ご注文はうさぎですか? ~ココアと双子の弟~   作:燕尾

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どうも、燕尾です。
26話目です。






千夜の悩み ~和菓子への飽くなき探究心~

 

 

 

 

 

「千夜の様子がおかしい?」

 

 

 

 

 

「ねぇコウくん? コウくんもやっぱりおかしいと思ったよね?」

 

「うん、まぁ…明らかにおかしかったよね」

 

学校も終わり、ラビットハウスでバイトしてるときに俺たちはリゼやチノちゃんに相談していた。

 

「気のせいとかではなくてですか?」

 

「うん。今日の千夜ちゃん、どっからどう見てもおかしかったよね?」

 

「ああ、ため息も多いし元気無さそうだし色々間違ってたし、ああなる何かがあったのは間違いなさそうだね」

 

俺たちが断言できるくらい、今日の千夜は上の空というか、体調不良というか、落ち込んでいる……そう。落ち込んでいて、とにかく色々あった。

 

 

 

 

 

――朝の登校後

 

 

「おはようココアちゃん、コウナくん」

 

「おはよう、千夜」

 

「おはよー……千夜ちゃん! お願いがあるんだけど英語のノート貸してくれるかな? 昨日の授業うたた寝しちゃって……」

 

「いいわよ。っていうかコウナくんに見せてもらえばよかったんじゃ……?」

 

「えっと、なんというかコウくんのは……」

 

「別に正直に言っても良いのに。俺のノートは分かりにくいって」

 

「そんな悪いような言い方はしてないよっ、もう!」

 

「冗談だよ。俺は自分が分かるように端的に纏めてるから、他の人が見てもあまりわからないんだ」

 

「そうだったの――はい、これ」

 

「ありがとー! 千夜ちゃんのまとめ方上手いから黒板見るよりわかりやすくて助かるよ!」

 

千夜から受け取ったココアは早速ノートを開く。しかし、直ぐに首をかしげた。

 

「…英語でこんな授業やったっけ?」

 

ココアは確認のために俺にノートを見せてくる。そのノートには"ぴかぴか主義"、"黄金色の岩"、"ゴールデンスパイラル"等々、全く関係のない言葉が書かれていた、

 

「……うん、絶対やってないね。というか、英語の文字一つも書かれてないじゃん」

 

千夜の方をちらっと見ると、彼女は頬杖をつきながら空を仰いでいた。

 

「どうしたんだろう、千夜ちゃん」

 

「……さぁ?」

 

 

 

 

 

――授業間の休み時間

 

 

「千夜ちゃん、タイツに穴が開いてるよ?」

 

「やだ…本当だわ。今朝転んだからだわ。気がつかなかった」

 

「怪我もしてるじゃないか。どうしてそれで気づかないんだ…」

 

「ちょっと考え事してて」

 

「とにかくこのままだと目立っちゃうから――絆創膏で穴塞ぐのとペンで肌を黒く塗るの、どっちがいい?」

 

絆創膏はまだしもどうしてペンで塗るって発想が出てくるの…

 

「大丈夫よ、タイツを脱げば良いだけだもの」

 

「その手があったか!」

 

むしろなんでその考えが最初に思い付かなかったのか俺は不思議だ。

 

「千夜、ちょっとそこに座って。軽く手当てするから」

 

「えっ…そんな大した傷じゃないから……」

 

「いいから、その様子じゃ消毒とかもしてないでしょ? ほら」

 

俺は窓のスペースに座らせて消毒液とガーゼ、絆創膏を取り出す。

 

「コウくんっていつもそんなの持ち歩いてるの?」

 

「うん。なんかあったときのためにね。実際、いま役に立ってるでしょ?」

 

「手間取らせちゃってごめんなさい」

 

「気にしない気にしない、そんなことより自分の体なんだからもっと大切にしないと」

 

「ええ…そうね……」

 

「……?」

 

 

 

 

 

――昼休み

 

 

「千夜ちゃん、食べないの?」

 

「あまり食欲がなくて…私のお弁当…いる?」

 

「そういうときでも少しくらい食べないと、身体が持たないよ?」

 

「悩みごとがあったら言ってね、私いつでも相談に乗るから」

 

「ううん、いいの。これは私の問題だし――余らせちゃうともったいないから今後も食べてもらえるとうれしい」

 

「まあ、俺らも自分の分あるけど二人でなら問題ないか」

 

「ありがとう。ココアちゃん、コウナくん」

 

