どうも、燕尾です!
ごちうさ第三羽、出来上がりました!!
オリジナルが混じっています、閲覧注意、いやっほう!!
「じゃあ今日はそろそろ店を閉めましょう」
時が過ぎて、もう日が落ち始めた夕方。チノちゃんの一言で喫茶店の営業が終了する。
「おつかれさまー♪」
「おつかれー」
「お疲れ様」
それぞれ更衣室と部屋に戻って制服から着替える。
着替えている最中に、リゼちゃんが口を開いた。
「ココアとコウナは今日からこの家で寝泊りするんだな?」
「そうだよ。でも最初はコウくんが別な場所を探すって言って大変だったんだ~」
「えっ、そうだったんですか?」
「うん。香風家が下宿先になったときに娘がいるって知った途端急にね~」
「それって、私がいるのを嫌ったってことですか……!?」
ショックを受けたようなチノちゃん。
「違うよ、チノちゃん! 確かにチノちゃんがいるのを知って変えようとしてたけど……」
「コウナさんはそこまで私と居たくなかったんですね……」
ああ、チノちゃんがますます落ち込んじゃった!?
「あれだろ? 男女一つ屋根のしたっていうのはまずいって思ったんだろ?」
「そう、それを言いたかったの。さすがリゼちゃん! だからね、チノちゃんが嫌だったわけじゃないんだよ!」
「……よかったです」
「そうだ! もっと仲良くなるために、今日は皆で夕飯をつくろうよ!」
我ながらナイスアイディアだね!
「それは大丈夫です、私一人でもできますので」
「えー、私も手伝う! それに、コウくんもすっごくお料理上手なんだよ!」
突っぱねるチノちゃんに食い下がる。だけど、なかなかチノちゃんは折れてくれなかった。
「ココアさんはなにも手伝わなくていいです。コウナさんには手伝ってもらいます」
「なんで!?」
「なんか、楽しそう……」
リゼちゃんと別れて、私たちは夕飯の支度をする。
コウくんはお風呂掃除をした後に入っていいといわれて、言葉に甘えてそのまま夕飯前にお風呂に入ることにしたらしい。
「夕飯はシチューでいいですか?」
「野菜切るのは任せて!」
私は無理やり、にんじんをとって、ピーラーで皮をむく。
チノちゃんはため息を吐きながらもそれを受け入れてくれて、鶏肉を一口サイズに切っていく。
「なんかこうやってると、姉妹みたいだね♪」
「はぁ……」
弟も嬉しいけど、妹も欲しかった私としてはなんだか新鮮に思えた。
「じゃあ、ココアお姉ちゃん…ですね」
「っ!!」
初めてチノちゃんが、おね、おねえ……お姉ちゃんって言ってくれた!
「……ココアさん?」
「チノちゃん、もう一回言って?」
「…………」
「お願い、もう一回言って!」
だけど、この後何度頼んでも呼んでくれることはなかった。
「わぁ、美味しそう!」
「後は煮込んで終わりです」
シチューの完成まであと少しのところで、リビングのドアがノックされる。
ドアを開けて入ってきたのは大人の男の人だった。
「なにもの?」
「こちら父です」
チノちゃんのお父さんはなんというか、渋いという言葉がぴったり当てはまるような人で、なんだか少し緊張してしまう。
「…君がココア君か、よろしく」
「あっ、お、弟のコウく――コウナ共々、お世話になります! コウナは今お風呂に入ってしまっているので、後で挨拶に向かわせます!」
「気にしなくて大丈夫だよ。自分の家だと思ってくつろいでくれ」
「ありがとうございます! これからよろしくお願いしますっ!」
「こちらこそ…チノをよろしく頼む」
「は、はい!」
じゃ、と言って、チノちゃんのお父さんは店のほうへと向かっていく。
「お父さんは一緒に食べないの?」
「あれ? ココアさんは知らないんですか?」
「なにが?」
「この喫茶店は夜になるとバーになるんです。父はそのマスターです。コウナさんが知っていたからてっきり分かっているものだと」
「わからなかったよ~、それにしてもバーか~……なんか裏世界の情報提供してそうでかっこいいね」
「何の話です?」
「ふぅ、いいお湯だった。お先にもらってごめんね、二人とも」
「いえ、気にしないでください。お風呂掃除もしてもらいましたし」
「あ、コウくん! さっきチノちゃんのお父さんが来てたよ! コウくんも後できちんと挨拶しないと!」
「そっか、後でバーに邪魔しないように行くよ」
「うん、失礼の無いようにね?」
「わかってるよ」
そんな俺たちのやり取りをチノちゃんはジーッと見ていた。
「どうした、チノちゃん?」
「いえ、なんだかココアさんがしっかりとした姉のようにに見えましたので」
「ひどいっ、私だってしっかりとした姉だよ!?」
「どちらかと言うと、今まではコウナさんが兄のようだったので」
「あはは。確かにココアは甘えん坊でいろいろと世話が焼けるけどね」
「コウくんまで!? それと、ココアお姉ちゃん!」
ココアはぷんすか怒りながら叫ぶ。
「最後まで話を聞きなさい。そんなんだから妹みたいって言われるんだよ」
「う~、だってぇ……」
俺は涙目のココアの頭を撫でる。
「でもね、チノちゃん。俺にとって、ココアはやっぱりココアお姉ちゃんなんだよ」
