高嶋琉璃は勇者である   作:夜明けの月

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ほぼ一年ぶりですね………ガチでごめんなさい(土下座
書き方変わってるかもですが目をつぶってくれるとありがたいです…



第4話 がっしゅく

私達が最初の敵を倒してから半月後、二体目の敵がやってきた。

勇者に変身し、そのバーテックスと戦おうとしたわけなのだがーーー

 

「だぁーっ、身動き取れねえよ!」

「風が強すぎるんよーー!」

 

強烈な風に襲われ続けて身動きが取れていなかった。

バーテックスは自身を回転させ、両端にぶら下げた重りのようなもので強風を生み出してこちらの動きを封じていた。手を出そうにも、体がいとも容易く飛ばされる。

どうしたもんか……一か八か特攻、は危険だし……。そうなると接近戦でしか戦えない私と銀はどうやっても戦力外となる。となると須美の矢なのだが、強風で押し流される可能性がある。手詰まり感が半端ないんだけども……。

 

「あのぐるぐる、上から攻撃すると弱そうなんだけど……」

「……風が強すぎて辿り着けるかどうか」

「じゃあどうすんだよー!」

 

やられっぱなしなのが気に食わないのか、うがー!と銀が声を上げる。気持ちはわからなくはない。さすがにやられっぱなしは私でも嫌だ。

何か、何か突破口は……。

 

「あっ、須美!?」

 

私にしがみついている銀が驚きの声を上げる。後ろを見るとそこには風によって舞い上げられていく須美の姿があった。

須美は矢を引き、天秤型のバーテックスにその鏃を向ける。鏃の先には花のような模様が浮き上がり、一枚一枚花弁が薄い青に染っていく。

もしかして、あの状況で矢を放つつもりじゃ……!

 

「南無八幡大菩薩!」

 

引き絞った矢から手を離し、矢を放つ。矢は青い光を放ちながら直進する。

だが、バーテックスの起こす強風の前にはその勢いは弱すぎた。

 

「そんなっ!?」

 

矢は吹き飛ばされ、空中に放り出されていた須美も遠くへと押し流されていく。

 

「ッ!銀、バーテックスお願い!」

「ちょ、琉璃まで!?」

 

私は吹き飛ばされた須美の方へと姿勢を低くして地面を蹴る。須美と同じく強風によって飛ばされそうになるのを武器の薙刀でなんとか抑えつつ須美の元へと向かう。

強風域の外に出たのか、須美は放物線を描きながら神樹の根に向けて落ちる。

 

「間に合え……!」

 

一か八かで強く根を蹴って加速する。

落ちていく須美に向けて手を伸ばし、そしてーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゴリ押しにも程があるでしょう」

「「「「はい……」」」」

 

神樹館小学校の教室で私たち四人は担任の先生である安芸先生に叱られていた。

 

結局のところ、バーテックスは退けることが出来た。須美も無事にキャッチでき、ほぼ無傷で戦闘を終えたのだ。

だが、そのやり方がいかにもゴリ押し過ぎるものだった。

 

あの後、銀に任せたのだが、どうやら銀は強風を利用してバーテックスの上へと移動し、そこから武器を振り下ろして攻撃していたらしい。

それでバーテックスが撃退できるものなのかと疑問に思ったが、現にそれがなされているのでなんとも言えない。

 

「これじゃ、貴女達の命がいくつあっても足りないわ。お役目を果たして、現実への被害も軽微なものですんだのはよくやってくれたけれども……」

「それは、三ノ輪さんと乃木さんのおかげです」

「まぁ、今回に関しちゃ私ら何もしてないしねぇ……」

 

言葉のとおり何もしてない。須美は攻撃しようとはしたのだが届かず、私に至っては接近すら出来ずに園子の後ろに隠れていただけなのだから。

 

「貴女達の弱点は連携の演習不足ね。まずは四人の中で指揮を執る隊長を決めましょう」

 

安芸先生は私たち四人にそう告げる。確かに、今回もそうだが前回も完全な連携と呼べるようなものをしていない。前回はほぼ思いつきのようなものだし、今回に至ってはゴリ押しだし。

そろそろそういった技能をつけなければ取り返しのつかないことになるかもしれない。

 

でも隊長か……。言動を見る限りは須美だろうけど、須美は指揮する側ではない気がする。銀は論外……というか作戦が"ガンガンいこうぜ!"しか選ばなさそうで怖い。そして私はそもそもそんな柄ではない。となると残るはあと一人。

 

「乃木さん、お願いしてもいいかしら」

「え!?私、ですか?」

 

案の定園子に決定した。

今までの戦闘で状況の把握、作戦の立案を担っていたのは彼女だ。おそらく先生はそこを見抜いたのだろう。……乃木家が大赦でかなり力を持っているから家柄ってのもあるかもだけど。

