ご注文はうさぎですか? ~ココアと双子の弟~   作:燕尾

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どうも、お久しぶりです。
ごちうさ第二十羽、球技大会です!!





球技大会 ~え、全員俺の敵ですか?~

 

 

 

「はーい、それじゃあ球技大会の出場種目を決めまーす! 各自出たい種目に丸をつけてくださーい。人数がオーバーするようだったらくじ引きをしまーす」

 

週に一度あるLHR。今日のこの時間は2週間後に行われる球技大会の出場種目を決めていた。

女子達が出場する種目に一喜一憂する中、俺は一人暇を持て余していた。

そんなところに話し合ったいたココアと千夜が戻ってきた。

 

「コウくん、私と千夜ちゃんはバレーボールになったよ!」

 

「うん、ココアお姉ちゃん? 書いてあるからわかるよ?」

 

「コウナくんは他のクラスの男の子とチームになるのよね?」

 

「団体種目はね。個人種目は男子のなかで代表を決めてくれって言われた」

 

俺は学校の数少ない男子ということで、多クラスの男子とチームを作って優勝した各学年の女子チームとスペシャルマッチをする予定になっている。当然、ハンデつきだ。

 

「コウナくんならきっと大活躍間違い無しよね。羨ましいわ」

 

そう言う千夜の顔には陰りがあった。

 

「そうでもないよ――なんか浮かない顔しているけど、千夜は運動苦手なの?」

 

「私、体力に自信がないの」

 

「それなら練習だよ千夜ちゃん! 目指せ、打倒コウくん!!」

 

ノリノリで千夜の肩をつかみ、俺を指差して宣言するココア。

 

「なら最初に優勝しなきゃな。頑張れ、ココア」

 

「ココアお姉ちゃん、だよ! コウくん、私たちが優勝できないって思ってるね!?」

 

そんなことは思ってない。球技大会に出る人みんなに優勝の可能性があるのだから。ただ――

 

「ココアに負けるってビジョンがまったく想像できないなぁ~?」

 

きっとこの時の俺は意地悪な顔をしていたのだろう。ココアはまるでリスのように頬を膨らませた。

 

「もう! コウくんは私が絶対倒すんだから!!」

 

ココアはクラスの全員が注目しているのにも関わらず声高らかに宣戦布告するのだった。

 

 

 

 

 

「――ということでもうすぐ私の学校で球技大会があって、千夜ちゃんと一緒に練習するからその間バイト出られなくなるけどいいかな?」

 

「いいですよ、頑張ってください」

 

「えっ…本当に……?」

 

「コウナもいて人も足りてるし、別に忙しいわけじゃないからな」

 

自分から言い出したことなのにすんなり要望が通ったことに戸惑うココア。

 

「止めないん……ですか?」

 

偶然通りかかったタカヒロさんに視線を向けるもタカヒロさんはサムズアップして部屋へと戻っていく。するとココアはしゅんとしてしまった。

その様子を見た俺たちは納得した。

 

「止めてほしかったのか」

 

「言葉を悪くしたら"別にココアが居なくても店は問題なく回る"って、言ってるようなものだからね――ほらココアお姉ちゃん。千夜を待たせているんじゃないの? 早く向かったら?」

 

「うん……」

 

しょんぼりしながら運動服に着替えたココアはラビットハウスから出て行った。

 

「あの…リゼさん、コウナさん。お願いがあるんですが……」

 

するとココアがいなくなったタイミングでチノちゃんが切り出してくる。

 

「ん、どうしたチノ?」

 

「お願いって何かな?」

 

「私も授業でバドミントンの試合があるんですが、調子が悪くて…お二人がよければ練習に付き合ってもらえませんか?」

 

チノちゃんに頼られて嬉しかったのか、いいよと二つ返事で答えるリゼ。だが、

 

「親父直伝の特殊訓練を叩き込んでやるよ!」

 

バドミントンの練習で何を教えようとしているんだ、リゼは。

 

「あの、でも、私も人間なので、殺さない程度に…」

 

「私をなんだと思っている」

 

怯えるチノちゃんにリゼは納得いかないようにしているもそれはしょうがないだろう。

 

「バドミントン一つで特殊訓練とか、むしろ何するつもりだったのさ、リゼ…」

 

