LuckyEは落とされない   作:杜甫kuresu

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すしざんまいポーズトナカイマスターさんが「来たか。戦闘準備は出来ているぞ」とか言ってきて困惑してる杜甫kuresuです。

今回はあんまり巫山戯てない。一部ガチの心理戦になってます。
待たせたな――――――看板に偽り無く、エンタープライズTUEEEEEEモノです。但しギャンブルである。

もう一度言う。ギャンブルなのである。
戦闘書かないって決めてるのでこればっかりは、ねえ?


今回は普通にエンタープライズメインなので、他の掘り下げが甘いのはお許し下さい。私も書きたいですけど、書いたら50000文字とかになって何時までたってもクリスマス編が終わらないと思う。


タイトルでバレてますけどノゲノラリスペクト構成です。


Present from "Santa Claus"
ノーゲーム・ノークリスマス【起】


「なあ、姉さん。指揮官がこんなものを…………」

 

 冬も深まって冷え切った廊下、割に暖かな日差しの差し込む中で、エンタープライズはいつも通りの微風のような声を響かせた。

 

――――彼女がそっと翳したのは何やら色の多い広告のようなものだ。ヨークタウンは少ししゃがんで紙を見つめる。

 

「ええっと…………『第一回クリスマス大会』、何だかやることが分からないのが少し不安になるわね」

 

 ヨークタウンの意見は尤もなものだが、その発想は主婦のそれに何処と無く近い。

 

――――しかしすぐ下にはスッキリとした要項が、細かい気遣いを感じさせるレイアウトで羅列されている。色は多くとも要点を絞って有り、しかも何処と無くクリスマス基調の色が多い。

 詐欺広告っぽいヤツシリーズの中でも、まあマシな方だ。

 

 その内容を読むには、景品付きのトランプ大会のような旨が書かれている。

 

「指揮官はパソコンが苦手だと唸る人だったのだが、やはり人は成長するものなんだな…………」

 

 エンタープライズも気にする所がちょっとズレている。もしかしなくてもこの姉妹は誰も彼もがこんな感じなのか?

 

――――苦労していたのは事実だ。これを作るのにも、彼は数時間ではすまない時間をかけた。

 

「違う違う、姉さん。それより景品を見てくれ――――そうそれだ、一際太い赤線の引かれてる」

 

 エンタープライズは紙をチラチラと見ながらヨークタウンに指を指して誘導する。

 

「えっと――――――『優勝したら指揮官が体を張って何でも願いを一つ叶えます』…………また無茶ばかりして」

 

 ヨークタウンが口を抑えて微笑んだ。その様子を見ている内に、エンタープライズも釣られて笑った。

 

「面白い景品だ――――それで、時に姉さん。尋ねたいのは」

 

「「私が出ても良いのだろうか?」」

 

 ヨークタウンは彼女に声を重ねて答えた。

 

「ふふ、言うと思った――――勿論、答は一つよ」

 

 彼女の眼を穏やかに見つめながら音を奏でる。

 

「やってみれば良い――――そうでしょ?」

 

 

◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆

 

 

「そういうことね、エンタープライズに遊んで欲しいんでしょ」

 

「ち、違うって! 今回こそアイツを正面勝負で倒すのよ!」

 

 偶に反則すれすれの勝負を仕掛けている瑞鶴らしからぬ発言だった。

 

――――耳の速さに翔鶴は少し呆れた。真偽をちゃんと吟味せずに突っ込んでしまう辺りには教育の余地を感じたが、取り敢えずノリノリの彼女をそっとしておくことにする。

 

 瑞鶴は急いできたらしく、白い息を吐いて気持ち多めの息継ぎを挟んで言葉を続ける。

 

「しかも景品! 何か――――すっごい面白そうなことに使えないかな!?」

 

 輝いた瞳で何処と無く物騒な物言いをする。翔鶴は彼女が自分の妹であることを再確認した。

 

――――良からぬことの概要について高速かつ連続で連想を重ねていくが、全て可能性にすぎないとバッサリ切り捨てて本題に戻る。

 

