Another Trainer   作:りんごうさぎ

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6.移ろう未来に変わらぬ友あり

 現在こちらはヒリューとイナズマが倒れ、ナツメはフーディンとバリヤードがひんし。手持ちの数はイーブン。“リフレクター”もそろそろ消えるはずだ。そのはずなのだが……。

 

「まだ消えないのか。ユーレイ! すり抜け!」

「……」

『出た! 掟破りのすり抜け作戦だ! ゲンガーは息を潜めてじっくりと攻撃チャンスをうかがっているようだ!』

 

 ユーレイ Lv52 @しあわせタマゴ

 

 実 137-85-79-171-76-135

 

 技 1シャドーボール

   210まんボルト

   3きあいだま

   4さいみんじゅつ

   5まもる

   6みがわり

   7あやしいひかり

   8みちづれ

   9ゆめくい

  10ちょうはつ

  11のろい

  12いたみわけ

 

 エーフィのことはしっかり観察しているが“めいそう”を使う気配はない。使えば攻撃の餌食になることはわかっているらしい。

 

 すり抜けは無制限にずっとできるものではない。実は制限がある。連続ですり抜けていられる時間やその合計時間はある程度限られている。その上すり抜けている間は攻撃できない。

 

 その辺りを踏まえると“リフレクター”が切れたらすぐに仕掛けるのが無難だ。もう少し辛抱してくれ……。

 

「よし、1」

「……」

 

 ようやく“リフレクター”が切れた! やけに長かったな。ユーレイには“シャドーボール”を使わせて混乱を狙った。

 

「ゲゲッ!?」

「狙い撃ち……!」

 

 しかしこれを先読みされ、地面から出た瞬間に“サイコキネシス”をくらってしまった。一致抜群瞑想帯フィールドで8.1倍……文句なく確1。

 

『ゲンガー破れたり! エスパー少女ナツメッ、弱点のゴースト対策は万全だ!』

 

 うっかりしていた。ナツメなら出現ポイントの予測ぐらい容易だったか。最悪でも相打ちにと思っていたのに“みちづれ”すらできないとは……。

 

「まっ、問題ないけど。頼むぜ、1」

 

 アカサビ Lv54 @しあわせタマゴ

 

 実 67/156-215-126-69-103-122

 

 技 1バレットパンチ

   2でんこうせっか

   3むしくい

   4つるぎのまい

   5まもる

   6みがわり

   7とんぼがえり

   8つばめがえし

   9バトンタッチ

  10かわらわり

  11ちょうはつ

 

 相手も“サイコキネシス”で応戦するが、アカサビは一瞬で相手の真横まで移動し、攻撃体勢で無防備な相手に弾丸のような拳を叩き込んだ。

 

「フィフィー……」

「……」

「エーフィ戦闘不能!」

『ここでレイン選手が再び五分に戻した! ハッサムだけで3体目! 奇妙な岩の効果も持続しており、レイン選手やや優勢か?』

 

 先制技が強力過ぎるからな。指数で約13600……乱数0.85を考慮して11600程。だいたいHP150防御80ぐらいのラインが一撃で飛ぶ。“ステルスロック”があればさらに1割増しだ。

 

「……」

「ソォォーーナンスッ!」

『あれはっ! たしかソーナンスです! 今年のルーキー、ブルー選手も使っていました。エスパータイプなのでしょうか』

 

 しめた! なんでナツメがソーナンスを持っているのかはわからないがこれはチャンス。そういえばまだアカサビは1度もこの技を見せてなかったか。まさか攻撃だけしかしなかったナツメ相手に使う日が来るとはな。

 

「11」

「……!」

 

 おお、驚いてる驚いてる。やっぱりオーラでナツメの考えが読める。“ちょうはつ”の効果で技が出せないことに気づいたようだ。なら交換してくるだろう。俺は考えることもなく余裕もあるし、次に出てくる奴の能力を拝ませてもらおうか。

 

「4」

「……」

 

 アカサビは“つるぎのまい”を始め、ナツメはボールを出した。さぁ何が出てくる?

 

『これはどういうことだ!? ナツメ選手、ポケモンを出して早々にまた引っ込めてしまった! 判断ミスか?』

「シェェェイ」

 

 出てきたのは……フーディン!? 

 

 フーディン Lv60 ひかえめ @まがったスプーン

 

 実 150-58-59-245-175-168

 

 もう1体奥の手を隠してやがったか。それで最初にレベル58を出したんだな。こいつ全体的にレベルが高過ぎないか? ゲームで言えば完全に四天王クラスなんだが。ジムリーダー全員こうなのか?

