ご注文はうさぎですか? ~ココアと双子の弟~   作:燕尾

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どうも、燕尾です!
年明け最初の投稿が二月の半ばになったのは、色々あったからです。そう、色々ね

来月からは就活が始まる…ハタラケルヨロコビ、ヤリガイ、ナイスガイ……

では二十四話目です。





お話しをするお話 ~街の散策~

 

 

 

「こうして三人でお出掛けするのは初めてだよねー?」

 

「言われてみれば……」

 

「そうかもね」

 

言われてみればそうだ。いつもは俺、ココア、チノちゃんの三人に加えてリゼや千夜など誰かしらがいるか、または俺たちの誰かがいないとかで、この三人の組み合わせで出掛けるのは何気に初めてなのだ。

 

「この街の散策ちゃんと出来なかったから今日は案内してもらうんだ」

 

「ココアさんは迷いますもんね」

 

「ここに来たときも地図持っていたのに迷ってたし、筋金入りだよ」

 

「えっ? あれってコウくんが迷子になったんじゃないの?」

 

はっはっは。この姉、笑わせてくれおる。本当に面白い。

 

ふぇ(えっ)!? ほうふん(コウくん)!? ほうひてほっへたのはすの(どうして頬っぺた伸ばすの)!?」

 

「ココアお姉ちゃん。嘘はいくない。これ、ゼッタイ」

 

「コウナさん、落ち着いてください! 目が据わってますよ!?」

 

チノちゃんに止められて俺はココアの頬から手を放す。

 

「うぅ……ひどいよコウくん~」

 

両頬を撫でながら涙目で抗議するココアだが俺はふいっ、と顔を逸らす。すると顔を逸らした方向の景色に俺は目を奪われた。

 

「へえ、ここから街が一望できるんだ。綺麗な街並みだね」

 

「ええ。ここは観光客やこの街に住み始めた人にはお勧めのスポットです。私も好きですよ」

 

「自転車があったらチノちゃんを後ろに乗せてこの坂を滑走するよ」

 

「二人乗りは駄目ですよ、ココアさん」

 

チノちゃんのいうことはもっともだが、ココアにはそれ以上の重大な欠点がある。

 

「その前に自転車に乗れるようにならないと駄目だろ」

 

「うん! だからコウくん自転車の乗り方よろしくね!」

 

「「えぇ――!?」」

 

チノちゃんとティッピー(マスター)が声を上げる。たぶん二人乗りした結果でも想像したのだろう。

 

「私、夕日の中で何度も倒れながら特訓するのが憧れで…」

 

「倒れたら怪我するから特訓だけにしてよ」

 

「話がコロコロ変わっていく…コウナさんよくついていけますね」

 

「そりゃ姉弟だからね。もう慣れたものだよ」

 

なんだかんだで保登家の人間とはもう十年来の付き合いだし、これくらいのことはお手の物だ。

 

「ねね、チノちゃん。あの看板は何屋さんかな?」

 

すると自転車の話から一転、ココアは街中にある店を指差して質問する。

 

「手前から古本屋さん、時計屋さん、床屋さんです」

 

「看板も店にゆかりのあるものになっているね」

 

古本屋だったら本のマークが、時計屋だったら看板自体が時計に、床屋だったら鋏と、一目見たらわかるようになっていた。

 

「昔の話ですが、この街ではわかりやすいように職業別に家の色が決まっていたんです。魚屋さんは青色、パン屋さんはピンクなどですね」

 

「へぇ~、それはまた珍しい。そういえば前にココアと千夜と見たパン屋さんも確かにピンク色だったな」

 

「古くからある店でしたらそうなっててもおかしくはないです。それに今でも昔に倣って色を決める人も少なくないですから」

 

「あってもなくてもいい風習だからだね。それじゃあ今は看板で見分けたほうがいいってことだね」

 

そうですね、とチノちゃんも頷く。

 

「それだったら私は将来ピンクの家のパン屋さんになるのかー」

 

「え? ここに住む気ですか?」

 

その可能性は無きにしも非ずだ。まあ、この先の進路とかにも左右されていくけどね。

 