「そうね、瑞鶴は運が良いから――――案外運だけでも良い所まで行けそうよ」

 

 普段の様子を見ていると、翔鶴にはロイヤルストレートフラッシュで相手を破産に追い込む瑞鶴の得意げな様子がすぐさま思い浮かぶ。

 

――――それが面白かったのか。彼女は漏れたように微笑む。

 

「それこそ、『LuckyE』なんて目じゃないくらいに――――ね♪」

 

 

◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆

 

 

「指揮官様を好きにしていい――――ああ、そんな指揮官様!?」

 

「フライング妄想は駄目ですよ姉様」

 

 案の定、赤城は碌な事を考えていなかった。身を捩らせて既に恍惚に浸っているさまは、妹であるはずの加賀が少し引くぐらいである。

 

――――トリップしてしまった赤城を引きずりながら、加賀は静かに出場を決意する。

 

(ストッパーに興じるというのも、大変なものだな)

 

「あぁ! 指揮官様、そんな激しい――――ッ!」

 

 既に奇声を発している赤城だったが、加賀は――――自分でも驚くほど恐ろしい笑い声を上げていた。

 

「ふふふ――――――久しぶりに高ぶってきたな………ッ!」

 

 今回は、「賭け事」を「戦闘」と見なしてしまったらしい。

 ストッパーは対象物から完璧に千切れて暴れん棒タイフーンになってしまった。

 

 

 

◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆

 

 

 

『よっしゃ中継始めるぞ! 皆、隣のあの娘はテレビを着けているかい? 確認してやれ、今宵のコレは最高の見世物になるからな!』

 

 提督は要項をチラチラと見ながらカメラに異様に近づいて忠告をする。せっかくテキサスの酒場風に整えて雰囲気を出したミーティングルームが殆ど映っていない。

 

 普段は綺麗に並べられているミーティングルームの長机はしまい込まれていて、パイプ椅子の並んだ観客席と、ゲーム会場らしき丸机以外の全てが取り払われている。

 テキサスの酒場風なハリボテのドアだったりが有るのに、何故かクリスマス風の飾り付けが混じっているのは非常にアンバランスで奇妙だ。

 

――――カメラを調整していたフッドは、ニッコリと笑ってオーケーサインを出す。

 

『よし――――確認したか!? 皆テレビつけてたか!? まあ答えなんぞ知らんが――――――聖夜直前特番、第一回トランプ大会の開始でぇ~あぁりますぅっ!』

 

 彼は気色悪いぐらいにまで舌を回して、開会宣言を鎮守府中に響かせた。

 

――――そして変なジョジョ立ちじみたポージングを決めた後、うっとりとしながら肯く。

 

『これやりたかったんだよな~…………初代遊○王のレフェリー的な、さ…………』

 

「良い感じに顔がキマっていて気色悪いぞ、指揮官」

 

 加賀は席についたまま凍りついた鉄球のようなブーイングを飛ばす。

 

『有難うございます! もっと罵ってくれ!』

 

 提督は画面外の加賀にキレイな礼をする。普段からそういう礼をしろ、へらへらといつも礼をしているのが際立つ。

 

――――阿呆ばかりでは話も進まないと思ったのか、咳払いをして提督は向き直る。

 

『さて、それじゃあルール説明はフッドさん! 君に決めた!』

 

 呼ばれて飛び出てジャジャジャ~ン。彼女がカメラの前にすっと立つ。

 

――――何故わざわざ役割分担があるかというと、司会をしてそうからだそうだ。曰く、「こういう大会は運営委員会が在ると雰囲気マシマシだろJK」との事だ。

 あまり意味はわからない。

 

『こういう事は不慣れとなりますが――――それではご説明をさせていただきますね』

 

 彼女はカメラに向かって微笑む。確かにアナウンサーや司会の雰囲気があった。

 

『メンバーの皆様には失礼ながら何度目かの説明となりますが――――念には念を、という先人の格言を信じて、ここはもう一度ご確認いただければと思います』

 

