恥ずかしい所を見せてしまったな、だが何時だって冒険はしてみるものだ。彼女から逃げるルートは幾ら有っても無駄にならないものだしな。
――――おかえりなさい。いつもの騒がしい私達の鎮守府にようこそ。
相変わらず不安定だが、良ければ覗いていくといい。
二回目が始まるまでは私達が相手をさせてもらおう。
年始早々人も多くやってきて、
『貴方が挨拶をするべきだ』と言ったのだが、もう表に出る気はないそうだ。
――――素直に顔を出せばいいのに。強情な人だな、全く…………。
『いや、すまん! お前の気持ちには答えられ無さそうだっ!』
えぇ、うっそだろお前。あんだけ理想条件にバッチリ入ってるくせに断るのか…………。
――――失礼、つい素が出てしまった。
しかし実際衝撃だったのだ。執務室の机の前、彼の思い切り下げられた頭に、変に整った直角の礼が彼女の眼を揺らした。
まさか告白を思いっきり断るとまでは思わないだろう。彼女は返答なんて彼の気持ち次第だ、とありのままに考えられるが――――――我々凡人から見て、ずばり普通に考えて断らない。
まあ彼は阿呆だが、其処までだとは誰も思うまい。
『い、いや其処まで頭を下げることはないだろう…………』
内心結構落胆している癖に、彼女は顔を無理に上げさせて申し訳無さそうな表情を作る。
さながら白鳥が翼を広げているように銀髪がふわりと舞った。
――――――彼女は成り行き上、トンデモナイ男気告白はした。
だけど別に彼を傷つけたかったりは全くしないわけで、ましてそんな本気で謝られるぐらいなら言わない方がマシだったか――――なんて後悔するぐらいだ。
こういう時だけ妙に奥手だったり考え過ぎるのは彼によく似てしまった所かもしれない。
『いやだけども結構あの時頑張ったっぽいじゃんか!? しかも、こんだけしてもらっておいて薄情者だろ!?』
『いやいや、それは私だってしてもらっている。気にする所じゃない』
でもよでもよ、と彼は20代の後半に差し掛かりかけているとは思えない、支離滅裂で幼稚な言葉を重ねていく。少し目が潤んでいて、端から見たらいい年の男が泣きそうになっている中々えげつない絵面となる。
『というか女性経験ゼロでもう何というか、もう感情の整理とか色々困ってるんだよ俺!』
『意中の相手の悲しい女性遍歴の実態を聞かされた私の感情の整理の仕方とか、分かるか指揮官?』
確かにダメージは有る。彼女も大変である。
良い言い方(というかマトモそうな言い方)をすると彼は仕事一筋の男で、此処の艦は正直「娘孫扱い」が殆どなのだ。まあ中身が実質40代、下手をすれば50代なのだから致し方ない所は有るが。
むしろ「女性」と意識していたのが彼女ぐらいのものだったりするのだが、まあそれはどうでも良い。
彼のそんなあまりに偏った女性遍歴(コミュニケーションレベルで考えても偏っている)からすれば、色々困って当然といえば――――――当然である。
残念ながら生前も、普通にモテない男だったのだ。可哀想に。
『――――分かった。まずは、整理をするんだ指揮官』
あんまりにも彼の顔が男性と言うには酷いくしゃくしゃな顔だったので、彼女は変に冷静になってしまう。
まずはこういう時は目線を合わせるもの、と言い聞かせる。感傷を持ち込んでは彼に要らない刺激が入る。
膝をついて、頭を下げっぱなしの彼の顔を正面に見据える。その挙措は女性の其れというよりは、何処か紳士という形容の方が近い。
『要するに、私の事は部下。それ以上ではない。そうだな?』
出来るだけ、穏やかに話しかける。こういう時に口調や声色が激しいと、意味もなく相手は更に錯乱しがちだ。
彼が頭を上げて、黒鉄の瞳を彼女にひたりと向けながらぼんやりとした口調で答える。
『いや、違うよ?』
『いやどういう事だ詳しく説明してくれ』
彼女は思わず不思議そうに顔を歪めた。彼は妙にはっきりとした口調で返事をする。
『すっごい大事なんだけどさ、でもこれ恋愛感情じゃないんじゃねえのかな――――――――いやでもでも、とかあんまり頭がメリーゴーランドみたいに回るから、このまま成り行きで――――とかお前に不誠実だろ!?』
そんな事を考える時点で――――というのは突っ込んではいけない。此処には恋愛ポンコツしか居ない。
『そ、そうか。私を大事には――――――思ってくれて、いるんだな…………』
ほらそこエンタープライズ、ニマつくんじゃない。照れるな、見てるこっちが爆発する。顔を逸らすな、こっちが萌え死ぬ。
