ご注文はうさぎですか? ~ココアと双子の弟~   作:燕尾

32 / 40

どうも、大分期間が開いてしまいました。
久々のごちうさ投稿です。





青山お悩み相談室 ~人は誰しも悩みを持っています~

 

 

「青山さん最近来ないと思ったら、ラビットハウスで働いてたのね」

 

「小説もスランプみたいで、昼間も時々手伝ってくれてるよ」

 

「息抜きとして筆持つだけじゃないこともしたいってことでね」

 

次の週。ちょうど千夜が青山さんの話をしていたので事情を説明した。

それが働くというのもまた凄い息抜きの仕方だが、本人曰く今の状況を結構受け入れているようだ。

 

「働いているところも見てみたいわ」

 

考えてみれば千夜から見る青山さんは小説家としてゆったりとしたところだけなのだろう。

 

「うん、いいよー!」

 

今日はちょうど喫茶店のほうで入っているからと、ココアは千夜をラビットハウスに招こうとする。しかし――

 

「あ、お帰りなさいココアさん、コウナくん。そしていらっしゃいませ千夜さん」

 

出迎えるのは人生相談窓口と書かれた手作りのふちの真ん中に立った青山さん

 

「!?」

 

ラビットハウスに入ってから青山さんの状況を見た千夜は混乱した様子だった。

 

「良くできてるでしょ?」

 

傑作なんだー、とニコニコ笑うココア。

 

「コウナくん、これは……」

 

「ココアが青山さんのために作った力作」

 

「いえ、そうじゃなくてね…その、青山さんは何を……?」

 

「ただ手伝うだけじゃなくて、青山さん自身が何かをしたいといった結果かな?」

 

ある日、青山さんはこの店に貢献するために自分にしかできないことをやりたいと言い出した。

 

「人のお話を聞くのが好きなので、タカヒロさんがお客さんのグチを聞いているのを参考にしました」

 

それにココアが乗っかってこんな形になったのだ。ちなみに相談者は未だにゼロである。

 

「もう少し普通にしてくれたらよかったんだけどね」

 

「とっても素敵、いい考えだと思うわ!」

 

俺の呟きに反するように、千夜は目を輝かせる。

 

「他にこんなのも作ったよー」

 

よっこいせっ、とココアは青山さんと同じような枠をカウンターに置く。それは、

 

「特技は活かしてナンボよね」

 

「ねー?」

 

「手相占いが増えた…」

 

「昨日遅くまで何をしているのかと思えば……」

 

そんな大きなもの、はっきり言っちゃうと邪魔にしかならないというのに。このやる気をもう少し他のことに活かしてほしいよ。

 

「始めたはいいんですけど、何故か皆さんグチってくださらないんです」

 

「ミステリアスな感じだから一歩引いちゃうのかもね」

 

「そういう問題じゃないだろう…」

 

リゼの言う通り、ミステリアスとか青山さんの雰囲気は関係ない。むしろ青山さんはミステリアスよりおっとりとしているが包容力があるような感じだと思っている。

問題なのは言わずもがな。このでかい看板だ。

 

「マスターは人のお話を聞くのがお上手でした。私もそんな一息つける存在になれたらと…」

 

「ファンシーさがもっと出たら学生の子も話しやすいかしら」

 

「ぬいぐるみを配置してみましょう」

 

チノちゃんが自分の部屋とココアの部屋にあったぬいぐるみをいくつか持ってくる。

 

ああ…どんどんカオスになっていく。

 

チノちゃんの提案はいいと思うけど、あの看板が全てを台無しにしていると思う。

げんなりしている俺を余所にあれよあれよと整えられていく。

 

「こんな可愛いらしいものに見つめられたら――」

 

ぬいぐるみに囲まれた青山さんは、恥ずかしそうに顔を隠しながらそう言う。だが、次の一言はとんでもないものだった。

 

「――呪われる!!」

 

『呪われる!?』

 

「どういう理論ですか!?」

 

呪いの人形ならまだしも、ただのぬいぐるみにそんな力はない。

 

「とりあえず、少し練習なんてしてみたらどうですか?」

 

「練習、ですか?」

 

