お久しぶりのお久しぶりです
燕尾です。
ここ1~2年調子を崩してしまい、全く手が付けられませんでした。
今はその元凶から離れ、精神的・時間的に余裕が出て久しぶりに執筆し始めました。
物語を考えるのは好きなのでこれからも続けていけたらと思います。
「見事に積もったなぁ~」
「銀世界ですね」
季節は移ろい、冬がやってくる。
朝起きたら、あたり一面雪が積もっていた。
「みてみて、雪ウサギ!」
ココアがしゃがみこんで何かを作っていたと思えば冬の風物詩、雪ウサギだった。
「わっ、かわいいです!」
「このくらいの出来で見とれるなんて、まだまだ子供だね」
そう言いながら雪だまを転がしているココアにはチノちゃんも言われたくないだろう。
「学校行ったら雪合戦だね! あ、でも千夜ちゃんとやるのはちょっと怖いかも」
自分の体を抱き締めて震えるココア。だが、その震え方に俺は違和感を感じた。
「コウナさん」
チノちゃんも気づいたのか、示し合わせてくる。
「ココアさん、ちょっと屈んでください」
「っ、ふんっ!」
「ファイティングポーズをしてくださいとは言ってないです」
「誰と戦うつもりなんだ、ココアは」
無理やりチノちゃんはココアの額と自分の額をくっつける。
「すごい熱!!」
俺も確認するためにココアの額に手を当てる。
「えへへ…コウくんの手、冷たくて気持ちいい……」
「あー、やっぱり。流行り病をもらったかな、これは」
かなりの熱を持ってる。家を出るときはあまり顔に出てなかったから気づかなかった。
「ココアー、ほら、おんぶするよ」
「ココアお姉ちゃんだよぅ」
文句を良いながらも、吸い込まれるように俺の背中に体を預けるココア。
「チノちゃん、俺はココアを家につれていくよ。チノちゃんは学校に行って」
「ですが…」
「ほら、チノちゃんもテスト近いでしょ? それにココアの看病は今まで何度もしてきたから大丈夫だよ」
「…わかりました、よろしくお願いします」
チノちゃんはペコリと一礼して学校へと向かう。
「さて、悪化する前に早く戻るか。状況次第では今日は学校も休もう――っと、その前に」
俺は携帯を取り出してメールする。
――千夜。ココアが風邪引いた。ココアを家に戻して様子見るから、遅れるか、もしかしたら俺も休むかもだから、先生に伝えてくれるかな?
メールの返信はすぐに帰ってきた
――ごめんなさい。私もシャロちゃんが風邪引いちゃってお休みするの。学校への連絡はこれからだから、コウナくんとココアちゃんのことも伝えておくわね
――ありがとう。よろしくお願いします
――あ、それと午後からココアちゃんのお見舞いに行っても良いかしら?
――もちろん。ココアも喜ぶよ
――それじゃあ、行くときに連絡するわ
――了解
千夜との連絡を終えた俺は携帯を閉じてラビットハウスへと戻った。
とりあえずベッドに座らせてココアと目線を合わせる。
「ココア、パジャマに着替えられる?」
「うん。そのくらいは出来るよ~…」
「それじゃあ俺は色々と準備するから、着替えたら布団で寝ててね」
「わかったよ~」
間延びしたココアの返事を聞いてから俺は部屋を出る。
「さてと、先ずは濡らしたタオルと氷枕かな。後はお粥とおやつのミカンゼリーも作らないと」
「コウナくん」
「うわっ――と、ビックリした。おはようございます、タカヒロさん」
「おはよう。ココアくん、風邪かい?」
「はい。久しぶりに貰っちゃったみたいです。すみませんが今日の学校はお休みさせて貰います」
「ああ。そう言う理由だったら構わないよ。俺より君の方がココアくんの看病は慣れているだろう」
「ええ。ココアのことは任せて、タカヒロさんは今日のバーに備えて休んでいてください」
「ありがとう。なにか困ったことがあったら遠慮なく言いなさい」
「わかりました」
自分の部屋に戻るタカヒロさんに俺は一礼して見送る。
「それじゃあ、やりますか」
ヒヤリと冷たい感触に私は目を覚ます。
「ん――ぅ?」
「あ、ごめん。起こしちゃったね」
目の前には優しい笑みを浮かべるコウくんがいた。
「あれ、私…寝ちゃって……今何時……?」
「ちょうどお昼回ったとこ。調子の方はどう?」
「朝よりいい、かな? でもまだボーっとする」
