Another Trainer   作:りんごうさぎ

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シバ戦2

11話の続きです
途中経過は11話の後書きにまとめてあります


13.ピンチのあとにはチャンスあり

~格闘と水のフィールド~

 

「ハンッ! つえーやつってのは後半に力をためておくんだよ! こっからが本番だぜ!」

「たしかに……実は俺も同じことを思っていた。これから四天王の底力を見せてやる」

 

 この言い草、後半にとっておきでもあるってのか? たしかに今までは様子見があったようにも思える。“メガトンキック”なんて完全にフーディンへの交換を意識してのことだろうし。

 

 現状切り札を先に消耗したのはオレの方だ。その上“ステルスロック”もついてやがる。……思ったよりピンチか。

 

 だがやることは変わらねぇ。まずは目の前のこいつを倒さねーとな。サワムラーは蹴り技が中心。変な技はねぇはず。ならここで警戒されていて後出しが難しいフーディンを先に出してしまうのも悪くねぇか。蹴り技に対して遠距離攻撃なら安心だしな。

 

「出番だぜ! サイコキネシス!」

「潮時か。なげつける」

「んなっ!? なげつけるだと?! おまっ、そりゃハンドだろーが! 1発レッドだ!」

「蹴りしか使わないと言った覚えはない」

「レッドみたいなこと言うんじゃねぇ!」

 

 あぁぁーーっ!! オレは何言ってんだ?! あいつ、何を“なげつけて”きやがった? なんか見覚えあるぞあの道具。

 

「サワァァァ」

「シェェイ」

「サワムラー戦闘不能!」

『ん、どうした? サワムラーを見事撃破したフーディンが膝をついたぞ!? ダメージはそれほどのようだがこれは……』

 

 麻痺しやがった! ありゃ“でんきだま”か! レッドはピカチュウ専用っぽいことを言ってたがこんな使い方があるのかよ!? くそ、しかも特性シンクロもムダ撃ちか。

 

「サワムラーは倒れたが厄介なポケモンを足止めできた。十分だ」

『シバ選手5匹目はカポエラーだ!』

「たしかバルキーとかいう奴の進化系か。どうせエビワラーとかと同じ感じだろ、サイコキネシス!」

「ねこだまし」

 

 フーディンは動けない。めんどくせぇ技使いやがって! しかもかなりの攻撃力なのかダメージが先制技のそれじゃねぇな。ステロ、抜群の“なげつける”、“ねこだまし”……防御が弱点のフーディンじゃもうあと1発も持たねぇな。

 

 あのポケモン、“マッハパンチ”とかそういう先制技は絶対持ってるに違いねぇ。ここでむざむざ倒されるわけにはいかねーし、交代するしかない。

 

「カポエラーやるぞ!」

「技名を隠そうがどうせ先制技だろ。バレバレだぜ。ここは迷わず引いて……はぁ!? 故障か!?」

『ああぁーーっ!! グリーン選手痛恨のアクシデントかぁ!? フーディン戻れない!! ボールに戻れずカポエラーの攻撃に捕まった! こうかはばつぐんだ! たまらずダウン!』

「フーディン戦闘不能!」

 

 効果抜群? あくタイプの技か?……そうか、“おいうち”か!!……ってことは裏をかいたつもりがその裏をかかれたのか! “サイコキネシス”を使ってりゃ倒せたじゃねーか!

 

 あのポケモン、エビワラーやサワムラーとはまるで違うな。小技を駆使して戦うタイプか。だったら力勝負に持ち込んでやる!

 

「真っ向勝負だ! いくぜ! 撃て、渾身のエアスラッシュ! 怯め……怯めぇぇ!!」

 

 出したのは当然ピジョット! こいつは生半可なレベルじゃない。ここからは怯ませて何もさせねぇ!

 

「ならマッハパンチ」

「てめっ!」

 

 先制されたら怯みもクソもねぇ! しかも効果抜群の“エアスラッシュ”を耐えやがった! 攻撃も耐久も隙がねぇ……弱点は素早さってことか。しかもそれは技で補ってやがる。厄介だな……。

 

「連打だ! 敵が倒れるまでやれ!」

「マッハパンチ」

「……カポエラー戦闘不能!」

 

 だいぶピジョットの体力を持っていかれたがレベル差があったおかげでなんとか耐えたな。そしてこのカポエラーの撃破はオレにとって少なくない意味を持つ!

