年の瀬がやってきました。
前回更新から一ヶ月以上たっていましたが、来年はもう少し早く出来たらなぁって思います。
ある日の土曜。バーのバイトが夜に控え、暇な時間を持て余していた俺は、街の散策にでていた――のだが、
「……」
「……」
うさぎが集まる公園の広場にある木の枝にいた少女と目が合う。どっからどう見ても、降りれなくなっているのだろう。
「……」
じーっと見つめてくる少女。
「……」
おんなのこがなかまにいれてほしそうにこちらをみている。
どうする?
なかまにする
→ なかまにしない
「……」
「ちょっと待ってよ!?」
その場から立ち去ろうとする俺を慌てて引き留める少女――少女Aとしておこう。
俺は少女Aに問いかける。
「それで、どうしてそんなところにいるんだ?」
「こいつが降りれなくなってたから私も登って救助したんだー」
ほら、可愛いだろ! と少女Aは猫を見せてくる。そこはうさぎじゃないんだな。
「ふむふむ、それで?」
「意外とこの木が高くてなー、降りられなくなった!」
あはは! と暢気に笑う少女A。そんな彼女に少しイラッときた俺はまた踵を返す。
「そっか、強く生きてね」
「ああっ!? 待って、待ってよ!? お願い、助けて!」
笑顔から一変、一気に泣きそうになる少女Aに俺はため息をついた。
「わかったよ。それじゃあ、受け止めるからそこから飛び降りて」
「とび――!? 怖いよ、無理だって! 」
まあ、木の高さはそれなりにある。猫を抱えたまま飛び降りるのに恐怖があるのはわかる。
「仕方ない。そしたら――」
俺は木から少し距離をとる。そして、少女のいる気に向かって走った。
「よっ、ほっ、はっ!」
勢いのあるうちに何歩か登り、少女Aがいる枝に手を掛ける。
「ほら、こっちにおいで」
「……」
「……? ちょっと?」
「えっ? あ、うん!!」
ポカンとしている少女Aに声を掛けるとハッとして俺の腕の中に納まった。
「それじゃ、降りるよ」
「降りるって、両手塞がってるのに、どうやって――」
「こうしてだよ!」
そういうと同時に、俺は飛び降りた。
「えっ……うわああああああ!?」
それと同時に響く少女Aの叫び声。
俺は慌てる少女Aを抱える力を強くしてすたり、と猫のように着地する。
「大丈夫?」
「大丈夫じゃねー! いきなり飛び降りるとか馬鹿だろ!?」
少女Aは少し涙目で抗議してくる。
「まあまあ、はしご持ってくるにしても時間が掛かるし、飛び降りれないんだったらあれしか方法がなかったんだ」
「いや、考えたら他にもあるよ!」
「まあまあ。猫も俺達も怪我なく降りられたんだから、そう怒鳴らない」
そう言いながら少女Aが抱えている猫の首の下をゴロゴロと撫でる。すると猫は気持ち良さそうに声を出した。
「……なんか納得できないけど、まぁいっか」
少女Aも一緒になって猫を撫でる。すると撫ですぎたのか、猫は身を捩って少女Aから降りて走り去っていった。
少女Aは最初こそ残念そうな顔をしていたが、もう降りれないところに登るなよ、と笑顔で見送った。
完全に姿が見えなくなるのを確認した少女Aは振り返って頭を下げてきた。
「助けてくれてありがと、私は条河マヤ! あんたの名前は?」
「俺はコウナ。保登コウナだ」
「よろしくなコウナ! 私のことはマヤでいいよ!」
満面の笑顔で手を差し出してくるマヤ。
随分とフレンドリーな子だ。こういう子がチノちゃんの友達だったらバランスが取れるのかもしれない。
「ああ、よろしくマヤ」
そんなことを考えつつ、お互い握手をする。
「――マヤちゃーん!」
すると、遠くのほうからマヤを呼ぶ声が聞こえてくる。
駆け寄ってくるのは赤毛の小柄な少女――マヤと同年代と思しき子だった。
「もー、急にいなくなっちゃうから探すの大変だったよー」
ごめんごめん、と謝るマヤに頬を膨らませていると、俺の存在に気付いたのか、少女は首を傾げた。
「あなたは誰ですか?」
間延びしたような声色に、ちょっとかわいらしさを感じる。
「俺はコウナ。さっき降りられなくなってたマヤを助けていた。君は?」
「私は
「気にしなくていいよ。これもなにかの縁ってやつだから」
「「か、かっこいい~!」」
ただ思ったことを言ったまでなのだけど、なんだか眼を輝かせて見てくるマヤとメグ。
「なんか兄貴って感じだな!」
「そうだね、頼れるお兄さんみたい~!」
そんなご大層なことは言っていないのだけれど、そう真正面から褒められるとなんだか照れてしまう。
「ねね、コウナのこと兄貴って呼んでいい?」
「私も、お兄ちゃんって呼びたいな~」
すると唐突に提案してくるメグとマヤ。しかしそれに対し俺は疑問をもつことはなかった。
「兄貴…お兄ちゃん……」
俺は"兄"という呼び名に感動を覚えていたからだ。
「いい響きだ……」
「あはは、コウ兄って面白いんだなー!」
「コウお兄ちゃん、何で泣いてるの?」
気にしないでくれメグ。これは心の雫だから。
「二人はこれからなにか予定あるのかい?」
「特にないよー」
「よし、それじゃあ俺がアイスを奢ってあげよう! こうして知り合えた記念に!!」
「ほんと!?」
「ありがとう、コウナお兄ちゃん!」
ああ、本当にいい響きだなぁ~!
