時系列はジョウトのマスク・オブ・アイスとの戦い直後。シロガネ山へ修業に行くはずだったレッドだったが、その前にブルーにひとつの提案をされる。

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ポケットモンスターSPECIAL 君に贈る羽飾り

「ブルーさん。この羽、お返しします」

 

 

 

 ジョウトでの戦い……マスク・オブ・アイスことヤナギとの戦いの後。イエローはレッドとゴールドが修業のために去った後、クリスから返された虹色の羽と銀色の羽……その二枚の羽をブルーにさしだしていた。

 

 今まで麦藁帽子につけていた、ルギアとホウオウの羽飾り。愛着がないといえば嘘になるが、「これはブルーさんに返したほうがいい」と思ったが故の判断である。それに対してブルーは目をぱちくりとさせた。

 

「あら、また帽子につければいいじゃないの」

 

 手をぱたぱた振りながら「気にするな」とばかりに言うブルーだったが、イエローは顔を横にふる。

 

「いえ! これはブルーさんと……シルバー君で持っていてください」

 

 突然名前を呼ばれた事に驚いたのはシルバーで、先ほど知り合ったばかりの少女……イエローを見る。

 シルバーと視線が合ったイエローはにこりと笑い、そのままブルーには虹色の羽を、シルバーには銀色の羽をその手に握らせた。

 

「ちょっ、イエロー?」

 

 思わず受け取ってしまったブルーはイエローの名を呼ぶが、その前にイエローは戦いで消耗したポケモン達の所へ駆けていってしまった。

 

「さ! 君たち集まって! 怪我は僕が治すから」

 

 そう言ってイエローは癒しの力で、一番消耗の激しいポケモンたちから順番に癒していく。

 そんな彼女を見て、ブルーは手に残された羽に視線を落としてからひとつため息をこぼした。

 

 

「もうっ。あの子ったら……」

 

 ____変なところにばかり気を使って。

 

 

 おそらくブルーとシルバーの幼少期の思い出の品として、自分が持っているよりは……などと考えたのだろう。この虹色の羽と銀色の羽はブルーとシルバーがマスク・オブ・アイスのもとから逃げ出す時に持ち出したもので、マスクドチルドレンとして教育されていた時の記憶もあることから、けしていい思い出だけのものではない。しかし着の身着のまま飛び出した二人にとっては、思い入れのある品であることも間違いではなかった。それを思って自分たちに羽を返してくれたのなら、その気持ちを無下にするのも忍びない。

 

 そこでブルーはしばし考えた後、いいことを思いついたとばかりにニヤリと笑う。そして彼女のこういう笑顔には裏があることが多いので、近くにいたグリーンとシルバーは半ば反射的に後ずさった。

 

「ふっふっふ。いいこと思いついちゃったわ!」

 

 声を弾ませたブルーは、とても楽しそうな満面の笑みだった。

 

  

 

  

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 一方、修業のために飛び出したレッドとゴールドであったが……。

 

 

「シロガネ山なんかどうだ? オレが傷を治した場所で、強い野生ポケモンがたくさんいる。修行にはもってこいだ!」

「ふ~ん、シロガネ山!! いいっすね! レッド先輩!!」

「ちょっとお待ち! その前にやることやってもらうわよ!」

 

 

 ゴールドの言葉の後、突如として割り込んできた聞き覚えのある声に、ゴールドとレッドはぎょっと声のした方を見る。

 そこに居たのはあたかもさっきからそこにいましたとばかりにニコニコと笑うブルーの姿。

 

「ぶ、ブルー!?」

 

 レッドが自転車を止めつつブルーの名を呼ぶが、ブルーは驚きながらもレッドのように急には止まれないゴールドの方を見ると、彼の前方を指差す。

 

「ほらほら。前をちゃんと見なさいよ」

「え? わ、わあああああ!」

 

 顔だけブルーの方に向けていたゴールドは、いつの間にか進行方向にドーンっ、と佇むカメックスに気づいて慌てて避けようとする。が、スケボーは急な方向転換に対応できず、そのままスリップしてゴールドは近くの茂みに突っ込んでしまった。

 その様子に口元に手を当ててコロコロ笑うブルー。

 

「ほほほ! 油断大敵よ。シルバーに勝ちたいなら、もっと回りに注意を配ることが必要だわ」

「それより、どうしてブルーがここにいるんだよ!? ってかゴールド大丈夫か!?」

「先に心配してほしいんスけど……」

 