 

「色々ありはしたが、結局気づけばこのオレ様の優位。さぁ逆転したぜ? 2対1……追い詰めたな」

「ここがふんばりどころ……だが数の不利は即ち形勢の不利とはならん」

「へっ。負け惜しみか?」

「……人もポケモンも戦い鍛えればどこまでも強くなる。俺は格闘ポケモンの持つ可能性を信じて限界を超えて鍛えている。そしてその可能性を存分に発揮させることがトレーナーである俺の役目。すでに障害は除かれた。なぜ俺が四天王と呼ばれ恐れられているか、その目で確かめるがいい」

 

 シバの目は死んでねぇな。それどころか自信に満ちてやがる。なるほど……来るな。

 

「切り札登場ってか? どんなやつが出てくるってんだ?」

「さあ、倒れた者の分まで存分に戦え! ゆけ、カイリキー!」

「カイカイ……」

 

 カイリキーか。こいつならその辺のトレーナーでも持っているはずだ。ラプラス、ゲンガー、カイリューみたいな他の四天王の強力で珍しいポケモンと比べれば見劣りするぜ?

 

「意外と普通なポケモンだな。冷静に対処すれば怖くねぇ。ピジョット! まずは距離をとって上空から遠距離技で……ピジョット、どうした?!」

『ピジョット、いきなり自ら敵に接近していったか? いーや違う! これはシバの十八番だぁ!』

「あいつの意思じゃねぇってのか?! くそっ、エアスラッシュ!」

「バレットパンチ!」

 

 カイリキーが先制技覚えんのかよ!? これはヤベェ!!

 

「躱せ! とにかく離れろ! チッ、攻撃に吸い寄せられてんのか!?」

『出たぞ回避不能の攻撃! 接近戦なら四天王最強と呼ばれたシバに対し肉弾戦を余儀なくされる掟破りの特性だ! ひこうタイプは格好の餌食だぞ!』

「勝手にしゃべられちゃかなわないな。まぁ四天王相手に無知のまま対戦するのは今年のルーキーぐらいのもの。ここは目を瞑るか」

「まさかあれか! 回避不能といえば……噂に聞く“ノーガード”か! まさかカイリキーの特性だったのか!」

 

 なんて強力な特性なんだよ、全く。これは相当つえーぜ。オレも1体ぐらいこんな特性のポケモンを使ってみたいもんだぜ。

 

「ここらではカイリキーの特性はほとんど“こんじょう”だったな。……さぁ見せてみろ、お前の全力! エスパーもひこうも倒した。後は手負いのカメックスのみ。逆王手だ。最後に男なら……黙って拳で語れ」

 

 ニヤリと初めてシバが笑った。そうか……拳で語れとか前に言ってたのはこういうことか。正々堂々、“ノーガード”で殴り合えってわけか。あれはやっと気づいたかって顔だな。こいつ、いい性格してやがる。

 

「ここまであんたの計算通りってわけか。なるほどねぇ。上手く俺の出すポケモン、技、それらを誘導してここまで追い詰めた……これがあんたの戦略。そういうことだろ?」

「何がおかしい? 負けを悟ってヘラヘラ笑うようなやつだったなら、とんだ見込み違いだ」

 

 これが笑わずにいられるかよ。この状況はまるで……あの時そのものじゃねぇか。

 

「大先輩のあんたに、オレがポケモンリーグで学んだことを1つ教えてやるよ」

「ポケモンリーグで学んだことだと?」

「オレが身をもって知ったことだ。……どんなに完璧な作戦を立てても、最後の1体の力でそれを覆すことだってあるんだぜ?」

 

 なぁ、そうだろレッド?

 

「……まだ戦う気力はあるらしいな」

「たりめーだ! いくぜカメックス! お前に全部任せたぜ!」

「ガメーーーッ!!」

 

 カメックス、お前が最後にいるだけで負ける気がしねぇぜ! ようやくオレ達の本領発揮だ! オレは狙いを定めてカメックスを繰り出した。

 

「一撃くらえばタダでは済まんぞ。ばくれつパンチ!」

「ノーガードってのはお互いに効果があるんだぜ? 逃げられないのはお前もだ! カメックス、まもる! そのまま後退!」

 

 相手は必ず攻撃のためにカメックスのいる場所まで近づいてくる。オレ達はそれをじっくり待っていればいい。カメックスはオレに相槌を返した。ちゃんとわかってるな。さすがだぜ。

 

「時間稼ぎか? ムダだ! その技は連続で使えるような代物ではない」

「んなことわかってんだよ。あんた、今までずっとオレが使ってなかったから忘れてんだろ? カメックスの足元をよく見な」

「……水のフィールド! そうか狙いは……!」

 

 フィールドってのはこうやって使うんだよ。要は使いようなのさ。

 

「ガメッ」

「カイッ?!」

 

 カメックスは不敵に笑い、カイリキーの方を見たまま地面を蹴って後方へ跳び、その身を宙に預けた。当然カメックスは背中から重力に従って落ちていく。だがそこは堅い地面じゃない。あいつのホーム、水のフィールドだ!