そう言って差し出される弁当。しかし……

 

「あわわわ…コウくん、これ今後私たちの問題でもあるかもしれないよ!?」

 

「まさかご飯以外全部コゲてるとは……」

 

 

 

 

 

――なんてことがあって、現在千夜の元気がない理由をココアと二人で考えていたのだ。

 

しかし、俺たちも千夜が落ち込むようなことをしてないし、原因がわからないまま今に至っている。

そこで、ないとは思うがリゼやチノちゃんも心当たりがないか聞いたのだ。

 

「千夜が落ち込んでいるの、私のせいかっ!?」

 

「リゼ、心当たりあったの?」

 

「確証はないが、甘兎に行ったときメニュー名に突っ込みを入れまくってたのとか」

 

「それを言うなら私もかもしれません」

 

「チノちゃんもあるの?」

 

「学校の帰りにあんこに与えた餌が口に合わずに体調を崩してしまったとか…」

 

「なんか二人のを聞いてたら私のような気がしてきた……!」

 

「……ちなみにココアはなんなの?」

 

「文系のできなさに嫌気がさした? パンの試食してもらってたけど実は嫌だった? コウくんが千夜お姉ちゃんって読んでくれないから――コウくんのお姉ちゃんは私だけだよ! ココアお姉ちゃんだよ!!」

 

「うん、意味がわからなくなってるから落ち着こ、お姉ちゃん」

 

混乱しているなぁ。

 

「私のもそうだが、言い出したらキリないな」

 

「そもそもそういうことで落ち込むぐらいだったらその前にアイデア求めたり、注意したり、断ったりしていると思うけど、千夜なら」

 

「じゃあ、私たちじゃない別な原因があるのかな?」

 

その原因を知るために俺は聞いたつもりだったんだけど、話が逸れた。

 

「それってなんだろうね……?」

 

頭を捻るココア。そんなココアにチノちゃんがボソリと呟いた。

 

「…私が怒ってるときは気がつかなかったのに、千夜さんの様子がおかしい時は気づくんですね」

 

「――っ! チノちゃんのことはちゃんと見てるよ!」

 

ココアの顔が緩んだ瞬間俺は悟る。また変な勘違いをしているということを。

 

「一緒にお風呂に入ってくれない時はそういう年なんだなーって気を使ったり、反抗期の対処法を考えたりしてるもん!」

 

そう言うココアに対して俺たちは全員微妙な顔をする。

この場にいる誰もが思っただろう――お前は思春期の娘に対する父親か、と。

 

「お前は思春期の娘に対する父親か」

 

マスター!? 言っちゃ駄目ですよ! しかも一言一句違わないとかエスパーですか!!

 

「? コウくん、なにか言った?」

 

男の声に反応したココアは反応した俺に問いかける。チノちゃんに助けを求めるが、どうにかしてくださいと促してきている。

 

「お姉ちゃん…ちゃんと考えてて偉いね……」

 

考えに考え抜いた結果、俺はココアの頭を撫でながら誉めることにした。

 

「えへへ…ありがとー」

 

「逃げたな?」

 

いいんだよリゼ。ココアが満足しているんだから…うん……

 

「そ、それよりチノちゃんとかは悩んでいることはないの?」

 

俺は誤魔化すように話をチノちゃんに向ける。

 

「悩み、ですか……実を言うと最近悩んでいることはあります」

 

チノちゃんの告白にココアとリゼはハッとした表情をした。

 

「辛いことがあったら我慢せずに、私の胸に飛び込んでおいで!」

 

「相談に乗るから何でも言えよ? 精神のブレは戦場でも命取りになるからな」

 

腕を広げて受け止める準備をするココアに優しい雰囲気で頼りになりそうな言葉を掛けるリゼ。しかし、

 

「最近成長が止まったような気がします」

 

「精進あるのみじゃ」

 

「前にも言ったけど慌てないで健康的な生活送っていればまだまだ成長するよ」

 

「スルーかよ!?」

 

「コウくん、私からチノちゃんを取らないで!!」

 

別に取ったつもりはないし、そもそもチノちゃんはココアのじゃない。

 

「だったら頑張ることだねー、ココアお・姉・ちゃ・ん?」

 

「むぅ~!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても千夜は本当にどうしたのかな……?」

 

ラビットハウスのバイトが終わり、制服から部屋着に着替えながら俺は一人呟いていた。

 