というか此処まで来れば付き合っちまえば良いじゃねえかよ――――――しまった、また口調が乱れてしまった。コイツらじれったすぎる。
『しかも俺ってこんな感じだからすぐお前を放っとくだろうし、ふっつうに他の女の子とも喋るし、正直もう環境的にも性格的にも付き合うのが向いていないというかもう(ry』
うん、そうだね。でももう其処は考えなくていいと思うのだが。
確かに女性が付き合いたくない男の条件としては――――――はあ。
かなり整っているのは疑いようもないが、彼の艦との付き合い方のスタンスも、職業の特質も――――――全部。言葉通り「誰よりも」把握している彼女に関しては特に問題ないと思われる。
さらに言えば彼女自身、そういう嫉妬だとかそういう感情は大抵自己解決できる類の強い女性なのは彼が一番良く分かっているはずなのだが。
まあそんな異常にタフな女性は現実には中々居ないのだから、あくまでこちら側の住人だった彼としては其処まで発想が行かないのかもしれない。
実際にそういう人間だと説明されても、我々だってそんなのを納得できない訳で、彼もそういう気分なのだろう。
『何というか、
何処か卑下気味な彼の言葉の終わり、彼女の眉がピクリと動いた。
『――――――――何だと?』
彼女が静かに立ち上がる。彼は見たことのないその表情に思わずひっ、と情けない声を上げた。
――――――怒っていた。あのエンタープライズが、恐らく年に一度くらいしか無い表情で。ただ私情のみで怒っていた。
『指揮官!』
『は、はいぃ!?』
『よく聞くんだ、大事な事を今から言うぞ!?』
普段からは全く想像の付かない響き渡る怒鳴り声に、彼が思わず正座して姿勢を正した。
『『もっと良い相手が居るよ』とは何だ!? どういう事だ、指揮官そっくりの人間がもう一人いるのか、ドッペルゲンガーか何かか!?』
感情的に身振り手振りで苛立ちを紛らわしながら彼を更に怒鳴りつける。
――――叱られた幼稚園児のような、こもった声で彼が返事をする。
『いやだって俺普通だし、別にイケメンでもないし、甲斐性なしだし――――』
『もう一回聞くぞ、『小野
数年ぶりにそのフルネームを呼んだ。
彼女が名前を呼ぶ時はよほどの時で、大抵彼がとんでもない勘違いなり、良くない思い込みに走っているときだけだ。
相当ご立腹なのを否応なく理解した彼は、更に背筋をヘナヘナとさせて返事をする。
『い、居ません…………』
『だろう! ならばあなたの上位互換が存在しうるか!?』
彼が何やら屁理屈をこねようとしたのを彼女は無理やり切る。
『私が好きだと言ったのはあなただ! 代わりは居ないし、ましてやもっと良い人が居る等と――――そんな言葉を言える観点で私は人を見ていない!』
『つまりだ。優しいから、気が利くから、格好がいいから――――――そういう『パーツ』の話は、一切していない!』
『他の誰でもなければ二度と現れることのない――――――そういう『あなた』という個人に好意を抱いていると言ったんだ!』
また告白させられてる。この二人は一生こうなのかもしれない。
――――――彼女が息を荒げながら続ける。
『あなたは例えば、今では何人も居るはず――――そうだな、プリンでいい。彼女のいずれもが全く一緒だと思うか? 其処には個体識別の価値はないのか? 一人一人に優劣はつけれるのか?』
『んな訳ねえだろ馬鹿野郎! 優劣なんてねえし、今ウチに居る8人の性格の特徴全部言えるわ!』
『分かってるじゃないか! あなたもそうだと言うことだ! 全く同じなんて有り得なければ、ましてや上下なんてつけれる事はない!』
あ、成る程。と彼は手を叩いた。気づくのが遅すぎる。
――――まああの精神状態で、自分に価値を見いだせないのと言うのはむしろ当然の流れ。彼女が必死で怒るのも正しいし、だけれども彼が理解に手間取るのは彼が阿呆だからではない。
そういう風に育ったのだから、そういう人間になるのだ。
『この馬鹿! もっと自分がどういうものなのかをちゃんと認識しろ!』
普段の言葉遣いも何処へやら、ただひたすらに罵詈雑言を彼に浴びせる。
『分かったか!?』
『………………す、スミマセンでした――――――』
彼はいよいよ項垂れること甚だしかった。
「はははは――――――それは愉快だな、まったくお主らは誠に面白い!」
三笠は昼間から大きく笑った。
――――――指揮官は思い出すだけでやってられない、と言わんばかりに脱力してぼんやりと歩く。