 

 水の中を深く沈んでゆくカメックスに引き寄せられるようにしてカイリキーもまた水中に引き込まれていく。最初から水に入るとわかっているのと、いきなり飛びこむのではまるで違う。息も吸わせねぇぜ。

 

「カイリキー、慌てるな!」

「そりゃ無理ってもんだぜ。カメックス、みずのはどう!」

 

 先手を取って攻撃が決まった。“みずのはどう”は波だから水中であっても水圧に妨げられない。しかもカメックスの得意技だ。容赦なくガンガンいくぜ?

 

「落ち着け! お前の攻撃は目を瞑っていようが必ず当たる! ちきゅうなげで地上に放り出してやれ!」

「投げ技だと!?」

 

 格闘戦はなんでもできるってわけか。強引に投げ飛ばされカメックスは地上に出てしまった。おっそろしい腕力だ。

 

 そして投げた本人であるカイリキーもカメックスに引き寄せられて浮き上がってくる。いくら“ノーガード”でも空中を飛んだりはできないが、水中だと浮力とかを使えるからな。

 

「これで水場とカメックスの間にカイリキーが陣取った。ここから先は水中には行かせん」

「かまわねぇさ。こっちも準備はできたしな。もう水中に逃げる必要もねぇ」

 

 できることなら水中で有利なまま戦いたかったが、すでに敵に手傷は負わせた。ダメージの感じからしてもういけるはずだ。二度と目測を誤るようなことはしねぇ。今度は絶対に倒す! 

 

「みがわり!」

「ばくれつパンチ!」

 

 カイリキーは間近に迫りカメックスの体力は残り僅か。絶体絶命のピンチはお膳立てしてやったぜ?  

 

「なんのつもりだ?」

「へっ……オレなりの演出さ。劇的な勝利にはピンチが必要なんだよ。ピンチの後にはチャンスありってな。ぶちかませ! ハイドロカノン!!」

「……!! 耐えろカイリキー! 肉体の限界を超えろ!」

「ガメェェーーッッ!!」

「カイッ!?」

 

 カイリキーは殴り合いには強いがそれ以外には弱い。自分の土俵で戦うのがバトルのセオリーだぜ。

 

 “ハイドロカノン”は当然命中。お膳立てした特性“げきりゅう”の効果とフィールドによる補正で凄まじい威力になる。カイリキーは吹っ飛んでいった。

 

「いっちょあがりっ!」

「カイリキー戦闘不能! 勝者グリーン!」

「「おおぉぉーーッッ!!」」

「どうしたことだ! 俺が……俺達が負けるとは!」

 

 吹っ飛んだカイリキーは水中に落ちてしまい気絶したまま沈んでいったが、反動が解けたあとカメックスが助けにいって無事にシバのボールに戻れた。

 

 オレのところに戻ってきてカメックスがこっちを向いた。今のお前、最高だぜ。

 

「やっぱオレ達天才だな?」

「ガーメッ!!」

 

 言葉はこれだけで十分。グータッチで勝利を喜び合った。

 

「済まないな。水中は苦手でな……カイリキーを助けて貰って助かった」

「あんたいつのまにこっちに。まっ、いいってことよ。バトルが終われば敵も味方もねーからな」

 

 真剣勝負に手は抜かねぇが、終わった後は別だからな。礼を言った後シバはさらに言葉を続けた。

 

「まるでカンナのような戦いぶり……見事な立ち回りだ」

「別に女に例えられても嬉しかねーよ。誉め言葉は素直に受け取っておくけどな」

「……勝負とはわからないものだ」

「……」

「あの少年が言わんとしていたことも今ならなんとなくわかる。……負けた俺に何も言う資格はない。次へ進むがいい」

 

 シバは背を向けたが、これだけは言っておかないといけない気がした。

 

「言われなくてもそうするぜ。そんでもって、あんたの代わりにレインの野郎もぶっとばしてやるよ」

「……!」

「キクコのばあさんが負けるわけねぇってか? でもな、オレ達に限界なんてねぇんだよ」

「……」

「人もポケモンも限界なんてねぇ。あんたが教えてくれたことだぜ。レインだけじゃねぇ。レッドもブルーも……あいつらなら勝つぜ、必ずな」

「なら、出番の終わった俺はゆっくり見させてもらおうか。お前達が限界を超えてどこまでいけるのかをな」

 

 あぁ見せてやるさ。とんでもねぇもんを見せてやるよ。

 

 けど、オレはまず反省だな。今回は上手くいかなかったことも多い。相手に完璧に対応しようとして逆に相手のペースに乗せられちまった。今度は自分で主導権を握れるような戦い方を考えた方がいいかもな……。

 




ハイドロカノンは一致フィールド激流で威力約500です
Cぶっぱ比較前提だと激流ゲッコウガのミズZぐらいでしょうか
きせきポリ2が受からないのでカイリキーはいわずもがなですね

カポエラーはテクニシャンです
ねこだましとか全て威力がアップしています

“ノーガード”はどうやって効果を反映させるか悩みました
そんなにわるくはない……と思いたい
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