 

「えっと、その……」

「私も、乃木さんが隊長で賛成よ」

「私はそもそも考えるのとか苦手だから、園子なら任せられるよ」

「んじゃ、私も賛成。猪突猛進な三ノ輪さんと癖の強い鷲尾さんを何とかできるのは、多分乃木さんだけだろうし」

「猪突猛進て……」

「癖が強い……」

「うーん……三人がそこまで言うなら」

 

どう考えてもこの面子を纏められる気が私には一切ない。園子だからいけると思えるのだろう。

まぁ本音はというと、自分に矛先が向かなかったからホッとしてるだけなんだけどね。

 

「そして、神託によると次の襲来までの期間は割とあるみたいだから、連携を深めるために合宿を行おうと思います」

「「「合宿!?」」」

「あの、それなら普通に訓練でいいんじゃ」

「訓練だけでは見えないこともあるだろうから、そのための合宿よ。」

 

 

 

 

「言い忘れてたわ。隊長の乃木さんの補佐を高嶋さん、お願いね」

「辞退させていただきます」

 

安心した矢先にこんなこと聞いてないよ先生ぇ……。

 

結局、私の主張は通らず、隊長は園子でその補佐が私というなんとも腑に落ちない結果は変わることは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょっとした連休の中、私たちは大赦が管理しているという合宿場所まで来ていた。

先生によると、この合宿中に団結力と仲を深めてもらい、同時に最低限の連携をできるようにしなければならない。私たちにはこれまでの戦闘で連携というものが一切なかったことからそういう機会が設けられるのは嬉しい限りなのだ。

がしかし、この訓練が思った以上に難しいしきつい。

 

「へぶしっ!?」

 

盾を展開している園子の後ろを走る銀の顔面にマシーンから放たれたボールが勢いよく激突する。真正面から当たってたから絶対鼻痛いよね、あれ……。

 

「大丈夫〜ミノさん?」

「だ、大丈夫大丈夫。このぐらいで銀様は挫けたりしない!」

「それ絶対鼻痛いでしょ」

「…………うん、めっちゃ痛い」

 

 

 

話はちょっと前に溯る。

連休の初めの日、私たち一行は専用のバスで合宿所へと来ていたのだが、そこに着くやいなや先生は勇者服を着て砂浜に来てくれといってきた。それで来てみたら砂浜に多くのピッチングマシーンが十数台置かれていたのだ。

先生はこれで連携を取り、銀にボールを当てさせずに少し遠くに設置してある廃車のようなオンボロの車まで到達させろというのだ。

最初はそんなの楽じゃない?と思ったのだがそうでもなかった。ボールが飛んでくるタイミングが毎回変わり、さらに一つ一つの速度もバラバラ。その状態のボールを銀に当てることなく凌ぐというのは難しかった。

 

今は何回かこなして多少はできるようになってきたが、必ずどこかのタイミングで穴ができてしまい、そこから銀にボールが当たってしまう。

 

そして時間は戻り、先程銀にボールが当たったので最初からやり直しである。

 

「もう一回、いくわよ!」

 

先生の掛け声でピッチングマシーンが動き始める。

 

「いくよ〜」

「おう!」

「りょーかいっ!」

 

私たち三人もそれに合わせて廃車に近づこうと前へ走る。

ちなみに須美は弓矢なため、遠距離からの支援で私たちとは離れた場所にいる。

 

「防ぐんよー!」

「よっ、と!」

 

園子が盾で飛んでくるボールを防ぎ、私がリーチが届く範囲のボールを斬る。

銀はボールに当たらないよう躱すか叩ききるかしている。

須美も矢でいくつか撃ち落としているため、捌きやすくなっている。

 

「よし、ここまで来れば……!」

「………!」

 

銀が飛ぼうと足に力を入れる。ここから飛べば、恐らくあの廃車まで届くはずだ。

だけどさっき後ろから、しかも銀ではない声が聞こえた気がしたのだが気の所為なのかな…。

 

そう思っていると、須美が放った矢が飛んできて………ボールの横を通り過ぎた。

 

…………うーんこれは。

私は薙刀を振り切ってしまっているし、園子に至っては別のボールを弾いているので防ぎようがない。

これもしかして直撃コースなんじゃ……。

 

「この三ノ輪銀様に、不可能という文字はなゴファ!?」

 

ボールは見事に銀の顔面に直撃。しかも飛んだ瞬間だったため、銀が後ろに弾き飛ぶ。

 

「み、ミノさん!?」

「わぁお……あれは痛い」

「他人、事にもほどが………ガクッ」

「ミノさんしっかりして、ミノさん!」

 

これは……かなり苦戦しそうだなぁ、と内心で思いながら弾きとんだ銀に駆け寄った。

 


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