2人の妖怪が紅魔館に来て数週間。
いつも通りの仕事、お嬢さまのお世話や、掃除洗濯料理。
全てを終え、選択籠を持った私はお嬢さまの友人であり、私の師匠でもある愛原 奏さんと話していた。
「あ、ねぇ、咲夜さん」
「はい?」
「幻想郷に男はいないの?」
「いるにはいますよ……しかし、幻想郷は圧倒的に女性の方が力を持っています。奏さんのような方はレアケースですね」
「道理で男を見ないと思った……」
奏さんはその場で肩を落とす。
肩身が狭いのは分かるが、奏さんの性格なら男女関係なく接することが出来ると思うんだけどな………
私は心の中でつぶやく。
すると奏さんは自分の愛刀、咲名千里を取り出し鞘から抜く。
その少し青みのかかった鮮やかな刀身は見るものを圧倒させる素晴らしさがあった。
「ごめん咲夜さん。タオルの場所ってどこかな?」
「あ、今持っていますよ」
私は即座にタオルを取り出す。
干していた洗濯物をたたむ前に奏さんと会ったので、服やらなんやらが隣においてある。
「……その刀…………綺麗ですね……」
「そうかな……?」
「ええ………綺麗というより美しい……」
よくよく見ると刀身には桜の紋章がいくつも付いていた。
これは刀のデザインだろう。とても美しい。
「あはは、咲夜さんも刀使ってみれば?」
「刀……ですか?」
「うん、ナイフを使うのもいいけど、近接はナイフじゃリーチ不足でしょ、すぐに取り出せてリーチのある刀や剣が必要だと俺は思うよ」
確かにそうだ。
ナイフじゃ前に霊夢や魔理沙と弾幕ごっこした時も、近接まで近寄られて私の強みを思う存分発揮できなかったのも原因であるし………1度だけ使ってみようかな……
「それに…………咲夜さんがそうしてくれると、俺も教えやすいしね……」
「なるほど……では、人里の刀屋に行きましょう。今日はもう仕事はありませんし、どの刀がいいのかも教えてくれると有難いです」
「え、あぁ、いいけど……いいの?男の俺がついて行っちゃって……」
「?何か問題でも?」
私は首をかしげ、奏さんの返答を待つ。
すると思いもよらない言葉が発せられる。
「い、いや……デートみたいに見られたら困るなって……」
赤面する奏さんの言葉により、私も顔を真っ赤に染めて両手で否定する。
「ち、違いますよ!別にそんな目的で奏さんと人里に行くわけじゃありません!むしろ行きません!」
「な、なんか傷ついたけど……まぁ、それならいいか……じゃあ、準備してくるから少し待ってて」
「は、はい……」
私は未だ顔を赤くしたまま、その場にストンと座る。
頭から湯気が出てきそうだ……なんかプシューって聞こえる…
そんなこと……考えたことなかったな…………デート…か……
別に奏さんと2人きりになるのが嬉しい訳じゃない。かと言って嫌でもない……なんて言うんだろ……楽しい…………かな…?
自分でもよくわからない感情に私は戸惑う。
「まぁ、今考えたって仕方ないか………」
気持ちを切り替え、私は奏さんを待つ。
「ごめん、お待たせ。じゃあ行こうか」
「はい」
紅魔館から人里の道中は奏さんが刀について詳しく教えてくれた。
奏さんって服は洋風のパーカーなのに、使っているのは和風の刀なんだな……なんか不思議だ。
しかし、私はさっきの奏さんの言葉が暫く頭から離れず、赤面したままだった。
「?どしたの?咲夜さん?」
「はっ、い、いえ、なんでもありません!」
「大丈夫?熱でもあるんじゃ……」
奏さんの手が私の前髪をかきあげ、額に触れる。
「ひゃう!?」
つ、冷たい……
思わず声が漏れてしまった。
「あはは!咲夜さん面白い声出した!」
「か、からかわないで下さい……もう大丈夫ですし……」
そんなことをしているうちに、人里の中心街に付いた。
ここは幻想郷の都心のような場所でいつも繁盛している。
その商店街の一角にある刀屋に入る。
「失礼します」
簾を避けて中に入ると、そこには横に綺麗に並べられている100本程の刀がずらりと並んでいた。
「あらあら、咲夜ちゃんじゃない。今日はどうしたの?」
「いえ、自分の戦闘スタイルを変えるために刀にしようかなと」
「なるほどなるほど。存分に見ていってくださいな……そちらは?」
「あ、愛原 奏と申します」
奏さんはぴしっと姿勢を正し、おばさんに一礼した。
