………」
血を吐いて下を向くと私の血が水たまりとなって溜まっていた。
嘘……………でしょ………
「所詮古明地はこんなものですか……………もう少し楽しめると思ったのに…………」
…………やばい……………意識が………
私……ここで死ぬのかな…………
なら……もう1度お姉ちゃんやお空、お燐に会いたかったな…………
それに………千里にも……
奏には……………想いを伝えておけばよかった……
今更、後悔した。
そして私は自覚した、もうこれは叶わないのだと、
「………そん………なの……いやだ……………!」
逆にそれが私を強くしてくれた。
もう1度、みんなで食事がしたい!
「ああぁぁぁぁぁぁぁ!!」
時雨のダガーを掴み、力を入れる。
「そんな!なぜ………」
時雨は右のダガーを離してしまった。
私はダガーを抜き、手に持つ。それを横の湖に投げた。
「ここから…………だよ………時雨!」
「ふざけるな!「ロストフォン・ドライブ」!」
時雨のダガーから一つの太いレーザーが射出され、私の方に向かってくる。
かろうじて避けたが、左腕に少し当たってしまった。
痛みを堪え、ただ勝ちたいという思いだけで…………
「スペルカード………「サブタレイニアンローズ」」
弱々しい宣言だったが、スペルカードを発動してくれた。
しかしまたもや時雨はその弾幕を斬る。
私ひとりの力じゃダメなのか……………………
そう諦めていたその瞬間。
「想起「賢者の石」!」
綺麗な弾幕が私の後ろから時雨へと向かって言った。
聞き覚えのある声………………愛しい家族の声だった………
「……………待たせたわね………こいし……」
「大丈夫ですか?!こいし様!」
「お姉ちゃん……………2人とも……………よかった……」
私は安堵の息も漏らし、家族と肩を並べて時雨を見る。
「まさかこんな所で古明地姉妹が揃うとは…………」
時雨は動じず淡々と言葉を並べる。
「あら、私たちのことご存じでしたのね、時雨さん…」
お姉ちゃんは笑顔を見せているが、その瞳の奥には強い殺意を感じた。
私は痛みに耐えながら………
「お姉ちゃん、お空、お燐。全力で行こう」
「もとよりそのつもりよ!」
4人で戦闘態勢に入り、スペルカードを唱えていく。
「スペルカード!「嫌われ者のフィロソフィ」!」
「スペルカード!「カッパのポロロッカ」!」
「スペルカード!贖罪「旧地獄の針山」!」
「スペルカード!「地獄の人工太陽」!」
4人の弾幕が時雨1人に集中攻撃する。
これは時雨もきつかったのか……
「くっ!「ライトニングノヴァ」!」
斬り続けるが、その弾幕の量に勝つことが出来ず、直撃してしまう。
時雨の体は小さな爆発を繰り返し、うめき声が聞こえ、飛び散る血を眺めていた。
「ふざっけんな……………私が………こんな子供なんかに………………お姉ちゃん………」
清籟の名を呼び悲しい目をしながら、最後体全体が爆発し、時雨は消滅した。
最後の最後………時雨は「お姉ちゃん」と言った……………
私はその言葉に少し悲しみを覚える。
「時雨も…………苦しかったのかな…………お姉ちゃんと戦えなくて………」
「そうね…………」
私は感傷に浸っていた……………しかしそれも限界のようで…………ふらっと体制が崩れてしまった。
今になって時雨から負った怪我が響いてきた。
「こいし!?」
「ごめんお姉ちゃん………ちょっともう動けないや………」
ドクドクと私の心臓の鼓動が早くなる。
「お燐!永琳呼んできて!」
「は、はい!」
「大丈夫………死なないから………………でも…………「奏と千里」の戦いだけは見届けさせて…………」
「ええ………………分かっているわ」
私は横を向いて、奏と千里の戦いを見る。
「奏…………千里……………絶対勝ってね…………」
痛みをこらえながら………私は祈った。
ガキィン!!
と刀の甲高い音を響かせながら、俺と清籟は戦っていた。
今のところどちらが優勢とかはない、拮抗している。
「はぁ………はぁ……」
俺の刀は清籟の魔法で弾かれる。
清籟の魔法も俺の刀で斬り裂く。
その繰り返しだ。
「ガキのくせに…………」
「だからガキじゃないって………」
「ふふっ………もう終わらせましょうか……」
清籟は一度俺と距離を置き、こう唱えた。
「天地に散りし、白き光華よ…定めに従い、敵を滅せよ!」
一呼吸置いて
「フォーチューンアーク!」
光の刃の雨が俺に向かって降り注いだ。
刀で弾けないと判断したため、俺は横に逃げようとするが、思ったよりも範囲が広く、数本当たってしまう。
「ぐっ…………」
それなりの痛みだが、これくらいどうってことない……
俺と清籟の戦いは今まで幻想郷では経験したことのない、大きな戦いとなる。