「一階がチノちゃんの喫茶店で、二階が私とコウくんのパン屋さん。三階がリゼちゃんのガンショップだったらとってもカラフル」

 

「一つ物騒なお店があるんですが」

 

「なんで俺とココアが一緒にパン屋を営んでいるんだ?」

 

ココアの将来設計に不安を感じながら俺たちは進んでいく。

そうして街中を歩いているととある店で見知った姿を見つけた。

 

「あれ? あれは…リゼちゃん?」

 

「洋服を選んでいますね」

 

視線の先のリゼは服屋で色々と洋服を物色していた。今は気になる服を取って見比べている。

 

「リゼちゃんって感じの服だね」

 

「私たちあまり着ない系統の服です」

 

するとリゼの顔がぱあっと明るくなる。

 

「あ、ちょっと笑顔になった」

 

「気に入った服を見つけたんですね」

 

しかし、それも束の間リゼは悩むように唸りだした。

 

「なにやら葛藤しているようですな」

 

「似合ってるし、そこまで悩む必要はないと思うんだけどな。まあ、リゼにも色々あるんだろ」

 

「そっとしておきましょう」

 

俺たちはリゼには声を掛けずに、彼女の後ろを通っていく。

そして、次にやってきたのは公園だった。休憩もかねて、俺たちはベンチに座る。

 

「公園はぽかぽかして気持ちいいねー」

 

「そうだなー、夏も近くなってきたし」

 

「それに、仄かに甘い香りも感じます」

 

「甘い香り?」

 

チノちゃんの言葉に、ココアは香りの元を探し始める。

 

「あ、あんなところにクレープ屋さん。しかもあそこにいるのって……」

 

どうやら今日は色々な人に出会うらしい。俺たちは挨拶もかねてクレープを買いに近づく。

 

「やっぱりシャロちゃんだ!」

 

「ココア!? と、チノちゃんとコウナまで!?」

 

金髪の苦学生少女――シャロは驚きの声を上げる。

 

「こんなところでもバイトしているなんて多趣味だねー」

 

「そ、そうよ多趣味よ悪い!?」

 

バイトの数が多趣味とはまた違うと思うのだが、俺は黙っておく。しかし、シャロが器用なのは間違いない。

 

「趣味の多さならチノちゃんも負けてないよ」

 

「チェス、ボトルシップ、パズルなどを嗜みます」

 

「ろ、老後も安心の趣味ね……」

 

どこか誇らしげに言うチノちゃんにシャロはなんとも言えない返しをする。

俺たちはそれぞれクレープを頼み、シャロが作ったクレープを受け取る。

ちなみに俺はチョコバナナ、ココアとチノちゃんはイチゴチョコホイップを頼んでいた。それぞれ買ったクレープに口をつける。

 

「んー、おいしっ! はい、シャロちゃんもあげる」

 

「私、仕事中よ?」

 

真面目なシャロは差し出されたクレープを断るが、同じ気持ちを共有したいのか、ココアは引き下がらなかった。

 

「まあまあ、一口だけでも」

 

「ひとくち……」

 

そういうココアにシャロは揺れるように葛藤し始める。まあ、クレープはいうなれば贅沢品、普段から節約に徹しているシャロにとっては一口でも魅力的に見えるのだろう。

 

「それじゃあ、一口だけ…」

 

ココアからクレープを受け取ろうとするシャロ。しかしそこに一つの影ができる。そして、

 

――べしゃあ!!

 

「あ゛ー! また空からあんこが!!」

 

ココアは悲鳴に近い声を上げた。

二人の間に落ちてきたのは甘兎庵の看板うさぎ、あんこ。落ちてきたあんこはものの見事にココアのクレープを潰していた。

 

「どうして私のところにばっかり降ってくるの!?」

 

ココアって運がないときあるからなぁ。とはいってもこれはちょっとかわいそうだ。

シャロも少しがっかりする――

 

「……」

 

「あれ!? 私よりショック受けてる!?」

 

少しどころではなかった。目じりに涙をため、無残な姿になったクレープを眺めていた。

そんな姿を見て、俺はそのまま見過ごすことは出来なかった

 

「仕方ない。二人とも、これでそれぞれ好きなのを買うといい」

 

俺は二人分のクレープ代を出す。

 