 フッドはいつもよりもゆっくりと言葉を重ねていく。発音にも引っかかりがなく、スムーズに頭に入ってくる良い声だった。

 

 提督は発想そのものはズレているが、適任者の絞り出し自体は天才的な才能がある。

 

『と身構えさせてしまいましたが、ルールは四つで御座います――――まず一つ目。皆様には100枚のチップ――――具体的にはコレです』

 

 フッドが一枚の金貨もどきを手に持ってカメラの前で回してみせる。表は獅子、裏は山羊が描かれている。

 

『最高五回の勝負の勝敗でこのチップを奪い合って頂きます』

 

 フッドはチップとトランプの置かれた殺風景な空間を見ずに指差す。

 

『ベット上限は原則1枚から25枚となっていますが、一試合に各プレイヤーに一度ずつ、ベットの制限解除をする権利が与えられています』

 

 ノーリミットゲーム、とも言うことが有るそれのことだ。

 

『チップは各人との試合中でのみ数が変動します。勝敗がつけばチップは100枚に戻るということに成ります』

 

 要は極端な話をすると、一回目の勝負で100枚をベットして一撃決着も狙えるということだ。

 

――――一見すると最後に一発逆転が狙えるように思えるかもしれないが、例えば四回目終了時点で49枚と151枚のペアがあるとしよう。

 この場合49枚が実質的なベット上限となるわけだが、これだと仮に49枚の艦が勝っても98枚と102枚。つまり勝てないことになるのだ。

 

 相手を50枚以下にすることでベット無制限の権限を行使しようが、次の勝負の是非にかかわらず負けることはなくなると考えれば簡単だ。

 だからこれは無法なようで――――()()()()()()()()()()()()5()0()()()()()()()()()の勝負ということだ。

 そもそも100枚以下まで減ると精神的なプレッシャーも多少は存在するはずで、ベットには慎重にならざるをえない点から見ても意外と起死回生となるというよりは、死亡確定ラインが引き下げられているに過ぎない。

 

『二つ目に、不正は()()()()()()()()()()()()となります――――良いでしょうか、勘違いしないようにもう一度言います』

 

『対戦相手が確認しなければ、つまり指摘しなければ――――不正は成立しません』

 

 つまりゲームにはプレイヤーと、発言権のない観客しか存在しないということだ。あくまでゲームの処理はプレイヤーが行うという大原則が其処には隠れている。

 

『三つ目。勝負方式は各試合ごとに指揮官様の前でのじゃんけんの元、勝った方が決めることとします。トランプのシャッフル等も指定のない限り勝った方ということを予めご了承下さい』

 

 ゲーム方式は全く決めていない、と考えて良い。

 

――――というか、艦ごとにじゃんけんで駆け引きを作るのも面白いという、要は提督の享楽である。

 

『四つ目。これは当たり前ではございますが――――()()()()()()()()()()()()()。これは私も同意ですが、何より指揮官様の一番のお願いごとでありますので――――皆様、努々お忘れなきように』

 

 フッドは最後にニコリ、と笑って要項の紙を下ろした。

 

『以上、ルール説明に成ります。それではマッチングの発表を――――指揮官様、お願い致します』

 

 ほいきた、と言って座っていた提督が立ち上がってカメラの目に立つ。

 

『ではマッチングを発表しまーす。予め言っておきますがこれは不正なしの完全ランダムのあみだくじで決められたものであり――――――』

 

 さて、後の御託は要らないだろう。結論――――マッチングだけを語ろう。

 

――――まずエンタープライズには、プリンツ・オイゲン。序盤からクライマックスとはこの事だろうか、お互い最古参である。

 

 

 

 

 

 

「一試合目からクライマックスね、最高よ」

 

 オイゲンは既に勝ったかのような、読めない笑顔を見せて足を組む。

 琥珀色の眼は何時になく不明瞭なようで、エンタープライズの先にある何かだけを一直線に見貫いている。

 

「ユージンか――――一番手から重い相手だ」

 