「ああなった原因は必ずあるはずだけど、俺たちの知らないところで起きた可能性もあるし」

 

その場合は千夜から打ち明けてくれない限り俺たちが知ることはできない。どうにかしたいのだが、どうにも出来ないもどかしさがあった。

「考えろ、千夜が落ち込んでいる理由(ワケ)を…」

 

俺たちに原因があるなら、必ずわかるはずだ。

 

「思い出せ。千夜の様子が変わったときを」

 

学校だけではなく、放課後や休日だって一緒に過ごしている時間があるのだ。千夜の言葉や行動から何かわかることがあるはずだ。だが、考えても直近のことを思い出しても千夜の元気がない原因がわからない。

 

「考え方を変えよう。俺たちに原因がないと仮定して、千夜が落ち込むのはどういうときだ?」

 

それは彼女の生活の一部である甘兎庵関連だ。

 

「経営不振…は違うだろうな。客入りもそこそこあったし、それに赤字がでるような価格設定はしていなかったし」

 

父の日の前のバイト掛け持ちで甘兎の材料の価格などを彼女の祖母から少し教えてもらったからそれはわかる。

 

「なら新メニューの開発で悩んでいる…?」

 

この線はありえそうだ。千夜が自分でどうにかしないといけない、といえる問題だ。そうなればリゼのダメ出しも考えられるけど、それなら最初に四人で甘兎に行ったときと矛盾する。

 

「新メニュー開発、名前、和菓子、味…………あっ……」

 

俺は一つの可能性を思いついた。

 

「いやでもまさか…それでなのか? いやでも人それぞれだし、ありえない話じゃない――ないけど」

 

しかしそれは俺の想像でしかなく、もう少し確証がほしい。

 

「――そうだ、シャロなら聞いているかも」

 

家が隣で学校など途中まで一緒に行くこともある千夜の幼馴染のシャロ。彼女なら千夜も悩みを打ち明けることもあるかもしれない。

そうなれば早速連絡を――そこまで思いついたときだった。

 

「コウくんっ! お願いが――」

 

勢いよく開けられる俺の部屋の扉。入ってきたのは片手にノート、片手にハンドガンを持ったココア。

 

「…ある…の……」

 

勢いよく入ってきたココアだったがだんだんと語尾が尻すぼみしていった。その原因はわかっている。

ノックもせず突撃してきたココアが目にしているのは、服を着ていない俺の上半身。

それを認識したココアの顔がみるみると紅くなっていく。

 

「……ココア?」

 

「――ご、ごめんっ!!」

 

名前を呼ぶとココアはすぐにドアを閉めて走り去った。俺はため息を吐きながら着替えを再開する。

 

「なんで風呂とかにはモフモフの刑とか言って一緒に入ってくるのに、こうなんでもないときにすごい恥ずかしがるんだか…」

 

普段からその羞恥心を持っていれば風呂に入るとか抱きつくとか出来ないはずなのに。

我が姉ながら不思議で仕方がない。

 

「で、ココアは何の用だったんだ?」

 

そして、ココアの目的は分からず仕舞いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ~ビックリしたぁ……」

 

私はドキドキする胸を抑えながらそう呟いた。

自分の不注意から起こったことだけど、本当にああいうのは心臓に悪い。まさかまだ着替えの途中だったとは思いもしなかった。

 

「コウくんの裸…うぅ~……」

 

引き締まった身体、それでいて女の子にも負けないくらいの白い肌。思い出せば出すほど顔が熱くなる。

やっぱり綺麗だったなぁ、コウくんの身体。

お風呂とか一緒に入るときに当然見るけど、そのときは姉と弟として接して意識していないようにしているからあまり恥ずかしくはない。問題なのはこういうときだ。

 

「本当に、不意打ちはダメだよ…もう……」

 

私はノートとハンドガンをギュッと抱きしめながら天井を仰ぐのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

着替え終わってから改めてココアに用を聞くと、千夜の家まで一緒についてきてほしいということだった。どうやら今日借りたノートを返すのを忘れていたようだ。

明日にでも返せばいいのだが、テストも近いし復習したい時どうしようもなくなるため今からいくことになったのだ。

しかしもう日が落ちて暗くなっていて、ココア一人で行かせるのは少々危ない。なら俺が代わりにといったのだが、これは私が借りたんだから私が返さないと、とココアは譲らずということで俺がお供する形になった。

そうして二人で千夜の家の前まで行くと、彼女の家の前でうずくまっている人物が一人。

 