 

「……」

「1」

「サム!」

 

 強烈な“バレットパンチ”が決まった。一致剣舞テクニフィールド……威力270でオーバーキル。“つるぎのまい”なしでも余裕で倒せていた。おそらくナツメもわかっていたはず。だからこそ先にソーナンスを出したのだろう。

 

「シェェェイ……」

「フーディン戦闘不能!」

『あぁーっと! これはいけません! フーディン出会い頭の攻撃で倒れてしまった! これはナツメ選手には厳しい展開! 痛恨の一撃となった!』

 

 さて、次は誰だ? 出てきたポケモンの並び、その意味を考えていけばおのずとナツメの考えは透けてくる。

 

 最初にステロを起点にフーディンを暴れさせ、次は壁を使って瞑想の起点作り。しかしアカサビを倒しきれず渋々隠し玉のソーナンスを使うことになり、それも失敗して最後の切り札も倒れた。

 

 アカサビを倒す確率が高いポケモンはもう使いきっている。最後の1体はおそらく6体の中で最もアカサビと相性が悪いポケモンが残っているはず。

 

「……」

『ナツメ選手次のポケモンはルージュラだ! しかし岩が刺さって効果は抜群だ!』

 

 手持ちが割れた。残りはこいつとソーナンスのみ。よりによってはがねタイプが弱点か。おそらくレベルを考慮してベストメンバーを連れてきたのだろうが、こおりタイプにしたのは失敗だったな。

 

「1」

 

 効果抜群の“バレットパンチ”が炸裂。ルージュラは吹っ飛んだ。これで終わりだ!

 

「ルージュラ戦闘不能!」

「くっ……!」

『エスパー少女ナツメ、次が最後のポケモンだ! ここからどんな反撃を…』

 

 初めて声を漏らしたな。ソーナンスではアカサビには絶対勝てない。勝負はついた。

 

「降参する? 俺も無抵抗の相手をいたぶるのは趣味じゃないし」

「…………ええ、私の負けよ」

「ナツメ選手、サレンダーでよろしいですか?」

 

 審判の言葉にナツメは黙って頷いた。潔し。

 

『決着だーーっっ!! 勝者はメタモン使いのレイン! メタモンを使わずに勝利ッ!』

 

 勝利宣言してくれるのはいいが俺はメタモン使いを名乗った覚えはないぞ?

 

「…………くぅぅ!」

 

 ナツメは俺には何も言わずに去っていった。序盤は押され気味だったがやはりアカサビが強かった。これで約束通りストーカーからは解放されるわけだが……去り際のナツメのオーラが視えてしまった。……なんか後味が悪いな。

 

 ◆

 

「レインー、みゅーの出番はいつなの?」

「そのうちな」

「それっていつなの? 次は最初からみゅーにバトルさせてよ」

「わがまま言うな。それに……切り札はとっておくものだろ?」

「ぶー。本当はみゅーのこと便利な回復屋さんだと思ってるでしょ?」

 

 確信を持った口調だったのでおとなしく白状した。

 

「……ダメ?」

「じゃ、けづくろいにマッサージもつけてね。いたみわけって自分がダメージを受けるからしんどくて大変なの。だからいいよね? みゅみゅみゅ」

「……みゅーはしっかりしてるよな、俺に自分の要求を突きつけるなんて。わかった、つけてやるよ。どうせ今日は1日ヒマだしな。全く、誰に似たのやら」

「レインじゃないの? みゅーはレインのポケモンだよ?」

「わかってるからはっきり言わないでくれ……嬉しそうな顔をするな!」

 

 ナツメに勝った俺は暫しの休息を得ていた。今日は2回戦の日程初日。だが俺は2回戦も最後の方だからまだまだ先なのでみゅーと一緒に試合観戦をしていた。たくましくなるみゅーに頭を抱えるが、自分のせいなのでどうしようもなかった。

 

 観戦を終えてみゅーと一緒に宿舎に帰るとナツメが待ち構えていた。……話を聞かないと道を開けてくれそうにないな。

 

「何の用……ナツメ?」

「くぅぅ、もうナツメちゃんとは言わないのね」

「そういう約束だからな」

「んみゅ? レイン、ナツメと何か約束してたの?」

「もう終わった話だ。ナツメ、用がないならもういいな。お前の試合はもう終わったんだ。早くジムへ帰ったらどう?」

 

 ナツメの表情は全く変わらない。だがそのオーラはどんどん変わっていった。俺はとにかくこの場を早く離れようとして足早に歩き出す。しかしすれ違う瞬間にナツメが口を開いて思わず足を止めてしまった。