そのおばさんは微笑んだ後、奏さんの腰に垂れ下がっている刀に目が移った。
「その刀………最上級のものだね……」
「え、あぁ、まぁ……咲名千里という刀でして……」
その言葉を聞いた途端、おばさんは目を見開く。
「さ、咲名千里……?」
「あの……この刀を知っているんですか……?」
「そりゃもちろん……幻想郷を救った英雄の幻の刀じゃもん…………まさかあなた……愛原って………」
奏さんは少し驚いた表情を見せた後、余裕そうな顔で
「ええ、その『愛原』です」
「こ、こりゃ失礼いたしました!」
「い、いやいや、別に普通でいいですよ!俺は何もしていないですし……」
この後、おばさんをさっきの状態に戻すのに、時間が結構かかった。
「ふぅ……ありがとう。落ち着いたよ………」
「な、ならいいんですけど……」
「まさか愛原様のご子孫がいるとは………まぁ、普通に接していきますわ……」
「ええ、その方がこちらもやりやすいですしね……」
私は切り替えて刀を物色する。
「おばさん、ここの刀って持ってもいいの?」
「ええ、もちろん」
奏さんのその質問におばさんは即答する。
奏さんも刀の1本1本を丁寧に見ていく。
「ん?」
奏さんの目が止まった。
そしてその刀を持つ。
「おばさん…………これ……」
「あぁ、それは妖刀「
「へぇ………いい刀だな………買っていいか?俺用に」
奏さんは慣れた手つきで刀を降る。
その振る速度にはおばさんも驚いていた。
「でも、未だに咲名千里を上回る刀は私も80年生きてきて見たことないわ……」
「そりゃ妖刀ですしね……」
私は苦笑いしながらおばさんに共感する。
あの刀は奏さんだからこそ扱える究極の品物。
それを誰もが簡単に扱えたらこの世は殺人鬼がわんさか湧いていただろう。
そんな有りもしない想像をする。
「え?奏さん二刀流にするんですか?」
「そんなまさか……咲名千里が刃こぼれした時の緊急用さ……まぁ、二刀流も挑戦してみるけど…………咲夜さん。君はどれがいい?」
「うーん……」
どれも同じに見えるが……よくよく見ると、妖力の差というものが実感できる。
そんな中、私の中の直感が一つの刀を指さした。
「あ、これ……………これがいいです」
「おばさん、これは?」
「お、それは千剣「レガミクトセレナ」。唯一入荷した刀ではない剣よ」
確かに曲がっていないその真っ直ぐな刀身、金色が主体の刀身の色は鮮やかな紅色。形も何かと角張ってはいるが綺麗だ。
「………おばさん、これにします…鞘もありますか?」
「おぉ、お買い上げありがとうございますだ。気ぃつけてね持って帰れよ……」
私と奏さんはいい買い物ができた、そう思った。
「……咲夜さんはどこに刀をしまうの?」
「はい?」
「俺だったら、鞘ごと腰のベルトにくっ付けてるけど…咲夜さんはスカートだしそれは無理だし……肩から抜こうとしても咲夜さんの身長の割にレガミクトセレナは刀身が長いから抜けないし………」
私はそれにずっと迷っていたが私はある方法を思いつく、パチュリー様のほんの中に乗っていた人物の武器のしまい方が幻想郷でも可能なんじゃないかと思った。
私は集中して、レガミクトセレナを妖力により分解する。
すると分解された粒子が私の右腕の肌に付着する。
そう、「コンタミネーション現象」。
出す時も同じ容量で、次は肌についた粒子を融合させれば良い。
「す、凄いよ咲夜さん………」
「え、えへへ……」
私はつい照れてしまい、頭を搔く。
この肌に付く粒子は別に無害で何も起こらず、見た目を変わらないので便利だ。
「さて、甘味処でも寄って帰る?」
「し、しかし、お嬢さまに怒られてしまうかもしれない………」
「大丈夫!まだ時間あるから!」
「それならいいですが……」
こうして私は無事に剣を購入し、新たな戦闘スタイルに転職した。
そしてあまーいスイーツを食べて紅魔館に帰りました。
とても美味しかったです。
余談ですがあの後、案の定お嬢さまには怒られました。
しかし、理由は遅く帰ってきたことではなく、「私もスイーツ食べたかった!」とスイーツを私だけが食べたことにご立腹でした。
剣の名前厨二くっせぇ………
最初は雷切とか丙子椒林剣とかにしよっかなって考えてたんですけど、なんかカタカナになっちゃった。