東方想幻華 (一時連載休止)   作:かくてる

82 / 109
finalstory 兄妹から姉弟、姉弟から恋人

祭りもそろそろ終盤に近づき、もうすぐ花火が打ち上がる頃だ。

私達は妖怪の山のあの広場で見ると決めた。

今までのことをそこで洗いざらい流すために……

広場につき、私はペンギンをぎゅっと抱きしめたままだ。

このペンギンは人形なのに暖かい、奏から貰ったと言うことが何よりの嬉しさだ。

 

「ね、奏」

 

「ん?どったの?」

 

「この広場さ……………誰も来ないけど……花火見えるの?」

 

誰ひとり来ない。穴場スポットなのだろうか?

それとも花火の見えない所だから誰も来ないのだろうか…

 

「うーん……千里曰く、ここは本当に綺麗に花火が見えるって言ってたけど……」

 

「せ、千里が言うとなんか説得力ないな……」

 

「それは俺も思った」

 

「んね……」

 

私達は顔を見合い、クスクスと笑う。

こんな関係を崩さず、肩書きを「兄妹」から「恋人」へと書き換えたい。

するとその瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1発の大きな赤花火が夜空に開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお………」

 

「綺麗……」

 

私と奏はその花火に圧巻される。

やばい!……緊張が……

私はこの花火で告白すると決めていた。

しかし、いざ口にしようとすると緊張が唇を塞ごうとする。

どうして……?キスも出来たのに……

これが………告白の壁なのかな………

 

そのまま花火は綺麗な花を咲かせながらバンバンと散っていく。

私は顔を赤くして下を向いていると…

 

「なぁ、こいしちゃん………」

 

奏が口を開いた。

花火の光によって一瞬だけ奏の顔が見える。

緊張していた。

 

「な、何?」

 

「俺はな………この幻想郷に来て良かったと思ってる」

 

「う、うん」

 

「だから………その……こいしちゃんの弟になったことも…………さとり達と家族になったことも………本当に嬉しかったし、楽しかった」

 

奏は静かに淡々と言葉を並べる。

私の耳には花火の音と奏の小さな声しか入ってこなかった。

 

「もう単刀直入に言う」

 

「う、うん」

 

私はごくんと息を呑む、大体何の話かはわかるかもしれない………告白かな………

しかし、奏も私と同じで上手く言葉に出来ず、緊張しているのがよく分かる。

しかし、奏は遂にその言葉を告げようとする。

 

「こいしちゃん………俺は……こいしちゃんの事が……」

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すき____」

「あ!いたいた!おーい!奏くーん!こいしちゃんー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……へ?」

 

奏の言葉に聞き覚えのある声が被さる。

千里だ。

 

「せ、千里?!」

 

私と奏は同時に驚く。

 

「もう!さとりちゃんともはぐれちゃって……2人をとりあえず探そうって考えてね!こんな所に穴場があったんだ!」

 

奏は赤面して顔を俯かせている。

その顔にはかなりの悔しさと後悔が見えた。

無意識の私でも分かるくらい………

 

「そ、そうなんだ………お姉ちゃん…どこいったんだろ?」

 

私はそのいたたまれない空気を壊すため、口を開く。

 

「そうなんだよ!多分祭り会場にいると思うんだけど………………ってお邪魔だったかな?」

 

千里がようやくそれに察し、少し首をかしげていう。

私は反射的に両手をブンブンと横に振ってしまう。

 

「う、ううん!全然そんなことないよ!じゃあ行こうか!」

 

「そ、そう?じゃあ奏くん、こいしちゃん。一緒に来てもらっていい?」

 

「あ、うん!わかった!」

 

「あ、ああ……」

 

こうして奏の多分告白は失敗に終わってしまった。

この後、お姉ちゃんも見つかり花火はとっくのとうに終わってしまったので地霊殿に帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

くそ!!

せっかくこいしちゃんに想いを伝えるチャンスだったのに!

俺が勇気を出さなかったから!

