東方想幻華 (一時連載休止)   作:かくてる

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14話 戻された綻び

 俺は崩れかけの紅魔館を疾走していた。フランを完全狂気まで追いやったレミィと咲を探し回っていた。フランがこの紅魔館を壊したこととまだ強力な妖力反応のことを考えると、まだ遠くには行っていないことが見受けられる。

 

「くそっ、どこだよ!」

 

 かれこれ数分は走り回ったが、妖力だけしか感じることが出来ず、実態を捉える事が出来ずにいた。フランの方は咲夜さんに任せていたので、俺は一人であたりを見渡していた。しかし、紅魔館のバルコニーの方まで行くと、妖力の凄みが増していっていた。

 

「……そこか」

 

 レミィと咲を見つけた。どうやら二人は何かを話し合っているようだ。

 俺は時空真をまずレミィに突きつけながら近寄っていく。

 

「………?!」

 

 レミィの驚く顔が見える。俺の到着が早いから驚いているのだろうか?それとも……

 

「な、なんで………奏が……ここに……?」

「………」

「……なるほどな……………」

 

 レミィの言葉を聞いてから、ちらっと咲の方を見る。さっきから黙りこくっていた咲の顔は……少し苦しそうだった。俺はそこで察すると同時に嬉しみもこみ上げてきた。

 

「お前が"そっち側"じゃなくて嬉しいよ、咲」

「…………」

「どういう事よ!咲!」

 

 レミィが少しだけ声を張り上げて咲に怒りの矛先を向ける。それでも咲は黙ったまま、しかし、ようやく咲はにやっと笑ってレミィにこう放った。

 

「ごめんなさい、私の手違いで邪魔者達を送る場所を間違えたわ。今度こそ境界の狭間に送り込むから」

「………頼むわよ」

「させるかよ」

 

 時空真を逆手に持ち、レミリアの腹に一閃、綺麗な鮮血が飛び散る。レミリア自身も吐血する。そのまま俺は咲を押し倒し、その場で咲を拘束する。

 

「不夜城レッド!!」

 

 奥からヒステリックな声が聞こえる。赤い波動が周りの壁さえも破壊しながら俺の方までやってくる。

 

「閃斬「回帰斬」」

 

 レミリアの不夜城レッドを左下から右上の一振りで跳ね返す。次はレミリアの方に不夜城レッドが襲いかかる。レミリアは紫色の巨大な槍、神槍「スピア・ザ・グングニル」を生成する。俺はそれを活用される前にレミリアの懐に入り込んで時空真の柄を鳩尾に抉るように当てるが、レミリアの手がそれを受け止めていた。

 

「これで終わりよ!邪魔者!」

「なっ!」

 

 レミリアのグングニルが俺の目の前まで飛び込んできた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パーフェクトスクウェア!」

「禁弾「スターボウブレイク」!」

 

 私のスペルカードは以前の戦い同様、軽々と弾き返され、逆に私が押されている。以前と違うところはやはり破壊力だ。一つの弾幕で大きなクレーターが出来てしまうほどだった。

 これが完全狂気に染まった妹様の力なのだ。

 

「きゃっははははははははははは!!早く潰れろぉ!!」

「っ!!」

 

 私はレガミクトセレナを取り出す。妹様がレーヴァテインで戦うのなら、同じ剣で対抗した方が戦いやすい。しかし、レーヴァテインと違って、レガミクトセレナは他の普通の剣よりも少し強力なだけ、特別な妖力がこもっている訳でもない。折れるのも覚悟しといた方がいいのかもしれない。

 

「あぁ!!」

「あ、当たっちゃったぁ!」

 

 レーヴァテインの先端が、私の肩を掠める。痛みだけでなく、レーヴァテインの熱が私の傷をさらに抉り出す。尋常じゃない痛みに私は少しだけ怯む。

 

「幻視「ナイトソード」」

「っ!」

 

 初めて妹様が動揺した。数本の剣が妹様の肩を貫いたのだ。それにより、妹様は膝をつく。妹様は今現在隙だらけだ。私はその隙を逃さず、レガミクトセレナを大きく振り上げた。

