時は私に優しくない   作:肥料

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入団編
日常に一滴垂らされた波紋


「言い訳を聞こうではないか?うん?」

 

「……えっと、ですね」

 

そこには異様な光景があった。

 

「毎回毎回頑張るな、レオの坊主」

「……」

 

背後に炎をたぎらし腕を組む少年とその向かいに正座をしている少女

 

二人の同期から離れてアイネは無言でため息をつく。

 

「だっておかしいでしょう

貴族が何をやっても許されるって言うの⁉」

 

「あれは俺も同じ貴族として虫酸が走るが

だからといって貴族の屋敷を襲撃する馬鹿がどこにいる というのだ貴様は!」

 

ぎゃあぎゃあ

 

「まだやってるのか、あの馬鹿二人は」

 

「フエルゴレオン様」

 

後ろから聞こえてきた張りのあるに振り替えると赤いマントを靡かせ歩いてくる「紅蓮の獅子王」団長のフエルゴレオン・ヴァーミリオンがいた。

 

「毎回毎回すまんな」

 

「…いえ、お疲れ様です。

無事に入団試験終わったんですね」

 

今日は一年に一度の魔法騎士団入団試験が行われていた。

入団方法はいたってシンプルで試験の中を団長たちが審査し最後に欲しい人材を採択する。

 

「ああ、面白い奴がお前の団に入ったぞ」

 

「……うちにですか?」

 

【黒の暴牛】

 

武功よりも被害額が上回る

魔法騎士団内外にも最低最悪の騎士団と悪名高い

 

そんな荒れくれ者が集まる中に新人が入って大丈夫なのだろうか?

 

「アイネ、迎えにきたよ」

 

「フィンラルさん」

 

アイネがひとり思案顔になっていると聞き慣れた声が聞こえ振り替えると女好きの笑顔を浮かべる黒の暴牛の古参で希少な空間魔法の使い手、フィンラルの姿があった。

 

「面白い奴が入ってね

ヤミさんが切り上げて帰って来いってさ」

 

「フエルゴレオンの旦那も言ってたが特殊な魔法属性の子でも入ってきたのか?」

 

「リュッセル!」

 

他の団長にまで馴れ馴れしい腕輪の言葉にアイネが少し声を張るが、フエルゴレオンは気にするなと言わんばかりに手を上げる。

 

「マグナ恒例の通過儀礼をクリアしたと言えば分かるかな」

 

「マグナさんの…すごい」

「けけ、そりゃうかうかしてたら追い抜かれちまうな」

 

一年前、入団した際にアイネも受けた試験

なかなかグリルワール貰いたてのルーキーがクリアできるものではない。

 

「さ、帰ったら新人の歓迎会だよ」

 

フィンラルはグリルワールを開き、空間魔法を発動させる。

 

「はい

…カエデ、レオは無理ですね」

 

まだぎゃあぎゃあと騒音が聞こえてくるのにアイネは呆れを通り越し二人の体力に感嘆する。

 

「私から伝えておこう

……ああ、そうだ

姉上がたまには顔を見せろと言っていたぞ」

 

フエルゴレオンの姉上

 

…メレオレオナ様

 

炎の獅子が頭を過ると同時に血の気が引いていくのを感じる。

 

「………その、うちにお邪魔しますとお伝え下さい」

 

「前回も同じ事を伝えた気がするが…承った」

 

アイネはフエルゴレオンに一礼すると脱兎の如く背を向ける。

 

「だが、姉上の弟として忠告しておこう

あの人は獲物を定めたら地獄の果てまで追いかけるぞ」

 

アイネは聞こえないふりをして穴に飛び込んだ。

 

次の瞬間、目の前に立つのは見慣れたつぎはぎの建物

 

「……どこで私は人生を間違えんだろう」

 

「そりゃあの時だろうな

……ま、死ぬなよ」

 

「人生⁉

俺より5つ年下だよね⁉」

 

フィンラルのツッコミを他所に暗くなりつつある空をアイネとリュッセルは遠い目で見上げる。

 

「ほら、もう寒くなるし早く入ろう

ヤミさーん、戻りました。」

 

ただでさえ、暗い雰囲気の後輩をフィンラルが引っ張り声を張り上げる。

 

「おう、お帰り

馬鹿やろうども」

 

「ん?」

 

二人を出迎えたのは黒の暴牛団長・別名【破壊神】と名高いヤミ

口に食べ物を頬張った見慣れない少年。

 

 




次話は明日投稿予定です。
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