「へ、変なことはしない! 体力向上のための走り込みや素振りとかいたって普通の練習だ!!」

 

慌てて否定するが、リゼは加減を知らないからな心配だ。

 

「まあ、俺もいるから安心してチノちゃん」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

「おい! 無視するな!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、まだ本来はバイトの時間なのだが俺たちは公園へと向かっていた。というのも、

 

「早めに代わってくれたおじさんのためにも、上達しような」

 

リゼの言う通り、事情を知ったタカヒロさんが早く交代してくれたのだ。

 

「ティッピーが頭に乗っていたら二倍の力が出せるんです。うそじゃないです」

 

変な理論で言い訳をしながらラケットを振り回すチノちゃん。しかしその目は明らかに俺たちのほうを向いていなかった。

 

「今さらヘタな言い訳を…」

 

「そもそもティッピーを頭に乗せながら運動するほうが難しいんじゃない?」

 

「うそじゃないです」

 

「そっかそっか。じゃあティッピーなしで勝てるように練習しないとね」

 

痛いところを突かれたようにチノちゃんの顔が歪む。

そんな話をしつつ公園へとついた俺たちは見覚えのある姿を見つけた。

 

「ん? あれは……」

 

「ココア? なんで倒れているんだろう」

 

ココアがうつ伏せになって倒れていた。

 

「最近死んだフリにはまっているのか?」

 

いやリゼさん。倒れているのは不思議だけどそれは無い思うよ。

 

「隣には千夜さんが…」

 

「何があった!?」

 

「とりあえず行ってみようか」

 

俺たちはココアたちの元へ駆け寄る。

するとチノちゃんがまるで殺人事件の現場のように、木の棒でココアの体の輪郭をなぞり始めた。

 

「この状況、どう見ますか」

 

「倒れている二人、現場に残されている一つのボール――球技大会の練習というのは建前で、お互い叩きのめしあったというわけか…」

 

「まさか、親友って言っていたのは嘘だったのか。せっかくココアに気の会う友達が出来たと思って安心したのに…どうしてこんなことにっ」

 

「どうしたそう見えるのっ!? あとココアお姉ちゃん!!」

 

がばっ、と起き上がるココア。

 

「生きてたか」

 

「まあ、そうだよね。ほら、千夜も起きて、いつまでも地面に横たわってると汚れるよ?」

 

「ごめんなさい、コウナくん…」

 

俺は千夜を起こす。

 

「それで、どうして二人は倒れてたんだ?」

 

「……それはその」

 

ココアの話を聞くと、バレーボールの練習でトスを指示しのにスパイクが飛んできて見事にココアの顔面にクリーンヒット、そして体力がなくなった千夜も力尽きた、とのことらしい。

 

「千夜ちゃん、和菓子作りと追い詰められたときだけ力を発揮するから……」

 

恐るべし、千夜の限界突破。チノちゃんとリゼの顔も真っ青になってるし。

 

「その様子じゃ、チームプレーも難しいんじゃないか?」

 

「顔面に当てたら反則なんだよ?」

 

「うそ…知らずにやってたわ……」

 

「わざとじゃないよね!?」

 

わざとかどうかはこの際置いておいて、

 

「確か顔面はセーフじゃなかったですか?」

 

チノちゃんの言う通り、バレーボールにおいて顔面に当たっても反則ではない。

 

「うん。反則なのは二回連続で触ったり、ボールを持ったりしたら反則で、顔面に当たってもボールが上がっていればセーフなんだよ」

 

「そうなの? よかったー」

 

「全然良くないよっ!!」

 

まあ、被害に遭う方はたまったものじゃないだろう。

 

「ま、頑張ってココア。千夜の力を引き出せれば優勝も目じゃないよ?」

 

「その前に私が死んじゃうよ! それと、お姉ちゃんを呼び捨てしないの!!」

 

「それじゃあチノちゃん、リゼ。バドミントンの練習しよっか?」

 

「ああ」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

「無視しないで!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ行くぞチノ――」

 

ポーン、とリゼからゆるく打たれる羽。チノちゃんは狙いを定めてラケットを思い切り振るが、

 

「ふん!」

 

