Another Trainer   作:りんごうさぎ

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ここから新章です

「S+4」は素早さが4ランクアップという意味です
能力変化の表記ですね

準伝は準伝説、つまりスイクンとかそういうポケモンの総称です
各地を飛び回る、いわゆる徘徊個体が多く、なんでもない草むらなどで突然何の前触れもなく出てくることがあります


もうひとりのトレーナー編
1.気になるポケモン そのお名前は?


 タマムシを旅立ってしばらく、俺は青々とした森の中を歩いていた。季節は春も過ぎてそろそろ初夏という頃か。横には景色を見たいと言ってボールから出てきたグレンが並んで歩いている。

 

 せっかくの機会だ。急ぐこともないし敢えて乗ることはせず俺も自分の足で歩いていこう。出てくる野生のポケモンは弱いので寄り付くこともなく、のんびりとした旅路になった。

 

 顔を隠すため以前はキャップやサングラスをしていたが、今は必要ないので外している。服装などはそのままだ。さすがに暴走族の恰好は二度としない。

 

 アクセサリーとかはジャラジャラするのでつけていない。戦闘になったら邪魔になる。今までの経験で考えれば俺自身が戦う可能性はないとは言い切れないので念のためだ。

 

「ガウンー」

「ん、なに?」

「クゥゥーン……」

 

 急にじゃれてくるなぁ。森の方を向いていたので急に来てびっくりした。もちろんイヤな気はしない。ゆっくりじっくり撫でてあげると幸せそうな表情になる。見ているこっちまで癒される。グレンのこともこれから考えないとな……。やっぱり自分よりも先にグレンの身だしなみを気にしてあげたい。

 

 思えば手持ちが1体だからここのところずっと戦い詰めだし、その分しっかりと労はねぎらってあげないと。頭を撫でたりするだけでもずいぶん嬉しそうにはしてくれるが、懸命に戦った対価がそれだけというのはあんまりな話だ。ちゃんとした“けづくろい”をしてあげたい。次の町でブラシとかドライヤーなど必要なものを買い揃えよう。

 

 かなり近くの町だったようで、グレンと戯れているうちに町が見えてきた。

 

「だんだん見えてきた。あれがゴウゾウの言っていた町だ。時間もあるし少し情報収集といくか」

「ガウンー」

 

 また全力でじゃれてきた。進化して間もないせいかまだグレンは力加減ができていない。進化前と同じように全力でじゃれてくるとそれなりのダメージが俺にもくる。じゃれつくだけでまるで攻撃しているみたいだ。技を使っているわけでもないのに。

 

「グレンは体がおっきくなっても中身はガーディの時のまんまだな。その体で抱き着かれたら俺が下敷きになるから勘弁してくれよ?」

「グゥゥ……」

 

 なんか寂しそうな顔だな。もしかして進化で大きくなってからガーディの時のように構ってもらえなくなったのを気にしているとか? 体格差があるから以前みたいに抱き着いたりは最近していない。

 

 もしかして景色を見たいっていうのは方便でホントは俺と一緒にいたかったのかな? じゃれてきたのもグレンを見てないで放っておいた時だったし。だとしたらかわいいところあるじゃん。たまには好きなだけじゃれさせてやるか。

 

「町に着いたらいいもの買ってやるよ。今日はずっと一緒にいていいし、それに……ここだと困るけど部屋の中なら汚れないから好きなだけじゃれてきていいからな」

「っ!? ガウガー、ガブッ!」

「おい! だからじゃれるのは屋内だけだって!」

 

 嬉しかったのかじゃれながら甘噛みもしてきた。グレンをなだめてとりあえず町で宿をとった。あんまり休めなかったがそこで一休みし、さっそく町の探索に出た。

 

 トレーナーなら情報は足で稼ぐのが基本。ゴウゾウの情報では詳しいことはわからなかったからな。噂のポケモンについて通りすがりのトレーナーに聞いてみた。

 

