時は私に優しくない   作:肥料

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ソッシ村編
波紋に垂らされた毒


翌日

 

「つーわけでお前らに初任務を与える!!」

 

朝食後、マグナに呼び出されワクワクドキドキの眼差しのアスタとノエル。

 

二人とは対照的に

 

「…本当に行くんですか」

 

「調子でねーな」

 

「うるせーぞ、そこ!

お前らの初任務はソッシ村で猪狩りだ」

 

今、起きてきましたと言わんばかりの低い声のアイネとリュッセルにマグナは怒鳴り、アスタとノエルの初任務は発表された。

 

「な、何

そのダサい任務!!」

 

「猪なんぞ素手でぶっ倒せますよ!」

 

「テメー猪なめんじゃねぇえ」

期待を裏切られ二人は抗議の声を上げる。

 

「…どうせ旦那とマグナがまた賭けで負けたんだろう」

 

「はっはは

この間二人で賭けに負けちまってな

何でも一つ言う事聞くってソッシ村のジジイと約束しちまったんだ」

 

「貧乏な村を潤すために一攫千金目指して……なかなか男なじいさんでしたね~」

 

「背負ってるもんがあると人間強いのな」

 

呆れ声のリュッセルに横で煙草を吸っていたヤミとマグナは悪びれることなく笑う。

 

「それ僕達関係ないっスよね!!」

 

「そうよ、そうよ」

「あ、馬鹿坊主・嬢ちゃん」

 

「行くのか/死ぬのか

どっちだ?」

 

当たり前だがはい、そうですかといかないまだまだ新人の二人にヤミの理不尽の圧力(魔力)がのし掛かる。

 

「「行きます」」

 

「二人とも慣れたが勝ちだよ」

 

即効返事を返した二人にもう何もかも諦めきったアイネの言葉が空しく響いた。

 

「とは言え初任務だぁああ

テンション上がるぜ~~~!!」

 

「この私が…?

小汚ない村の小汚ない老人の為に?小汚ない猪狩り?」

 

「んだテメー

文句あんのか」

 

「誰も文句なんて言ってないわ」

 

やる気満々のアスタに眉を寄せるノエルにマグナは視線を向ける。

 

「シルヴァさん、言葉遣い

身分に関係なく基本ご年配の方は敬うべきよ」

 

「こいつはこう見えても礼儀には厳しいからな~」

 

「は、はい」

 

「てめぇ俺と態度違いすぎねぇか!?」

 

アイネの小言にしゅんとなるノエルにマグナが目をかっ開いて抗議するが無視された。

 

「シルヴァの嬢ちゃん、言いたいことがあんなら言わんと分からないぞ」

 

「わっ、分かってるわ

その…魔力もコントロールできてない私が…

行っていいのかなって」

 

「バーカ

んなもん任務重ねてりゃ勝手にできるようになってんだよ!

テメーのケツくらい先輩の俺たちが面倒見てやらァ!」

 

「大丈夫

いざとなれば一撃で仕留めるから……マグナさんが」

 

「おめぇも先輩になったんだから、もうちょっとやる気出せやァア!!

紅蓮のカエデに巻き込まれた任務の話と大違いだぞ」

 

ノエルが目を反らすのに格好よく胸を叩いたマグナは笑うと振り返り、やる気の感じないアイネを叱りつける。

 

「マグナさん

一歩間違えれば元凶共々死ぬ状況での任務と最悪大怪我で終わる猪退治

やる気の問題じゃない…命がかかってたんです」

 

「お、おうそっか」

 

一切感情を感じさせない真面目なアイネの声音にマグナも気圧され頷くしか出来なかった。

 

アスタとノエルはカエデという人物が気になって仕方がなかった。

 

「今回の場所はフィンラルの魔法でいけない所だから箒で飛んでくぞ」

 

「フィンラル坊主の魔法は目に見える場所かマナでマーキングしてないと空間をつなげねぇんだ」

 

分かりにくいマグナの説明に捕捉を入れるリュッセル。

 

その時、二人の前に手が上がった。

 

「俺、魔力ないから

箒で飛ぶの出来ないんですけど」

 

「魔力コントロール出来ないから私も無理」

 

「んはァアァァ!?」

 

「「え」」

 

マグナが叫び声を上げ、アイネとリュッセルは驚きにアスタを見る。

 

「あ、そっか

アイネ先輩いなかったですね」

 

人は生まれつき大小と大きさは違っても魔力を持って生まれてくる。

 

昨日、水球が弾けた時

空中にいたのはアスタとノエル。

ノエルが自分で魔法を解除できたとは考えにくい。

 

だが魔力が無いどうやって…?

 

「じゃあ昨日の水球はどうしたんだよ?」

 

リュッセルの疑問にアイネは思考をやめる。

 

「ああ、それは…」

 

「待って待てい~!

…あいつの驚いた顔みたくねぇか?」

 

アスタはポーチからグリムワールを取り出そうとしてマグナがその肩を掴み耳打ちする。

 

「えっ、顔なんて見れないじゃないスか」

 

「俺だって見たことねぇよ

うちで知ってんのはヤミさんだけだ

…お前の実力に驚いている隙に俺がフードをとる

どうだ?」

 

「分かりました!

ちょっとワクワクしますね」

 

「もういいです

それより行くの?行かないの?」

 

「お、おう

仕方がねぇ、俺の愛箒にまとめて乗せてやる」

 

何かを誤魔化すようにマグナが倉庫の扉を開けた。

 

「名も《紅零雨威炎駆乱号》だ」

 

その先にあったのは動物の骨にサングラスなどを細工された箒だった。

 

 

「カッ

カッケェエエ」

 

「だろォ

イカスだろ」

 

「「………」」

 

アスタがキラキラした目で見るなか、アイネとノエルは無言を貫いた。

 

その後

 

アイネも自分の箒をとり、いざ出発となったのだが…

 

「やっぱり一人を私の箒に乗せます?」

 

「うる…せー

よぉぉ~~し…出発だぁあ……!」

 

「うおおお」

 

「大丈夫なのあなた」

 

「おいおい強がんなよ」

 

アイネの横では箒の柄を掴みぷるぷる震えるマグナと後ろに乗ったノエルとアスタ。

 

「おとこに二言は無ぇぇーー!!

いくぞ

うおおおおおおっ」

 

マグナの叫び声とともに箒に火がつき三人を乗せた箒は急上昇していく。

 

「けっけけ」

「リュッセル

あんまり煽らないであげて」

「いやぁ若い奴はからかいがいがあっていいねぇ」

 

相棒にため息を溢し、アイネもマグナ達の後を追う為

地面を蹴り空に飛び立った。

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