「それじゃあ二人とも、俺についてこーい!」
「「おー!!」」
このときの俺は誰かから見たら"調子に乗っていた"のだろう。だが当然ながらこのときの俺が気づくわけはない。
この後に迫ってくる危機を俺は知らないまま、酔いしれるのだった――
「んー、今日はいい天気だなー」
俺はカーテンを開けて日の光を浴びて身体を伸ばす。しかし暖かい陽気が眠気を誘い、また俺をベッドへと誘おうとする。
「もう一眠りするかなぁ~……」
「コウくーん! お散歩に行こうー!!」
そんな睡眠の誘惑に負けそうになったところで、勢いよく扉が開かれる。
「おやすみ~」
しかしなんのその、俺は入ってきたココアを無視して布団を被る。
「コウくーん! どうして寝ちゃうの!?」
眠いからです。バーのバイトが終わってから少し本を読んでいたから寝たのは夜中3時を回った頃。今は朝の8時だから5時間しか寝ていないのだ。育ち盛りの高校一年生の睡眠時間としてはちょっと短すぎる。
「少なくともあと一時間は寝たいから、パス……」
「コウくん、散歩行こうよー! チノちゃんも待ってるよー!」
「だったら二人で行っておいで~」
「コウくんも一緒じゃなきゃやだ!」
「そうは言われても眠たいんだもの…寝かせてほしい」
「むーっ!!」
ココアはぷんすか怒る。しかしこの布団の心地よさからは抜けることは出来ないのだ。
「もういいもん、それなら――!!」
ココアは俺の布団に入り込んで背中から抱きついてくる。
「ココアは暖かいなぁ…安らぐよ……」
「そ、そうなの? えへへ……じゃなくて! コウくん、覚悟ー!!」
「――っ!?」
雰囲気が柔らかかったのも束の間、ココアは声を上げて俺の脇腹をくすぐってきた。
「なぁ――!? あ、あははははは!? ちょっ、くすぐるのは駄目……!」
「コウくん、小さい頃から脇腹が弱かったよねー?」
「んっ、くぅ……! ちょっと、ほんとにやめ……んあっ!?」
「コウくんが行くって言うまでやめないよ? ほらほら~」
「わかった、わかったからやめろ!」
「んー? 何がわかったのかな~?」
「散歩! ココアたちと散歩、い、行くからぁ!?」
「お姉ちゃん聞こえないなー? コウくんは誰と散歩行くのかな?」
ココアは怪しい笑みを浮かべながら耳元で小さく問いかけてくる。
「ココア……んっ! お姉ちゃんとっ、一緒に行く! ココアお姉ちゃんとチノちゃんと散歩行く!」
「うんっ! わかればよろしい♪」
はぁ、はぁ、と息を服を乱している俺にココアは満足げに頷いた。
「こ、こいつ……」
今度絶対仕返ししてやる。俺はそう胸に刻む。
「それじゃコウくん、下でチノちゃんと待ってるから、早く来てね!」
「わかったよ、まったく……」
深くため息を吐いた俺は外出用の服を引っ張り出して着替える。
「コウナさん、おはようございます」
下に降りると先にココアに誘われていたチノちゃんが挨拶してくる。
「おはようチノちゃん。休みの日なのに早いね」
「今日は天気がいいという予報だったし、実際にいい天気だったので日当たりの良い場所でゆっくりボトルシップを作ろうとしたんですが……」
起きたところでココアが突撃してきたってことか。
「ごめんね、うちの姉が無理に誘ったようで」
「いえ。こういう休日もたまには良いと思いますし、ボトルシップはまた今度にします。それよりコウナさんこそ、確か昨日バーのバイトでしたよね? 眠くはないですか?」
「眠いんだけど、無理矢理ココアに起こされた」
「お疲れ様です……」
「ありがと……でもまあ、昔からのことだしもう慣れたよ」
「嫌な慣れですね…」
そんなこと言わないでよ。俺だってそう思ってるんだから。
「お待たせー!」
項垂れているところに準備ができたココアがやって来る。
「それじゃあ、行こっか!」
俺とチノちゃんの手を取り笑顔で言うココア。
そんなココアに俺とチノちゃんは苦笑いして、三人並んでラビットハウスを出るのだった。
いかがでしたでしょうか?
来年も皆さんのご健康とご健勝を祈りつつ子の言葉を送ります。
よいお年をー!!