どうも燕尾です。
ごちうさ第四羽目です。
「コウくーん、準備終わった?」
学校の入学式の前日、朝からココアが
「準備?」
「今日から学校だよ! 早くしないと遅刻しちゃうよー!」
学校は明日のはずなのだが、どうやらココアは勘違いしているみたいだ。
「いや、入学式は――」
そこで俺は面白い
「悪いココア、少し用事があるから先にいっててくれ」
「えぇ!? 高校初めての登校はコウくんと一緒がいい!」
「わがまま言わないで、俺にとって大切な用事なんだ。この埋め合わせは絶対するからさ」
「むぅ、ほんとに? 絶対埋め合わせてくれる?」
「もちろんするよ――明日にね」
「わかったー。それじゃあ、学校でね?」
「うん」
しょんぼりした声で下りていく。ちょっとした罪悪感があるけど、まあ明日一緒に登校するのだからいいだろう。
「いってきまーす♪」
「いってまいります」
「ああ、いってらっしゃい。気をつけて」
「はーい!」
その後、タカヒロさんとティッピーに見送られて、家から出て行くココアとチノちゃんを影からこっそり見つめる。
「よかったのかい? ココア君を行かせてしまって」
俺に気づいていたタカヒロさんが、ココアの姿が見えなくなったところで問いかけてきた。
「とりあえず何度か恥ずかしい失敗をすればもう少し落ち着いた行動をしてくれるかもしれませんからね」
「君の顔には悪戯成功って描いてあるみたいだが?」
バレバレだったみたいですね。本当にタカヒロさんには勝てないな。
「まあ、後でしっかり怒られます。それに――大切な用事があるのは嘘じゃないですから」
「ああ、案内しよう。ついてきなさい」
お願いします、と俺は掃除用具を持ってタカヒロさんの後ろについていった。
「チノちゃんもこっちの方向なんだ?」
「はい、こっちの方向なんです」
「それじゃあ、これから途中まで一緒に――」
「行けますね」
それに明日からはここにコウくんも加わるんだ。妹と弟と毎日登校できるなんて幸せ――
「じゃあ、私はこっちですので」
「早っ!?」
どうやら現実はそう上手くいかないみたい。
さらに歩いていくと、見知った顔が見える。
「あ、リゼちゃんだ」
前からやってきたのはラビットハウスのバイトの先輩、リゼちゃん。
「おはよー! りぜちゃーん!!」
「目立つからやめろ!」
ただ挨拶しただけなのに怒られちゃった。
「おはよう、リゼちゃん――あ、制服違うということは別な学校なんだね? ブレザーもかっこいい!」
「べ、別に普通だろ?」
いいなあ、ブレザーかー。私も着てみたいなー…よし!
「ねえ、リゼちゃん。制服交換してみない?」
「自分の学校行けよ――って、そういえばココア、コウナは一緒じゃないのか?」
「あ、うん。コウくんは大切な用事があるから先にいけって……」
なんか言ってて悲しくなってきた。せっかくの初登校なのにな…
その様子を感じ取ったリゼちゃんは慌ててた。
「まあ、仕方がないだろう。コウナがそういうなら余程のことなんだろう?」
「うん…でも明日からは一緒に行くって言ってくれたよ!」
「それはよかったな。ほら、遅刻する前に早く学校に行けよ?」
「うん! それじゃあ、リゼちゃん。またお店でね?」
「ああ、迷子になるなよー?」
「わかってるよー」
そう言って、リゼちゃんと別れる。
そして、5分ぐらい歩いたときに、また見覚えのある姿を見つけた。
「あ、リゼちゃんまた会ったね! じゃあまたねー」