「ええ。お客さんもまばらですがいますし、そういう姿を見せれば相談しようとする人も出てくると思うんです」

 

「確かにそうかもしれませんね。ですけどそんな方いらっしゃるんでしょうか?」

 

「そこに関してはご心配なく。千夜、よろしく」

 

「まかせて!」

 

目配せすると千夜は店から出て行く。

それから十数分後――

 

「日々思い悩んでいそうな子を連れてきたわ」

 

千夜が連れてきたのはシャロだった。期待通りの働きに俺は千夜にぐっと親指を立てる。

 

「日頃の鬱憤を発散しろって言われても……」

 

「まあそんな考えなくていいから、ほら座って座って」

 

「コウナまで…これ一体なんなの?」

 

戸惑ったままのシャロだがとりあえずカウンターに座らせる。

 

「練習、かな」

 

「練習? なんのよ?」

 

「青山さん相談室だな」

 

「意味がわからないわ……」

 

「まあ、さっきも言ったように日々の不安や溜め込んでるものを青山さんに発散してみるといいよ」

 

「だから、急にそんなこと言われても困るわよ」

 

「青山さん、お願いします」

 

「はい。こちらおもてなしのコーヒーです」

 

「無視しないでよ! それに、私この後バイトなんだけど……」

 

ふふふ、シャロよ。そんなこと言っていいのかな?

 

「あ、それ私がブレンドしたんだ」

 

「なぁ!?」

 

シャロは謀ったわね、と睨んでくるが俺はどこ吹く風で小さく口笛を吹く。

さあ、どうする? リゼのコーヒーを飲むのか飲まないのか――

 

「――ずずっ」

 

さすがシャロ。この後のこと(バイト)より憧れの人(リゼ)を取った。

 

「――はれ? なんだか急に涙が……」

 

いつもならカフェインを取ったシャロはハイテンションになるのだが、今日は違うみたいで涙を流し始めた。

 

「ブレンドの配合で酔い方が変わるみたいだね」

 

「そんな馬鹿な!?」

 

あり得ないというリゼ。だけどそう言っても目の前のことがすべてだ。

 

「やってられないですよぉ!!」

 

そしてシャロは酔っ払ったおっさんのように管を巻き始めた。

 

「今月も厳しくて、うさぎにも噛まれて……」

 

「よしよし…お前も大変だな……」

 

グズグズと泣くシャロの頭を撫でるリゼ。

いやいや、リゼがやったらダメでしょうが。せっかくのチャンスが。

 

「私もそういうのがやりたかったんです!」

 

それをやってもらうためにシャロにきてもらったというのに、計画倒れだ。

 

「それじゃあ、悩める相談者さんからのお手紙は?」

 

「いや、そんなの誰からも送れられて――」

 

「はい、青山さん。悩める相談者さんからのお手紙だよ!」

 

「あるの!?」

 

「ご意見BOXみたいになってきたわね」

 

いつの間に!? いや、そんなものないはずだ。ココアがこんな先回りしたようなことできるはずがない。ということは――

 

「青山さん、俺もちょっと失敬します」

 

「はい、どうぞ」

 

青山さんの手元にある手紙を覗く。そこには、なんか見覚えのある字が書かれていた。

 

「なになに……妹が野菜を食べてくれません。このままじゃいつまでたってもちっちゃい妹のままです。そのままでも全然オッケーなのですが、ピーマンが嫌いな子でも食べられるお料理を教えてくれたらうれしいです――」

 

うん、これどう見てもココアが書いた奴だな。しかもピーマン嫌いの妹ってどう考えてもチノちゃんのことを言ってるし。

俺はチノちゃんのほうをチラリと見る。

 

「~~~~ッッ」

 

すると彼女は羞恥と怒りに顔を真っ赤に染めて、ペンと紙を取り出し、ものすごい勢いで書いていく。

 

「私もお手紙もらってきました! 自称姉が、自分も嫌いなのに野菜を押し付けてきて困ってます!!」

 

「お互い直接言え」

 

「その前にココアもチノちゃんも、最終的に俺に押し付けているのを忘れてないよね? 今度からもう絶対食べてあげないよ?」

 

「「そ、それだけは勘弁してください!!」」

 