工廠で作業員と話し込むこと数十分。やっと執務室の有る三階まで歩いてきたと言うのに、更にあの下りを思い出すとなると力が抜けていく――――――となるのは…………確かにそうなる。
「愉快じゃねえよ、プライズちゃん怖かった…………」
ふえ、と情けない声で彼は自分の両肩を抱き寄せる。その後もこってりと叱られたらしかった。
――――プライズちゃん、と彼が人前で呼ぶのは実は三笠だけだったりする。
「うむ、良かったな! お主にもやっと貰い手が見つかったようで我は本当に嬉しいぞ!」
「貰うの俺じゃないんすかね?」
彼が眉を顰めて三笠の方を向くと、彼女は何を言っているんだ、とでも言わんばかりに困った表情で
「お主は御す側ではなく、御される側であろう?」
「反論できねえ…………」
実際立場はほとんど逆である。
エンタープライズが電○文庫の男主人公なら、彼はビーズ○グ文庫の女主人公と言って過言ではない。
生まれる性を間違えた、なんて言うのは色々と語弊があるがイメージとしてはそうなる。
――――――他ならぬ
「それで結局、返答はどうしたのだ?」
眼を丸くして「我、気になります!」と言わんばかりのポージングで尋ねかける。
――――ああ、それね。と彼は頭を掻いて気怠そうな表情に成りながら、言い渋る。
「えっとだな――――――」
――――――――ガッシャーン!
何かが、というか具体的にはガラスの割れた音がする。
「はいぃ!?」
「ふむ、執務室の中からと見たが――――――」
三笠の考察を聞くやいなや、彼がとんでもないスタートダッシュで執務室の前まで駆け抜ける。
――――僅か5,6秒の内に扉の前までたどり着いた彼が、力を逃しきれずに体を大きく傾けながら無理やり扉をこじ開ける。
「おい、誰だ割った奴――――――――って、プライズちゃん!?」
漸く足が止まって、今度は顔が固まった。
――――エンタープライズは硝子の破片に彩られながら、寝転ぶ形になっていた体を起こして。
「ああ――――――――すまない。割ってしまったよ」
と力の抜けた笑いをした。
彼女の内心には、これからの面倒事に溜息ばかりが残響していた。
え、FGO特番親父さんミスって消しちまった!? そりゃさすがに俺でも神様ってやつに同情するなあ――――――え、あとがき始まってる?
プライズちゃん、カンペ出してくれって――――――ああ、そっちもさっきまで絡まれてたのか。
――――――それでは。
やぁ、素晴らしきクソッタレな読者の諸君、はじめまして。「今回のあとがき担当だから」って仕事を投げられた指揮官だぞ。
あ、今度こそカンペ出して――――――ええ~、っとだな。
「今回からあとがきは登場人物に投げます」だそうだ。
何か理由もあるぞ、「本来は終わった物語に蛇足をつけて、まして神様があとがきだなんてちゃんちゃらおかしい」――――――カッコつけも甚だしいな全く。
ってか前回書いてるじゃん。基準が分からん。
ちなみに作者は今回の妙なお気に入り増加について
「他も増えてるしぶっちゃけ正月効果」とたかを括っているらしい。何でそう卑屈なんだアンタはよ。
まあそういうのを考察するのは勝手だが、登録してくれた人に失礼ってやつじゃないのか、なあ?
あ、次こそは週イチに戻るらしいぞ(ココ重要)。バンバン更新で期待させてすまねえな。
ま、という訳で普通に続いてるぞ。改稿版までのつなぎだが、完結はするから待っててくれ。
「この前完結って言っただろ」だって? 多分「1st seasonが」とか言い訳するんじゃないか?
――――――え、あの娘への返答はどうした?
い、嫌だよ。何でこんな所で発表するんだそんな事。その内話に出るからよ、今は良いだろ…………。
そ、それよりだな。
改稿版だったか、アレの為に実験も結構するからついてこれるやつだけ、みたいな意向なんだと。
相変わらず読者を振り回す作者なこった。
ちなみに今は戦闘モノの戦況考察してるらしい。
それで、2nd seasonの方針は「シリアスちょいちょい、コメディそこそこ大体イチャラブ」だそうだ――――――はぁ!?
公開処刑かよ辞めろテメ――――コラァ!
――――――え? ケッコン衣装? 闇堕ち疑惑?
待て待て待て、まだエンタープライズを嫁には渡さんし、大体俺は闇堕ちさせるような目に遭わせてなんか無いぞ! 何でだエンタープライズぅ!
「大きな子供二人を相手にしているようだ、全く…………」