ご注文はうさぎですか? ~ココアと双子の弟~   作:燕尾

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どうも燕尾です。
ごちうさ、第ほにゃらら話です。





好き嫌いはいけません ~コウナの料理~

 

 

ある日の朝――

タカヒロさんが用意してくれた朝ごはん。食卓を囲んでいるとき、問題は起きた。

 

「もぐもぐ……んー♪」

 

「はむっ…ん……」

 

おいしそうに食べるココアとチノちゃん。だが、その手は唐突に止まった。

 

「「……」」

 

ココアの視線はコップに注がれているトマトジュース、チノちゃんの視線は平皿に置かれているセロリに注がれていた。

 

「……」

 

俺は何も言わない。二人の動向を見ながらただ自分の分を食べ続ける。

 

「コウく~ん…」

 

「コウナさん…」

 

縋ってくるような上目遣いと二人の弱々しい声。

しかし、これは日常茶飯事のことなので俺は横に首を振るだけで、自分の分の食器を片付ける。それに対して二人はがっくりと肩を落とす。

その様子を交互に見たティッピーはあからさまにため息をついていた。

結局、ココアとチノちゃんはトマトジュースとセロリを片付けることが出来ず、俺が処理することになった。

 

「チノちゃん、好き嫌いせずにセロリ食べないと駄目だよ?」

 

登校の途中、ココアが自分のこと差し置きながらそんなことを言う。

 

「そういうココアさんだって、トマトジュース一口も飲んでませんでしたよ」

 

「俺から言わせて貰えばどっちとも、だよ」

 

「「うっ……」」

 

互いに非を言い合っている二人に俺がまとめる。

 

「でも私より、チノちゃんのほうが好き嫌い多いよ。我慢して食べなきゃ大きくなれないよ?」

 

そう、なんだかんだ言ってもココアよりチノちゃんの好き嫌いが多かったことに俺は少し驚いた。

 

「心配はいらないです。ココアさんと同じ年の頃には私のほうが高くなっています」

 

「そっかぁ~……あ、でもチノちゃんっていつもティッピーを頭に乗せてるよね。それで身長が伸びるのかな?」

 

「それに、その根拠ってまったく無いよね? チノちゃん」

 

「はぅっ!?」

 

俺とココアの無慈悲な言葉に、チノちゃんはしばらく落ち込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学校帰り。バイトのあるココアと別れ、俺はスーパーに寄っていた。

 

「さて、今日の夜はどうしたものかな?」

 

いつもはチノちゃんが用意していたのだが、こういうような、ラビットハウスのバイトが無い日の夜ご飯の支度は俺が受け持つようになっている。

そのかごの中にはチノちゃんの苦手なセロリとココアの苦手なトマト類が入っている。

決して意地悪をしようとしているわけではない。ほんとだよ? 好き嫌いは良くないからね?

 

「さて、後は――」

 

そして必要なものを買って、ラビットハウスへと帰る。

 

「ただいまー」

 

「おっ、お帰りコウナ。買い物に行ってたのか?」

 

「ただいまリゼ。夕食の買い出しにね。シフトがないときは作るようにしてるんだ。良かったらリゼも食べていくかい?」

 

「いや、今日は遠慮しておく。もうあっちも用意しているはずだから」

 

「そっか、残念。食べたかったらいつでも連絡してね――それじゃあ、俺はこれを片付けてくるよ。リゼもバイト頑張ってね」

 

「あ、ちょっとまて……」

 

リゼの制止が聞こえなかった俺はそのままキッチンへと入る。そのとき、俺は飛んでもないものを目にした。

 

「……」

 

「……」

 

テーブルに伏しているココアとチノちゃん。その二人のすぐそばにはトマトジュースとセロリを挟んだだけのパンがおいてあった。

……この二人はバイトの時間中に何をしているのだろうか? まあ、おおよそはわかるが。

 

「見てしまったかコウナ。この事件現場を」

 

後ろから声を掛けてくるリゼ。うん、こっち来るのは良いんだけどリゼもバイト中だよね?

いくら店に人が来ないとはいえ、さすがに店員が一人もいないというのはよろしくないだろう。

 

「君たち? この店がお客さんの来ない店だからと言って、店のことを放り出して何してるのかな?」

 

「「っ!!」」

 

にっこりと笑う俺に二人の肩がビクリと跳ね上がった。

 

「早く戻らないのなら当分ココアとチノちゃんご飯は苦手なもののオンパレードにするよ?」

 

「さあ、チノちゃん! 早く戻って仕事しないとね!」

 

「ココアさんに言われるまでもないです。私も今行こうと思っていましたから」

 

二人は冷や汗を垂らしながら我先にへと店の方へと戻っていく。

 

「コウナって本当に容赦ないときがあるよな……」

 