 葉っぱにまみれて逆さまになり、転倒した姿のままのゴールドは盛大に溜息をつく。

 

 そしてふいに、ブルーはレッドの目の前にあるものをかざす。

 虹色の羽だ。

 

「あれっ。これって……」

「イエローが私がもっていたほうがいいからって、返してきたのよ」

「イエローが?」

「そっ。っていうよりさっき、いくら気まずい雰囲気だからって逃げ出すんじゃないわよ。イエローが女の子だったの、そんなに意外だった?」

「え? いや、そのっ。だ、だってゴールドが……!」

「だってもすってもない! それで、相談なんだけど……」

 

 相談? レッドが首をかしげると、ブルーはレッドに内緒話をするように耳打ちをした。周りにはゴールドしかいないのだが、ちょっとした雰囲気作りである。

 そしてその内容を聞き終えたレッドは思わず声をあげた。

 

「え!?」

「いいわね? 決まりよ、決まり。わかったら、とっとと材料とりに行きなさいよ。リーグチャンピオンなら、これくらいちゃちゃっとできるでしょ?」

 

 半眼流し目で、きりきり働けとばかりの口調でブルーは言う。

 そんな彼女にたった今難題を押し付けられたレッドは、しばらく考え込む。そして茂みからようやく起き上がってきたゴールドの肩をがしっと掴んだ。

 

「ゴールド、シロガネ山での修行はもうちょっと待ってくれ。その前に行く場所があるんだ」

 

「ええ!? なんすか、いったい」

 

 それを見たブルーは「行くみたいね」と呟くと、にんまり笑ってからボールからケーシィを出す。そして焚きつけた少年を放置して、そのまま帰ってしまったのだった。自分の仕事はもう終わったとばかりに、満足そうな笑みを残して。

 

  

 

  

 

  

 

 

 

 

 

 

「ねえイエロー」

 

「え? わわっ」

 

 クリスと話しをしていたら突然背後に現れたブルーに驚いて、イエローは飛び上がるようにして驚いた。その後でブルーの隣にケーシィが居ることから「テレポート」で現れたのだと悟るが、ふと「何処に行っていたんだろう?」と首を傾げた。

 

「び、びっくりしたぁ……! な、なんですか? ブルーさん」

「レッドに正体ばれちゃったけど、麦藁帽子はまだかぶり続ける?」

 

 唐突な問いだったが、イエローは手に持っていた麦藁帽子をぎゅっとつかんでから顔をほころばせた。

 

「はい! もうだいぶ長い事かぶっているから、これが無いとどうにも落ち着かなくて。あ、でも羽はブルーさん達が持っていてくださいね。僕はまた新しい飾りを見つけるか、このままでいいですから」

「ふふっ、そう? ありがとう。でも、新しい飾りを見つけるならちょ~っと待っていてちょうだい。あのね、何週間か経ったら、とっても嬉しいことがあるわ!」

「嬉しいこと……ですか?」

「そうよ! 楽しみにしてなさいね♪」

 

 そう言ってブルーは手をひらひらふってから、イエローに背を向けてシルバーのいる場所に歩いていった。

 イエローは突然言われたその言葉に、思わず近くに居たクリスに問いかけた。

 

「嬉しいことってなんだと思います?」

「え? さ、さあ。……あ! でも飾りを探すのを待っていてってことは、もしかしたらブルーさんが新しい飾りをくれるのかもしれませんよ!」

「! なるほど! う~ん、でも気を使わなくていいのになぁ……」

 

 羽を返したことで思いがけず気を使わせてい待ったことにイエローはうんうんと唸るが、クリスはクスクスと笑ってからそんなイエローに声をかける。

 

「いいじゃないですか。せっかくの好意ですし、受け取ってくれた方がブルーさんも嬉しいと思いますよ」

「そう……ですね」

「受け取った時、思いっきり驚いて喜んだら、もっと嬉しいと思います」

 

 クリスの言葉に、イエローも「それもそうか」と納得した。ブルーの性格を考えるに、きっと遠慮するよりも喜んだ方が相手も嬉しいはずだ。

 

「そうですね! じゃあ、めいっぱい喜んで、お礼を言おうと思います!」

 

 

 

