「ぐふっ」
「ヒース様!」
剣が胸に突き刺さり、血を吐くヒース。
「や…
やった!?」
「違う
アスタ!」
ノエルの防御魔法の中の皆が喜びに包まれかけるのを遮り、アイネは走り出す。
「剣は魔法を無効化できてもお前自身はただの人間のようだ
ー今度はこちらの番だ!」
「…っ」
氷で足元を滑らせ勢いを殺された剣はヒースの胸をかすったに過ぎなかった。
この距離では逃げられない
アスタが襲ってくるであろう痛みに歯を食いしばったその時
「ぐぇ」
「もう少し考えて動きましょう、ね!」
「なんだ!?
魔法が…」
アスタは首元を引っ張られ勢いのまま後ろに転がり、魔法を構築していたヒースの魔力が突如として分散した。
アスタが身を起こすとそこには開かれたグリモワールを片手に己の前に立つアイネの姿。
「貴様、何をした!?」
「敵にわざわざばらすとでも「どうだ!?そいつの流転魔法は構築途中の魔法を撃ち抜けるんだぜおらァ!」
「すっ、すげぇええ!!」
「けっけけ、こりゃ盛大にばらされたな」
「………」
何故か自信満々なマグナの暴露とキラキラした目を向けるアスタにアイネは何も言えなくなってしまう。
「見たこともない魔法だ
だが、そう幾度と打てないだろう」
「…試してみれば?」
バレている
気を取り直し強気にアイネは襲いかかる氷の柱に向かって魔法を放つ。
氷魔法・天撃氷牙
流転魔法・消失霧
魔力と魔力がぶつかり合い土埃舞う。
「ちっ(タイミングがずらされた)
リ「アイネ先輩、サポートをお願いします」
「おいおい、下手すると死ぬぞ坊主」
「どうして」
リュッセルを武器化させようとしてアイネは目を見開く。
接近戦を余儀なくされた時、魔法師は魔力で身体能力を補って戦う。
だが、魔力のないアスタの場合は全てを身体能力で補っている。
「息も絶え絶えで身体は擦り傷だらけ。
いつ限界がきてもおかしくないその身体でどうしてそこまで頑張れるの?」
視界一面の氷を剣で防いで少しの傷と息切れで済んでいるのは奇跡に近い。
思わずアイネは本音を溢す。
「諦めたら…誰が守るんですか!?
それに先輩に庇われて気がついたんです
約束を守る為だけじゃない
皆を護るために俺は魔法帝になる!!!」
「!」
「魔法帝って…
何を言ってー」
「魔法帝かー馬鹿げた夢だな
残念だがお前達はもうじき死ぬ」
再び襲いかかる氷が爆発する。
「おとこじゃねぇかアスタ!!」
から出てきたマグマは濡れた髪をかきあげ、
「そいつらを殺すならまずは…
先輩であるこの俺を殺してからにしやがれぇぇ!!!」
「マグナ先輩」
「早死にしにきた馬鹿め
30秒だ」
「上等だ
アスタ、洗礼の儀だ
アイネはサポートをしやがれ
行くぞ!!」
マグナの意図を察したアスタとアイネはそれぞれ構え、マグナは残りの魔力を放つ。
「一球入魂ん!!」
炎魔法・獄殺散弾魔球
複数に枝分かれした魔力が炎となり、ヒースに襲いかかる。
「これがお前の最後の魔法か
無駄があまりにも多い」
氷魔法・結晶氷盾
「無駄じゃねぇ!」
ヒースは氷の盾を生みだし正面からの炎を防ぐが、背後からアスタが剣で反射させ炎をヒースに打ち込む。
「(ー消えない!?)
うぉおおお!!」
ヒースは己についた炎を氷で打ち消そうとする。
「ヒース様!」
「させない」
流動魔法・不可視の弾劾
ヒースを助けようと部下が魔法を放つ前にアイネは杖を向け、圧縮した空気の塊に部下たちは吹っ飛ばされていく。
「まだだ」
「先輩たちが脇役に回ってやったんだ
しっかり決めろよ坊主」
アイネの脇を勢いよくアスタが駆け抜ける。
その勢いのまま大きく剣をヒースに降り下ろした。
「ま…待て」
「待つかぁあああ!!」
氷は砕け、血を吐きながらヒースは倒れた。
「やった?」
「お姉ちゃん!」
「ええ、今度こそ倒した」
ノエルの結界の中から村人達の歓声が上がる。
「終わった」
「まぁお前にしたら
頑張ったほうじゃね」
賑やかな声達に気の抜けたアイネは息をはく。
「獄殺散弾魔球からの炎拘束魔法だ」
ヒースの身体を燻っていた炎が縄のごとく拘束する。
「あなた見かけによらず器用なのね?」
「やかましい
俺、先輩よ
なんでそんなに」
「あっ、マグナさん
無事だったんですね」
「私が守ってあげたんです!」
「てめえらもう嫌だ!!」
賑やかなマグナとノエルに視線を上げたアイネがヒースの反撃を受けたはずなのに無事なマグナの姿に納得しノエルの成長に感心していると
バシャッ
炎の縄が水によって解け
水魔法・狭川の運流
一人の白マントの男が素早く立ち上がり、川の流れのごとくあっという間に姿をけす。
「しまった
アイネ、追え!」
「無理です
魔力が足りません」
「流石に疲れたな」
空っぽに近い自分の魔力量に追うことはできても再び応戦、拘束となるとかなり厳しい。
冷静に判断を下したアイネは素直に諦めた。
「何をしてるの
詰めが
ザバァー
「わぁ」
「つめたっ」
ちょこちょこ話をしていて集中がきれたのかノエルの魔法が解け水浸しになるノエルと村の人間達。
「…………」
「ダハハ
まだまだだなノエ公」
「そういえば…坊主はどうした」
ふと溢すリュッセルの声に三人が背後を振り替える。
ちょうど霧が晴れ倒れているヒースの前で荒い息を整えるアスタの姿が現れる。
「ーどうだ
下民でも…買ったぞ!!
コンチクショォォオ!!!」
「「アスタ(君)」」
叫び倒れたアスタに慌ててマグナとアイネが駆け寄る。
んごぉおお
「って寝てんのかいィィィ!」
「クスス
ー何はともあれお疲れ様」
間違いなく今回の誉である傷だらけのアスタを撫でアイネは微笑んだ。
更新ストップし数ヵ月。
色々申し訳ありません。
またゆっくりと更新再開させて頂きますのでよろしくお願いします。