揃って頭を下げるココアとチノちゃん。

 

「あらあら」

 

その光景を青山さんは微笑ましそうな笑みを浮かべながら眺めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ皆さん、お疲れ様です~」

 

「じゃあな、三人とも。また明日」

 

「はい、お疲れ様です。青山さん、リゼさん」

 

「またね~!」

 

カフェの営業時間が終わって青山さんとリゼを見送った後、俺たちはタカヒロさんと交代する。

自分の部屋で制服から汚れてもいいような古着に着替え、俺は靴紐を結ぶ。

 

「さて……」

 

俺は店の方に顔を出してきょろきょろと見渡す。

 

「タカヒロさんは裏だよね……今かな?」

 

誰にも気づかれないように物音をたてずに外へと向かう。

 

「今日も行くのかい?」

 

「ヴェア!?」

 

だがドアノブに手をかけた瞬間、俺の後ろから声が掛かった。

 

「た、タカヒロさん…いつの間に……」

 

完全に気配はないと思ってたのに。この人、本当に只者じゃない。そういえば前職は軍人だったっけ? なら納得ではある。

それに今日もって言うってことは俺がやってることは全部バレているみたいだ。

 

「かなり難航しているようだね」

 

「ええ。あれからさほど時間が経ってなかったなら良かったんですけど、そうじゃないですし。まあ焚き付けた手前、放っておくわけにもいかないですから、見つけてみせますよ」

 

「そうか。あまり遅くならないように」

 

「はい。行ってきます」

 

俺はタカヒロさんに頭を下げてラビットハウスから出ていく。

タカヒロさんの後ろにある二つの影に気づかずに――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……くそ、ここら辺のはずなんだけど」

 

俺は地面と顔を平行にして椅子の下を覗き込む。

 

「どこにいったんだ、青山さんの万年筆」

 

公園を探し始めて幾数日。めぼしいところはあらかた見てそろそろ探すところがなくなってきた。

 

「ココアと初めて出会ったときって言っていたからここら辺にあるはずなんだ」

 

服や身体が汚れることなど気にせずに俺は地べたに這いずる。

 

「でもここまで探してないって事は誰かが持っていったのか? いや、見落としている可能性もまだある」

 

まだ断定するには早い。もっと目を凝らして探さないと。

そう思っていたときだった。目の前が突如真っ暗になる。

 

「だーれだ?」

 

「――ココア。何でここにいるの?」

 

間違えるはずもないココアの声に俺は冷や汗が出る。視界が開けると目の前には頬を膨らませたココアの顔。そして隣にはやれやれと息を吐くチノちゃんの姿があった。

 

「ココアお姉ちゃん、だよ、コウくん!」

 

「はいはい。で、何でここに来たのか教えてくれる? チノちゃんまで一緒になって」

 

「それはこっちの台詞だよ! コウくん、ここ最近ずっとこの公園で何してるの?」

 

「毎日私たちに気付かれないように家を出て行ってますよね?」

 

逆に問いかけられて俺は言葉に詰まってしまった。気付かれないようにしていたのにそれすら気付かれてしまうというこの体たらく。

 

「最近運動不足だからこのあたりで運動を――むぎゅ」

 

最後の抵抗、とそれらしい理由を言うが途中でココアの両手が俺の頬を挟んだ。

 

「コウくん」

 

そしてココアは真剣な目をして俺をまっすぐ見つめる。

 

「正直に答えなさい」

 

もしかしなくても結構おこなご様子。ここでまだ誤魔化そうものなら完璧に怒らせてしまうだろう。

 

「……青山さんの万年筆を探してたんだよ」

 

「どうして私たちには内緒で探してたの?」

 

「それは、青山さんに発破をかけたのが俺だからだよ」

 

「どういうことですか?」

 

「青山さんが小説家を辞めようとした理由が、万年筆をなくしたことだったんだ」

 

「万年筆?」

 

「うん。チノちゃんのおじいちゃんから貰った大切なものだったらしくてね。失くしてからはすっかり筆が乗らなくなっちゃったんだ。だから辞めようとしてたんだけど、それで未練はあるって言うもんだから、ついね……」

 

「青山さんにお説教しちゃったんだね、コウくん」

 