「まあそんなすぐに良くなったりはしないよね。食欲はある? 食べられそうなら卵粥作るよ」
「わーい、コウくんの卵粥だ~」
食べる意思が伝わったのか、コウくんはキッチンへと向かっていく。
それからコウくんが卵粥を持って戻ってくるまで10分もしなかった。
「お待たせ」
「ありがとう…それとごめんね、今日コウくんまで学校お休みさせちゃって」
「いまさら何言ってるのさ。ずっと前からこうしてたでしょ」
「それは、そうだけど…」
コウくんの言う通り、子供のころから私が風邪をひいたらコウくんが学校休んで看病して、コウくんが風邪をひいたら私が学校を休んで看病していた。だけど、
「まあ、ココアが寂しがって俺を放さなかったのと看病するって聞かなかったのがほとんどなんだけどね」
そう。だからこそ、罪悪感があった。始まりは私のワガママからで、それが今も続いているのだから。
「でも今はそれが良かったって思ってるよ」
えっ、と顔をあげた私をコウくんは撫でてくれる。
「傍にいてくれるだけでも安心する。目を覚ましたときに誰かが一緒にいると嬉しくなる。何度か風邪引いたときがあったけど、ココアがいてくれて嬉しかったよ」
「……コウくんも、そう思ってくれてたの?」
「そりゃ、俺だって風邪を引けば気が弱ることもあるよ。でも、ココアのお陰で
そう言いながら土鍋を置いてその蓋を開けるコウくん。
出汁の良い香りが私の食欲を刺激する。
「さあ、風邪の時にしか食べられない俺特製玉子粥。召し上がれ」
「……」
「ココア?」
差し出された玉子粥を食べずにずっとコウくんを見つめてる私に彼は不思議そうに首をかしげる。しかしその直後、なにかを思い出したような顔をした。
「あー、はいはい。わかったよ。いつものね」
私が伝えたいことがわかったのか、コウくんはベッドに腰かけて蓮華を持ち、玉子粥を掬う。
「ふぅ…ふぅ……ほら、あーん」
「うん♪ あーん……あちゅ!」
「悪い、まだ熱かったか――はい、水」
「ん……ぷはっ。ありがとう」
「舌火傷してないか」
「うん、大丈夫だよ。玉子粥おいしいよ」
「それは良かった。それじゃあ、今度はもう少し冷まして――はい、あーん」
「あーん♪」
――こんな幸せな時間があるのならたまに風邪を引くのも悪くないかな
それを口にしたらコウくんには怒られちゃうかもしれないけど、コウくん手作りの玉子粥を食べさせて貰いながら、私はそんなことを考えるのだった。
空になった土鍋を洗い、キッチン回りが片付いたところで、千夜が訪ねてきた。
それから30分もしないうちに、チノちゃんがマヤとメグを連れて帰ってきた。かなり早い時間なのだけど、どうやら風邪が流行ってるみたいで学校が早く終わったらしい。
「お大事にね、ココアちゃん」
「お見舞いありがとねー、皆」
「桃缶とりんごと…にんにく?」
チノちゃんは千夜から受け取ったお見舞の一部に首を傾げる。
「あー、にんにくを首に巻くと風邪に効くんだよね」
「普通は焼いたネギじゃ…」
「そう! 病魔が立ち去るのよね!」
「撃退できるのは吸血鬼です」
チノちゃんと千夜の漫才が繰り広げられていると、部屋のドアがノックされる。
「風邪って聞いたけど、大丈夫か?」
そう言ってうさぎの形をしたリンゴを乗せた平皿を持ってきたのはリゼだった。
「わぁ、これリゼちゃんが剥いてくれたの?」
「刃物の扱いは得意だからな。してほしいことがあったら任せろ」
平皿をリゼから受け取って、リンゴをしゃくしゃくと食べるココア。
「チノにリンゴうさぎにしろって言われたけど、最初これのどこがうさぎかわからなくて納得がいかなかった」
すると、リゼは別な平皿を持ってきた。そこには昔の絵のような細長いうさぎではなく二頭身のうさぎを模したリンゴだった。しかし、
「こっちのほうがうさぎっぽくないか?」
「すごいけど、普通のうさぎは銃を構えないよ!?」
刃物の扱いが得意なリゼだからできるリンゴうさぎだった。だけど、器用なのは認めるけど、聞いておかないといけないことがある。
「リゼ……? それを作るのはいいけど、削り取ったほかのリンゴはどうしたの? まさか……」
「だ、大丈夫だっ、ほかのリンゴはこの後リンゴジャムにするつもりだったから!!」