 

「……あーあ、なぜでしょうね。今私はこれ以上ないぐらい悲しんでいるのに、この顔は全く表情を変えてくれない。どうしてこんな風になったのかしら。レインくん、あなたはこんなこと言っても信じないだろうけどね」

「……わかってるなら構わないでくれない?」

「……そう。いいわ、引き留めて悪かったわね」

 

 軽くあしらってそのまま先に行こうとすると俺の前に誰かが立ちふさがった。……みゅーだ。

 

「レイン待って。ナツメはウソついてないの」

「みゅー?」

「あなた……なぜ私をかばうの? 以前は私のことあんなに……」

「この前はレインを助けようとしただけ。みゅーもナツメの気持ちわかるよ。同じエスパーだし、みゅーもよくレインにこんな顔されたもん。でもレインしか頼れないから一緒にいたいんだよね……わかるよ。だからあなたのそんな悲しそうなところ見たくない。ねぇレイン……なんとかしてあげて」

 

 みゅーは真剣そのものだ。ブルーがいないから簡単に追い払えると思って油断したな。

 

「俺に頼られても困る。どうせ俺はナツメにとっては仮初の友達にしかなれない。根本的な解決にはならないよ。第一俺はそんなに人間できてないんだ。自分以外がどうなろうと知ったこっちゃない。何度も手首を折られた相手ならなおさらな」

「それは、別に私は……」

 

 ナツメの言葉には耳を貸さずに無視を決め込んだ。しかしみゅーがそれを許さなかった。

 

「レイン、ナツメのオーラわかんないの? ナツメのことキライなの?」

「どうだっていいだろ」

「レイン……ねぇ、ホントにナツメをひとりぼっちにしていいの? レインはみゅーのことは助けてくれたのに、ナツメのことは見捨てるの? 見損なったの」

 

 みゅー、お前……。

 

「お前もグレンと同じこと言うんだな。弱ったなぁ……。おい、ナツメ」

「……何かしら」

 

 困っているなら少しぐらいは助けてやってもいいか。ナツメなら少しのきっかけで変わることができるだろうし。

 

「お前さ、自然に表情が変わることはなくても、意図的に表情を作るのは得意なんだろ? 今だってやろうと思えばまた泣き顔の1つでも作れたはず。なのになんで無表情のままだったんだ?」

「別に……面倒だからよ」

「本当にそれだけか? ウソではないにせよ真実でもないな。本当は作られた表情がキライなんじゃないの? エスパーってウソとかそういうのに敏感だから、自分で自分の表情を偽るのは許せないんでしょ?」

「だったらどうなの?」

 

 ナツメはこの話を続けたくないのか下を向いたまま返事が芳しくない。らしくないなぁ。今のやりとりだけでかなり悩んでいたことがうかがえた。

 

「ナツメ、お前女優になったら?」

「!」

 

 ナツメが顔を上げた。“かみなり”に打たれたような表情。女優になるなんてナツメにとってはまさに青天の霹靂だっただろう。でもナツメなら絶対に上手くいく。だから俺は自信を持って話を続けた。

 

「ナツメが本当は感情豊かな奴だってことは知ってる。いっつも自分の気持ちとは真逆の行動ばかりして、心の奥で誰にも気づかれないで泣いてたんだろ。お前は表情こそ変わらないけど、それ以外の部分では感情を隠すのが下手過ぎる。丸わかりだった」

「ウソ……じゃないのね。私の気持ちに気づける人がいるなんて驚きね。でもやっぱり……」

 

 ナツメは心底驚いているようだ。でも今この時でさえも無表情のまま。難儀だなぁ。

 

「作り物だからって気にし過ぎだ。もうそういうのはやめちまえ。無理して押し殺さなくていい。悲しければ大勢のファンの前で泣けばいい。嬉しければ堂々と笑っていればいい。自分の感情を表現して女優になれよ」

「……ウソっぽくない?」

「お前の表情は全然ウソっぽくない。しっかりとナツメの本当の感情がこもっていた。少なくとも俺はすごくいいと思ったよ。心を揺さぶられた」

「そこまで……。でもあなたは特別。他の……」

「きっと俺以外の大勢の人からも愛されるようになる。作った表情だからって罪悪感を持つ必要なんてない。自分のことはまず自分が好きにならないと周りから好かれるわけないだろ? もう自由になれば?」

「本当にいいの? そうすれば私は……」

「これまでずっと独りでジムに閉じこもって自分から出ていくことをしなかったんだろ? それじゃ独りのままなのは当たり前。友達がほしければ自分から動いてみなよ」

「じゃあまずは……」

「それはダメ」

「……まだ何も言ってないけど?」

 