正面からやって来たのはリゼちゃんだった。今度は立ち止まらずに挨拶だけ交わす。
するとリゼちゃんのほうから呼び止めてきた。
「こ、ココア? お前学校への道わかってるのか?」
「心配しなくても大丈夫だよー」
もう、リゼちゃんたら心配性だなー。
立ち止まっているリゼちゃんに手を振りながら歩いていく。
そしてまた5分後――
「すごーい、また会ったー!」
「……」
さらに5分後――
「あれあれー、まただー!」
「私は異次元に迷い込んだのか!?」
もうさらに5分後――
「もうこれは奇跡だね、リゼちゃん!」
「コウナー! 助けてくれー!!」
「どうしてコウくんに助け求めてるの? リゼちゃんもしかして、迷子? だったら私が――」
「いや、そんなことはないから大丈夫だ! ココアは自分の学校へ向かってくれ!!」
「そう? ほんとに大丈夫?」
リゼちゃんはものすごい勢いで頭を縦に振る。
「わかったよ。それじゃあリゼちゃんも、学校に遅れないようにねー」
私はリゼちゃんを背にまた歩き始めた。
「んっ、メール? リゼさんからだ」
タカヒロさんの後を付いて歩くこと20分、リゼさんからメールが来た。
「なになに……」
――異次元に迷い込んだ、助けてくれコウナo(T□T)o
「――どういうこと?」
悪戯でこんなメールを送ってくるようなリゼさんじゃないし、何か本当に困ったことがあってパニックになっているのだろう。
「すみませんタカヒロさん、歩きながらで構わないんで電話してもいいですか?」
「ああ、構わないよ」
タカヒロさんの許可を得て、俺はリゼさんに電話をかける。すると、1コール鳴り終わる前という、ものすごい早さでリゼさんが電話に出てきた。
「もしもし、リゼ――」
『もしもしっ、コウナか!? ちゃんと電話通じているのか?』
「はい、コウナです。ちゃんと電話通じてますけど……どうしたんですか?」
『よかったぁ~てっきり異次元に迷い込んだのかと思ったぁ~!』
泣きそうな声、というよりもはや泣き声で安堵しているリゼさん。
だけど、その異次元に迷い込んだって本当にどういうことなんですか?
「とりあえず落ち着いてください、何があったんですか?」
「ああ、実はな――」
リゼさんから話を聞いた俺は空を仰いだ。
唯一つ言えることは――恐るべし、我が姉の方向音痴。
「おい、コウナ? 返事をしてくれェ!」
「ああすいません、リゼさん実は――」
俺は洗いざらい全部話す。といってもそこまで多くはないけど。
「おい、コウナ~?」
全部理解したリゼさんは俺の名前を呼ぶ。
「あはは……なんでしょう、リゼさん」
それに対して苦笑いしかできなかった。しかし、笑い事ではなかったリゼさんは、
「店にいったら覚悟していろよ」
電話口から殺気が伝わってきそうなほど低い声で言った。
「いえす、さー……」
俺は震えた声でここにはいない上官に敬礼するのだった。
「学校遠いなぁ……」
リゼちゃんと別れてからまた随分と歩いたのにぜんぜん学校に着かなかった。
「うう……歩き疲れちゃった……」
久しぶりに長い時間歩いたせいで足が痛い。でも休憩してたら学校に遅れちゃう。
「どうしよう――あっ」
困っていたところに、一匹のうさぎがやってくる。誰も飼っていない野生のうさぎだ。
「こ、これが噂に聞く、野良うさぎ……!?」
噂の野良うさぎが潤んだ瞳で私を見つめている。その姿はまるで私を誘っているようだ。
どうしよう、もふもふしたい! でももふもふしてたら遅刻しちゃう…!
でも、でもでもでも――!!