「なんでそんなに怯えてるの?」
「今のお前の笑顔がすごい怖いからだ!!」
そんなはずはないのだけど、リゼだけじゃなくて千夜やマヤ、メグまで怯えた顔で俺を見てふるえていた。
「そういえばコウくんって昔からそうだったなぁ。食べ物を粗末にするとすっごい怒るんだよね。私も何度怒られたことか」
「……そんなことあったかな?」
あったよ、すっごい怖かったんだから、とココアは声を上げる。
「お残しは許しまへんで……?」
「こうお兄ちゃんは忍者学校の食堂のおばちゃんだった……?」
「何を言っているんだマヤ、メグ!」
意味不明な人物とか重ねられて俺も思わず声を上げる。
「あはは――げほ、げほっ!」
『っ!!』
それに笑うココアだったけど、苦しそうに咳をし始めた。
すかさずココアの額に手を当てるチノちゃん。
「ココアさん、また熱が出てるじゃないですか!」
「少しはしゃぎすぎたかな。皆には悪いけど、ここまでにしておこう」
「そうだな、今のココアは病人だもんな。行こうか、皆」
リゼも気を利かせてくれ、皆を連れて行ってくれる。
「また来るわね、ココアちゃん」
「しっかり寝ろよー?」
「お大事にね?」
「ありがとう、みんな……」
ぞろぞろと出ていくのを見送ったココアはぽふり、とベッドに横になる。
「無理はしないでください」
「ごめんねチノちゃん、コウくん」
「こっちこそごめん。もっと考えるべきだったよ。とりあえず水分取って寝ようか」
「……えっと」
「ん? どうしたの?」
「あはは……ずっと寝てたせいか、眠れないかも」
苦笑いしながらそう言うココア。
まあ、朝からずっと寝ていればそれも仕方ないだろう。
「わかった。じゃあ、チノちゃんをここに残すよ」
「コウナさん!?」
突然の指名にチノちゃんは驚きの形相で俺に振り向く。
「わーい、チノちゃんもふもふだぁ~」
「させません、大人しく寝てください。コウナさんも変なこと言わないでください」
「冗談だよ。眠くなるまで、俺がここにいるよ」
「コウくんをもふもふするのも捨てがたいかな…?」
「風邪が移るかもしれないからさせないよ――というわけでチノちゃんは店の方をお願い」
「わかりました。ココアさんのこと、よろしくお願いします」
そう言ってチノちゃん下へと戻っていく。
「ふふ……」
「どうしたのコウくん。急に笑って……」
「いや、チノちゃんが俺にココアのことよろしくって言ったのがね」
ただの家主と居候という関係ではなくて、家族として見てくれている感じがして、つい顔が綻んでしまった。
「チノちゃんもようやく私のことをお姉ちゃんと認めてくれたのかな?」
「手のかかる子供って思っているんじゃない?」
「ひどいっ!」
冗談だよ、と寝ているココアの頭を撫でる。
「でもまあチノちゃんも、みんなも、ココアのことを心配しているから、早く治さないとね」
「コウくん」
「ん? なに?」
「ココア、お姉ちゃんだよう……」
「はいはい。悪かったね、ココアお姉ちゃん」
むぅ、という膨れっ面のココアを背に、俺は本を取り出して読むのだった。
数日後――
「――チノちゃん、入るよ?」
「……はい」
返事を受け、俺たちは部屋に入る。
「煮込みうどん作ってきたよ。食欲はどう? 食べられそう?」
「はい。食べられます」
「私があーんさせてあげよっか?」
「自分で食べられるので結構です」
俺からお盆を受け取り、ちゅるちゅるとうどんを食べ始める。
「私の風邪はうつらなかったけど、おたふく風邪になるなんて」
「まだかかったことなかったのか」
ココアの風邪が快復してからそれほどしないうちに、免疫ができていて俺たちには無縁であったおたふく風邪にチノちゃんがかかってしまった。
「なぜか負けた気がします」
「大人になってからおたふく風邪になるより、今かかってよかったと思ったらいいんじゃない?」
どうして負けた気がするのかはよくわからないが。
「さて、チノちゃんの看病は私がするからね?」
「ココアさんだと不安なのでコウナさん、お願いします」
「あれぇ!?」
張り切るココアをよそに、俺にだけ向かって言うチノちゃんに苦笑いした。
いかがでしたでしょうか?
おかしなことがあったらごめんなさい
ではまた次回に(@^^)/~~~