 思ったままをしゃべっていたが、気づいたらけっこうナツメの考えを先取りしていた気がする。エスパーってこういう感覚の延長なのかもな。ナツメとずっといたら本当のエスパー人間になれたかもしれない。

 

「約束だから友達はダメだけど、ファンぐらいならなってもいいよ。お前が女優になったらファン1号は俺だな。お前が有名になって俺の耳にも届くようになれば、そんときはサインでも貰いに来ることにする。どう?」

「……あなたもあなたで意固地だし不器用よね。言い方が素直じゃないわ。どうして応援するからガンバレって言えないのかしら」

「……伝わってるなら問題ないだろ」

 

 いまさらそんなことナツメに言えるはずもない。だからつい顔を隠すようにそっぽを向いた。しかし顔を向けた方向にいたみゅーにバッチリ見られていた。

 

「みゅ? レイン、顔まっかっかだよ? 大丈夫?」

「あっ! みゅー!!」

「みゅふふ。ごめんね」

 

 そう言いつつみゅーは嬉しそう。怒りにくい。

 

「意外と照れ屋なのね。まぁ話はわかったわ。つまり私が大成して有名になればあなたを友達にしてしまえるということなんでしょう? 仕方ないから有名になってあげるわ」

「違うからな」

「……ふふ、悪くないわね。やっぱりあなたがいると私の未来は変わっていく。たった少しの言葉でこんなにも私は……。レインくん、決めたわ。私は女優になる。だから必ずサインを貰いに来なさい。いいわね」

 

 今のは……! これも演技なのか、はたまた自然に出たものなのか。やっぱりわからないなぁ。今の笑顔は本当に嬉しそうだった。……視えたんだろうな。

 

 ナツメの未来は明るそうだ。このナツメの表情を見る限り女優はどうやら天職だったらしい。

 

「その様子だともう友達の心配は不要か?」

「レインくん、今なら黒髪美人ですごく強いスター女優と簡単に友達になるチャンスよ? 私は寛大だから約束と違ってもいつでも友達になってあげるけど?」

「スター女優にまでなるのか。わかるのが早いな。……友達は気が向いたらな」

「遠慮深いのね。まぁ今はいいわ、今はね。どうやらカントーにポケウッドのスカウトがいるようね。私を探しているわ」

「……色々とすごい発言だな」

「私は忙しくなるからこれで帰るわ。ブルーちゃんにはよろしくね」

「ああ、言っておくよ」

 

 ナツメは最後まで笑顔のままだった。女優として様々な感情を演じればいずれ自然に表情が変わるようになるだろう。無表情のナツメとは今日でおさらばだな。なんとなくそれはそれで寂しい気もする。感傷に浸っていると服をグッと引っ張られた。

 

「レインやっぱりすごいね。最初からどうしたらいいかわかってたの?」

「一応俺もエスパーだぞ? なんならみゅーも女優さんになる?」

「みゅーはレインと一緒にいなきゃダメだからやめておくの」

「そう。みゅーも上手くいきそうだけどな」

 

 みゅーは本気で言ってそうで怖い。

 

「レインー、約束だからマッサージも忘れたらダメだよ?」

「ちゃんと覚えてるよ」

 

 こうしてエスパー少女は突然去っていった。

 




※手持ちリスト(倒れた順)
レイン
1.ヒリュー Lv53 @かたいいし
2.イナズマ Lv53 @しあわせタマゴ
3.ユーレイ Lv52 @しあわせタマゴ
4.アカサビ Lv54 @しあわせタマゴ 

◆持ち物がナツメを舐めてますね
◆1年でジムリーダーに追いつく方がおかしいのでレベル低め

ナツメ
1.フーディン Lv58 @まがったスプーン
2.バリヤード Lv56 @ひかりのねんど
3.エーフィ  Lv58 @たつじんのおび
4.フーディン Lv60 @まがったスプーン
5.ルージュラ Lv54 @きあいのタスキ
6.ソーナンス Lv53 @きあいのタスキ

◆HGSS再戦時のエルレイド→フーディンで残り同じ
◆回復アイテムなしがキツイ……(ソーナンス)



ジュジュベ爆誕!
エスパーの力は思いの力
想像して願うことができればそれが現実になり未来予知に繋がるわけですね
レインにやってみようと思わされただけでその未来がはっきりと浮かび上がる……
楽しいでしょうね
当初はみゅーに愚か者呼ばわりされていた未来予知……
でもエスパーにムダな能力なんてないんですよ
この場この時のための未来予知です
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