アニメ二期で触発されて書きました。
駄文な箇所もあるかと思いますが(全部かもしれませんが)、暖かい目で見つつ、読んでいただければ幸いです。
私、高嶋琉璃は生まれてから何の変哲も無い生活を10年、何不自由なく送ってきた。友達、家族、親戚にもこれといって嫌いな人はおらず、皆優しく接してくれた。話していたことも、起こしていた行動も、私が見ていたものは全て本音から出るものだろうと思っていた。
………今この時までは。
私がいるのは、『大赦』という神樹様を祀っているところ……だと思う。何も知らされずにお母さんに連れてこられたから、それが合っているかどうかは分からないけれど。
そこについて大きな部屋に通されて第一に言われた。
「高嶋琉璃さん、貴女は神樹様に選ばれ、お役目を果たす勇者となる義務があります」
よく、わからなかった。お役目…というもの自体がなんだか分からないし、そもそも『勇者』という言葉はお伽話や小説でしか聞いたことがない。それに、いきなり連れてこられて義務なんて言われても、一切ピンとこない。
私が首を傾げて突っ立っていると、白装束というか白い着物のような服装をしたお母さんは、慌てた様子で私を正座させた。なんでも、ここは神樹様の近くだから無礼を働いてはマズイらしい。
周りには知らない大人ばかりだから、少しぐらい緊張はする。私は人の前に出るような人間じゃなかったから、多少人見知りになっているのかもしれない。
だから、その慌てた姿はいつもの姿を思い出せて少しは安心できた。
でも……ここではお母さんに迷惑をかけるわけにはいけないと、正座のまま耐える。
「これは決定事項です。神樹様に選ばれた貴女は、勇者としてお役目を果たさなければなりません。いいですね?」
いいわけがない。なぜ勝手に決めつけられなければならないのか、私の人生は私のものではないのか、そういう疑問が浮かび上がって来る。
だけど、そのお役目というのはかなり名誉なことらしく、断るということ自体ありえないらしい。
……このことをお母さんはどう思っているのだろう。誇らしく感じているのだろうか。自分の子がお役目に選ばれるという事を。
ふと、思った。思ってしまった。
『そうだったら……お母さんは、家族のみんなは喜んでくれるだろうなぁ』
そして私は、お役目を受ける事を決めた。
これが、私の『勇者』としての始まりだった。
* * * * *
カーテンから差し込む光が目元にあたり、眩しさで眼を覚ます。私は上半身を起こし、不意に襲った眠気を振り払うように伸びをする。
お役目を言い渡されてから、一年が経った。私は今、小学六年生になった。
勇者のお役目は……まだ果たしてはいない。というか、個人訓練ばかりだった。他の勇者もいるらしいが、会ったことはなく、ただ一人で淡々と訓練していた。側にお母さんはいたけども。
寝ぼけ眼を擦りながら一階に降りると、そこには同じように眼をこすっている二つ上の兄、空助がいた。
「お、起きたか琉璃」
「…………うん、おはよう兄ちゃん」
ふああ、と欠伸をしながら応えると苦笑いで返された。……何かおかしなことあったかな?
「んな大きな欠伸して…もしかしてまた夜更かしか?」
「昨日は早く寝た。けど眠い……ふあぁ」
「お前の早く寝た、は信用できないからなぁ……。ま、体壊さない程度にしとけよ〜」
兄さんはひらひらと手を振りつつ、洗面所の方に向かった。
私と兄ちゃん、それと下に双子の妹と弟がいるのだが、全員朝の行動が違う。
兄ちゃんは先に身だしなみを整えてからご飯を食べて学校に行っている。
妹と弟はお母さんに起こされるまでは寝ているし、起きてからもつきっきりじゃないといつの間にかそこらへんで寝ている。
私はというと、朝起きて朝食をとってから全ての用意を済ませる。兄ちゃんとは全く逆に行動している。
それにしても眠すぎる。昨日は本当に早く寝たはずなのに……疲れがたまってたのかな。
「あら琉璃、おはよう。ご飯は机の上に置いてあるからね」
リビングに突っ立っていると、キッチンの方から声が飛んで来る。
優しく、聞き慣れた声。私のお母さん、高嶋結衣の声だ。
キッチンの方に視線を向けると、ニッコリと笑みを返してくれた。私は、うんと応えて席に着く。
机の上にあるのはいつも通りの食事。お母さんが作ってくれた暖かい食事。
お母さんの作る食事すべてが私の大好物だったりする。
私は今日もそれを味わいつつ食べ、いつも通り学校に間に合うギリギリの時間に家を出るのだった。
* * * * *
神樹館小学校。