「はぁ~! もふもふ気持ちいい~!!」
誘惑に負けた私はうさぎを堪能する。
もう、遅刻してもいいや…
そんな私の考えがわかったのか、うさぎが私の腕から逃げ出す。
「わっ!? 待って、もう少しもふもふさせて!」
逃げるうさぎを追いかけていると私は目を疑う光景に出会った。
一人の和服の少女を複数のうさぎが囲っていた。
「もふもふ天国だー!」
私も混ざるべく和服少女の近くに駆け寄る。すると、少女が手にしているものが見えた。
「栗ようかん?」
栗ようかんで、うさぎは釣れないと思うけど…でも、あの栗ようかん美味しそう…
私はうさぎたちと一緒に、和服少女の近くにいって、栗ようかんを見つめる。
「おいでー、おいでー……あら?」
私の存在に気づいた和服少女は楽しそうに栗ようかんを差し出してくれた。私は遠慮なくぱくりと一口頂いた。
「うさぎじゃなくて、女の子が食いついちゃった♪」
「おいしいね、この栗ようかん!」
「本当? ありがとう。まだあるんだけど、食べる?」
「いいのっ?」
「もちろんよ」
「わーい、ありがとう!」
「あそこのベンチに座りましょう」
「うん!」
私は不思議な和服少女と出会った。
「ココアちゃんっていうのね。私は宇治松千夜よ、よろしくね」
千夜ちゃん――なんか深みを感じる名前だよ。
「千夜ちゃん。この栗ようかんどこに売ってるの?」
「気に入ってくれた? それ私が作ったの」
「千夜ちゃん和菓子作れるの!?」
「ええ、それは私の自信作――幾千の世を往く月。名づけて"千夜月"! 栗を月に見立てた栗ようかんよ!!」
「なんか、かっこいい! 意味わかんないけど!」
「私たち、気が合いそう――それに、私と同じ学校のようね」
「そうなんだ――」
そこで私は気づいた。そういえば今日は入学式だった。
「入学式に遅刻しちゃう! 千夜ちゃん、一緒に行こう!」
私は千夜ちゃんの手をとる。
「えっ? でも今日は――」
ああ、もう時間がないよ!
「早く!」
そのまま千夜ちゃんの手を引いて走り出す。
5分後――
「あれれ――!? 戻ってきちゃった!?」
どういうわけか、千夜ちゃんがいた公園に戻ってきてしまった。
「ココアちゃん、ちょっと…待って……入学式、明日なの」
聞き逃せない言葉が千夜ちゃんから聞こえた。
「今、何て……?」
息を整えた千夜ちゃんがもう一度言う。
「だから、入学式は明日よ」
私は顔が熱くなる。私もしかして、日付間違えてた――?
「うわあああ、恥ずかしいー!! というかコウくん、わかってたなら言ってよぉー!」
恥ずかしくなった私はしゃがみこんで顔を覆う。
「おもしろい子…そうだ、ココアちゃんが迷わないように、今から学校に行きましょう」
「め、女神様……!」
千夜ちゃんの案内で、私は学校へとやってくる。
「わぁ…ここが私とコウくんの新しい学びやかぁ、見てるだけでワクワクしてくるよ!」
ここで青春時代をすごすのかー、友達と笑って、泣いて、時には喧嘩して…コウくんとも一緒に過ごして……えへへ、楽しみだなぁ。
「あ…ここ中学校だったわ。卒業したの忘れて間違えちゃった」
「ところでココアちゃん、さっきから言ってたコウくんって誰?」
「コウくんは私の弟なんだよ!」
「ココアちゃんの弟…今日は一緒じゃないの?」
「うん、一緒に行こうとしたんだけどね? 用事があるから先に行けって言ってたんだ」
「えっ、でもそれって……」
「千夜ちゃんの思っている通りだよ、コウくんってば明日入学式っていうのを知っててそんなこと言ってたんだと思う」
「悪戯好きなのね、ココアちゃんの弟くん」
「お姉ちゃんに悪戯するなんて、コウくんったらいけない子だよ」
ふふふ、これは帰ったらお仕置きしないとね。お姉ちゃんを騙すなんて言語道断だよ。
「ふふ、ふふふふふ……」
「こ、ココアちゃん、どうしたのかしら?」
「なんでもないよ、ちょっとメール送るだけだから――」
私は今までにない速さでメールの文章を打つのだった。
「ここだよ、コウナ君」
ラビットハウスを出てから30分程度、街が一望できる丘のような場所にそれはあった。
大理石で作られた彫刻に床の石にはあの人の名前が彫られていた。
「景色が綺麗ですね、まさかこんなところにいるとは思いませんでした」
「彼女の希望だったんだ。私の妻はこういう場所が好きだったからね」
「そうなんですか……」
あの人らしいな…