「コウくん……」
「確かに見ていたら兄と妹に思うかもしれないけど、見掛けだけじゃないんだ、こういうのは」
「私にはよくわからないです……」
そういうチノちゃんの顔は寂しそうだった。一人っ子のチノちゃんには現実味がないのだろう。
「まあ、これから嫌でもココアが姉として接するだろうから、わかっていけるよ」
「それは…少し遠慮したいです」
残念ココア、チノちゃんに振られたな。
「って、ココア?」
俯いたココアはプルプルと、体を震わせていた。そして、
「コウくーんっ! お姉ちゃんは、コウくんのこと大好きだよー!!」
目の前にチノちゃんが居るというのに、泣きながら思い切り抱きついてきた。
「わっ、おい!? 危ないって!」
「コウくん、コウくん、コウくーん!」
「ああ、もう! そういうところが妹っぽく見られるんだぞ!?」
夕食のシチューが出来るまでの間、ココアが俺から離れることはなかった。
チノちゃんとココアと三人で夕飯を食べた後、後片付けは俺に任せてもらって、二人は風呂に入りにいった。
最初チノちゃんは渋っていたのだけど、二人には夕食の準備をしてもらったのだから気にしないでと無理やりチノちゃんをココアに任せた。
「さて、洗い物終わり。それじゃあ、いきますか」
手を拭いて、身だしなみを整えて、リビングを出る。
俺が向かうのは喫茶店の方。今はバーをやっているはず。
ドアノブに手をかけたときになにやら話し声が聞こえた。
「やれやれ、大変なことになりそうじゃ」
なにやら年をとったお爺さんの声。声の発生源は白いもふもふした生物。香風家で飼っているアンゴラうさぎのティッピー。実はこのアンゴラうさぎ、中身はチノの祖父だ。
「チノ、仲良くなれるといいな」
それに何の疑問も持たずに答えるのはバーのマスター、チノの父親だ。今は客はおらず、いつ来てもいいようにグラスを磨いていた。だからこそ堂々と喋るアンゴラうさぎと会話ができるのだが。
「ココアとコウナといったか。あの娘と小童、あっという間に店になじんでしまった。まあ、チノにはああいう友達が合っているのかもしれん」
今は白の丸いウサギだが、心配する声はチノの祖父そのもの。やはり、いつまでも孫娘のことは心配なのだろう。しかし、心配事はそれだけではなかった。
「だがその勝手に抱きつかれると困るというか、わしもほら、今はこんな身体だけど一応アレだし…」
うさぎとなっても中身は人間。年頃の女の子に抱きつかれると焦るということだ。
しかし息子は深刻には受け取らなかった。
「なんだ、楽しくなりそうじゃねえか、親父」
「だぁ、ばかもん! お前にわしの気持ちがわかるかぁ! そっぽ向いてないでちゃんと話を聞けェ!!」
「……」
「ん? どうした、息子よ」
反応がおかしいと思ったティッピーは息子の視線を追う。そこには今日着たばかりの少年が気まずそうに立っていた。
「……何の話を聞けばいいのかな、ティッピー?」
「なぬ……?」
知られてはいけない香風家の秘密が、知られてしまったのだった。
「えーっと、なんかすみません。タイミングが悪くて」
俺はカウンターに座り、チノちゃんのお父さん――タカヒロさんからウーロン茶を受け取る。
「いや、気にしないでくれ。すべては親父が悪いだけだからな」
「なんじゃと? そもそもコウナがここに来なければよかった話ではないか」
「それは、今日からお世話になるのに挨拶もしないでいるのは居心地が悪いと言いますか、そんな不義理でいたくありませんでしたし」
「コウナ君、親父の戯言は聞かなくていい」
「戯言とはどういう意味じゃ!」
そのままの意味さ、と流すタカヒロさんにうがーっと噛み付くティッピー。その姿はなんだか失礼だが、微笑ましく思えてきた。
それに、あの頃とぜんぜん変わっていない。
「改めて――お久しぶりです、タカヒロさん。」
「ああ、久しぶりだね、コウナ君。随分と大きくなったな」
そう、俺がタカヒロさん一家と出会ったのは実はこれが初めてではない。小さいころに一度会っていて、ともに一緒の時間を過ごしているのだ。
「マスターもこんな形でお会いできるとは思いませんでした」
「ん?」
ティッピーが身体を傾けていると言うことはマスターは覚えていないようだ。
「コウナお主、わしとどこかで会ったことあるのか?」
「覚えてなかったのか、親父? まだ妻が生きていたころ、彼女が小さい子供を一人連れてきただろう」
「ん……おおっ、あの時の小汚かった小童か!」
小汚かったはさて置いて、どうやら、思い出してくれたようだ。
「その節は大変お世話になりました。おかげで今日まで元気に生きることが出来てます。まさか香風がタカヒロさんたちの姓だとは思いませんでした」
マスターにいたってはまさかこんな姿で再会するとは思ってもいなかった。
「ほぅ、あの仏頂面だった小僧が…そりゃ、わしだって気づかないはずじゃ。むしろお主こそよく声だけで気づいたものじゃ」
今では自分でもそう思う。それほど昔の俺は感情の乏しい子供だった。だけど、お言葉ですがマスター? タカヒロさんは気づいてくれてましたよ?