「シャロちゃん?」

 

「シャロ、こんばんわ」

 

「あっ…ココアとコウナ……」

 

「千夜ちゃん家の前で何してるの?」

 

ココアがそう問いかけるとシャロは俯く。

 

「朝…起こしに来た千夜とちょっと揉めちゃって…」

 

「だから落ち込んでたんだ!」

 

なるほど、どうやら俺の考えていたことは的外れだった。というか、あの一件でシャロに聞くのをすっかり忘れていた。

 

「追いかけてきたのを振り切ってる最中に千夜が転んじゃって…捕まるのが嫌でそのまま学校に行ったんだけど、罪悪感が…」

 

「シャロちゃん仲直りしたいんだね」

 

「怪我もそれが原因だったんだ。でもどうしてそんなことになったの?」

 

「それは…千夜が成長するようにって毎朝しつこく牛乳を押し付けてくるのよっ! 胸が無いから、きっと!!」

 

「背の心配だと思うよ!? ねっ、コウくん!」

 

うん、それは俺が答えられない話だから振らないでほしい。

 

「でも、千夜ちゃんもしょぼんとしてたよ。あんな千夜ちゃん見るの初めて」

 

「そんなにだったの……!?」

 

「嘘は言ってないよ。注意力が散漫になって、どこか落ち込んでて、こっちが心配になるほどだった」

 

「私、二人の関係性が羨ましいな。そういうの少し憧れちゃう」

 

俺もココアと同じ気持ちだ。幼馴染というものがいなかった俺は少しシャロや千夜をうらやましく思ってしまう。

ココアが幼馴染ではないのかといわれれば確かにそうなのかも知れないのだが、保登家に養子として入ったので俺とココアは幼馴染ではなくもう家族。だから気持ち的には違うのだ。

 

「顔を合わせるのが恥ずかしいなら私たちも協力するから、行こう?」

 

「自分の気持ちを素直に言えば、千夜だって分からないはずはないよ」

 

そう提案する俺たちにシャロは違うの、と首を振った。

 

「お、お店に入りにくいのはそういう理由じゃなくて! 別に恥ずかしくてずっとここにいるわけじゃないの!!」

 

「えっ、じゃあどうして……」

 

ココアはそう首を傾げるが、店内をちらりと見た俺はすぐに理解した。

 

「あんこか…」

 

「そう、あいつが怖いの! 私の顔を見るなり噛むから!」

 

「あっ、なら私に任せて! 私がシャロちゃんを守るよ!!」

 

そういうココアは穴を開けた紙袋をシャロに被せて、手を引く。そしてもう片方の手にはハンドガン。

二人は高校の制服というところ意外はどっからどう見ても犯罪者の格好をしていた。

 

「ちょっと、その格好はまずい――」

 

俺が止める間もなく中に入った二人。

 

「きゃああ! 強盗!?」

 

「待て待て! ココアもシャロもややこやしいことするな!」

 

その直後に聞こえてきた千夜の悲鳴に俺は慌てて店内に入る。

 

「こ、コウナくん! あっ……」

 

パニックになった千夜は俺のところに逃げようとするが、体調が優れないのか足をもつれさせた。

 

「おっと…大丈夫?」

 

「え、ええ…ありがと」

 

やさしく受け止める俺に一瞬戸惑いながらも顔を上げる千夜。普段なら顔が近いとか、彼女から香る甘い匂いとかにドキドキしてしまうのだが、俺は顔を少ししかめる。

 

「……千夜、今すぐ休みなさい」

 

俺は彼女の顔を見てそう言った。

 

「顔色、すごい悪い――ココアお姉ちゃん、シャロ」

 

「うん! 任せて!!」

 

「もうオーダーストップしているわよね。キッチン、借りるわよ!」

 

紙袋を破り気合を入れるシャロの顔が現れた瞬間、あんこの目が光った。

 

「なああああ――!」

 

「シャロちゃん、そっちはキッチンじゃないよ!!」

 

あんこに追いかけられ脱兎のごとく逃げるシャロ。なかなか皮肉が利いているなぁ。この光景。

 

「あんこ、こっちにおいで」

 

そう言うとあんこはシャロから方向転換して俺に飛びつく。

 

「はぁ、はぁ……どうしてあんたの言うことは素直に聞くのかしらね……」

 

息を切らしながらあんこを睨むシャロ。しかし、そこは動物だから仕方ないと割りきるしかない。

 