「……ああ、いるよ。凄まじく強いポケモンがね。倒していいならなんとかいけそうだけど、この大会じゃ倒すのは禁止されてるからかなり厳しいよ」

「どういうことだ?」

「君、知らないのかい? 普通はポケモンを倒してからボールを投げれば必ずゲットできるけど、瀕死のポケモンは返す決まりだから倒してからのゲットはできない。体力が残っているとなかなかボールに収まらないから難しいのさ」

「え、倒してからゲットなんてできるのか」

「……あ、まさか初心者さんかい? 基本だよ。ポケモンは弱らせて捕まえる、倒したら必ずゲットできる、ってね。悪いことは言わないから、初心者ならあいつには手を出さない方がいいよ。もう何人もやられてるから」

 

 これまたとんでもない常識違いだな。そんな格言みたいなものまであるのか。言われてみれば倒してゲットできない道理はない。でもそれだとハイパーとかはなんのためにあるんだ? 全く必要ない気がするのだが。

 

「え、ハイパーあるの? いいなー、倒しきれなくても捕まえれるもんね。初心者の時はよく使ったな、そういえば」

 

 ハイパーさんいらねーー!! うっそだろおいっ。これ、ハイパー買う意味全くなかったんじゃないのか。キズぐすりがゲームより高騰しているのにボールがそのままだったのはそういう事情か! 

 

 買いだめの時、準伝辺りがいきなり出てきた場合に備えて一生分と言い聞かせながらアホほど大人買いしてしまった。特にハイパーをかなり……。いや、今回役に立つしまんざら使い道がないわけじゃないか。

 

 聞けばこういう大会だとボールは各自用意が基本で、配給されたりするケースはほとんどないらしい。でもまさか倒していいとは思いもしなかったなぁ。本当に驚きだ。先入観ってヤバイ。微塵もそんな発想なかった。そしてこの衝撃で、大会開始になるまで大事なことを忘れていた。

 

「噂のポケモンの名前聞き忘れてた……!」

「あれ、君やっぱり出るの? せっかくエリートの僕がレクチャーしてあげたんだから、ケガしない程度に頑張り給えよ。まあ優勝は僕が頂くけどね。じゃ、僕は場所取りがあるから」

 

 開始直前またさっきのキザなトレーナーと会った。あいつエリートトレーナーだったのか。そういえば恰好はそれらしいな。初心者扱いは正直腹が立ったが知らないことが多いのも事実なので何も言わずにスルーした。

 

 ついでに、場所取りとかいうイヤな単語を残していったが、これは本格的に出遅れた感が否めない。あいつの後をつける手もあるが、初心者呼ばわりの件もありプライドが許さなかった。

 

 ◆

 

「制限時間は2時間、スタート!」

 

 開始の合図が出て、とうとう始まってしまった。それもなんの計画も練れていないままに。仕方ないからサーチを使ってしらみつぶしに探すが、この能力を使い慣れていないせいで思いのほか疲れが来て、残り時間も30分を切った。

 

 サーチの力は便利だがやはり多用し過ぎるとしんどい。目がかなり疲れてきた。これ、まさか使用すると代償として視力を失うとかトンデモなリスクないよな。そんなどっかの忍者みたいな設定ないよな。……ないよな?

 

 確かめることもできないから祈るしかないが、あんまり負荷が重いと使用制限も考えないと。ここはポケモンが多くて大量の情報が入ってくるので余計脳への負荷も大きいのが疲れの原因かもしれない。諸々考えて、今回は諦めるしかないかと思い始めた頃、遠くから声が聞こえた。

 

「出たぞー、ストライクだぁー!」

「もしやこれか? ストライクだったのか、いいポケモンじゃないか、楽しみだな」

 

 例のポケモンが出たと当たりをつけて現場へ向かうと1体で周りのポケモンを蹴散らしているストライクがいた。間違いない。どれ、ステータスは……。

 

 アナライズ!