 しかし数週間後。イエローは予想していたサプライズとは別方向からやってきた驚きに、心の底から驚くこととなる。

 

 

  

 

 

 

 そしてカントーに帰ってきてから、数週間。

 

 

 

 

 

 

「さてと。チュチュ 森に行くよ!」

 

 そう言って肩にピカチュウのチュチュを乗せたイエローは、ウェスタン調の服装に、麦藁帽子、釣竿とスケッチブックが持ち物ないつものスタイル。

 ただ前と違うのは、帽子に羽飾りがついていないことだけ。

 

 イエローは少し寂しそうに飾りのあった部分に触りながら、思いを振り切るように首を横に振って、チュチュと共にトキワの森へ駆けて行った。

 

 

 

「ん~…………。くあっ……」

 

 森に着き釣竿を仕掛け、スケッチブックに数枚絵を描いたイエロー。ゆったりとした森の空気とうららかな陽気に、イエローに次第に眠気が訪れる。思いっきり屈伸をしてみるが、出てくるのはあくびだけだった。隣にいるチュチュも眠そうで、目元がとろんとしている。

 そこでイエローは、相棒にひとつ提案を持ちかけた。

 

「チュチュ。お昼寝しよっか!」

「チュ♪」

 

 上機嫌の返事が返って来たので、イエローは野生のポケモン達に襲われる心配のなさそうな場所を選ぶとチュチュと共に寝転がった。

 そして寝転がれば早いもので、本格的に睡魔が襲ってくる。

 

 イエローはそのまま、つかの間の微睡に身をゆだねていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数十分後。

 眠るイエローとチュチュの上に影が落ちる。それは彼女たちを覗き込んだ、一人の少年の影だった。

 

「う~ん。無防備に寝てるなぁ……。確かにこの場所なら、そうそう野生のポケモンには襲われないだろうけど……」

 

 少々呆れながらも面白がっているような響きの言葉をつぶやいたのは、シロガネ山に行ったはずのレッドだった。レッドはイエローの顔を、彼女を起こさないように気を付けながらそっと覗き込む。

 

 イエローが少年ではなく少女だと分かった今では 寝顔を見るのはこそばゆい感じだ。

 健康そうな肌の色に、太陽の光があたってキラキラ輝く金の髪。

 

 

 ――――綺麗だなあ

 

 

 そう思ってつい、麦藁帽子に手をかけてそのまま取り外す。すると麦藁帽子に隠れていたイエローの金色の髪の毛がこぼれ出て、金色の滝のようにさらりと彼女の肩に滑り落ちた。レッドはポニーテールに結ばれたその髪の毛を、誘われるように指に絡めていた。

 髪のさわり心地は想像通りとてもすべらかで、絡めてもすぐにするりと指から零れ落ちる。レッドはそれがおもしろくて、何度も何度も指に金髪を絡ませた。

 

 そんな風に寝ている女の子の髪の毛で遊ぶというなかなかにデリカシーの無い事をしていたレッドだが、しばらく楽しんだ後。イエローのすぐ横に寝転がってひじをつき、イエローの顔をまじまじと見た。

 

(女の子……なんだよな……。でもって一年前、あんなに頑張ってくれた)

 

 四天王に囚われ氷漬けにされていたレッドのもとから、相棒であるピカチュウのピカが必死に助けを求めて走ってくれた。そしてそのピカと共にスオウ島に現れて、四天王の将たるワタルと戦ってくれた女の子。

 強い女性をわりかし多く知っているレッドとしては女の子だからといって侮るわけでは無いが、イエローに少々手ほどきをしたというグリーンに聞けば、ポケモンバトルはほぼ初心者だったとか。そして相手を傷つける戦いも好まない、優しい性格。

 だというのに自分を助けるために「もっと強くなりたい」とグリーンに師事を求め、四天王ワタルと相対できるほど強くなってくれた。

 

 それを考えると、胸に謎の高揚感が訪れる。申し訳ないという気持ち以上に、なんだか嬉しくて仕方がないのだ。

 苦労させたというのにあまりにも勝手な気持ちであるが、どうも抑えきれない。この気持ちはなんだろうか。

 

 

 

「う~ん……」

「!」

 

 寝返りをうったイエローに、レッドはいつのまにか緩んでいた口元をおさえる。だがイエローが起きた様子はなく、今だ夢の中のようだ。いい夢でも見ているのか、心なしか嬉しそうな表情をしている。