あの場合は千里が悪い訳では無い。いつまで経っても俺が長々しい御託を並べていたからだ。

自室の部屋に戻り、俺はベッドに横たわる。

 

「はぁ………」

 

深いため息をつき、俺はそのまま瞼を閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

翌朝。

俺が朝食のために食卓へと向かう。

そこでこいしちゃんと目が合う。

 

「お、おはよ、こいしちゃん……」

 

「う、うん……おはよう…」

 

こんな感じでいつもよりも会話が続かない。

昨日のが影響しているんだろうが……

 

「こいしちゃん……昨日の着物ってもう返したの?」

 

「あ、うん、おばちゃんが取りに来てくれたんだ」

 

「へぇ……凄いな…あの人も年なのにどうやって地底に来たんだ?」

 

「私もわからないな……」

 

「…………」

「…………」

 

あぁぁぁぁぁぁぁ!!気まずい!気まず過ぎる!

昨日ちゃんと告白しておけば!

俺は後悔をする。

そうこうしている間に全員が食卓に来た。

 

朝食も食べ終わり俺は自室に戻る。

そこでガチャっとドアが開く。

 

「ん?千里か?」

 

千里は少し申し訳なさそうに入ってくる。

 

「ごめんね!」

 

部屋に入ってくるなり、唐突に頭を下げる。

 

「お、おいおい!なんだよ!」

 

「私が奏くん達と合流した後、さとりちゃんが奏くんの心を読んだらしくてね…………告白……しようとしてたんでしょ?」

 

さとりのやつ……………こういうのは言わない方がいいだろうに………

 

「あ、ああ、そうだけど…………気にすんなよ千里。あれは俺がグダグダしてて上手く告白できなかったんだ。千里は悪くないさ……」

 

「う、うん、ありがとう……」

 

そう言っても千里はまだまだ反省の色が見える。

 

「……その代わりと言っちゃあなんだが……」

 

「う、うん!私に出来ることはなんでも言って!」

 

千里は少し食い気味に聞いてくる。

俺は一歩引いて千里にこう頼む。

 

「夜の星が綺麗に見えるところを探してくんねぇかな……渡したいものがあるんだ………」

 

「わ、分かった!」

 

そう言って、千里は全速力で外に出た。

そんなに反省しなくても俺は怒ってないのに……そう心の中で呟いて、咲名千里を鞘から抜き、刀身を手入れをする。

するとその数分後、千里が帰ってきた。

 

「見つけたよ!」

 

「はや……」

 

ビックリするくらいの早さだ。

まだ頼んで15分くらいなのに……

 

「本当に見えるのか?」

 

「心配ない!絶対きれいに見える!」

 

「………分かった、案内してくれ」

 

そう言って、俺は千里について行く。

その現場に着くと本当に綺麗に見えそうな所だった。

 

「ここにするか……ありがとう千里」

 

「ううん!お安い御用だよ!じゃあ告白ファイト!」

 

千里は右手をぐっと立てて刀の中に入る。

するとスグに寝息がたった。

千里、昨日は多分罪悪感で寝れなかったのかな……

 

「サンキューな………千里……」

 

刀を指で撫でて優しく微笑む。

すると千里の寝息が幸せそうに聞こえ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は奏の告白モドキを受けてから少し気まずくなってしまう。

奏がせっかく話しかけてくれたのに、私から話を遮っちゃう………

その夜。私達は晩御飯を食べ終えそれぞれの部屋へと戻る時、

 

「こ、こいしちゃん」

 

少し戸惑いのある奏の声が聞こえた。

 

「ん、奏。どしたの?」

 

「昨日の花火しっかり見れなかったからさ、ちょっと夜風に当たりながら星を見ない?」

 

奏のその案は素敵なものだった。

現在は夏。夜風に当たるのは気持ちいいのだろう……

 

「わ、分かった行こう……」

 

私はその案に乗り、奏について行った。

ドアを開けるとまだ少し暑さは残るが、日中よりは5度ほど低い。涼しい風が私の全身を刺激する。

 

「着いてきて」

 

