東方想幻華 (一時連載休止)   作:かくてる

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10話 裏切りの紅魔館当主

 私は今、パチュリー様と共に人里に降りていた。私一人でも良かったのだが、パチュリー様が「体を動かしたい」と頑なに言ってくるので、私が同伴し人里で聴取することになった。

 私が常連の八百屋や、甘味処。鈴奈庵にも聞きに行ったが、手がかりとなるようなものはゼロだった。

 

「人里の者は……やはり知らないですね……妖怪に当たってみるしかないようですね」

「そうね、妖怪の山に行けば分かるんじゃないかしら?文屋もいるし」

 

 パチュリー様は私よりも先に妖怪の山へと歩を進めた。私は追うようについて行く。妖怪の山まではさほど距離はないので、数分で着いた。とりあえず、文のいる所に行く。

 

「失礼するわね」

「あやや?咲夜さんにパチュリーさん。一体どうされたんですか?」

 

 丁寧な言葉遣いの割には、陽気な声で話す文。どうやら新聞を刷っていたようだ。文の服は黒のインクで汚れていた。

 

「ご用でしたら、もう少しお待ちください。着替えてきますんで」

「いいえ、それでいいわ。ちょっとだけだから」

「あや、そうですか?」

 

 後頭部をポリポリと掻きながら文は近くの応接室に私達を案内した。対面しているソファに腰掛け、私は出された茶を飲みながら文に問う。

 

「ねぇ、最近フランに会ってる?」

「フランさんですか?いいえ、最近はレミリアさんに取材してるので、フランさんは2ヵ月程見てないです」

「そう……ありがと…」

「あの、何かあったんですか?私で良ければ協力しますけど……」

 

 文の気遣いに感謝しながら、私は少しだけ遠慮がちに言う。

 

「そうね、少しだけ文の取材力を発揮させて貰いたいから、お願いするわ」

「分かりました!ドンとお任せ下さい!」

 

 胸を張って鼻から息を吐く文に私は妹様の狂気化の話をした。

 

「それはまた………とんでもない事になりましたね……奏さんが凄いですよ………しかし…」

 

 文は一呼吸置いて、顎を擦りながらこう放った。

 

「フランさん自体の問題ではないと思うのです。誰かの仕業……そう考えた方がいいでしょう」

「……理由は?」

「勘」

「協力ありがとう文。もういいわよ」

「ご、ごめんなさい!勘は嘘です!でも、必ず誰かが関わっているのは明白です」

「それは私達も分かってるわ。咲夜も私も」

 

 パチュリー様の言葉に文は言葉を詰まらせて、そこから何か思いついたかのように「あっ」と声を上げた。私はその大きな声に少しだけ体を強ばらせる。

 

「な、何……」

「実際にフランさんに会わせて下さい。レミリアさんでもいいです」

「わ、分かったわ」

「咲夜さん。パチュリーさん……落ち着いて聞いてください………私は…以前に奏さんに過去と愛原と倉見の関係を話して貰いました。その中に…一つだけ気になる点がありました………」

 

 意味深な言葉を使い、文は真剣な顔つきで話す。どうやら、ふざけている様子ではないようだ。

 

「倉見の血の鬼。朧の玄孫(やしゃご)。そのような話もありました」

「………………?」

 

 私は何を言っているのかよく分からず、首を傾げるが、パチュリー様は違った。顔面は蒼白。手を震え、冷や汗を流していた。

 

「……まさか…」

「……急ぎましょう!今は戦力が足りません!奏さんだけでは危険です!」

 

 私は文に手を引かれ、意味もわからず妖怪の山を出る。

 

「ちょ、ちょっと文!どうしたのよ!」

「話は後です!早くしないと紅魔館が……」

 

 瞬間、私たちの館から大きな爆発と黒煙が舞い上がる。私は目を見開き、パチュリー様を見る。

 

「ぱ、パチュリー様!これは……」

「……予想外だわ…………急ぎましょう!」

 

 そこでようやく察した私は少しだけ嫌な予感がしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 咲夜さんとパチュリーが情報を集めに人里へ降りてから2時間後。俺はまだ目覚めないフランのベッドの隣で座っていた。フランが目覚めないことには、真実は分からない。倉見が黒幕なのか、それともフランが自発的に行ったものなのか、他人の俺らには到底たどり着くことが出来ない。証拠そのものであるフランの回復が先だな。

 俺は頭の中でそう思考する。すると部屋のドアがゆっくりと開けられ、そこからレミィが姿を現した。

 

「奏、お茶でもどう?咲夜が作り置きしてくれてたの」

「あぁ、頂こうかな」

 

 俺はレミィに呼ばれ、バルコニーへと移動する。そう言えば………咲はどこにいるんだ?刀の中かな………俺は神経を研ぎ澄まして、咲の妖力を探す。いた、どうやら刀の中で寝てるみたいだな………