 

「はぁぁ!」

「くっ、あぁ!」

 

 妹様は叫び声と共に、レーヴァテインでレガミクトセレナを受け止める。私はそれに力負けし、レガミクトセレナが遠くへと飛んでいってしまう。

 

「そ、そんな……」

 

 また、私はここで負けるのか……こんな所で……いや、奏さんがきっと妹様を助けてくれる。私は奏さんにバトンタッチするだけなんだ。だから、後悔はない。

 

「あっはははははははは!!」

「っ……」

 

 レーヴァテインが振りかざされ、私のちょうど真上に熱気が迸る。脳天から真っ二つ。即死だな。私は諦めて目を閉じる。最後に……私の彼氏の顔……見たかったな………

 

「………………」

「…!」

 

 私は数秒待っても痛みすら来ないので、ゆっくりと目を開ける。するとレーヴァテインは私の目の前で震えていたのだ。それはレーヴァテインが震えているのではなく、妹様自身が震えていた。

 

「…どうして、トドメをささないんですか?」

「……だって!」

 

 妹様は顔を上げる。その顔はさっきのような狂気に染まった顔ではなく、いつもの優しい妹様の顔。目尻に涙を溜め、嗄れた声が辺り一帯に響く。

 

「咲夜はっ!……大切な家族だから……!」

「妹様……」

「お姉様が………私のこと嫌いだって言って……………でも、それでもお姉様と離れたくなくて…」

 

 妹様の言葉は酷く苦しそうで、私の心がズキズキと傷んでいる。

 

「お姉様に「離れたくないなら、私の言う通りにしなさい」って言われて……いつの間にか咲夜を殺そうとしてたんだ……」

「………」

 

 自分はもう、この頃はお嬢様に忠誠ではなく憎悪の感情を抱いていたのかもしれない。お嬢様唯一の肉親を苦しめて、自分の満足のためにこんなことをしたのだ。

 私自身も少しだけ涙が出る。こんな無垢で可愛い子供にトラウマを植え付けようとしているお嬢様に怒りを覚えた。私は妹様を強く抱きしめる。

 

「申し訳ございません、妹様。私のせいで……あなたをひどい目に合わせてしまった……………」

「ううん!咲夜のせいじゃない!…これは、私の問題なの…………」

「いえ、私はあなたの家族。いつでもあなたをお守りすると決めていました。だからこそ、これからは私に守らせてください……」

「うん………ありがとう……………」

 

 すすり泣く妹様を、私は泣き止むまでずっと抱きしめていた。紅魔館の方では大きな爆発音が度々耳に反響する。恐らく、お嬢様と咲さんと交戦しているのだろう。

 妹様が泣き止んだ頃、妹様の手を引いて、こう放った。

 

「妹様。今お嬢様と奏さんが戦っています。行きましょう」

「う、うん!」

「ところで妹様」

 

 私は走りながら妹様に問う。私はそもそもの理由を未だに把握していなかった。

 

「どうしてお嬢様と咲さんはこのような異変を起こしたのでしょうか………」

「私もよくわからないけど………「紅霧異変」と同じ、幻想郷の支配が目的だと思うんだ。それも、別のやり方で」

「それで………倉見の血を引く妹様の完全狂気によって妖怪の殲滅を………」

「多分そうだと思う………お姉様自体、倉見朧と仲が良かったから、復讐も兼ねてるんじゃないかな………私は、その時から倉見には嫌われてたからよく分からないけど……」

「それで奏さんが来たこのタイミングでって事ですね………」

 

 私の中でこの異変の歯車が大体すべて組み重なって、新たな謎も出てくることは無かった。

 

「ありがとうございます。妹様、奏さんの元へ急ぎましょう」

「うん!」

 

 妹様の手が私の手を強く握った。私は、今までならお嬢様との戦いなんて拒絶しきっていたが、今日だけは奏さんと妹様がいるからか、心強く、逃げようとも思わなかった。

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