LuckyEは落とされない   作:杜甫kuresu

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この場合のwを求めよ。ただしwは自然数であり、指揮官の二つ名はナンパ師っぽい何かであるものとする。


指揮官=ナンパ師^w

「指揮官の異名か、確かに有ったような――――」

 

 エンタープライズは小首を傾げながら考え込む。確かに存在はしているはずだし、喉元と言わずとも何処かに引っかかりが有るのは違いないようだった。

 

――――しかしこういうことに限って答えは喉元に支えてしまってどうにもならないものだ。

 

「何だったかな?――――高雄、どうして急にそんなことを?」

 

 ふっと彼女が原点に返るような質問をする。

――――高雄まで難解な表情をしたままに答える。

 

「いや、先程指揮官が自慢げに異名が有ると豪語していたものだから、どんなものなのだと尋ねてみたのだ」

 

 はぁ、高雄は息を吸い込む。

 

『いやぁ~、あ…………詳細? ええっと、それは――――ダサいナンパ師みたいな異名です…………』

 

「という返事が返ってきてな」

 

 高雄の声真似は妙に特徴を押さえていて、エンタープライズは目を見張る。

 誰しも意外な特技というのは持ち合わせているものだが、分かっていても目の当たりにすると目を丸くしてしまうものだ。

 

「声真似、上手いんだな」

 

 エンタープライズが微笑みながら伝えると、高雄は自覚がなかったのか、その指摘に少したじろいで目線が迷子になる。

 

「そ、そうだろうか。言われたのはそなたが初めてだが…………」

 

 それはそうだろうな、とエンタープライズは言葉を喉元に留める。

 

 そもそも高雄が声真似をする、というのを何人聞いたかに目を向けるとそりゃあ少ないはず。せっかくの声帯を活かさないというのも悲しいものである。

 

「案外絵本の朗読、なんて向いているのかもしれないな」

 

 エンタープライズの提案に高雄は一瞬だけ想像して、頭を振り払いながら話を切り替える。

 

「――――す、すまなかったな。些末事で呼び止めてしまった」

 

 満更でもないらしいが、柄でもないと受け入れにくい。提督が聞けば大喜びしながら是非やってもらいたい、なんて言い出すことだろうに。

 

 そんな事を察してかどうなのか、エンタープライズも深く追求はしなかった。

 

「ああ、構わないよ。『下らない事こそ大事な事』だ――――まあ、あの人の受け売りなんだが」

 

 あっけらかんとしたエンタープライズに、高雄もつられて笑う。

 

「そうだな、指揮官殿が言いそうなことだ――――」

 

 少しだけ笑いを零しながら高雄はエンタープライズの横を通り過ぎていった。

 

――――エンタープライズは笑みをふっと消して困ったような顔をする。

 

「――――――気になるな…………ナンパ師?」

 

 彼女、これで好奇心旺盛なのだ。

 

 

◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆

 

 

「いや、やっぱナンパ師だろうな」

 

「指揮官、あなたは何をしてそんな不名誉な異名を持つに至ったんだ?」

 

 仰る通りである。

――――何でって、と提督は言葉に困ったように帽子をしきりに触る。

 

「何でと言われても、『俺を是非こう呼んでください~』みたいなプロバガンダかましてついた異名じゃないし」

 

「当たり前だろう…………」

 

 そんな提督の下でエンタープライズも働いていた覚えはない。

 

「それで、具体的には何と呼ばれていたんだ」

 

「こういうのはすぐ教えちゃうと面白くない(尺が稼げない)だろ?」

 

 変なルビが有ったが気のせいだろう。気にしてはいけないし気にするな。

――――そうだ。提督が今適当に思いついたのを丸出しにしたまま喋り始める。この男の思いつきで喋る癖は最早病気の一種としか言いようがない。

 

「プリンツに聞いてみたら良いんじゃないか? 最近は喋ってなかっただろ」

 

 エンタープライズは意外な提案に少し瞳を揺らした。

――――プリンツ・オイゲンとは実戦に出る以前からの仲だ。性格そのものは(プリンツが一方的に)合わないのだが、戦闘となると話が違うらしい。

 

 その姿は前衛後衛の関係としては、各所で見本として挙げられるペアとなっている。

 

「ユージンか。彼女とは確かにあまり話さなくなってしまっていたな」

 

 少し淋しげにそう答えたエンタープライズに提督がそうだそうだ、と此処ぞとばかりに推してくる。

 

「丁度いい、アイツはあんまり忘れたりしないし多分覚えてるだろ」

 