「いいの、コウくん?」

 

「でもそんなの悪いわよ…」

 

「遠慮しない。ココアだって一口しか食べていないんだし、シャロも迷うなら二度手間させることになったし店を汚すことになった迷惑料とでも受け取っておいて」

 

俺は無理やりシャロに持たせる。

引く気がないのが感じ取れたのかシャロはしぶしぶだったがありがと、と言って受け入れた。

すると遠くからごめんなさーいと声が聞こえる。その声の方向を見ると、着物姿の千夜が走ってきていた。

 

「やっと追いついたー!」

 

「千夜ちゃん! またカラスにあんこさらわれたの?」

 

息を切らしている千夜は息を整えながら頷いた。

 

「もうあんこは店の外に出さないほうがいいんじゃないのか?」

 

「それじゃあ、あんこの健康にも悪いから。なるべく外に出したいの」

 

「それで甘兎の宣伝のときとかに外に連れているんだな。今はなにか期間限定でやっているのか?」

 

「よく気がついたわね。今はレトロモダン月間なの」

 

ふりふりと着物を見せる千夜。まあ、いつもと違うのは一目瞭然だ。

 

「それでいつもと制服が違うんだね」

 

「うん、よく似合っている。いつものもいいけどいまの制服も可愛いね」

 

「そ、そう? ありがとう、コウナくん…」

 

少し顔を紅くして照れたように着物の袖で顔を隠す千夜。

 

「ふーん…甘兎もそのうち見た目がフルール・ド・ラパンよりいかがわしくなるんじゃない?」

 

すると、どういうわけかシャロは頬を少し膨らましながら言う。

そんなシャロの言葉に千夜は動きを止めて、

 

「そう……それなら脱ぐわ」

 

そう言って肩からはらりと脱ぎ始めた。

 

「ちょっ……!?」

 

俺は慌てて千夜から顔を逸らして目を瞑る。

 

「ここで脱がないでよ! コウナだっているのよ!?」

 

暗闇の中、シャロのツッコミとしゅるしゅると衣擦れの音が聞こえてくる。

もう大丈夫だろうかとギュッと閉じた瞳を開ける。

 

「……」

 

すると俺の目の前には無表情のココアの顔があった。

チノちゃんの目を塞ぎながら、顔は俺の目の前に寄せるという器用なことをしているココア。だが、そんなことに感心している場合ではなかった。

 

「こ、ココア、お姉ちゃん……?」

 

ただただ怖い。無表情の顔が目の前にあるというのがこんなにも怖いと思うのは初めてだ。

 

「コウくん……コウくんは何を見ようとしてたのかな?」

 

静かに問いかけてくるココア。声色にほんの少しの怒気が含まれているのが余計に怖かった。

 

「いや、衣擦れの音が止んだしもう大丈夫なのかなって目を開けたんだけど……」

 

「そんなに千夜ちゃんの着替えを見たいの?」

 

「お姉ちゃん、話聞いてるか? 誰もそんなこと言ってないだろ?」

 

「コウナくん、見たくなかったのかしら? 私、そんなに魅力なかったかしら……」

 

表情からは分かりにくいが、言葉に少し不満な感情を込めている千夜。

 

「いや、魅力がないとは言わないけど、ほらこんな場所で不躾に俺が見るのも違うと思って」

 

「なら他のひとに見られない場所で千夜の許可があったらコウナは見るのかしら」

 

「そりゃあ、もちろん――はっ!?」

 

「コウナさん……」

 

チノちゃんの呆れた視線が突き刺さる。

 

「あんたね…」

 

シャロも残念なものを見るような目を俺に向けていた。

 

「まあ、あんたも男の子だったっていうのがわかっただけよかったけれど…ここで即答するのはまずかったわね」

 

「さ、裁判長! 今のは明らかな誘導尋問だと思います」

 

弁明の余地をと懇願する俺に対し、裁判長ことココアはにっこりと笑った。

 

「コウくん。帰ったらもふぎゅーの刑だからね♪」

 

「はい……」

 

そして俺はすべてを諦め、頷くのだった。

 

 

 







いかがでしたでしょうか?
ではまた次回に~(・ω・)ノシ


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