 

 ストライク♂ Lv26 いじっぱり テクニシャン

 個 31-31-25-24-23-24

 実 80-77-53-35-52-65 S+4 はりきり状態

 技 でんこうせっか にらみつける  きあいだめ  おいうち 

   みねうち    こうそくいどう つばさでうつ

 

 グレン Lv28

 

 実 95-92-56-67-48-92

 技 1かえんほうしゃ 

   2かえんぐるま 

   3しんそく    

   4ひのこ  

   5まもる 

   6みがわり    

   7おにび    

   8オーバーヒート 

   9こうそくいどう

 

 凄まじいポテンシャルだ。こりゃ強いわけだ。まさかグレン以上の奴に会うことになるとはたまげたな。それに虫取り大会は“あまいミツ”でポケモンをおびき寄せることで珍しいポケモンも出るようになるらしいが、こいつはそんな気配はしないな。好戦的な印象を受ける。いいな、絶対に捕まえたい。

 

 周りのトレーナーがやられるのを待って、ついでに素早さを“こうそくいどう”で上げながら様子を見ていた。今戦っているのはさっきのエリートのようだ。エリートは確か“壁”を超えたバッジ5つ以上、つまりランク6以上のはずだが見事にやられたな。

 

 あのストライク、油断できない。すでに素早さを4段階上げているので実質素早さは3倍で195。加減して攻撃しようなどという甘い考えでは今のエリートのように一太刀も浴びせられずに敗北する。グレンも素早さを限界まで上げてから迎え撃った。

 

「君、危険だっ! こいつは本当に強い!!」

「心配無用、俺はそれよりはるかに強い。エリートなら、相手の力量ぐらいちゃんと見抜けないとな」

「ヴォオオウウッッ!」

 

 グレンの咆哮で周りにいたトレーナーは思わず道を開けた。さながらモーゼだな。俺はストライクへ向かって高らかに宣戦布告した。

 

「次は俺達が相手だ。お前、直接見てすぐわかったぜ。ここのミツに誘われたんじゃなくて強い奴を探しに自分から来たんだろ? グレンは超強いから期待してくれよ」

 

 するとストライクは獰猛な笑みを浮かべてから大きく吼え、グレンに向かってトップスピードで突っ込んできた。やっぱりバトル目的か。

 

「3,1」

 

 まずはお得意のしんそく連携。相手の攻撃を“しんそく”を使ってヒラリといなして後ろからカウンター気味に“かえんほうしゃ”を放つ。だが、なんとストライクはこれに対応して見せた。

 

「4!」

 

 しかし無理な動きで体勢が崩れた。その隙に追撃の指示をして“ひのこ”で素早くダメージを与えた。小技は威力が低いがその分出が早いので使いやすい。

 

「サイッ!」

 

 今度は“つばさでうつ”か。同じ手は通じないかもしれないし、スピードだけでなく、次は真っ向から力の差を見せつけてやる。

 

「2!」

 

 互いの技がぶつかる。“かえんぐるま”と“つばさでうつ”。威力は“テクニシャン”で向こうが1.5倍だがこっちには“いかく”がある。特性は互角。しかし能力においてグレンが勝る。そして炎はストライクに効果抜群。もちろんこの攻防を制したのは……グレンだ!

 

「サイィ……」

 

 しぶとい。何とか起き上がってきたが一度倒れているしモロにくらったように見えた。だがHPは残っている。まぁ倒したらダメだからこっちとしては助かったが。あのストライクはよく戦っているが、さすがにグレンは積み技でS300相当だし速さについてこれないのは当然。

 

「どうだ? 強いだろ、俺達は。お前は素質はあるが1体で強くなるには限界がある。こんなところで埋もれるのは勿体ない。まださらに強くなりたい気持ちがあるなら……たとえどんな奴が相手でも勝ちたい、と本気で思うなら俺と一緒に来いよ。どんな相手にも、たとえそれがグレンのようなほのおタイプであっても決して負けない最強のエースポケモンにしてやる」

「……」

 

 ゆっくりと間をおいて……互いの視線が重なり交差した後、スッと目をつぶりストライクはじっと動かなくなった。これは仲間になる気になったということか。ダメもとで勧誘したが上手くいくもんだな。

 

「歓迎する。心強い仲間ができた」

 

 ゴウゾウには感謝しないと。今回は大収穫だ。……積み技で能力上げていたのはストライクには内緒だな。

 

