ガキィン!!
剣と剣の金属音が妖怪の山全体に響いた。
当たっては花火が散る。
「はぁ…………はぁ………」
俺の体はもうこれ以上早く動くことが出来なかった。
腹の傷もさらに広がり、それと比例するように痛みも強まる。
「くっそ………!「獅子戦孔」!」
獅子のような衝撃波で清籟へと攻撃をする。
「無駄よ!今のあなたの技には何の力もない!」
咲が死んだ今、俺の妖力は完全にダウンした。
くそっ、俺はこんなに千里に頼っていたのかっ!
今更自分を憎む。
しかし、こんな事で弱音を吐いていたら、天国の咲に笑われる。
そう思った俺は咲名千里を鞘に収め、妖力をふんだんに使って魔法を唱える。
「リベールイグニッション!!」
大きな魔法陣が展開され、その中心からは金色の極太レーザーが発射される。
それは清籟をしっかりと捉えたようで、そのレーザーが清籟の右腕を掠める。
俺は続けて詠唱を唱える。
「レイジングミスト!!」
「っ!………調子に乗りすぎよ!」
清籟は剣を1振り、横に振る。
それだけで俺の「レイジングミスト」は完全に消失した。
俺は妖力がもう無いに等しかったため、「レイジングミスト」の後、すぐに膝をついてしまった。
「はぁ……………がはっ……」
今更になって腹の傷が痛み、吐血する。
「無様ね………龍人で最強である愛原が…………」
俺はそれに答えるようににやっと笑う。
「俺はもうそんな肩書きで生きるつもりは無いんでな………」
鞘から咲名千里を再び抜いた。
もう自分の力だけでアイツを倒すしかない!
残っているスペルカードは1枚。
天翔「流星の終わり」だけだ。
使いたいが、その代償となるものが無い………
「じゃあ………そろそろ古明地の方も殺さないとだから……君との戦いもお開きかな……」
「サブタレイニアンローズ!!」
真横を弾幕が通り過ぎ、俺の右から幼く、高い声が聞こえる。
「こ、こいしお姉ちゃん?!」
「じっと待ってるなんて出来ない!!私も戦う!」
「だ、だめだ!傷が治っていないのに………」
こいしお姉ちゃんは声を張り上げ
「このままじゃ全員死ぬ!!」
「で、でも………」
俺が反論の言葉を探しているうちに俺の周りにはこいしお姉ちゃん以外にもいた。
「ごめんなさい奏。妹の頼みよ…………私からもお願いするわ………」
「私も………もう奏はあたいの親友だからね!」
「うにゅ………?…………あ!私もあいつ殺すぞー!」
「さとりお姉ちゃん……………お燐……お空…………ありがとう…」
俺は家族に礼を言い、清籟へと向き直る。
「さぁ、行くぞ!」
「おお!」
地霊殿組がスペルカードを唱える。
「くっ!たかだか人数が増えただけで…………小賢しい……」
「スペルカード!想起「プリンセスウンディネ」!」
「スペルカード!恨霊「スプリーンイーター」!」
「スペルカード!焔星「十凶星」!」
「スペルカード!無意識「弾幕のロールシャッハ」!」
4人同時の弾幕は今日何回か見たがいつ見ても惚れ惚れするほど綺麗だ。
しかし、清籟はそれを軽々と弾き返す。
「は、反則でしょう……」
さとりお姉ちゃんの顔が一気に暗くなる。
しかし、すぐに切り替え、次の技へと入る。
「俺も負けてらんねぇな………」
咲名千里を前で構え、翼を広げて残りの体力全てを酷使して、刀を振るった。
私やお姉ちゃんが清籟との戦いに合流してから約30分。
「はぁ…………はぁ……」
私たちの弾幕は一向に届かず、未だに傷一つつけられない。
しかし、清籟の体にも疲労が溜まっているらしく、息を切らしていた。
清籟の体も奏と同じくらいの傷跡が残っている。
「はぁぁぁぁ!」
奏が私の横を通り過ぎて咲名千里を右上から左下へ直線を描いて斬る。
そのまま奏は咲名千里を振り続け、清籟に傷を与え続ける。
私はそれが好機だと思い、前に出てスペルカードを唱えようとする。
「スペルカード!よくせ____」
「バカ!来るな!」
詠唱の途中に奏の声が被る。
すると奏の前にいた清籟がにやっと笑う。
「あらぁ?自ら死にに来たのね…?」
一瞬で清籟は私の目の前へと移動してきた。
「これで終わりよ!「クラスターレイド」!」
私の頭上から氷の槍が降ってくる。
「こいしお姉ちゃん!」
奏が私に覆いかぶさるように氷の槍から私を守ってくれたが、奏の背中には次々とそれが刺さる。
「ぐぅ………!」
奏はあえぎながら私を守り続ける。
「か、奏!」
奏の鮮血が私の服にたくさんかかる。
そのまま地上へと落下した。
「奏!奏!」
私は彼の名を呼び続け、意識があるかを確認する。
浅い呼吸ではあるが、まだ意識はあるみたい。
「くそっ……………今度こそ…」
奏はフラフラする足で立ち上がり、いつもの戦闘態勢に入る。
「もういいよ奏!私たちに任せてよ!」