それに、俺がマスターを忘れるわけがない。というのも、
「まだ年端のいかない子供に厚いクレマのエスプレッソを飲ませて笑っていた爺さんは後にも先にもマスターだけでしたから」
「親父…そんなことしていたのか?」
「知らん、そんなことは忘れたわ」
都合の悪いところだけそんな風に言って、まったく。姿は変われど、中身はほんとう昔と変わってない。
「お主はよくここまで変わったものじゃ」
「それはいろんな人たちが支えてくれたおかげです。今は保登コウナとしてこうして生きていますけど、もしあの人に手を引かれて連れられていなかったら、また別な結果になってたでしょうね」
だけどそんなのはもしもの話だ。この場では意味のない話。
あのとき生きる意味をくれたあの人はいつまでも俺の恩人だ。もちろんタカヒロさんやマスター、覚えていないだろうけどチノちゃんに保登の家族たちにも感謝しても仕切れないほど世話になった。
「俺たちもコウナ君の元気な姿を見れてよかった、きっと彼女も喜んでいるだろう」
偶然とはいえ、今こうして再会できたのは素直に嬉しい。だけど、それを一番伝えたい人がいないことに胸が苦しくなる。
「はい……出来れば生きているうちにもう一度お会いしたかった……」
思わず声が震えてしまう。もう二度と、会えないのだと。あの優しい声を聞くことは出来ないのだと。そして、押し寄せてくるのはあのころの後悔と罪悪感。
「どうやら俺は…謝る機会も、お礼をする機会も、逃してしまったようですね……」
声どころか、身体まで震わせていた俺の肩にタカヒロさんがポンと手を置く。
「彼女は最期まで君のことも心配していたんだ、まるで自分の息子のようにね。だから大丈夫さ」
その言葉に、俺はもう、我慢が出来なかった。
「はいっ…う、く…ありがとうございます……!」
誰も来ないバーで、涙を流すのだった。
「あの、タカヒロさん。お願いがあるんですけど」
一頻り泣いたコウナ君は、赤く晴らした目でお願いしてくる。
「なんだい?」
「今度、お参りさせてくれませんか?」
「……もちろん。成長した姿を見せてやってくれ」
「はい――それじゃあ失礼しました。これから、よろしくお願いします」
「ああ、こちらこそよろしく。今日はゆっくりと休むといい」
ありがとうございます、と深く一礼してコウナ君は立ち去る。
いなくなったのを確認した親父が口を開いた。
「コウナもいっぱしに挨拶するようになったの」
「いい少年に育ったな、コウナ君」
「チノの母親があのとき周りの反対を押し切ってまでしたことは間違いじゃなかったということか」
「ああ、彼女がコウナ君を自分の息子にするんだと言って聞かなかった頃を思い出す」
「それに自分で面倒見切れなかったことを後悔していたことも、な」
彼女の友人、保登家にコウナ君を託したあと、コウナ君がいなくなったことに寂しさを覚えたのか一晩中大泣きしていたこともあった。
「それでも、コウナ君と一緒にすごした日々は彼女にとってかけがえのないものになっていた」
「ああ。あやつのことで一喜一憂していたのもいい思い出じゃわい」
「できれば、彼にはこのままいい人生を送って欲しいものだ」
それが、彼女の望みでもある。
「できるじゃろう。チノの母親の気持ちを理解して、いないことに悲しむことができる今ならな…」
断言する親父に俺は彼女のことを思い出しながら、そうだな、とだけ呟いた。
香風家の人たちが各々の夜を過ごす一方、天々座家の一室では――
「聞いてくれよ、ワイルドギース。今日新人が二人も入ってきてな、それがまた変わった二人でさ」
リゼは自分のベッドに転がり、そばにいるワイルドギースに語りかけていた。
「今日はラテアートの練習に付き合っていたんだが、その練習用カフェオレが余りまくって、飲み干すのに苦労したよ。もう当分カフェオレは飲みたくないなー」
『……』
だが、ワイルドギースは返事などしない。なぜならワイルドギースは――うさぎのぬいぐるみだからだ。
リゼは急に虚しくなって布団を頭まで被った。
「寂しくない、寂しくなんてないんだからな――!!」
この後、ココアから来たラテアートのメールで気分がよくなったリゼなのでした。
いかがでしたでしょうか?
ではではまたいつか近いうちに! お会いしましょうね~!