「当たり前。ほら、リゼも早く戻る。じゃないと武器全部没収して可愛い恥ずかしい格好させるよ?」

 

「さあ、残りの時間も頑張るかぁ!!」

 

あからさまな態度でリゼは逃げるように出ていく。

 

「全く……」

 

俺は食材を取り出しながらため息をついた。

 

「さて。ココアとチノちゃんのために、おいしい料理を作るか!」

 

そして握った包丁がキラリと俺の姿を映すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チノがココアの身長抜かしたら面白いよな」

 

バイト終わり、着替えている最中にリゼちゃんがそんなことを言う。

 

「もしかしたらモフモフする側からされる側になるかもな」

 

「それでもいいかも!」

 

大きくなったチノちゃんが私をモフモフする…なんか今から楽しみかも!

 

 

「あ、私抱きついたりしないので大丈夫です」

 

そんな私の期待は一瞬にして消えうせた。

 

「チノちゃんは大きくなっちゃだめ! 食べちゃだめ! 寝ちゃだめぇ!」

 

私は悲鳴をあげながらチノちゃん頭を抑える。

 

「むちゃくちゃ言うな!」

 

だけど、すぐにリゼちゃんに引き剥がされる。

 

「うぅ~…だってぇ~……」

 

モフモフできないのもされないのも辛いんだもん。ならいっそのことずっとこのままでいてくれたほうがいいよ。

涙目でしょんぼりしているところで私は携帯が光っていることに気づく。

 

「? 千夜ちゃんからメールだ!」

 

その中身というと……

 

『チノちゃん夏バテみたいなの! ちゃんと栄養と睡眠とらせてあげて!』

 

チノちゃんが夏バテ!? それは大変!!

でもチノちゃんそんな素振りは見せてなかったけど…でもチノちゃんのことだから私やコウくんを心配させないようにしてたんだ。

 

「うぅ…妹の様子に気がつけないなんてお姉ちゃん失格だ……!」

 

バタバタと私はトマトジュースと枕を持ってチノちゃんのところに駆け寄る。

 

「チノちゃん!」

 

「こ、ココアさん…?」

 

「栄養とって、いっぱい寝なきゃだめぇ――!!」

 

「どっちですかっ!?」

 

どっちもだよ! 夏バテは敵なんだから!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日も働いたね~」

 

「働いたって…ココアさんは日向ぼっこしてばっかりしていたじゃないですか?」

 

「そんなこと、ないよ?」

 

卵の形を整えているところで二人の声が聞こえる。

どうやらココアとチノちゃんがバイト上がってきたようだ。

 

「わぁ、いい匂い♪」

 

「おいしそうな匂いです」

 

「二人とも仕事お疲れ。あと少しで出来上がるから座って待ってて」

 

「うん!」

 

「コウナさん、何か手伝えることはありますか?」

 

「大丈夫だよ。皿もこっちで準備しているし、後は盛り付けだけだから」

 

そう言って俺は見栄え良くさらに盛り付けていく。

 

「はい、完成」

 

「「え゛っ!?」」

 

出来上がった料理をココアとチノちゃんの前に置くと、二人は硬直した。

 

「コウくん、これって今日のお夕飯……?」

 

「そうだけど?」

 

「ですが、これは……」

 

「お残しは許しませんよ?」

 

俺が作ったのは、トマトジュースを使ったスープオムレツとセロリの浅漬け。

 

「大丈夫。騙されたと思って食べてみなって」

 

安心させるように言う俺にココアもチノちゃんもそれぞれ意を決したように顔を見合わせて頷いた。

 

「「い、いただきます……」」

 

ココアはトマトを、チノちゃんはセロリをそれぞれ口に運ぶ。

 

「美味しい……これ美味しいよ、コウくん!」

 

「こちらのセロリも美味しいですっ!」

 

「それはよかった」

 

二人の反応は俺の期待通りのものだった。美味しそうに食べ進めるココアとチノちゃんに俺もつい頬が緩む。

 

「苦手なものでも料理したら変わるものでしょ?」

 

「うん、これだったらいくらでも食べられるよ!」

 

「はい、こんなにセロリが美味しいと感じたのは初めてです」

 

「そうやってどんどん苦手意識をなくしていくのも一つの克服の仕方だよ」

 

「コウナさん、今度作り方教えてください!」

 

「コウくん、私にも教えて!」

 

「はいはい、教えてあげるから今は食べような――」

 

こうして、俺の試みは成功するのだった。

ちなみに――

 

 

 

 

 

「いっただきまーす!」

 

「いただきます!」

 

パクっ――

 

「「……」」

 

生のままで再度チャレンジした二人は見事にテーブルに沈むのだった。

これは克服できるまで、当分掛かりそうだな。

 

 

 







いかがでしたでしょうか?
ではまた次回に


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