 

「可愛いな……って、え!?」

 

 思わず口をついて出た言葉にレッドはその名前のごとく赤面し、周囲に誰も居ないことを確認する。幸い人気のない森の中には誰も居ないようで、ほっと胸をなでおろした。……しかしその傍らで、ピカが半眼になって「やれやれ」とばかりに首をふっていた事に彼は気づいていない。

 

 相棒の視線は、とても生暖かかった。

 

 

  

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁ~……。よく寝たなぁ」

 

 イエローは目を覚ますと、あくびを噛み殺しながら空を見上げた。太陽はだいぶ西に傾いており、もうそろそろ夕方の時間だ。ずいぶんと長く寝入ってしまっていたらしい。

 

 そしてふと、顔に温かい風があたる。どうにも自然の風とは違ったそれに、疑問に思いつつ寝ぼけ眼で隣を見るイエロー。

 

 

 

 するとそこには憧れの少年の、すこやかな寝顔が転がっていた。

  

 

 

 

「……………………」

 

 理解するのに数十秒。

  

 

  

 

 

 自分の隣に寝ているのがレッドで、次いで生暖かい風が彼の寝息だと知れるとイエローの眠気はいっきにふっとんだ。近い。

 

「れ、れれれれれれれれれれれれれ、レッドひゃん!?」

 

 イエローは噛んだ。

 

「ん~……。もう五分……」

 

 そしてイエローの大音量の声にレッドも起きたようだったが、その発言は完全に寝ぼけていた。二度寝する気満々である。

 

「え、えっと……。レッドさん?」

 

 噛んだことをさりげなく流しつつイエローが再度呼びかけると、ようやくレッドは寝ぼけまなこをこすりながらも体を起こした。そして目をこすりながら、イエローの顔をまじまじと見つめる。

 

「あ……。そうか、俺あのまま寝ちゃったのか」

 

 だがようやく思考がはっきりしてきたのか、イエローの顔が思いがけず近くにあったことでレッドは慌てて勢いよく跳ね起きた。その顔は赤い。

 イエローもそれに対してわずかに顔を赤くするが、気を取り直して問いかける。

 

「な、なんでレッドさんがここに? それと、なんで僕のとなりで寝てたんですか?」

「えっと……。ええと、だな!」

 

 レッドはしどろもどろに口を開くが上手く言葉がでてこない。イエローも混乱するばかりで少しばかり収集がつかなそうな状況……。それを見かねたのか、呆れたようなやけくそのような声が、しげみから人物と共に飛び出した。

 

「あーーーーもう!! レッド先輩! 早くあれ、渡したほうがいいんじゃないんすか!」

「ご、ゴールド!? おま、森の外で待ってるって!」

「そんなこと別に今はいいじゃないっすか!」

「い、いや良くない! い、いつから見てた!?」

「何恥ずかしがってんスか。……なんか俺まで恥ずかしくなってきた……」

「ピカピーカ」

「ピチュ……」

 

 ぼりぼりと頭を掻きつつため息をついたのはゴールドで、彼に同調するようにピカと、いつの間にか起きていたチュチュまでもがため息をつく。

 

「あの、レッドさん? それにゴールドくんまで……。二人は修業に行ったんじゃ……」

 

 ゴールドの登場にさらにわけがわからなくなったイエローは、少年二人を交互に見る。

 レッドはそれにこほんと咳払いをすると、ポケットから細長い箱をとりだした。

 

「イエロー。えっと、とりあえずちょっとこっち来てくれるか?」

 

 疑問は解消されないままだが、イエローは思わず素直にレッドのそばまで近寄っていく。そしてその時背中に揺れる髪の毛の感覚で、今初めて自分が帽子をかぶっていないことに気が付いた。

 

「! 帽子!」

「まった! 帽子なんだけど、まだかぶらないでほしい」

「? ええと……。レッドさん?」

「悪い。でもちょっとだけ、そのままで目を瞑ってほしいんだ」

 

 レッドの突然のお願いに首をかしげながらも、イエローは目を瞑る。すると、頭に何者かの手と思われる感触。おそらくレッドだろう。そして少ししてから、触れていた手が離れた。

 

「目、開けていいぞ」

 

 許可が下りたのでイエローが目を開くと、すかさずささっとゴールドが鏡を手渡してきた。

 

