同盟を滅亡へと導いたとされる責任者の一人、アンドリュー・フォーク。
彼に転生した前世日本人が、運命を変える!

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少しだけ、ほんの少しだけ、銀河転生者伝説に入れられないかどうか考えた。(笑)
ほかの作品とネタがかぶってるかもしれません。


自由惑星同盟を救った男。

 原作キャラに転生、もしくは憑依。

 夢のある展開だけど、あれにはひとつ落とし穴があると思う。

 先に言っておくが、ここは銀河英雄伝説の世界……少なくとも、近似の世界だ。

 そんな世界で、帝国の金髪さんとか、同盟の魔術師さんとかに、転生しちゃったら絶対に胃に穴があく。

 胃に穴があくぐらいで済めばいいが、普通に死ぬし、悪い意味で原作ブレイク待ったなしだよ。

 主役を張るようなキャラに一般人が転生したら、劣化にしかならないよね?

 そりゃあ、肉体的能力は受け継げるかもしれないけどさ。

 判断力、性格、知性など、主役の代わりなんて無理無理。

 原作知識が役に立つのは、原作の状況通りに動くときだけだよ。

 それに、数時間にわたる戦いの中で、主役は忙しく、状況を判断し、対応策を考え、指示を出し、また状況を判断する……を繰り返すわけだからさ。

 ここ一番の見せ場で、的確な判断だったり、周囲を驚かせる決断をくだせたとしても、そこにたどり着くまでに戦線崩壊だよ。

 その場面までたどり着けないってのが、所詮は一般人の限界であり、悲しさってものさ。

 

 つまりさ、原作キャラに転生なり憑依しなきゃいけないなら、凡人とか、愚者だよ。

 はっきり言おう、原作ファンから袋叩きにされるようなキャラが好ましい。

 英雄である必要はない。

 主役である必要もない。

 原作ファンから後ろ指を指される、味方の足を引っ張るシーンの失敗を回避するだけで、状況は大幅プラスになるってことだからね。

 

 と、いうわけで。

 前世日本人である私は、アンドリュー・フォークへと転生しました。

 

 やっべ。

 これ、同盟が帝国を滅ぼすことができるかはともかく、原作の状況を大幅ブレイクできるのは間違いないじゃん。

 まず、帝国領への大侵攻の作戦が起こらない。

 この時点で、帝国は皇帝の寿命がカウントダウン状態。

 後継者も決まってないし、常に内乱のリスクを抱えた状態にさらされる。

 しかも、しかもだよ。

 帝国の金髪さん、その状況から数年経てば、病死しちゃうよね?

 それまでに帝国の状況がどうなるかは不明だけど、大混乱必至だよね。

 同盟によるイゼルローン奪取から、金髪さんがいなくなるまでの数年間……同盟は、イニシアチブを握ったまま、帝国に圧力をかけることができる。

 まあ、基本待機策で、フェザーンのちょっかいを凌げば……詰将棋のように、帝国を削っていくことができる。

 そのあたりは、同盟の社会状況も考えながらになるだろうけど。

 

 何はともあれ、同盟の未来は明るい。

 少なくとも、暗くない。

 一般人の自分が、英雄であるヤンをライバル視なんてするはずがないじゃん。

 同盟を崩壊へと導いた馬鹿げた作戦なんか提出しないし、たしかあの時点で准将だったっけ?

 それなりの影響力はあるだろうし、妙な動きがあったら全力で握りつぶすぜ。

 この世界の人間がそれを知ることはないかもしれないけど、この私、アンドリュー・フォークが自由惑星同盟を救うのだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ひ孫である幼女を、膝の上であやしながら老人はつぶやく。

 

「おじいちゃんはなぁ、この国を救ったんだぞぉ」

「おじーちゃん、すごい」

 

 キラキラした目で、ひ孫が老人を見上げる。

 老人は、穏やかな笑みが浮かべたまま、幼女を見つめる。

 

 老人がまだ子供だったころに描いた未来予想図は、10年前、帝国が自滅の形で滅んだことで結末を迎えた。

 同盟は決して急がず、焦らなかった。

 人口比率から考えても、同盟が帝国全土を一気に併呑し、統治することなど不可能だったからだ。

 帝国領土の防衛要所を見極め、時には大胆に切り込み、防衛し、そしてカンナで削っていくように帝国領土を奪っていった。

 帝国に残された領土が、かつての人類発祥の星である地球を中心とした僅かな範囲だったことは、歴史の皮肉というものだろう。

 

「おじいさん。子供はなんでも信じちゃうから、変なこと教えないでくださいな」

 

 居間から声が飛ぶ。

 老人の孫娘だった。

 それをたしなめる夫。

 

「いや、何も間違ってはいないよ……この国がかつて危機に陥っていたのは、あらゆる資料が示している。その危機の中にあって、お祖父さんをはじめとしたこの国のみんながそれぞれの形で国を支え、ついに銀河を統一することに成功したんだ」

 

 穏やかに、その誇りを胸に抱いて、言葉を続ける。

 

「帝国の最後を見ればわかる。社会システムがどうこういう話じゃなく、国を動かすのは人だ。人のあり方が国の運命を決めていく……親から子へ、子から孫へと、語り継いでいかなければならないよ。そうしなければ、次はこの国が、無様に滅んでいくことになる」

 

 夫の言葉に、妻が頷く。

 そう、これからなのだと。

 自分たちの上の世代は、みながその責務を果たし、自分たちへとバトンをつないだ。

 歴史が語るように、そのバトンはどこかで途切れるだろう。

 しかし、その瞬間を延ばすことは、自分たちを含めた下の世代の役務である。

 帝国が滅んだことで、自由惑星同盟は、本当の意味でこれから真価が問われることになるだろう。

 

 孫夫婦の視線が、老人に向けられる。

 

 長く続いた戦争によって疲弊した社会で、働き、結婚し、妻との間に3人の子をなし、育て、戦争で子を1人失い……地道に、堅実に、家族を支えてきた老人の背中。

 

 孫夫婦の視線を感じながら、老人がそっと、ひ孫の頭を撫でた。

 

「おじいちゃんが、この国を救ったんだ……」

「……おじーちゃん?泣いてるの?どこか痛いの?」

 

 

 




うん、確かに一般人だったから、『その場面』までたどり着けなかったね。
一般人が士官学校に入学できると、一体いつから錯覚していた?

転生したことで劣化して、軍人になれないロボス、ホーランド、ドーソン……。
同じく、政治家になれないサンフォード、トニューニヒト……。
同盟を救えそうな逸材は多い。(笑)
もちろん、ロボスやホーランド達はちゃんと活躍もしているから、悪化する恐れもあるが。


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