 エンタープライズが満更でも無さそうに白い息を吐いて腕を組みながら座り直す。少しだけ豊かな銀髪が揺れて、そよ風が吹く。

 

――――西部劇御用達の丸机に、ぽつんとシンプルなトランプと、本物なら大層価値の有りそうな200枚のチップが置かれている。方や頬杖を突き妖しく笑い、もう片方は腕を組み不敵に笑う。

 いきなり2つの敵陣営のトップがバトっているような妙な緊張感がミーティングルームを支配する。

 

「姉さん、頑張ってよ~!」

 

 ホーネットはその凍った空気感を全く気にすること無く手を降ってエンタープライズに声援を送る。

 

「はは、まあ分相応にはやってみるよ――――」

 

 手を降って困ったようにはにかむ。遠慮のない妹の声援は有り難いが、妙に緊張感が抜けてしまうようだった。

 

――――提督がホーネットにやんわりと忠告する。

 

『応援は大いに結構だけども、もしイカサマを見つけても口に出しちゃ駄目だからな』

 

「わかってるよ、子供じゃないんだからさ」

 

 子供だと思っているのではないだろうか。ホーネットは頬を膨らませて不満げに提督を見る。

 

「それじゃあ、じゃんけんと行こうか――――」

 

 エンタープライズの眼に、僅かながら光の尾が引かれているように錯覚する。

 

――――とはいえ彼女、じゃんけんは弱い。普通に負けた。

 

「相変わらず()()()()()()()は弱いわね」

 

「ははは、困ったものだな…………」

 

 苦笑いをせざるを得ない。

 状況が変われば運だって、なんて彼女は思っていたのだが。全くアテは外れていた。

 

「それじゃあ――――シンプルにババ抜きでもする? どうあがいてもイーブン、イカサマは無理よ?」

 

「同意は必要ないさ、君の勝ちなんだから」

 

 そう、と言いながらプリンツがトランプをシャッフルし始める。

 

――――その手付きに妙な点はない。エンタープライズの動体視力は恐らくこの鎮守府で最高であり、彼女に見えないならば其処にイカサマは無いのと同義だ。

 有っても認識できないのなら、無いのと変わりない。

 

「にしても、こんな形で勝負できるなんてね」

 

 カードを交互に配りながらプリンツが話しかける。

 

「そうだな、君とは模擬演習でもぶつかりようがなくて――――偶には本気で何かを競ってみたかったんだ」

 

「…………そういうのが彼氏面って言ってるのよ」

 

 そう言いながらプリンツは艶めかしく口元に手を当てて微笑む。

 気づけばカードは配り終えられていた。

 

――――プリンツは椅子に少しもたれかかった後、突然に。

 

「じゃあベット無――――まどろっこしいわね。ノーリミットゲームをするわ」

 

 溜息をついて、億劫そうに手を上げながら宣言する。

 

『おっと、プリンツ。いきなり殺意ムンムンだな』

 

 提督が笑いながらマイクをプリンツに向ける。どうやら此処が盛り上げどころと彼は見たらしい。

 

『マイクなんて――――まあ良いわ』

 

 プリンツは提督の手毎マイクを握る。

 

 少しだけ彼の眼が見開かれて、そして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()1()0()0()()、オールインよ』

 

 衝撃が放たれる。

 

『おおっと!? いきなり勝負決めに行くのかよ!?』

 

 エンタープライズも僅かながら眉を顰めて、肩を上下させる。

 

――――その様子を見ながらプリンツは不敵に口角を上げる。

 

「五回勝負なんてつまらないわ。一回に全力で行くっていうのが最初の盛り上げとしては十分――――でしょ? 『LuckyE』さん?」

 

 挑発の色を含んだプリンツの一言に、エンタープライズは大きく笑った。

 

「良い余興になりそうだ――――勿論受けて立つとも。君とは一回と言わず何度もやりたかったのだがな――――」

 

――――鎮守府の各地で湧き上がるような歓声が聞こえてきた。

 

『誰かやるとは思っていたがいきなりド派手な勝負が期待できそうだ――――ッ!』

 