 どうやら思いつきの行き当たりばったり――――と言う訳では無さそうだ。話の流れが嫌に順調過ぎる。

 

――――この男は時々、本当に時々だが、こういう計算づくで動く時がある。大体が適当すぎて尚更気づけ無いのだが、やはり何も考えていないという訳ではないらしい。

 

 鎮守府を任せられた人物なのだから、当然といえばそうだが。

 

「そうか――――そうだな。話を聞いてみようか」

 

「そうしなさい、丁度委託から帰ってくる頃合いだ」

 

 どこまでが計算づくなのかは分からないが、提督は機嫌の良さそうに言ってエンタープライズを外に追いやった。

 

 

◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆

 

 

「お疲れ様――――――あら、珍しい顔ね」

 

 嫌に色気の見え隠れする口調でプリンツが言った。委託の同行者そっちのけでエンタープライズをじっと見つめているさまは、何だか動物が遠くを眺める其れによく似ている。

 

――――――プリンツ・オイゲンはパワードスーツライクの灰、黒、赤の衣服が特徴的な少女だ。ツインテールに灰の髪、それに加えて琥珀の瞳――――人間らしくて、人間らしくないのが彼女の容貌の総評だろう。

 

「久しぶりだな、健在そうで何よりだ」

 

 エンタープライズが如何にも気の良い男友達のような挨拶をする。

 

「相変わらず思ってもないことを言うのが好きね、彼氏面空母」

 

 返答はコレであった。彼氏面は分からなくもない。敢えて言うなら元カレ感、いや元カレ艦っぽい。

――――あ、いや違う。酷い返事と言うべきだったか、だがある意味的は射ている。

 

「ははは――――――相変わらずだな、ユージン」

 

 中身は至ってまとも(じゃ)な(い)少女である、人間らしさも多分にある。エンタープライズは苦笑いした。

 

――――と言ってもエンタープライズが辛く当たられるのは、プリンツと彼女が初めて対面した時に

 

『君のような美しい少女まで駆り出されるとは、戦争というのはかくも惨いものか』

 

 とかなり恥ずかしいセリフを吐いたことに由来する。まだ彼女がキザったらしかった頃の話だ。ちなみにこの時期の言動をいじられると彼女は恥ずかしがる、一見の価値ありだ。

――――余談として、返答は

 

『アンタみたいなたらし空母が女扱いじゃ世も末ね』

 

 であった。お互い心証は最悪に近い。

――――なんだかんだ戦闘はお互いにちゃんと取り組むし、エンタープライズは(自分で撒いた種のせいとはいえ)彼女の辛辣な発言もはにかんで受け流すところがあったので、戦闘は上手くいくのだ。戦闘は。

 

 後のことは話が別だ。

 

「いい加減許してくれないか、悪かったから…………」

 

「ああ――――悪かったわね、別にあの時のことはもう怒ってないのよ」

 

 プリンツの発言に一瞬だけエンタープライズの眼が光る。

 

「そうなのか、なら――――!」

 

「今はアンタがただ何となく嫌いなのよ」

 

「君には慈悲がないのか、酷すぎる」

 

 酷すぎるな、ホント。同情してしまう。

 

――――まあ本当に嫌いだったらテンポよく会話なんて出来るわけないので、まあそういうことである。

 

「誤解させて悪かったわね」

 

「誤解したまま生きて行きたかったな、私は――――」

 

 エンタープライズが遠くを見るような目をした。慣れたからノーダメージ、とは行かないものである。

 

 

 

「それで、何か用かしら?」

 

 プリンツは変なサングラスを掛ける。いつもの癖なのだが、エンタープライズにはハリウッド俳優のお忍びコーディネートにしか見えない。

 

「話は聞いてくれるんだな」

 

 エンタープライズが未だに少し焦点の合わない眼のまま喋る。

 

「用は何かしら?」

 

「ああ本当は面倒なんだな、手短に行こう」

 

 別に本心からそうは思っていないのだが、まあこの二人の会話はいつものことなので言うことはない。かたや本気で嫌われてると思い込み、かたや其れを見て内心笑っているというのが基本構造だ。

 

――――エンタープライズも話を聞く気自体は有ると判断する。

 

「指揮官の異名――――何だったかな、と思ってな」

 

 プリンツがグラサン越しに琥珀の目を見開く。

 

「あら、意外と普通。てっきり恋愛相談かと」

 

「何故そうなるかも分からないし君に相談する蛮勇は持ち合わせていない」

 

 相談しても酷いアドバイスで遊ばれるか、もしくはこんな流れになるのは確かに彼女の予想通りである。

 