「それじゃあ、ゆっくり語らうといい。俺は先に店に戻っているから」
「ありがとうございます、タカヒロさん」
踵を返して去っていくタカヒロさんに俺は一礼する。
「さて……まずは掃除をするか」
俺はバケツに水を入れて、スポンジを濡らして、彫刻の隅々まで拭いていく。特に汚れがある場所は念入りに洗う。
汚れが取れたら、乾いた布で、水気を取っていく。
「ふう、こんなものかな……うん、綺麗になった」
俺は掃除用具を片付けて買ってきた花束を置いて座り込む。
「……」
穏やかな風が吹く、春の温かい風が俺たちを包み込んでいた。
「お久しぶりです、相変わらず普通の人とは外れたことをしていたんですね」
「あなたに拾われてからもう十年。俺もこうして、大きくなりました。タカヒロさんやマスターからは変わったって言われたんですけど、あなたはどう思います?」
当然返事は返ってこない。
「俺、明日から高校生になるんです。しかもこの街の高校に通うんですよ、姉と一緒に」
「十年前、あなたに出会わなければ、こうして育つこともなかったでしょう。あの日、俺の手を引っ張ってくれたあなたには感謝しています」
「あの家に連れられたとき、あなたは俺を笑顔にさせようといろいろなことをしてました。俺はそっぽ向いたり、冷たい態度をとって何度もあなたを泣かせてましたけど」
「でも、心の底では嬉しかったんです。いろんなことをしてくれて、悩んでくれて、笑顔を見せてくれてたこと」
見ず知らずの俺なんかのためにあの人は一生懸命だった。ただ励ましたい一心であの人は頑張ってくれていた。
「俺が笑ったり嬉しそうにしたとき、あなたは俺以上に嬉しそうにして俺を抱き締めてくれた」
あの時の笑顔や温もりは今でもはっきり覚えている。それを見て、感じた俺は心を許すということを徐々に覚えていった。
「あなたは俺に、心をくれた。だから…ありがとう、って伝えたくて…ごめんなさいって伝えたくて…あのとき言えなかったことを今度はちゃんと口にするんだ、って。思っていたのに……あなたは、もういないんですね」
散々バーで泣いたのに、また涙があふれてくる。だけどそれはあの人は望んでいないだろう。
俺がここに来たのは泣くためじゃない。目を袖でごしごしと拭いしっかりと顔を上げる。
「今日俺が来たのはあの時言えなかった謝罪とお礼です」
俺は姿勢を正し、頭を下げた。
「迷惑をかけてすみませんでした! そして、いろいろとお世話になりました、このご恩は一生、忘れません! これからはしっかりと前を向いて歩いて生きていきます! 本当に…本当に、ありがとうございました!!」
大きな声が風に乗って空へと舞い上がる。その瞬間、
「ありがとうコウナくん。元気でね――」
――あの人の声が、聞こえた気がした。
ばっ、と顔を上げて周りを見渡すも誰もいない。
「……幻聴、か?」
一度はそう考えるも、俺はすぐに首を横に振った。
「いや、そうじゃないよな」
俺はそう結論付けて荷物をまとめる。今日はチノちゃんが居ない間、タカヒロさんが働く喫茶店の手伝いをするつもりだ。
「それじゃあ、また来ます――お元気で」
優しい風が丘の草木を撫でる。
そこにいた女性は白い毛のアンゴラうさぎを抱きながら、去っていく少年の背中を見守っていた。
「コウナくん、立派に成長してたね。ねっ、ティッピー?」
「コウナよ」
「ティッピー…じゃなくてマスター」
丘から下りて道に出るとティッピー、もといマスターが待っていた。
「いいんですか、一匹で出歩いて」
「いいんじゃよ、わしだって一応はこの街の住人じゃからな。お前こそもうよいのか?」
そういいながら、俺の頭に乗っかってくる。
「ええ。言いたかったことは言いましたし、今日は喫茶店で働かないといけませんから。いつまでも下ばかり向いていられませんよ――前を見て歩かないと」
「そうじゃな。チノの母親も、それを望んでいるじゃろう」
「はい。だからとりあえずは――」
そこで携帯メールの着信音が鳴り響く。
誰からだろう、と確認した俺は固まった。
――コウくん、帰ったらもふもふの刑ね♪ ココアお姉ちゃんより
「なん、だと……よりにもよって、もふもふの刑、だと……」
「まあ、姉を騙した罰じゃな。おとなしく受けるとよい」
しばらく俺は恐怖からその場から動けなかった。
いかがでしたでしょうか!
アニメ、原作から外れたオリジナルのところは一切苦情は受け入れません!
ではまた次回にお会いしましょう!!