見事に空振った。

空を切ったのが恥ずかしいのか、チノちゃんは身を縮込めた。

 

「す、すみません……」

 

「あはは、落ち着いてやれよー?」

 

「チノちゃん、力を抜いてー」

 

ほのぼのとした空気の俺たち。そんな空気でやっているのが羨ましく思ったのか、

 

「私、そっちに行きたい!」

 

「だめだ」

 

そういうココアだがリゼから即却下され、リゼはチノちゃんとバドミントンの練習を続ける。

 

「お姉ちゃんの競技はバレーボールでしょ」

 

「だって、千夜ちゃんのボールがすごい怖いんだもん……!」

 

千夜には聞かせられない本音なのかココアが耳元で言ってくる。

 

「でも、千夜はココアお姉ちゃんのチームメイトでしょ? 見捨てたらだめ」

 

「見捨てるなんて絶対しないけど、わかった――千夜ちゃん、今度はレシーブで返してね?」

 

「せめて関係ない当てちゃうクセは直さないと……わかったわ!」

 

気合を入れる千夜、だが――

 

「やばっ! ちょっと強すぎちゃった!?」

 

ココアが力加減を間違えたのか、勢いよくボールが千夜に飛んでいく。

さらに――

 

「わっ! 手が滑ってラケットが千夜さんのほうに――!!」

 

チノちゃんが振ったラケットが千夜へと襲い掛かる。

 

「危ないっ!」

 

急いで千夜へと駆け出すが、当然ながらボールとラケットのほうが速い。

 

「くそ、間に合えェ!!」

 

俺は一か八かで千夜に飛び込む。だが、

 

 

 

「あ、靴紐が」

 

 

 

「ええええええ!?」

 

俺は仰天の声を上げる。

千夜は解けた靴紐を結び直そうとしゃがんだのだ。そうなれば当然――

 

「千夜、避けてぇ!?」

 

「コウナくん――きゃあ!?」

 

俺は千夜を巻き込んで倒れた。せめて千夜に怪我をさせないように俺は彼女を上にして頭を抱きしめる。

そしてちょうど、俺たちの上をボールとラケットが通り過ぎた。

そして俺と千夜の間に静寂が訪れた。

 

「ごめん千夜…怪我はないか?」

 

「え、ええ。大丈夫よ」

 

「いきなりごめん。千夜が危ないと思ったから」

 

「何のことか分からないけど…コウナくんが私を助けようとしてくれたのは分かるわ。ありがとう、コウナくん……」

 

「え、あ、うん」

 

花が咲くような笑顔を間近で向けられて俺は少し赤面する。

よくよく考えれば、この体勢は非常にまずい。千夜から漂う彼女の匂いや、少し疲れたのかちょっと荒い息遣い。そして千夜を正面から抱きしめていたので、前まで中学生とは思えない胸の感触が広がっていた。

 

「千夜、コウナ! 大丈夫か!?」

 

「ああ、俺も千夜も大丈夫だ」

 

「千夜さんって、自分の危機は回避できるんですね」

 

「そうみたいだね」

 

駆け寄るリゼとチノちゃんに問題ない、と手を振る。しかし、

 

「……」

 

無言の圧力が俺に掛かってきた。

 

「ココア、お姉さま……?」

 

真顔で、しかも瞳孔が開けたまま見つめてくるココア。思わず様をつけてしまうほどココアは無表情だった。

 

「コウくん」

 

「はい」

 

「また、モフモフの刑かな?」

 

「お願いします! それだけはご勘弁を!?」

 

俺はすかさず土下座をする。だが、どういうわけかその行動がさらにココアの怒りを買ったようで、

 

「なんで即答するのっ!! コウくんの馬鹿――――!!!!」

 

「へぶしっ!?」

 

ココアから放たれた力強いスパイクが俺の顔面にクリーンヒットした。

 

「もう知らない!!」

 

「なんで…どういう、こと…だよ……――ガクリ」

 

そしてそのまま俺は気を失うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、んぅ――」

 

「コウくん、おはよう」

 

目を覚ますと、目の前には少し頬を膨らましたココアの顔があった。頭の下は柔らかい感触が広がっている。どうやらココアに膝枕をされていたみたいだ。

怒っていても、地面に放置せず膝枕をしてくれているところにココアの優しさを感じる。

 

