LuckyEは落とされない   作:杜甫kuresu

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アズレンの二次創作が栄えていないのでパイオニア兼サクリファイスやります。
王道をゆくキャラが好きなので予めご了承下さい。


The 1st season [Beginning of him]
無双の彼女が怖いもの


――――何時になく、今日の空は快晴である。夏だから暑いという根本的な問題こそ解決はしないものの、空が晴れ渡れば心も多少なりとも、ということもある。

 だからこの日の彼は穏やかな気分だったし、ある程度のことには動じないという慢心があった。

 

「指揮官、聞きたいことが有る」

 

 そんな事を考えて目の前の『書類の摩天楼』からあからさまに現実逃避していた提督の脳の中心に、エンタープライズの凛とした声が残響してきた。

 

――――目の焦点を必死に合わせながら周囲を確認すると、扉は開きっぱなしだった。

 彼は出入りフリーを掲げて開け放るようなタイプなのだが、エンタープライズは律儀にちゃんと閉めているというイメージを持っていたので意外そうに目を見開く。

 

 顔つきも凛々しいというのは勿論ながら、いつもより何処か険しい印象を受ける。

 一悶着の予感に内心身震いしてまずは軽く会話のボディーブロー。重めの右ストレートは一拍置いてかまさなくてはならない。

 

「ど、どうしたんだ? もしかして何か怒ってる?」

 

「怒ってはいない、怒ってはな」

 

 彼女が書類を一瞥した後に提督をじとりと見つめる。怒っているというよりは、いつも通り説教が始まりそうな感じだった。

 

――――だがそうはならなかった。

 

「それより、指揮官。あなたを普通の一市民だと思って尋ねたいのだが――――」

 

 と本題入る直前に大きく息を吐く。どうやら机越しに身を乗り出していたのにようやく気づいたようだ。

 

――――提督は、彼女の鬼気迫る表情に命の危険ばかり感じて目を白黒させている。返答を見誤ると何処からともなくバラクーダがやって来る勢いがある。

 

「すまない、取り乱した」

 

 彼女はまだ濡れていた髪を払って顔を振る。どうやら風呂上がり、というか途中で上がってきたような感じだ。服も少し水を吸っていて素肌が透けて見える。

 

「うん、別に大丈夫だけどさ」

 

 別に身を乗り出すぐらいで怒るような性格ではない。

――――何故こう、なあ。それよりも提督は言葉にしきれない苦情を喉に詰まらせる。ちゃんと体は拭けとか、男の前でそれは大層相手に無防備過ぎるだとか、他に言いたいことは多く有る。

 

「改めて――――」

 

 咳払いをして要件に入ろう、そんな時。

――――風でうまーく閉まりかけていた扉が音を立てて勢い良く開く。

 

 

 

「おら待て『グレイゴースト』――――ッ!」

 

「おい出オチ要員連れてきたの誰~!?」

 

 瑞鶴だった、確かに出オチだ。

 

「グレイゴースト警察はお帰り下さい」

 

 どうぞどうぞ、と提督は手の平を見せて退室の誘導をしようとする。

 

「誰がグレイゴースト警察だ!」

 

 瑞鶴は声を荒げて否定するが、否定できる要素はない。これも今日に始まったことでなく、例に習ってという感じのパターンだ。

 

――――提督が溜息を付いてエンタープライズをじっと見る。彼女自身、扱いかねているから目を逸らして誤魔化す他無い。

 

「瑞鶴は足が速くてな、振り切れなかったのだ…………」

 

「いや物理的に振り払う気だったのかよ」

 

 実際其れが一番早い。

 

――――しかし謎は解けた。扉が開きっぱなしなのは全力疾走で隠れようとしたから、ということだろう。

 まるで手の掛かる妹から逃げているようにしか見えないが、話題の彼女からすればそんな言い草は不名誉極まるところか。

 

 少し固まっていた提督が、急に時が回りだすようにせきを切って喋りだす。

 

「もういっそ『ギャロッピングゴースト』を採用しないか? これで――――」

 

「名前の問題ではない」

 

 すっぱりと彼女が言い切ると、提督もまあそんな所だろうと思っていたのだろう。特に返すわけでもなく哀れみを含んだ目で瑞鶴を見つめる。

 

「何か私が可哀想な娘扱いされてない!?」

 

「いや、そうに決まってるじゃんか」

 

 提督は呆れた風に返す。

 

 実際エンタープライズは瑞鶴にそういう眼での執着は全くと言っていいほど無い。

 

「――――っていうか! まだ話は終わってないわよ」

 

 瑞鶴がピシャリとエンタープライズを指差す。

 

――――当初の目的を思い出したのか、エンタープライズはむしろ瑞鶴以上の勢いでまた提督に向かって身を乗り出す。

 

「そうだ、元はと言えば瑞鶴のおかしな一言から始まったのだ」

 

「いやエンタープライズまでそんなテンションなのかよ――――それで、何て?」

 

 今日は厄日だな、提督は静かに諦めた。

 

「彼女はシャンプーハットを愚弄したのだ! 指揮官はどう思う!?」

 

「思ったよりくだらなくてオジサンいやんなっちゃうよ~…………」

 

 下らないものか、エンタープライズは涙をのみながら力説する。

 

「シャンプーが目に入った時のアレは想像を絶する痛みだ、あんな悲劇を回避するための画期的アイテムを使わないなどそれこそおかしな話! そうだろう!」

 

 いや分からねえな、提督は遠い目をする。

 