恥ずかしながら、と頬を掻く。

偉そうに説教しておきながら自分はただ見てるだけっていうのはなにか違うし、自分に出来ることを考えた結果、失くした万年筆探しだ。

 

「ココアたちに言わなかったのはバイトもあったし、遅い時間になりそうだったから」

 

「そうだったんだ――でも、それならなおさら三人で探した方が良いよ! コウくんの悪い癖だよ、一人で何でもしようとしちゃうところ!」

 

ぷりぷりと怒るココアに俺はごめん、と反省する。

自分はそんなつもりじゃないのだけどココアだけじゃなく、母さんや姉さんにも同じことを言われていた。

 

「それじゃあ、私たちも手伝うよ!」

 

「私とティッピーも手伝います」

 

ここまで来て、回れ右して帰れといったらさらに怒られるだろう。それに恐らく、そう言ったところでこの二人はきっと帰らない。それに、俺一人でここまで見てないということはきっとどこか見落としているところがある。この二人ならそういうところを見つけてくれるかもしれない。

 

「よろしく頼むよ」

 

「うん!」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――翌日。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コウナくん、ブルーマウンテウンを一つお願いします」

 

「はい」

 

俺は青山さんの注文を受けてコーヒーを淹れる。

 

「どうぞ、ブルーマウンテウンです」

 

「ありがとうございます」

 

青山さんはひとくち口をつけて柔らかい笑みを浮かべた。

 

「美味しいです。段々と腕が上がっているのがわかります」

 

「ありがとうございます。青山さんのほうはどうですか――新しい小説の進行状況は」

 

「少し難航してますが……前ほどではありませんね。やっぱりこの万年筆があると進みます」

 

そう言って青山さんは万年筆に手を置く。

結果から言うと、万年筆は見つかった。見つけたのは俺やチノちゃん、ココアじゃなく、なんとティッピー(マスター)だった。どこに落ちていたかというと、やはり俺が見落としていた場所で草むらの奥に小さな空間があったのだ。青山さんが落としたのではなく落とした後に風やらなんやらで転がっていったのだと思う。小柄なティッピーだからこそ見つけられた。

 

――いや、そういうよりティッピー(マスター)だからこそ見つけられたのかもしれない。誰よりもスランプになった青山さんのことを心配していたのだから。本人は否定していたけども。

 

だから、この万年筆を青山さんに渡したのもティッピーだ。最初はチノちゃんに渡させようとしていたのだが、チノちゃんの説得でティッピーが渡すことになった。

そのときの青山さんとティッピーの間で何を話したかは詳しくは知らない。ただ、青山さんが二階にいる俺たちのところに、

 

「このぬいぐるみから、マスターのお声が!!」

 

と、慌てて駆け込んできたときに大方の予想はついた。

それから小説家に戻った青山さんはすぐに新作を世に出した。タイトルはカフェインファイター。なんかどこぞのカフェイン酔いする女の子を想像したのだが、その新作のモデルはなんと想像通りのシャロだった。青山さん曰く、出来上がった新作をすぐにシャロに渡したところ彼女はたいそう驚いていたらしい。

それとは別の話で、ラビットハウスで働いているうちにバーテンダーにもはまったようで、息抜きと称して時々手伝ってくれることもあるようになった。

 

「私もチノちゃんのおじいちゃんに会ってみたかったな」

 

「私が来たときにはもういなかったからなー」

 

残念そうにするココアとリゼ。だけど止めといたほうがいいかも。なにせあのマスターは年端もいかない小さな子供に激苦コーヒーを飲ませる人だから。

 

「大丈夫ですよ――」

 

二人の話を聞いた青山さんが優しく言う。

 

「マスターは見守られてますよ。困ったときにひょっこり出てきて助けてくださるんです」

 

ひょっこりというより、がっつり見守っているんだけどね。

 

「次はティッピーさんの体を借りて話し出すかもしれません」

 

「ち、ち、ちょっと怖いかも」

 

「そ、そういうの止めてくれよ」

 

図らずとも当たっている青山さんの言葉に、なにも知らないココアとリゼは身体を震わすのだった。

 

 

 






いかがでしたでしょうか?
ではまた~


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。