「千夜はここに座ってあんこを抱いててね?」

 

俺は千夜の手を引いて客席へと座らせて、あんこを渡す

 

「でも、お仕事が……」

 

「俺に任せておいてね?」

 

「で、でも……」

 

「任・せ・て・ね?」

 

「え、ええ…」

 

笑顔で凄むと千夜は冷や汗を垂らしながら頷いた。

それからは店内に残っていたお客さんのお会計とテーブルの片付け、店の清掃をした。

最後のお客さんがいなくなったのを確認した俺は厨房へと顔を出す。

 

「ココア、シャロそっちはどう――」

 

「助けてお母さん! 涙が止まんないよ~! それとお姉ちゃんだよ~!!」

 

「娘なら邪魔しないでよぉ!!」

 

「……」

 

意味不明な光景を目の当たりにした俺は一度厨房から出る。そして深呼吸をしてもう一度入る。

 

「「うわーん!!」」

 

うん。何度見直しても変わらないな、これ。

まあ、ネタバラしするとココアとシャロは玉ねぎを切っているだけなんだけど、母親の件はよく分からない。

 

「二人とも…私のために夕食作ってくれてるの?」

 

いつの間にか隣に来ていた千夜に俺は頷く。俺が二人に任せたのは千夜の夕食作りだ。献立も二人に任せている。

 

「しっ、食欲ないっていうから食べやすくて体にいい物を…」

 

「シャロちゃんのお味噌汁、すごくおいしいの」

 

はい、とココアは味噌汁を小皿に入れて俺と千夜に渡す。

 

「もやし料理ばかりかと思って心配してたけど、一人でこんなに料理が上手くなってたのね」

 

味噌汁を口にした千夜は安心したように呟く。だけど内容が内容でシャロは怒り気味だ。

 

「でも、シャロちゃんにはお母さんというより、生活に困っても愛さえあれば大丈夫な新妻役でお願いするわ」

 

「ちゃっかり会話聞いてんじゃないわよ」

 

その話を聞いてなくわからない俺は味噌汁に口をつける。

 

「うん、お母さんとか新妻とかは知らないけど、美味しい」

 

これなら食欲がない千夜でも食べられるだろう。でも根本的なところを解決した方がいいので、俺はシャロに促す。彼女もタイミングを見計らっていたようで、頷いた。

 

「その、千夜…朝は逃げてごめんなさい……私の体のこと考えてくれてたのに…」

 

「千夜ちゃんも元気出して、ね?」

 

「そうね、私一人で抱え込みすぎて心配させちゃってたわ」

 

「抱え込むのは悪いことではないけど、今度からは体調崩す前に相談して欲しいかな。友達なんだし」

 

「ええ、反省ね――実は、チノちゃんのお父さんが作った栗きんとんが私の作った和菓子より美味しかったなんて、恥ずかしくて言えなくて…」

 

「えっ……」

 

俺は思わず声を漏らした。

ここに来て予想した方が正しいなんて思いもしなかった。なんかどっと疲れて脱力しそうだ。

シャロもなんだそれみたいな白けた顔をしている。

 

「そっかー」

 

唯一ココアだけが笑顔で納得していた。こういう時のこの短絡的思考は見習いたいものだ、うん。

 

「そういえば今朝渡したかったものだけど…」

 

「えっ! 牛乳じゃなかったの?」

 

身構えるシャロに千夜は浴衣の袖から白いものを取り出す。

 

「ちょっ――!?」

 

「――――ッ!!!!」

 

ソレに気づいた俺は顔をそらし、シャロは顔を真っ赤にした。

 

「シャロちゃんの下着がうちの木に引っかかってたの、多分風に飛ばされてたのね。追いかけても逃げるように学校行っちゃうんだもん」

 

「この和菓子バカ、早く言えー!! それ振り回して走ってたんじゃないでしょうね!? しかもコウナの目の前で出すっ? 普通!?」

 

本当、シャロの言うとおりだ。俺の目の前で出さないでほしい。

 

「白かー」

 

「ココアお姉ちゃん? わざわざ言わないでもらえる?」

 

なんか、もう本当に疲れたよ。

でもまあ、解決したならそれでいいかと納得することにする。

そして騒ぎが一段落したあとは、俺たちは皆で仲良く栗きんとんを研究しました。

 

その後日、牛乳寒天を食べた千夜がまたショックを受けたのは別の話である――

 

 

 

 







いかがでしたでしょうか?
ではまた次回に~



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