ズバン
アイネが建物を出ると水球が弾ける瞬間だった。
ヒュォオオ
「ずわぁぁぁぁぁ!」
アスタとノエルの身体が地面に叩きつけられる。
(あ、死んだ…)
アスタが遠くに見える地面との高さに死を予感した時、ノエルと自分の落下速度が急激に緩やかになっていく。
「!?」
「もっとはやく来やがれ」
「…すみません」
団員たちがヤミの後ろを向くと二人に手を向け歩いてくるアイネの姿があった。
「っしゃあ!生きてた!」
「わっはは!」
「おもしろかったー!ね?ね?」
「もう濡れちゃったじゃない」
二人が地面に足がつき、魔法を解除した後バネッサがに抱きつく。
「アイネ乾かして!」
「はい」
懐から杖をとりだし空に円を描くように振るとその場の全員の服から水気が空に集まっていき弾けて地面をぬらす。
「アイネ先輩、あざーす!」
「…どういたしまして」
「よくやった小僧!」
「-うっす!
オイお前!」
アスタの掛け声にノエルの身体が震える。
「(この出来損ないめ…
またバカにされる…)」
兄の、姉の言葉がノエルの心を縛る。
「なんちゅー魔力持ってんだよ!
すっげぇな!」
「えっ?」
思ってもいない言葉にノエルは目を見開く。
「俺魔力ないから羨ましいぞチクショウォオ!
特訓して自在に扱えるようになれば無敵だなノエル!」
「………」
「俺も負けねえように頑張んねーと!」
言葉も出なく呆然とアスタを見上げるノエルに近づく影があった。
「チッ、なんだ…魔力がコントロールできなかっただけかよ
早く言えよ出来損ない王族」
『出来損ない』
マグナの言葉にノエルは再びうつきかけ…次の瞬間、その動きが止まる。
「俺たちは出来損ない集団【黒の暴牛】だぞ
テメーの欠点の一つや二つどうってことはねえんだよバカたれ」
「とにかく無事でよかったね~
ところでおいしいパスタの店があるんだけど今度一緒にどう?」
「その前にとりあえずこれ食べてみな?」
「すごかったわね。魔力のコントロールはアイネと私が超得意だから教えてあげるわよ。あと大人の女のテクニックとか」
「…魔力操作が苦手ならそれを補える魔道具なり、まずは別系統の魔法を先に練習したらいいと思う。
…それに魔法操作ができないくらいここの暴れぐあいと比べたら可愛いいもの」
誰も自分を馬鹿にしない【黒の暴牛】にノエルの瞳に涙が滲む。
「ほいよ!
一緒に頑張ろうぜ!」
「…よろしくお願いします」
差し出されたアスタの手をとり、ノエルはまだ自分が言っていなかった一言とともに頭を下げた。
二人の横にまるでこれからの未来を示すかのように虹がかかっていた。
アジトへの帰り道の最中
「いや~、お前も成長したな」
「何ですか、マグナさん」
バシバシ肩を叩くマグナにアイネは不機嫌そうな声を上げる。
「いや
ただでさえ無口でマイペースなアイネが人をフォローする日がくるとは…」
「あ、それ僕も思った~」
「…じゃ後はマグナさんとバネッサにお任せします。」
マグナの言葉に頷く他の仲間達にアイネは慣れないことはするものじゃないなと思い身を翻し
「あの、私に魔力操作を教えて下さい
お願いします。」
すれ違い様にノエルに腕を掴まれたアイネは目を丸くする。
「え」
「いいじゃねぇか!
面倒ごとならおまかせあれだろ」
「カエデのトラブルを言ってるなら違います。
…そもそも人にものなんて教えたことないから無理です。」
マグナの言葉を即座に切り捨てるアイネ。
「はっはは
チビ」
「その呼び方は止めて下さい
…何ですか」
静観していたヤミが笑いだしアイネは嫌な予感を背中にびしびし感じながらも…後が怖いので渋々振りかえる。
「これも経験だ
ノエルの魔力操作が上達するのまでノエルの指導役な
あ、団長命令だから」
「よろしくお願いします」
「……よろしく」
案の定、逃げ道が塞がれアイネは肩を落とす。
「けっけけ
旦那にしてやられたな」
「へっ、この声
…まだ見ぬ先輩ですか?」
「ま、まさか幽霊!?」
「リュッセル
二人に挨拶を」
アスタの疑問にアイネは服を捲り、腕が見えるように出す。
「リュッセルだ
アイネの保護者でピーピー泣いてた頃からの付き合いで…おい、待て謝るから!」
「やっぱり…覚えなくていい」
アイネはそのまま腕輪を外し大きく振りかざし
「ぎゃああああ」
リュッセルは勢いよく窓を突き破り外に飛んでいった。
「頭を冷やしなさい
リュッセルが余計な事言ったら教えて
仕置きするから」
「大丈夫
アイネはリュッセルだけには厳しいの」
「またやってる」
「「えっええええ!?」」
やっぱりまともな先輩/人間がいない。
再認識したアスタとノエルであった。