――――しかし、質問自体はまともに答える気が有るらしく、少しだけ考え込む仕草をする。

 

「そうね…………どれが良い?」

 

「私は大喜利を振ったんじゃないぞ?」

 

 エンタープライズの言葉もお構いなしに喋り始める。

 

「『超絶たらし』とか『鈍感アジアチャンプ候補』とか有るわね」

 

「思ったより酷いな、あの人何をしてたんだ」

 

 多分普通に仕事をしている。この渾名は艦の間で広まった方だろう。

 

――――しかし嘘は言っておらず、どれも一応呼ばれることは有るものだ。

 指針がなくては探しにくいと思ったのか、エンタープライズが付け加える。

 

「『ダサいナンパ師の二つ名』みたいなのだ」

 

「変な注文ね、『アジアンチャレンジャー小野』とか?」

 

「ダサすぎる、多分違う」

 

 というかこれは本当に持っている異名なのか、エンタープライズは訝しんでしまう。

 

――――プリンツは早くも飽きてきたらしく、思い出した異名をポンポンと投げつける。

 

「『泥沼ギャンブラー』? それとも『畦道マスター』? 『巨大氷山空母』? まさか『両右手の男』とか?」

 

 氷山空母ハボクックはまかり間違ってもないと思う。後最後は何故スタンド使いなのかさっぱり意味が分からない。

 

「途中から明らかに人間じゃないように思うのだが」

 

 最後は残念ながら人間である。

 

「そうね」

 

 適当な返事にエンタープライズが溜息をつく。

 

「面倒………………ああ、ナンパ師かはともかく、もう一個異名を知っているわ」

 

「まだ有るのか」

 

 エンタープライズはお腹いっぱいと言わんばかりの溜息をつく。

 

――――プリンツはダメ元で答える。

 

「『極東のワイルドハント』っていうのが有るわね。でもこれ、ナンパ師じゃないし」

 

 そうだな、エンタープライズも同意する。まるで提督がナンパ師であるのが事実みたいになっているが、そういう訳ではない。

 

――――ワイルドハントは、要はヨーロッパで言うところの百鬼夜行みたいなものである。但しリーダーはオーディン、メンバーはフランシス・ドレイクやアーサー王と錚々たるメンツなので――――――ぶっちゃけ人の家に居座るだけの迷惑老人であるぬらりひょんが長の百鬼夜行とは比べようもない。

 

「ハントが狩猟で、ワイルドが野生――――ギリギリナンパ師か?」

 

「言ってみた手前に何だけど、これがナンパ師ってアイツ馬鹿なのかしら?」

 

 馬鹿なんだ、察してやってほしい。

 ちなみにコレが正解なのだが、結局二人揃って提督にもう一度確認しに行くことになるのは別の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆

 

 

「指揮官殿、只今戻った」

 

 高雄が執務室の扉を開けて丁寧に礼をした。ピッタリ角度は三十度である。

 

「そうか、どうだった?」

 

 提督は其れににっこりと笑ったまま尋ねる。正直ちょっと気色が悪い。

 

――――高雄はあまり答えたくなさそうな表情をしている、彼は結果を察した。

 

「難しいそうだ。普通にやれば巻き込まれると言っている」

 

「そうだよなあ、まあ当然か…………」

 

 そう言いながらも提督は気落ちしているようだ、面倒事が増えたからか、それとも――――。

 

「気を落とされるな、指揮官殿。やりようは幾らでも有るだろう――――」




提督のセンスがおかしいのは勿論私とは関係ないです。でもワイルドハントってちょい都会の有名なナンパ師で居そうとは思ってしまいました。
後シティーハンターのイメージガガガ。しかしアレはGet Wildだ。


今回はハイテンポめな話に仕上げてみましたがどうでしょう? というかしばらくこっちを試してみようと思います、ラノベっぽい感じのテンポですね。

ユージンというのはオイゲンの英語読みで、実はエンプラ以外には呼ばせないとかいう設定が有ったりなかったり。


所でオイゲンとエンプラが初期の主力って人結構居ませんか? エンプラに二週間かかったので私は違いますが。




――――あ、そうだ(唐突)。
 ロイヤルと鉄血はどうしたっていう感想が来ていたのでここではっきりと言っておくべきですね。
ぶっちゃけ1月までの1クール目ではロイヤル・鉄血勢はレナウンちゃんが一回出る以外恐らく出番ない予定です(ウッソだろお前)。
推し居る勢には申し訳ない。1月以降は多分出番は有るんですけど、メインヒロインはどうあがいてもエンタープライズなので過度な期待はしないでくださいね?
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