「レッド先輩。鏡ないと見れませんって」

「あ。そうか」

「ナイスフォローでしょ俺! さあ、麦藁くん。鏡見てみなって」

 

 

 ゴールドに促され、イエローは手鏡をのぞき込む。

 

 

 

「あ…………」

 

 

 

 イエローの髪に飾ってあったのは、虹色の羽と銀の羽。元を損なわないように髪飾りに加工してある、二枚の美しい羽飾りだった。

 しかしどこか作りぎこちなく、誰の手作りであることが窺える。そして製作者が誰かはすぐにわかった。

 

「ブルーに教えてもらって作ったんだけどさ……。ちょっとぶかっこうなのは、勘弁してくれな」

 

 はははと照れ笑いしながらレッドは言う。羽飾りを贈られたイエローは、ただただ驚くばかりだった。

 

「あの、この羽って」

「レッド先輩とオレとでとってきたんすよ。ブルー先輩とシルバーに麦藁くんが返したのとは別物。ま、オレはほとんど何もしてないっすけどね」

 

イエローの質問に答えたのはゴールドで、イエローは再び驚く。

 

「とってきたって……。ええ!? じゃ、じゃあルギアとホウオウを見つけに行ってたんですか!? この短期間で!?」

「はははっ! 大変だったけど、意外と何とかなるもんだなって。前帽子についてたのより一回りくらい小さいのは勘弁な。あ! そうそう。もちろん帽子にもつけられるようになってるから、安心してくれよ」

 

 ちょっと照れたように頬をかくレッドは、傾いてきた日の光のせいだけではなく顔が赤い。それを見つつイエローは、髪に飾ってある羽飾りにそっと手を伸ばした。

 

(ブルーさんが言っていた嬉しい事って、これの事だったんだ……)

 

 嬉しい。とてつもなく嬉しい。だが。

 

「レッドさん、無茶しすぎですよ。凍傷の後遺症だって、治ったばかりなのに……」

「ご、ごめん。でも、イエローに何かお礼が出来るいいチャンスだと思ってさ。まあブルーに言われてってのが情けないけど……」

「お礼何て、そんな」

「いや、いつかちゃんとしたかったんだ。だから、受け取ってくれると嬉しい」

 

 そう言いながらも、少し不安そうな顔でイエローを窺うレッド。その表情にイエローは眉をハの字にしつつも、次いで破顔する。

 

 

「ありがとうございます! とっても、とっても嬉しいです!!」

「そ、そっか! よかった。あの羽飾り、気に入ってたみたいだからさ」

 

 イエローの笑顔にレッドもまた、ぱっと笑顔の花を咲かせた。そしてそのままどうやってルギアのホウオウのもとまでたどり着いたのかというプチ冒険談をレッドが身振り手振りで語り出し、イエローもまたそれを楽しそうに聞き入る。

 

 そしてそれを見届けたゴールドであったが、こっそりピカとチュチュを伴ってこっそりその場を後にした。

 

 

「邪魔するほど野暮じゃないっすからね。お前たちも森の外で一緒に待ってようぜ」

「チュ!」

「ピカ!」

 

 

  

 

  

 

 

 楽しそうに話す若者二人を夕日は見守り、そして光に照らされた銀色と虹色がキラリとひとつ輝いた。

 

  

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

 

「森の外でまってるかぁ……。って、うわ!?」

 

 二人のそばから離れたゴールドだったが、茂みの影に潜んでいた人物を発見してしまったがためにおもわず声を上げる。

 

「何やってんすかブルーせんぱ」

「しッ! お黙り!」

 

 言い終わる前にブルーの手に口をふさがれる。…………そう。茂みに隠れていたのはブルーであり、その手にはカメラが握られている。

 

「シルバー! ゴールドが大声出さないようにおさえてなさいね♪」

 

 そしてその傍らには、無理やり付き合わされた様子のシルバー。ゴールドは無言で自分の口を塞いでくるシルバーに若干の哀れみの視線を送りつつ、とりあえず大人しくしておくことにした。

 

「もう、二人とも顔赤くしちゃって初々しいったら……! これは見守っておかないと!」

 

 

 

 後日。いい感じのツーショット写真を送られ、見事に悶える少年少女の姿があったとかないとか。

 

 

 

 

 

 

おわり

 

 

  

 

 




かなり前に書いた短編を発掘したので、せっかくなので修正を加えて投稿しました。

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