そういった瞬間、私の目の前に結界が張られた。
「私と奏の2人の戦い。あなたたち古明地姉妹はそこで見ていなさい」
清籟が強固の結界を張り、中に奏を入れた。
「もうあなたは死ぬ。私の勝ちね……」
奏は激しく首を横に振り
「まだ、だ……………お前を……殺すまで……俺は死なない……」
奏は1度血を吐き捨て
「大好きな”家族”のために………」
「…………下らない……家族ごっこごときに命をかけるなんて………」
「俺の中では本気なんだな……」
「……本当につまらない妖怪だわ……とっとと死になさい…」
魔法剣を清籟は構え、奏を見据える。
すると、奏はこちらを振り返り…
「………大好きだよ………こいしお姉ちゃん」
「……え?」
私は思いもよらない奏の言葉に硬直する。
しかし、奏はそんな私を置いて清籟へと向かった。
「せぁぁぁぁ!」
私は結界の外で奏と清籟の戦いを見ることしか出来なかった。
分かってるよ………奏のあの言葉は本当の遺言だってこと………奏すらもここで死ぬつもりなんだ………
私は結界に手を置きこう叫んだ。
「奏!あなたまで死ぬなんて絶対に許さない!生きて勝ちなさい!」
私の言葉に奏はにやっと笑い…………
「ごめん………」
「……どうして!」
「あの技を使う……………俺の生命を犠牲にして…………」
「どうしてそこまでして…………」
「…………こいしお姉ちゃんのために………」
そう言葉をこぼし再び奏は清籟と剣と剣のぶつかり会いを続けた。
「何で?!私はただ奏と笑って過ごしたいだけなのに!千里に続いてあなたまで死んじゃったら………」
本音が零れ、私は結界の前で涙をこぼす。
隣でお姉ちゃんやお空達も鼻をすする音が聞こえた。
「ごめん…………」
奏はそれだけ言い、あの技を使おうとした。
「あはははは!早く死んでよ奏ぇ!」
清籟の狂気じみた顔と声。
もう清籟も後戻りは出来ないだろう………
「お前もだ。清籟。共にここで死のう」
すると、清籟は手を止め
「な、何をする気?」
奏はふっと笑い……
「天翔……
そう唱えた瞬間。
さっきの千里と同じ光の粒子が奏の体にまとわりついていた。
そしてそれと同時に咲名千里も黄金に光っていた。
「ま、まさか、自分の命を材料にする気?!」
「あぁ、この結界の中だ………お前は逃げられない……」
「だめぇ!!奏!!」
私は奏の背後で必死に叫ぶ。
「いやだ!!あなたがいなくなるのは嫌だ!!」
大粒の涙を流し、こう叫ぶ。
「私はあなたが大好きだから!!離れたくないよ!!」
奏はその言葉に一瞬驚き、微笑む。
「ありがとう…………こいしお姉ちゃん…………俺も…大好きだよ……………さよなら………」
その言葉だけを残し、奏は飛んだ。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
その言葉とともに咲名千里は眩い光を放ち、結界の中で大爆発を起こした。
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
清籟の断末魔のような叫びが聞こえ、完全に消滅した音さえを聞こえた。
爆発も収まり、私は解けた結界を通り越して倒れている奏を持ち上げ、膝枕する。
「奏ぇ………」
ポタポタと私の涙が奏の頬に落ちる。
それを奏は手で拭った。
「泣かないでよ…………こいしお姉ちゃん……」
粒子を放ったまま、奏は笑顔になる………
「これで………こいしお姉ちゃんは過去に立ち向かうことが出来るんじゃないかな…………人里の評価も変わると思う………」
「そんなのっ………………もらっても嬉しくない!!
奏がいなかったら………意味無いよ………」
「………ごめん………」
奏は謝罪し、頭を持ち上げて私の頬にキスをした。
「………かな、で……?」
「前のお返しだよ………………」
もう………奏とは会えない…………なら………精一杯の見送りをしなきゃ…………
私は涙を拭き、笑顔で…………
「ありがとう……奏………君のおかげで私は変わることが出来た…………二度と忘れない………」
お姉ちゃんもお空達も笑顔で奏を見送ろうとした。
「あぁ………ありがとう………みんな………」
そう言って弾けるように奏は消えた。
奏が……いなくなった……それを理解した途端、私は声を出して号泣した。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
大好きな人が…………もうこの世にいない………
いやだよ!別れたくないよ!
その最中、私の頬に一つの粒子が触れた。
「泣かないで………………大好きな……………お姉ちゃん………」
そう確かに口ずさんでいた。
最終回にはしません。
続き作ります。