時は私に優しくない   作:肥料

3 / 8
波紋は未だ広がらない。

「団長、戻りました」

 

アイネは盛大に空いた穴にまた騒いでたんだと思いながら、ヤミに一礼する。

 

「トラブル嬢ちゃんの件片付いたか?」

「……はい、後で報告書上げます」

 

フエルゴレオンの手腕により任務扱いになった事件に苦虫を噛み潰す思いになりながらも頷く。

 

「うん

で、フィンラルから聞いたかもしれんがもうひとり新人が入った

坊主!」

 

「はい!

あ、任務にいってたという先輩ですね!!

ハージ村から来たアラタです!!

よろしくお願いしゃァァース!」

 

「……アイネです。

よろしく

団長、疲れたので寝てから報告書作ります」

 

「はいはい」

 

「アイネ~飲んできなさいよ!」

「アイネ、お帰り

僕と戦おうよ!」

 

酒盛りをしているバネッサたちに手を振ってアイネは階段を上がっていく。

 

「えっ?えっ」

「ありゃ、相当気がたってるな」

「貴族がらみの事件だったらしいですよ」

 

一人戸惑うアスタにバネッサが後ろから抱きつく

 

「坊や、間が悪かったわね

悪い子ではないけど、極度の人見知りなの」

 

「でも結構強いよ、マグナの通過儀礼だってほとんど一瞬で終わったし」

 

「う、うるせー!

あいつの師匠が化け物級であんなの日常茶飯事だったらしいじゃねぇの

ですよね、ヤミさん」

 

「アネゴレオンの話はやめて

噂をすると来ちゃうからマジで」

 

アラタは混乱しながらもアイネについてまとめた

 

「極度の人見知りで強い先輩?」

 

「分かりにくいけど、慣れればアイネの相棒がフォローもしてくれるしこの中ではまともな方じゃないかな」

 

「?」

 

はてなマークが浮かんでいるアスタに苦笑しながらフィンラルが捕捉する。

 

「喋るブレスレットの魔法道具だよ

何でも父親からもらった誕生日プレゼントって言ってた」

 

「…旦那も喋るなんて思いもしなかったみたいだかな」

 

「喋るんスか!?」

 

「毒舌野郎だぜ

ま、明日になれば分かるんじゃねぇの」

 

「はい!!」

 

魔法帝への第一歩を踏み出したアラタ

明日からの新しい日々に期待を膨らさせアスタはに威勢よく頷く。

 

明け方頃

突然、膨れあがる魔力を感じアイネはもぞもぞベッドから這い出る。

 

「…なに?」

 

「けけ

王族の嬢ちゃんが大変だぜ」

 

枕元に置いてあるブレスレットが言葉とは裏腹に面白そうに揺れている。

 

首を傾げながらきしむ窓を持ち上げるとそこには膨大な水球の中に浮かんでいる一人の少女がいた。

 

一方、見慣れない顔にアイネは首を傾げた。

 

「誰?」

 

は相変わらず先ほどのアスタといい他人に興味のないに呆れる。

 

「聞いてなかったのかよ

銀翼の大鷲団長様の妹のノエル=シルヴァだ」

 

任務に出発する時、そういえば入れ違いに見た気がする。

 

「……よくうちに入るのを家が許したね」

 

「逆だ、逆

あれを見れば分かるだろう

あの嬢ちゃん、魔力こそ桁違いだが全く魔力操作ができてない

…んで厄介者如く扱われてきたんだろう

あーあ、これだからお貴族様は嫌だね」

 

幼い頃から何かと交流のあるヴァーミリオン姉弟と違い、シルヴァ家とはほとんど関わりがなかった。

 

だが容易く想像できる。

王族や貴族はただでさえ平民、下民への差別が強い。

 

「アイネ?」

 

自分を腕につけた動き始めたアイネには不思議そうな声を上げる

 

リュッセルは思う。

リュッセルの主は道具の自分以上に淡々としている。

それに加え面奴くさやがりで他の団とのいざこざなどは我関せずの態度を貫く。

何度こんな主、嫌だと思ったことか。

 

「…後輩を見殺しにするわけにもいかないでしょう」

 

……だが、心根の底は面倒見がよく

情に厚い黒の暴牛を気に入っているのだ。

 

だから何だかんだと言ってチャーミーがいない時の団員の食事を引き受けるわ、マルクスによく泣きつかれて放浪癖のある父親の捜索も手伝うし、カエデのトラブルにも力を貸すのだ。

 

面奴臭がりと面倒見がいい

矛盾を抱えながらも困っている者を見捨てないアイネを何だかんだいいつつリュッセルは気に入っている。

 

「そーかよ

せいぜい頑張れや、先輩」

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。