咲名千里が一閃。
きれいな弧を描いて、眩い光とともに金色の爆発が起こった。
爆風も収まり、私は奏を探した。
すると、目の前に膝をついて下を向いている奏を見つけた。
「奏!」
私は奏に駆け寄ろうとした。
しかし、その瞬間奏の声が聞こえる。
「どうして……………」
奏の目からは涙が零れているのが分かる。
「俺は…………こんなの望んでなんかいなかったのに………」
私はその言葉を聞いてハッとする。
そうだ……………千里が死んじゃったんだ…………
それを理解した瞬間、私の中で一つ大切なものがなくなった感覚に陥った。
私も同様に膝をついて泣く。
「千里ぃ………………嫌だよぉ………」
胸に手を置いて、いなくなった千里を思う。
「………ちくしょう…………」
奏が地面を思いっきり殴ったその刹那。
咲名千里の刀身が光った。
そして、その中から…………
「せ、千里?!」
「………お疲れ様……奏くん……」
「よかった………………生きててくれたんだな………」
奏が千里に安堵の声を漏らすと、千里は横に首を振った。
「…………え?」
「私は死んだのよ………あの時間違いなく。「流星の終わり」によってね」
「……嘘だろ…………」
奏の顔がまた絶望に塗り替えられる。
しかし、それとは対象的に千里の顔は笑顔だった。
すると千里は私の方を向き
「こいしちゃん…………今まで本当に楽しかった……喧嘩したり、他愛もない会話で盛り上がったり……………私……地霊殿に来てよかった………さとりちゃんや他のみんなに宜しくね…………」
「うん………うん!!私絶対に千里のこと忘れないから!」
大きな声で叫ぶ。
声は震えていたのでそこまで響かなかった。
千里はもう一度笑い、今度は奏を見る。
「奏くん……………私は君の相棒で……良かったのかな……?」
「何言ってんだよ…………相棒はお前しかいないんだよ……!」
「そう…………嬉しいな……………私………こんなに必要とされてたんだ…………」
千里の声はだんだんと小さくなり、次第には大粒の涙を流した。
「泣くな!」
奏の叫んだ。
しかし、その奏も目尻に涙が溜まっている。
「……笑って別れよう………」
すると千里は涙を拭いて、もう一度奏を見る。
「今まで本当にありがとう。奏くん。最期に君と戦えて本当によかった」
千里の体がさらに光を増す。
その周りには粒子が舞っている。
「あぁ…………俺もだ………また会おうな、千里………いや、咲」
「ありがとうね……咲ちゃん!」
私と奏は千里の本当の名でお礼を言う。
咲は驚いた顔をしてすぐに笑顔に戻った。
その笑顔の後、千里は黄金の光とともに散っていった。
「ありがとう……………咲……」
空を向いて、奏はそう呟いた。
奏の頬には一滴の涙が流れた。
それを腕で拭いて、私の方に振り返った。
「さぁ………帰ろう……こいしお姉ちゃん……」
「うん…………」
この後、どうやってお姉ちゃんたちに知らせようか………そんなことを考えていたその時だった。
「あら、敵が死んでいないというのに随分呑気だねー」
「?!」
二人同時に声がした方を振り返る。
「……清籟……生きてたのかよ…………!」
少し後ずさり、私の肩に手を置いた。
「こいしお姉ちゃん。さとりお姉ちゃん達を呼んできて……!その間は俺が食い止めるから………!」
「で、でも………!」
「大丈夫だから!」
少し声を張り上げ、私の体を押す。
「早く!」
私は後ろを振り向き、宙へ浮いて全速力で人里に向かった。
「お願い…………死なないで……」
「あら、仲間を逃がすなんて……心優しいのねぇ」
清籟は自分の髪を弄りながら余裕の声で話す。
さっきの雰囲気とは大違いだ。
「お前には俺1人で十分だからな……」
「千里ちゃんが死んじゃったから、裏世界に行く方法をまた探さなきゃじゃない…………」
かつての親友が死んだというのに……
俺は怒りや憎悪がこみ上げてきた。
「お前はここで死ね。裏世界になんか行く必要は無い」
「あら、部外者が勝手に決められる物じゃないのよ?」
「あぁ、言い方が悪かったな………」
俺は一呼吸おいて、清籟にこう告げる。
「裏世界に行く前に、俺がお前を殺す」
清籟の目つきが変わった。
どうやら、スイッチが入ったらしい。
「いいえ………私があなたを殺して必ず裏世界へ行くわ」
俺は相棒のいなくなった空っぽの咲名千里を握り、こう祈った。
「頼む、千里……………俺を勝たせてくれ……」
もう一度笑って過ごせる日々のために……………家族のために……………
そして、大好きなこいしお姉ちゃんのために……………!
「行くぞ!」
俺は大声を上げて、清籟の元へと全速力で走った。
「来なさい!愛原奏!」
刀を両手で持ち、清籟の太ももを狙う。
しかし、それを魔法剣で悠々と受け止め、カウンターを食らう。
「ぐぁ!」
数十m先に吹っ飛ばされ、塞がっていた傷口が次々と開き、痛みが再発する。
「無駄よ!今のあなたには私を倒す力などない!」
「……それでも!……俺はお前を殺す……!」
清籟は呆れたような顔をして………
「所詮あなたは威勢だけが取り柄、興ざめだわ」
すると清籟がいつの前にか目の前まで瞬間移動していて、俺はその咄嗟の判断ができず、清籟の魔法剣が腹に突き刺さる。
「ごふっ………」
俺の口からは今までない以上の鮮血がゴポゴポと流れ出した。
清籟の剣に付与されている魔法で俺の体はボロボロだ。
剣を抜き、清籟は少し俺との距離を置く。
距離を置かれた瞬間、俺の全身の力が抜けた。
「くそっ……………動けよ………!」
頭しか動かない、足や腕はびくともしなくなった。
私はお姉ちゃんたちを呼び、再び妖怪の山へと戻ってきた。
「奏!どこ?!」
私は広場を探し、奏を探す。
「いた!」
お姉ちゃんが指さした方向には
「え…………奏!」
大量の血を流して倒れている奏がいた。
私は走って奏の元へ行く。
体を持ち上げて顔を見る。
「よかった…………息はある………」
「こ、いし……お姉ちゃん………」
少し安定しない言葉だったが…………確かに声が聞こえた。
「か、奏!無理しないでよ!」
奏の腹に右手をかざして回復魔法をかけようとするも、私の妖力はすべて使い切ってしまった。
「…………どうしてこんな時に使えないのよ!」
すると、私の右手を奏の手が包み込んだ。
あの時と同じ感触がする。
「大丈夫…………だよ……………もう少し待ってて………みんな…」
奏は自分の力で立ち上がり、咲名千里を握り直した。
「千里と…………約束したんだ………!……絶対に勝つって……」
奏は妖力を失った咲名千里を清籟に向けた。
気のせいかもしれないが一瞬だけ咲名千里の刀身が光ったような気がした。