 ◆

 

「優勝は、ぶっちぎりのぉぉぉ、レインとぉ、すぅぅとらアアアアイイイイッッッッくだああッッ!」

「「うおおーひえー」」

「優勝賞品は“たいようのいし”! ぜひ有効活用してくれ! かなり珍しい石だぞ!」

 

 ポケモンのことばかり考えていて優勝景品の存在を忘れていた。意外と珍しい、というか景品が金銀の虫取り大会そのまんまではないのか? あの大会も景品かポケモンか狙いを絞るのがコツだったな、そういえば。

 

 たいようのいし……どの店にも置いていなかったがこんなところで手に入るとは。タマムシデパートには、ほのおのいし・みずのいし・かみなりのいし……みたいな普通の石しかなかった。もっとも、今もらった石が必要なのはキマワリとかキレイハナぐらいだから、国外にでも行かないと使う機会はないだろう。特に俺の場合くさタイプがキライだからな。元々キライだったがあのエリカと同じタイプを使うと思うとなおさらなぁ……。

 

 そのあと周りからどうやって捕まえたかなど質問攻めになったがグレンに乗って離脱した。ドーピングもして、育成も一段落したところでニックネームを考えることにした。

 

「よろしくな、ストライク。お前にはうちのパーティーでエースとしての役割を期待しているから頼んだぜ。じゃ、これで強化も終わったし、ニックネームをつけてやるか」

「サイサイッ!」

 

 よろしくお願いします、という感じで景気よく返事をした。強くなった実感が持てたからなのか、いじっぱりなのに良く言うことを聞いてくれる。

 

「じゃ、アカサビ(赤錆)でいいな」

「サイッ!?」

「グウゥ……」

 

 ストライクには驚き、グレンには呆れの視線をもらった。今なつき度合いダウンのテロップが見えた気がしたな。その後、進化したらメタルボディのカッコいいポケモンになることを説明……力説してなんとか説得し、自分の拘りを貫けた。捕獲より苦労したな。いや、気のせいだな、多分。

 

 ……今度からは希望も聞こうかな。ポケモンはしゃべれないから希望を聞くことはないだろうけど。

 

 あ、そういえば結局ハイパーさん出番なかったな。……ハイパー無能説爆誕。

 




リーフのいし「」
主人公はくさポケモンだいっきらいなので意図的ですね
ちなみに(作者の私も)嫌いな理由は初めてポケモンした際にライバルが4倍弱点の草タイプですいとるを連打してキズぐすりの多用もむなしく一向に相手へダメージを蓄積させられず詰んだことがあるからです
イベント直後にいきなり自転車乗って現れたライバルに、傷ついた大事な相棒が無残にリーフブレードで痛めつけられ、さらにハルカかなーた、うみのむこーうの町まで強制送還されたときは本気でブチギレました
さんざん暴れたくせに最終進化使わん無能っぷりのせいで図鑑は埋まらないですし
その他にも悪行は数え知れず
その後もシリーズごとに毎回くさタイプは大きな障害として立ちふさがったのでキライです


タイトルの気になるお名前はアカサビでした
赤錆は出来たらダメなやーつで人工的に作るのは黒錆なんですけどね
アカサビさん哀れ

なんかストライクコールがバグってますけど何なんでしょうね
何なんでしょうね(すっとぼけ)


レインは技の「じゃれつく」は知りません
トレーナーがメガクチにじゃれつかれることがあれば即ひんしですね


服装は夏の間は基本的に同じでいるつもりです
レインのこれまで挙げた特徴を全て加味して似ているキャラいないかなーと思って考えた結果サンムーンの「グラジオ」が似ている気がしました
はねてる髪と目つきと服の色とツンデレ感
金髪とか服の種類、着かたなど違うところも多いですが
あとレインは普段片手をポケットに入れています

前髪かかってるのはグラジオ見てからいいなーと思いました
デザイン的にはかなりいいんで前髪装備したいのは山々なんですが視界を妨げるのでレインの場合死活問題になるため諦めました
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