 だがエンタープライズの表情を見るには、実際彼女としては相当痛かったのだろう。半ばトラウマでも、まあ仕方が在るまいと提督は表情だけで妙な納得をする。

 トラウマのリピートでも有ったのか、目が本当に怯えている。いつもの彼女を見ていると、さすがにその様子は異常に思えてきた。

 

「ほらほら、指揮官も言ってあげるべきじゃないの? 『お前が言ってることはまるで意味が分からない』って。正直指揮官だって、シャンプーハットは使わないでしょ?」

 

 瑞鶴が此処ぞとばかりにエンタープライズを指差し、笑いを堪えながら提督に語りかける。

 

――――確かに彼もシャンプーハットは使わない。だから瑞鶴の言っている事自体はまあ、一理無くもないのだが――――

 

「…………まさか、指揮官まで”ソッチ側”なのか?」

 

 睨むというか、嘆願でもしているのかというようなエンタープライズの表情に彼もたじたじになってしまう。安易に否定というか、拒否ができなくなってしまった。

 

――――――長い沈黙が執務室を覆った。提督の生死、好感度はここで分岐するのは間違いない。

 ぶっちゃけ瑞鶴の味方につく気は毛頭なかった。あの目つきはいじめっ子の目つきである、彼は気に食わない。

 

「…………さて、ええ――ああ、これは俺の意見だからな? あくまで個人的なものなわけだが――――」

 

 間を長めにおいて、冷静に言葉を選ぼうと務める。二人の視線は彼の顔に釘付けだった。

 

――――かたや和風、もしくは洋風。両手に花――――なのだが、本人からすればやっているのはロシアンルーレットを更にたちが悪くした何かだ。

 

「まず、使うか使わないか。俺は使わない」

 

 信じられないという表情でエンタープライズが彼を見つめる。だがそれが普通としか言いようがない。

――――いや待て待て、と提督は目を見開いたままのエンタープライズを制止する。

 

「だがな――――使うかどうかなんて他人がとやかく言うもんじゃないとは思うから、要は瑞鶴は間違ってるな」

 

 別に彼は全く嘘は言っていない。

 彼自身、あんまり人と同じ事ができる人種でもないから『他人がとやかく言うもんじゃない』というのは何の装飾もない彼の本音だ。

 

「端的に言って指揮官に裏切られた!」

 

「最初からお前の味方じゃねえから!?」

 

 最初から味方だって覚えはないし、これからも特定の個人に肩入れする予定は彼にはない。

 

――――エンタープライズの表情が僅かに緩んだ。

 

「――――さすがだ指揮官。分かっている」

 

 何が流石なのかはよく分からない。理解は有る方かもしれないが。

 先程までの表情は何処へやら、いつも通りの落ち着いた表情で瑞鶴に彼女は向き直る。

 

「こういうわけだ、瑞鶴」

 

「な、何よそのドヤ顔は!」

 

 言うだけ言って執務室を出て行く。

 にしても傍から見ても今日の彼女は奇妙だった。彼もあんな様子になっているのはあまり見たことがない。

 

「くそ、次こそはアイツをギャフンと――――ッ!」

 

 ブツブツと呟きながら瑞鶴も執務室を出ていく。往生際が悪いというか、手段は選ぶべきではないだろうか。

 

――――嵐の過ぎ去った静かな執務室で、彼は溜息をつく。

 

「ふぅ…………」

 

 さっきよりも日差しが強くなったような感覚に目を覆った。

 

「ったく、此処はいつも賑やかなもんだ」

 

 口調の割に、提督は嬉しそうに笑っている。

 つまらないよりは、楽しい方が良いに決まっているのだ。

 

 彼のすぐ近くから返事が返ってくる。

 

「そうですね、けれど指揮官が何時まで無事で居られるか――――ふふふ」

 

「うわ、翔鶴=サン。何時から其処に……?」

 

 提督が驚いて体をのけぞらせると、翔鶴は彼を見て悪戯っぽく笑う。

 

「さぁ? 何時からでしょうか――――」

 

 謎を残すだけ残して、散らばっていた机の書類を整理し始める。

――――今日の秘書艦は彼女だったのを彼は唐突に思い出した。

 

「あ、そうだ。艦載機の調整はどうだった?」

 

「そちらは大丈夫そうです」

 

 書類をとんとん、と机に立てて整理しながら翔鶴が答える。

 

――――なんでも最近、少し重かったらしい。使っている当人も説明に困るのだが、重いと何か違和感を感じるらしい。

 苦情は立てられるが具体的には提示できないのである。さながらクレーマーのような言い方になってしまったがまあ説明に困るのでは仕方がない。

 

「どうやら燃料を過剰搭載していたみたいで、少し減らしたら大丈夫そうです」

 

 そっか、と提督は納得したように手を組んで頷いた。

 

「また気になったらすぐ聞きに行くと良いよ」

 

「そうさせてもらいます」

 

 はい、と翔鶴は整えた書類を提督の前に積み上げた。『書類の摩天楼』の第二陣、完成である。提督はその視覚的ダメージに大きく溜息を付いた。

 

――――今日もどことなくのんびりとした気分だ、彼は密かに思う。ずっと続いてくれれば彼にとっては有り難いことだ。

 今日の空も快晴なのであった。




アズレンはまってるので書いた、後悔はない。

しかしコメディ好きなのに苦手という大いなる矛盾を抱えているので、書き方が馴染むまではアレかもしれません。実質習作になってしまいますが、気長に読んで下さいお願いします。


にしてもエンタープライズさん、すごい好きなのに二次創作少ない…………何故だ!?





まま、ええわ(投げやり)。無いもんはしゃあない。
それよりオジサンが聞きたいんはね――――――




エンタープライズ、好きかい?(失踪フラグ)


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