 提督が血湧き肉躍る、といった様相で叫ぶ。

 

――――他の待機メンバーも何人かはざわついていた。だというのに、当人達は全く動じている様子はない。

 お互いに、何をしでかしてもおかしくないという印象を持っていた。よく理解しているからこそ、互いに底が見えないように感じるのは共通認識らしい。

 

「良いのか? 初戦で良い見世物になることになるが」

 

「何勝負がついたみたいな顔してるのかしら、彼氏面空母さん?」

 

 うっ、とエンタープライズが呻く。禁句の一種である。

 

――――しかしすぐに表情はいつも通りの緩い笑いに戻る。

 お互いにどうやらポーカーフェイスは大得意のようだ。

 

「それじゃあ、いい加減カードを見ようか」

 

 

 

 

 

――――エンタープライズは賭け事は弱い。

 

 根源的な運が無い。予想通りの局面を引ける運命力的なもの自体はあるのだが、数が常人に比べても少ない。

 何が言おうとしているのかというと…………。

 

「何だこの持ち札は…………16枚?」

 

 溜息を付いて彼女は少し肩を竦める。

 

「私は9枚だけれど――――あらあら、どうしたのかしら?」

 

 プリンツは訳知り顔で笑ってはいるが、別にイカサマはない。

 

『おいおいエンタープライズ、引き悪すぎないか?』

 

「コッチが聞きたい――――ものだな」

 

 そう言いながら、エンタープライズは一枚カードをプリンツから取る。

 

「揃った」

 

 二枚落として次に行く。

 

――――彼女の強さは其処ではない。

 彼女の強みはその圧倒的な注意深さ、ハッタリ、ポーカーフェイス――――つまり引き運以外の全てが彼女の強さだ。

 

 空母として鍛えられた側面、彼女の元からの性質としての側面――――それら自体はこういった誤魔化しの介在する賭け事にピッタリと適合していた。

 

「――――揃わない、か」

 

 プリンツが少しだけ無表情になりながら呟く。それに間隙を与えずにエンタープライズは一枚引く。

 

「揃った。あっという間に縮まっていくな――――?」

 

 挑発するようにエンタープライズは笑う。

――――プリンツの目線が本当に刹那、()()()()()に向いた。

 一見全てのカードを眺め直したように彼女は取り繕ったが、エンタープライズには隠しきれない。

 

 ジョーカーは、プリンツが持っているという訳だ。

 

「成る程成る程」

 

 敢えて聞こえるようにエンタープライズが呟くと、すぐさまプリンツは手札をシャッフルし直す。

 

 

◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆

 

 

『この二人、ガチ過ぎて実況しづれえ…………』

 

 あっという間にエンタープライズは2枚まで詰めてきていた。プリンツは3枚の為アドバンテージは有るし、最初を思えば奮闘したカード状況だろう。

 

 問題はここからだ、此処からの番狂わせなんてこの世には腐るほど生まれてきたのだ。

 

(しかし――――ふむ。ジョーカーは右端だと思うべきか)

 

 エンタープライズは敢えて端には全く触れずに進めてきた。

 

――――さっきのシャッフルは恐らくブラフだ、と彼女は踏んでいた。エンタープライズが見逃さないことまで見越している可能性はかなり高い。

 つまりあの時、本当は()()()()()()()()()()()()()()()、シャッフルした時に右端に配置したということだ。

 

(…………と予想していることも気づいているだろうが、これじゃキリがない)

 

 エンタープライズは賭けに出る。

 

――――右端のカードを引いた後、突然話題を振る。

 プリンツの顔が歓喜に歪んだ。

 

「無言では見ている娘達もつまらないな。喋りながら行こうじゃないか」

 

 揺さぶりを掛けに行っているのを、プリンツも勿論気づいている。

――――そのエンタープライズの不敵な笑みは、ただのハッタリと受け取る。

 

「ええ、勿論よ。私も静かなのは好きじゃないわ」

 

 と言いつつも、プリンツの眼は普段より何処か無機質じみている。

 