私の通う学校。この5年間ずっとそこで勉学に励んだ……はず。覚えているのが本を読んでいたことしかないのは気のせいなはず。
で、今の私はというと、
「お、琉璃。奇遇だな!」
「あ、三ノ輪さん。奇遇だね」
「だーかーらー、銀でいいって言ってるのに……」
クラスメイトである三ノ輪銀と並んで走っていた。
原因が、朝食に時間をかけすぎている事だけど、三ノ輪さんがいつも私に遭遇する理由は今でもわからない。
多分、三ノ輪さんにも何か理由はあるのだろう。
三ノ輪銀。
彼女は私の所属しているクラスの女の子で、セミロングくらいの灰色っぽい髪を後ろで束ねているボーイッシュな子。
小学校に通い始めて2年で知り合い、そこからずっと仲良くしてくれている。
最初は苗字で呼ばれていたのだけど、次第に名前で呼ばれるようになっていた。……たまに名前で呼ぶようになったけど、基本的には苗字呼びだけどね。
「そろそろ名前で呼んでくれてもいいじゃんか!」
「気が向いたらね」
「ちぇ〜」
「ほら、早く行くよ銀」
走る速度を上げて、三ノ輪さんもとい銀の前に出る。普段苗字呼びをしているから、たまに名前で呼んだ時の反応が面白いから、これをやめるのはもうちょっと後になりそうかな。
「はぁい……ってちょっとタンマ!今名前で呼んだよね?ね!?」
「さて、何のことやら」
「いい加減からかうのやめて、ちゃんと名前で呼んでくれよー!」
私達の朝はいつもこんな感じで賑やかだ。でも、この日常は私にとってなくてはならないもの……なのかもね。
なんて思いつつ、走る速度を上げて行くのだった。
* * * * *
結局銀と一緒に学活に少しだけ遅れた。学生名簿で頭を軽く叩かれるだけで済んだけど、それがまた絶妙な痛さだった。銀はわめいていたけど。
席に着くと横にいる女の子、鷲尾須美が訝しんだ目で見てくる。
これには苦笑いで返すしかない。だって話すと絶対にお説教確定なんだもの……。あれは足に効くからあまり受けたくない。
前に座った銀はというと、他の子に遅れた理由を聞かれていた。「六年生にもなると、色々あるんさぁ」と応えながらランドセルを開けていたけど、中身空っぽだったのは後ろに座っている私には丸見えだった。
それに連動して「げっ」と悲鳴みたく声を上げているのも。
「じゃあ、今日の日直の人」
「はい。起立!」
おっと、今日の日直は鷲尾さんらしい。これは朝の挨拶もちゃんとしないとダメだ。あとで叱られ……いや、遅刻した時点でそれは確定事項だった。
「気をつけ、礼。神樹様に、拝」
先生に礼をし、振り返って神樹様に手を合わせる。その際に感謝の言葉を添える。
『神樹様のおかげで今日の私達があります』と。
「神棚に、礼。着席」
私はランドセルから教科書を出す。銀はまだ諦めてないのか、ランドセルを逆さまにして降っている。
教科書を机の上に置いた瞬間、横に未だ立てっているクラスメイトが視界に映る。
おかしい、鷲尾さんの声が聞こえなかったのかな。
その異変を感じているのは私だけではなく、銀と鷲尾さん、そしてその隣でキョロキョロしている乃木さんの三人もだった。
私達は知っているこうなった場合、この後どんな事が待っているのか。
「これって……」
三人とも不安がっていると、遠くの方から鈴の音が聞こえてくる。周囲が止まっているのに、鈴の音が聞こえる。事前に教えてもらっていた事とそう変わりない。
「来たのね。私達がお役目を果たす時が……」
そう、これはお役目を果たす合図のようなもの。外からくる敵を追い返すための戦いの知らせなのだ。
「お、おぉう!?なんか外から光が!」
「え?」
銀が驚いたように窓の方を見る。それに釣られ、視線を移すと窓全体が光に包まれていた。外が光っているのか、光が教室を満たす。視界が真っ白になり、何も見えなくなる。
そこから、私は一瞬だけ意識を失うのだった。
* * * * *
神世紀二百九十八年。
これは、四人の勇者の物語。
神に選ばれた少女達のお伽話。
いつだって、神に選ばれるのは無垢な少女達である。
そして多くの場合、その結末はーーーーー
お読みいただき誠にありがとうございます。
取り敢えず、アニメに沿った感じで行こうかと今の所は思ってます。
ちょくちょくオリジナルの話を織り込むかもしれませんが、よろしくお願いします。
では、次の話は近いうちに投稿いたしますので。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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