私達は今、お嬢様の自室に集合していた。妹様の狂気の理由について話し合っている。前回の狂気化との間が前代未聞の短期間だったため、紅魔組全員が少しだけ疑っていた。これは妹様の発作で起きたただの偶然なのか、それとも、誰かが何らかの理由と方法で妹様の精神をいじったのか。
「…誰かに操られたっていう可能性は無いのか?」
「ないわけではないわ。でも、フランが別の生き物に操られるほど貧弱じゃないのはあなたも分かってるはずよ。奏」
「……じゃあ一体…」
「私はやはり自発的だと思う。自発的と言っても、私の発作と同じように、心の奥底から無意識に出てくる魔の手。それがフランの狂気化だと思うの」
パチュリー様の説得力のある意見に私達は首肯する。しかし、それも少し違うような………
妹様の謎の狂気化。そして今までにない程の力。このままにしておけば、いつかは紅魔館が危機に陥る。それだけは避けたい。完全狂気に染まってしまえば、奏さんや月人が全力を尽くしても勝率は五分五分。そう考えると、やはり妹様が完全狂気になる前に、何らかの処置が必要だ。それは分かっているのだが、妹様の弱点はお嬢様よりも少なく、その弱点を突くのも至難の技だ。
「しかし、お嬢様。私も誰かが関わっている可能性が高いと思われます。妹様一人では完全狂気に浸ることは出来ないと思うんです。今回だって、一人で体のバランスを保っていたとは考えにくいんです」
「……フランよりも強い妖怪…………この幻想郷にはゴロゴロいる。でも、フランと関わった妖怪はほぼ皆無。フランの存在を知っているのも、今はまだ霊夢や魔理沙。妖怪でも私や美鈴、小悪魔、パチュリーと文しか、知らないはずよ。文はそんなことするメリットは無いし、逆にデメリットを生む可能性がある。その時点でこの推理は少しずれてると思うわ」
「うーん………」
謎の上に謎が上書きされる。ひとつ解いても新たな問題が出る。エンドレスに続きそうだ。私は一人で考えを一から改め、もう一度物事を整理する。
まず、以前奏さんが来たばかりの時に妹様は狂気化した。この時はまだ浅いものだったので、疲労が溜まっていた奏さんでもすぐに処理ができた。それで、今回の狂気化。約5ヶ月程の間。いつもなら3年に一度くらいの頻度であるのに、今回ばかりは少しだけイレギュラーが生じているみたいだ。
「少し心当たりのある奴がいる」
「………?」
奏さんがゆっくりと手を挙げる。私とお嬢様、その他の紅魔組は全員首をかしげた。
「……昔、俺たち愛原と因縁のライバルだった『倉見』だ。俺が来てからフランの狂気化が進んだのなら、少しだけそういった考察もできた」
「………なるほど…確率的には有り得ますね。お嬢様はどう思いますか?」
私は奏さんのその意見に首を縦に振り、お嬢様に意見を求める。しかし、お嬢様は一人で何かを考えていたようだった。
「…………」
「お嬢様?」
「え?あ、ええ。私もそう思うわ」
お嬢様は私に名指しされる前、少しだけ顔が引き締まって見えた。お嬢様も倉見と戦った身。少しくらいトラウマが蘇るってことかな………しかし、それは申し訳ないが、後回しにしたい。
「では、倉見の仕業という方向で少しだけ調べてみますか。私達は知人を当たってみます」
「あぁ、よろしく頼む」
私は実際に危害が加わらない限り、こちらは何も動けないので、とりあえず情報を集めるために、人里に降りようと考えていた。ドアを開け、身だしなみを整えてから美鈴と小悪魔を連れて紅魔館を後にした。
俺は咲夜さんが立ち去った後、もう一度レミィと一緒に話し合っていた。
「レミィはどう思う?」
「そうね……倉見の仕業というのも、少しだけ違うんじゃないかしら?」
「さっきから否定ばかりしてるけど……レミィは何かあるのか?」
「いえ、特にないわ。ただ、私の運命が違うと言い張ってるからよ」
「なるほどな……信じるしかないか……」
俺はその場で顎を触る。フランの狂気化が偶然ならば、今頃紅魔館は潰れているはずだ。あのピュアなフランが俺たちを殺そうなんて考えるはずがない。これはさとりの能力で実証済みだ。それならば、自発的ではないことがわかる。他人に操られた可能性が一番高いと思うのだが……どうやら違うらしい………
「フランにしか分からない心の奥底の感情がある。そういう考えもできるから、必ずしも倉見の仕業とも言えない」
「私は、フランの身に何らかの異常をきたしてたと思うの」
確かに、レミィのその案も一理ある。フラン自体のストレスや病気、それによって彼女の中に眠る狂気が呼び覚まされた。そんなことだって考えられる。
それにしても、さっきからレミィの調子が少しだけ変な気がする。気のせいだろうか?心做しか、レミィの態度や性格はいつも通りなのだが、何かがいつものレミィとは違う。そう思った。風邪でも引いたのだろうか?
そこで俺は"薄々勘づいていた"のかもしれない。あまり考えたくなかったが仕方ないだろう。レミィの目を見て、俺はこう放った。
「俺は倉見の方向で調べてみるよ。まだその推理も捨てきれないからね。レミィはフランに直接聞いてみて」
「分かったわ」
そう言って、俺は咲名千里を持ってレミィの自室のドアノブを握る際、小さい声で、なおかつレミィに聞こえるように、自分なりに棘のある声で忠告した。
「……………………お前らが直接危害を加えるつもりがないのなら、今すぐここから去れ。お前らが動かないのなら、こちらも動く気は無い。でも、咲夜さんやフラン、美鈴や小悪魔、そして咲には絶対に手を出すな。いいな」
「……?ど、どうしたのよ?奏…」
「何でもないよ。レミィ。じゃあ、頼むね」
俺の忠告に、レミィは首を傾げる。まるで何を言っているのか分からないと言わんばかりに
やっぱり違う……いや、あいつは………………レミィなのか?
「…………もうすぐでバレるところだったね。レミリアちゃん」
「……そうね…あなたも危ないわよ。一番奏と距離が近いのだから、バレるのも時間の問題……ね。とゆーか、あなたご主人様に愛されてるわね?『手は出すな』だってさ……」
「……ははっ、そうだね。私も奏くんに愛されて幸せ者だよ。でも、大丈夫。私達倉見は絶対に愛原の子孫を殺す。そう誓ったからね。そうでしょ?レミリアちゃん……………………いや、我が倉見の主、倉見 朧の吸血鬼系列の末裔……レミリア・スカーレット様」
「……共に…この世界の終焉を迎えさせよう。片波 咲……」
短めでダラダラと書いてしまって申し訳ありません!
恋愛ゼロだね……