「あれ、他のみんなは?」

 

「チノちゃんとリゼちゃんはあっちでバドミントンの練習してるよ。千夜ちゃんはさっき来たシャロちゃんとバレーの練習」

 

「そっか。ごめん、頭重いでしょ。すぐに退けるから――わぷっ!?」

 

起き上がろうとしたところで、ココアに額の真ん中を指で押された。

 

「コウくん。お姉ちゃんは一つ、コウくんに苦言を呈します」

 

「はい、なんでしょう……!?」

 

「コウくんはもっと注意するべきだとお姉ちゃんは思います」

 

「えっと……どういうことでしょうか?」

 

「最近のコウくんはお姉ちゃん以外の女の子とベタベタしすぎだと思います」

 

「そう、か……? そんなつもりは毛頭ないんだけど」

 

ちゃんと年頃の男女だと考えて、そんなことはしていないつもりなんだけど。

 

「それにそういうなら、今のこの状態も駄目なんじゃないかな?」

 

「お姉ちゃんはいいの!!」

 

えっ、なにその理論。

 

「とにかく、コウくんはもっと気をつけるの! わかった!?」

 

「え、ええぇ……?」

 

「わ・か・っ・た?」

 

「はいぃ! 了解であります!!」

 

ずいっと、顔を寄せるココアに俺は寝転がりながらも敬礼する。

 

「コウくんは球技大会までの間モフモフの刑と女の子の勉強だから、覚えておいてね?」

 

「はい…了解であります……」

 

どうやら、俺はこれから寝不足になることが決定したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後――

 

 

 

 

 

「球技大会、勝ったよー!」

 

「うそ!?」

 

ココアの報告に、リゼが驚きの声を上げる。

本当ですか、と目を向けてくるチノちゃんに俺はうん、と頷いた。

 

「千夜のやつ、大丈夫だったのか?」

 

「実は千夜の種目をバレーからドッジボールに変えてもらったんだよ」

 

「千夜ちゃん、避けるのだけは上手くて全然当たらないの」

 

「なぜ最初からそうしない!?」

 

「俺もそう思うよ」

 

本当になんだったんだろうね、球技大会までの苦労は。

 

「そういえばコウナさんは試合どうだったんですか? たしか、優勝した人や各学年のチームと男の人たちで勝負だったはずですよね?」

 

「ああ、それね……」

 

そう聞かれた瞬間、俺は遠い目をした。

 

「ど、どうしたコウナ! なんか死んだ魚の目をしているぞ!?」

 

「なにがあったんですか?」

 

「あ、えーっと、あはははは……」

 

唯一この場で事情を知っているココアだけは苦笑いをしていた。

 

「……他クラスの男子が、戦力にならなかったんだ。その結果バレーボールもバドミントンもバスケットボールもドッジボールも卓球もテニスも、全種目全員をほとんど俺一人で相手したんだよ……しかもハンデ着きで」

 

「マジか……」

 

リゼは哀れみの目を向けてくる。

 

「でも、コウくんすごかったよ! ハンデがあったのにほとんどの種目に勝ったんだもん!!」

 

「うん、一年生のドッジボール以外は全部勝ったよ」

 

「無双、ですね。さすがコウナさんです」

 

「その一年生のドッジボールは――ああ、千夜か」

 

そう。まったく当たらない千夜がいるチームにだけ勝てなかったのだ。もちろん俺はアウトになっていないのだが、時間切れで負けたのだ。

 

「疲れたよ。本当に疲れた…なんだよ、"拙者らじゃ彼女たちの相手にならぬ、保登どのよろしく頼む"って。しかも優勝した女の子は運動できる子たちなのにその全員の相手って……俺がハンデ欲しかったぐらいだよ……!!」

 

恨み言をつらつらと言う俺にリゼとチノちゃん、ココアは苦笑いをして、

 

「まあ、なんていうか、お疲れ様」

 

「お疲れ様です」

 

「コウくん頑張ったね、偉いよ。よしよし」

 

皆の労いに、俺は少し救われるのだった。

 

 

 






いかがでしたでしょうか?
dehamatajikaini!

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