――――内心は笑っていた。予想通り深読みして、結局エンタープライズはジョーカーに向かった。それが面白くて堪らない、という風に。

 ()()()()()()()()()()()()()()。疑うべきだったのだ、それが本当に読み違えで起きたミスだったのか。

 

「さて、どうせ二人だから言っても問題はないが――――今、ジョーカーを引いてしまったな」

 

「そうね」

 

 周りがざわつく。

 

――――それにすかさずエンタープライズはその手札をシャッフルした。プリンツが周りのざわつきに目を逸らした一瞬で誤魔化そうとしたように()()()が、彼女だって阿呆ではない。

 エンタープライズはジョーカーを引いたときには左端に持った。其処に在る可能性は低いだろう。

 

「全く――――油断も隙もないわね」

 

(これでチェックメイトね…………)

 

 すっとプリンツが左端のカードを抜いた――――

 

(…………!? ジョーカー?)

 

 動揺を彼女は隠しきれなかった。

 

――――要はしてやられたのだ。彼女が目を離すなんて、最初からエンタープライズは思っていなかったということだ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 持っているならこちらのものだ、彼女はそう踏んでいた。

 

――――だって選ぶのはプリンツになる。そこにエンタープライズの運は絡まない。

 

「――――――やってくれるじゃない、ホントに彼氏にしてもいいわよ?」

 

「お断りだ――――」

 

 エンタープライズは彼女が固まっている間に、まだジョーカーを加えて間もない――――シャッフルされていなかった手札を、何の躊躇もなく取る。

 

――――――勝ち誇ったように口角を上げた。

 ハートとスペードの2を、テーブルに捨てる。瞬間に、寮舎から来た大きな歓声とブーイングがミーティングルームまで飛び込んできた。

 

「――――――勝負有り、だ。ユージン。ルールは破っていないからな」

 

 プリンツは一枚になったエンタープライズのカードを脱力気味に抜いて、カードを放った。

 

――――確かに、ルール違反は一つもない。

 

「あーあ、負けね。本当に良い見世物になったじゃない、元彼女に恥をかかせるなんて趣味が悪いわね」

 

「私に彼女なんか居たことはないからな!」

 

 エンタープライズはカメラに向かって熱弁する。陶磁の肌にはほんのりと朱が差していて、本当にそれを言われるのは恥ずかしいのだと誰もが内心首肯する。

 

――――試合が終わると、相変わらずの二人であった。

 

『す、凄え試合だったな――――フッドさん、カメラはずっと二人に向いてた?』

 

 勿論です、とフッドは手でオーケーサインを送る。

 

『後日、この二人の試合でも放送しようと思います!』

 

 やめてくれ、恥ずかしい――――とエンタープライズは頬を掻いてはにかんだ。

 

 

◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆

 

 

『という訳で勝負有り――――勝者、加賀!』

 

 また寮舎から歓声が湧く。

 

「指揮官様が遠のいていく…………」

 

 上の空で赤城が呟く。

 

――――赤城と加賀の勝負だった。最後の二人では有ったが、一番殺意に満ち満ちた試合だったと思われる。

 お互いに肩で息をしているが、一応はただ神経衰弱をしただけだ。

 

「ふう――――指揮官、後で私を労うんだぞ?」

 

『は? 何で?』

 

 提督の何も察していなさ気な表情に加賀は大きく息を吐く。

 

――――赤城から仕掛けた四回目のノーリミットゲームと、それに続いて五回目の加賀の巻き返しを図ったノーリミットゲームは伝説級のものとなった。ここに語れない無念を書くことで描写の補完とする。

 

――――残ったのはエンタープライズ、クリーブランド、ベルファスト、高雄、瑞鶴、加賀となった。

 瑞鶴に関しては翔鶴に完璧に手を抜いてもらっていたのだが、この事実に関しては翔鶴たっての希望より永久に閉口するものとする。

 

『こっからハイテンポで行くぞお! 次はエンタープライズとクリーブランドだぁ!』

 

 二人が迷いのない歩みで席に着く。

 