奏は私に手を差し出した。

その体の割に大きな手に私は少し見惚れる。

そしてその手に自分の手を乗せる。

こうして見ると手を繋いでいる恋人にも見える。

すると数分である場所につく。

 

「ここは………妖怪の山の……頂上?」

 

そう、ここは妖怪の山のてっぺんの芝生公園だった。

ここからは幻想郷が一望でき、人里の灯もほんのりと見えるかなりロマンチックな場所だ。

 

「はい、ここに座ろ?」

 

奏が一足先に芝生に座り、その隣を右手でポンポンと叩く。

そこに私はちょこんと座る。

そこからはまた沈黙。

 

「〜〜〜〜ッ!」

 

私はかなりこの空気に気まずさを覚えるが…

 

「こいしちゃん、上を見てみて」

 

「え?」

 

「良いから」

 

私は言われるがまま、夜空を見る。

そこには無数の星たちが私を照らしていた。

 

「綺麗…………あの花火よりも全然」

 

そう今日は快晴だった。

雲一つないこの夜空がいつまでも目に焼き付いていた。

 

「そのペンギン、まだ持っててくれたんだね……」

 

私は無意識にそのペンギンを抱きながら常に行動していた。

 

「だって奏がくれたプレゼントだもん……」

 

奏はふっと微笑み何かを私に差し出す。

 

「はい、こいしちゃん。二個目のプレゼント」

 

「え?」

 

出てきたのは同じようなペンギン。

しかし、色が違う。私が持っていたペンギンは青と白の柄。

奏が差し出したのはピンクと白の柄。

 

「祭り終わったあと、片付けを手伝ってたら売れ残りだって射的屋のおじさんがくれたんだ……」

 

「そ、そうなんだ………」

 

私は素直にそのペンギンを受け取る。

 

「じゃあ………はい!」

 

私は少し元気を取り戻し、青いペンギンを奏に差し出す。

 

「え?」

 

 

 

 

 

「これでお揃いでしょ!奏!」

 

私はニカッと笑ってみせる。

 

 

 

 

 

奏はその私の笑顔に少し驚き、そのペンギンを受け取る。

 

「ありがとう……こいしちゃん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして奏は今一度あの言葉を紡ぐ………

 

 

 

 

私が待っていたあの一言…

 

 

 

 

 

 

 

 

「好きだよ………こいしちゃん…………いや、こいし」

 

 

 

 

「………え?」

 

 

「俺はこいしの事が家族でもなく、姉としてでもなく、一人の女の子として好きだ。その言葉に嘘はない」

 

 

奏のいつに無い真剣な表情で私に想いをぶつける。

私はその場で涙を流し、しゃくり上げながらこう告げた。

 

 

 

「私も奏が好き……!ずっと待ってたよ…………奏……」

 

 

涙をこらえながら私はまた笑ってみせる。

しかし、その後奏の体に私の体が密着した。

 

そして奏の腕が私の背中に回る。

 

 

 

「ありがとう……こいし……大好きだよ……」

 

 

静かに耳元で囁いた。

 

私はそれが決定打となり、大粒の涙を流す。

 

 

 

「うん………うん!私も大好き!」

 

 

こうして私と奏は晴れて恋人となった。

 

 

 

姉弟から兄妹へ………兄妹から恋人へ…………

 

 

 

 

 

 

「じゃあ……帰ろうか…」

 

「うん!こんなに遅かったらお姉ちゃんに怒られちゃうね!」

 

「あ、あはは………想像したくないな……」

 

「……だね…」

 

 

 

私達は手をぎゅっと握り合いながら歩を進めた。

指と指を絡ませ、お互いの温度を感じながら………

 

 

 

 

 

 

地上から地底の道は夜空の星達に照らされていたからか、とても華やかに見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

閉ざした心、開いた恋 ~過去を乗り越えたその先へ~

 

 

 

end……




ここまで読んでくれて本当にありがとうございました!

こいし編本編。今回をもって完結でございます!

あ、afterstory書きますよ?

afterstoryが終了したら
コラボの方に移させて頂きます!


いやー、こいし編長かったぁ……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。