 俺は木造の床を歩き、椅子に腰掛ける。レミィは奥からティーセットを持ってきた。そしてレミィはマグカップの中に鮮やかな色の紅茶を淹れる。

 

「はい」

「ん、さんきゅ」

 

 軽く礼を言い、俺はマグカップに口をつけ、紅茶を飲む。咲夜さんの味だ………美味しい…

 俺は少量飲んで、カップを机に置く。そしてレミィが口を開いた。

 

「ねぇ、今回のフランの件。やっぱり心の問題だと思う」

「………それはお前の運命の力か?」

「ええ、運命で過去を辿ると、フランの心の中が何やら複雑な何かに侵されているの。これは心が衰退している証拠よ」

「そうか…………倉見の可能性は無いのか?」

「無いわけでは無いけど。倉見は愛原との戦いで敗れたし、今更、朧が奏を狙ってるとは思えない」

「……………そうか…」

 

 心の中で、俺は他の方法を必死に考える素振りを見せた。

 やっぱり……レミィ…………お前なんだな……

 

 

 

 

「まぁ、フランと倉見の関係なんて皆無だし。問題は_____」

 

 刹那、レミィの頬に浅い傷が入る。その隣には、銀色に輝いた刃の先端があった。俺は机に片足を乗せ、咲名千里をレミィに突きつけた。

 

「嘘をつくのもいい加減にしな。倉見の末裔。レミリア・スカーレット」

「…………」

「今更しらばっくれるつもりか?朧の名を知っていながら……」

 

 嘲笑するように、俺はレミィを見下す。それにも動じないレミィに少しだけイライラして、俺は咲名千里をレミィの頬につける。新たな傷が刀の刀身を赤く染めた。

 

「答えろ。お前はフランを使って何をするつもりだったんだ………」

「………ここの主は私よ?」

「…………会話にならないみたいだな……」

 

 俺は刀を振り上げ、一直線にレミィに切りかかる。それと同時にレミィが持つ赤色の槍、「グングニル」が俺の咲名千里と交差する。妖力同士のぶつかり合いのため、大きな爆発と衝撃波が紅魔館を襲う。

 

「あっはははは!!やっぱり愛原との戦いは別格だな!」

「……」

 

 俺はもう一本の刀、時空真を握る。フランと同様、レミリアも姉なので狂気は少し混じっている。

 

「さぁて、いつまで私を楽しませてくれるの?愛原の子孫さん?」

「お前もな、倉見の吸血鬼子孫」

 

 俺とレミリアの視線が交差する。弱点の多いレミリアだが、何故だろうか……弱点がないようにも見える。これは一種の錯覚なのか、それともレミリアの能力なのか。俺は一瞬頭の中で思考する。しかし、そんな暇もなく、レミリアのグングニルが俺の脇腹をスレスレで通り過ぎる。

 

「あっぶねぇ………」

「おお、よく避けたわね?」

 

 今いるのは美鈴とフラン。咲夜さんとパチュリーは人里に行ってるし、小悪魔は買い物中だ。フランと今のレミリアを会わせるわけにはいかない。俺が止めるしかないか………

 咲名千里と時空真を握り、俺は母指球に力を入れる。

 

「…………咲!」

「?!」

 

 レミリアが唐突に咲の名を呼ぶ。俺はあたりを見渡して、咲を探す。なぜなら、咲名千里から咲の妖力が消え、どこか別のところに移動したからだ。するとその途端、咲名千里の根元から刀身がポッキリ折れていた。妖刀であるはずの咲名千里がいとも容易く折られた。これを出来る人物は一人しかいない

 

「やっほー!奏くん!」

「……咲……なんで…」

「うーん、簡単に言うと…」

 

 絶望する俺に咲の言葉は更に上乗せされる。

 

「私は愛原の敵、倉見の人柱だから」

 

 相棒に裏切られた俺は何か大切な物が崩れていく音がした。それと同時に、怒りをもこみ上げてきた。今までの笑いは全て演技。俺と咲の信頼関係は元から偽りのものだったということ………

 

「……けるな…」

「んー?」

「ふざけるなぁぁぁ!」

 

 わざとらしく耳をこちらに向ける咲。俺は歯を食いしばって、時空真を右手に持ち替えて、咲の右手首から左肩にかけて斬った。

 そこから、咲の鮮血があたりに飛び散った。そして咲はその場で倒れる。

 その時、俺の頬に何か冷たいものが伝った気がした。




なんとなんと、黒幕はレミリアと咲ちゃんです。

先に言っておきます。レミリアは大好きです。嫌いだから悪者にした訳ではありません。大好きだからこそ、出番を増やしたかったんです。
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