「クリーブランド、あなたとこんな勝負をすることになるとはな」

 

「なあ、正直私そんなに強くないから手加減してくれよ――――?」

 

――――瞬殺である。エンタープライズが強すぎたので割愛。ちなみに例の如くじゃんけんはエンタープライズが負けた。やったのはブラックジャックである。

 

「かぁー! やっぱエンタープライズは強いな!」

 

 クリーブランドが悔しげながら、邪気のない笑顔で彼――――じゃなくて彼女に笑いかける。

――――その表情があまりに清々しかったからか、彼女も頬を緩ませる。

 

「とはいえあなたも強かったよ、クリーブランド。こっちのように見ることが本業でないというのに、ここまで手の内を読まれるとは」

 

 恐らくブラックジャックというチョイスが合わないだけで、クリーブランド自体は弱くないはずなのだ。

 ただブラフとか駆け引きは下手なのかもしれない――――というか嘘全般が苦手なのだろうか。

 

「ねえ、私の時は褒めてくれなかったじゃない?」

 

 外野からちょびっと不満げな野次が飛んでくる。言うまでもなくプリンツだ。

 

「ユージンは評価を喋ってもからかってくるだけだからな」

 

 エンタープライズはきっぱりと素気無く返した。

 

 

◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆

 

 

『さて、何か酷いメイドの蹂躙を見た所でお次は――――瑞鶴と加賀…………凄え組み合わせだなオイ!』

 

 酷いカットのされ方だが、大人の事情というやつなのだろう。

――――ベルファストと高雄、飛ばすこと次は瑞鶴と加賀である。

 

「今日の指揮官、テンション高くないですか――――」

 

 丸机に向かう途中、瑞鶴が加賀にこそりと耳元で話しかける。

――――くすぐったそうに加賀の耳がぴくりと震える。

 

「そうだな、祭り事の時のコイツはうるさい」

 

――――そう答えながら流れるように着席する前にじゃんけんをする。結果は見えていて、加賀はそれをどうという訳でもなさ気にスルーして席に着く。

 

「やはり幸運が味方か。内容はどうする?」

 

「そうですねー…………それじゃあジジ抜き行きましょうよ!」

 

 ジジ抜きは、要は適当に引いた不明な一枚を抜いてそれと同種の数字のカードの最後一枚をババにするババ抜きみたいなものである。

 

 問題のカードがわからないので、運の有る瑞鶴には最適だろう。

 

「アウェーだな…………」

 

「まあまあ、私そんな運良くないですから――――」

 

 瑞鶴のボロ勝ちであった。

 

――――加賀は抜いたカードを知っていたはずなのに、分かっていない瑞鶴に何故か負けた。

 最早運では済ませないなにかが彼女の後ろには渦巻いているように加賀は錯覚した。




はい此処で「this game」流して! OP映像を脳内再生、ほらどうぞ!


プライズちゃん、僕はね。人気投票も絡めたかったんだ――――。メンツが少なすぎて人気投票上位キャラしか居ないのがわかりにくぞオイ、どうしてくれる。

ある人と話し合った結果、賭けに強いのは「賭けに執着しない事」となりました。
エンタープライズは見事に満たしている良主人公ですね。


なっげえ。ストーリーを入れるとこうなるので、もう予めご了承くださいとしか言いようがないです。
エンタープライズは運自体はくっそ弱いけど駆け引き天才みたいな印象です。瑞鶴は天敵だからハロウィンでは負けた――――みたいに脳内補完してます。

――――まあそんなことよりエンタープライズの新規衣装ですよ! 超彼女じゃん!? もう無理…………(昇天)。




新規の方向け(というかまずは最新話から見ちゃう人向け)に一言。
これは今回特別編なので特別に週イチじゃない投稿をしています、原則は週イチなので―――――バンバン更新する神をお探しの方のご期待には添えません。予めご了承ください。

あ、ちなみに本編はほぼ完成してるので後は投稿するだけです。一部は大幅な書き換えしてるんですけど、それにしても後半シリアスなのでご注意を…………。
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