東方想幻華 (一時連載休止)   作:かくてる

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6話 突然の紅魔館崩壊

奏さんへのこの気持ちが全くわからないまま、数週間が過ぎた。

結局、この気持ちは誰にも明けないまま、お嬢様にも、もちろん奏さんにも。

………………いや、気持ちが分からないなんて嘘た。

こんなの、上辺だけの戯言にしか過ぎない。

心の奥底ではこの気持ちの正体なんて分かりきっていたんだ。

しかし、その気持ちを明かすのはとてもじゃないけどできない。私と奏さんは主従関係。

そんな関係になることはまず有り得ない。

それにわたしは今の生活に満足している。

 

「奏さん、今日もお願いします」

「はいよ、じゃあ今日は全力勝負。俺が教えてきた技を使ってもよし、咲夜さんの元々のスタイルで戦ってもよし、やりやすい方でいいよ」

「……分かりました」

 

懐中時計を取り出す。

最近になって剣技の方も安定してきているがやはりナイフの方が落ち着くし、手に馴染む。

 

「幻符「殺人ドール」!」

 

奏さんはこの数週間、私の知らない所でずっと二刀流の練習をしていた。

最初はぎこちなく、剣技どころでは無かったが、最近になって、私のナイフをも弾くようになった。

妖刀「咲名千里」と妖刀「時空真」。

この2本は咲さんの依代で咲名千里より時空真の方が過ごしやすいんだとか。

 

「はぁ!」

 

無数のナイフを軽々と弾いていく。

そして私のナイフはことごとく力を失ったように地面に落ちる。

 

「………やはり……あなたにたどり着くのはまだ先のようですね……」

「それは……………どう、かなっ!」

 

だんだんと奏さんとナイフの距離が近くなっていく

 

「くっ……!真符「時空斬鉄」!」

 

私が投げるナイフが一瞬にして消え失せた。

このスペルカードは時空真によって出来た時空の歪みの境界を生成し、そこに送り込むという技。

時空の歪みの境界というのは虚無の空間。

どこの時間軸でもない。

常闇の何も無い空間のこと。

奏さんのラストスペルというやつだ。

私はその時空の引力に引っ張られ、奏さんに引き寄せられていく。

 

「や、やばい………!」

 

必死に耐えるが、だんだんとその威力が増していき、結局私は奏さんの刀の目の前まで引き寄せられていた。

 

「勝負あり、だね」

「………まさかレガミクトセレナを使う前に決着がついてしまうとは……」

「でも、ラストスペル使ったのは咲夜さんが初めてだよ。まぁ、咲を抜いたらだけど」

 

奏さんの苦笑いに私も微笑む。

 

「今日もありがとうございました…………………それで……その…………」

 

私は顔が熱くなっていく、理由はさっきのスペルによって、私は奏さんの方に引き寄せられた。

その距離は約10センチほど。

つまり、めちゃくちゃ近距離にいるという事だ。

それに気づいたのか、首をかしげてから状況を理解した奏さんは私と負けないくらい赤面して、すぐに離れる。

 

「わっ、ご、ごめん咲夜さん!」

「い、いいえ、大丈夫です……」

 

しばらくの沈黙。

2人が顔を赤くして下を向く。

あぁ!恥ずかしい!

ただ戦っていただけなのに!

私は心の中で頭を抱え、頭から湯気が出そうになるほどだった。

すると奏さんが口を開いた。

 

「あ、あの、咲夜さん!」

「ふぇ?!は、はい!」

「えと………その……明日!…暇……………ですか?」

 

今も尚赤面する奏さんの質問。

明日は妖精メイドに仕事を任せて有給の日なので、暇ではある。

 

「暇ですけど………どうかしましたか?」

「その……俺と……2人で人里にでも………行きませんか………?」

 

奏さんのその言葉に私は数秒理解が出来ず、その場で首をかしげてしまう。

しかし、ようやくそれを察し、汽車のように蒸気が出るほど真っ赤になりながら、慌て出す。

 

「え?!ええ!?ほ、ほんとですか?!」

「あ、うん、ほんとだけど……」

 

私は口元が緩み、にやけてしまう。

まさか奏さんと2人きりで人里まで遊びに行くなんて…………まるでデー……………………考えないようにしよう。

とりあえず今は返事だ。

しっかりと『はい』って言わないと

 

「分かりました。では、明日、よろしくおねが_______」

 

ボゴォォォォォォン!!

 

私の返事を断るかのように、紅魔館の時計が爆発して、砕け散った。

 

「?!」

 

私と奏さんは驚きと焦燥の顔を浮かべながら、落ちてくる紅魔館のレンガを避ける。

 

「な、なんだ!?」

「わ、分かりません。奏さん、お嬢様と妹様を見てきます。奏さんはパチュリー様を!」

「分かった、咲!」

「はいよ!奏くん、行こう!」

 

私は落ち着いて奏さんに指示を出し、私はお嬢様と妹様の所へと走る。

奏さんは咲さんを呼び出し、大図書館へと消えた。

 

「お嬢様……………妹様……」

 

私は崩れ落ちていく紅魔館の中を疾走しながらお嬢様と妹様の無事を祈る。

探しに探し回った結果、バルコニーでお嬢様を見つけた。

一瞬安堵の息をつくが、すぐにそれは驚きと絶望に変わる。

 

「お、お嬢様?!」

 

脇腹からは鮮血が滲み、肩からは抉られたような傷があった。

そして腹にも大きく抉られたあとがあった。

そこからは今でも出血し続け、ちらりと臓器が姿を見せる。

これは流石の吸血鬼でも、再生が間に合わず、お嬢様は気を失っていた。

 

「お嬢様!お嬢様!」

 

私はお嬢様を抱き、紅魔館を出る。

そして、門の前で慌てていた美鈴にお嬢様を渡し、永遠亭に連れていくように指示した後、私は落ち着きを取り戻して、妹様を探す。

美鈴からも妹様の姿を見ていないとか……

 

「妹様ー!」

 

大声を出して妹様と何回も呼ぶが返事は一向に返ってこない。

地下室にいることはないだろうから、恐らく近くにいるはずなんだ………

するとそこに奏さんと咲さんが姿を現す。

 

「パチュリーは美鈴に預けていた。小悪魔も無事だ。どっちも怪我はない」

「よかった…………まだ妹様が見つからないんです!」

「フランが?分かった。俺も探す」

「お願いします」

「私も探すよ、咲夜ちゃん」

 

奏さんと咲さんという心強い仲間とともに、紅魔館内を探す。

しかし、3人がかりでも妹様は見つからない。

 

「奏さん、いましたか?」

「いない…………一体どこに……」

「……フランちゃんの能力が暴走した可能性はないの?」

「多分、俺もそう思う」

「私もです。この破壊のされ方は恐らく妹様でしょう……」

「じ、じゃあもっと危険だ!人里に出ているかもしれない!早く行かないと………」

 

ブシュ…………………

私のメイド服に鮮血がこびりつく。

奏さんの腹から赤色の炎を纏った巨剣が飛び出ていた。

そして、奏さん口からもドロドロと血が流れでる。

この剣は…………

 

「ごふっ……」

「妹様?!」

「あれぇ?奏、もう終わりなの?つまんないよぉ!!」

 

妹様の顔は残酷で狂気にまみれた、薄汚れた笑みをしていた。

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